モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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58小さい方も狩りましょう。

ロアルドロス(大)の狩猟は、無事に終わることができた。

 

結論を言うと、ロアルドロス自体の強さは、そこまででは無かった。

モンスターの攻撃は大体予備動作があるものだが、ロアルドロスはそれが読みやすい。

噛みつきや前足による薙ぎ払いは、俺もショウコも全て回避できた。

 

だが苦労したのは、のしかかりとブレス、水弾攻撃である。2、3回被弾してしまった。

ブレスが当たった時などは、回復薬を用意してくれたショウコに怒られてしまった。

 

 

「だ・か・ら!突っ込まんでください!!」

「す、すまん。」

 

 

しかし、防具をかなり強化したおかげで、痛みはあるがそこまでのダメージにはなっていない。

セツヒトさんってやっぱりすごい。

 

 

ロアルドロスは何度か俺たちから逃げるように撤退を試みたが、俺のマップ表示からは逃れられない。

ちょいちょい休憩を挟みながら、ロアルドロスを追いかけ回した。

 

 

「……ご主人さま、もう虫の息です。」

「あぁ。」

 

 

シビレ罠を設置する俺。麻酔玉を用意するショウコ。

一瞬で罠を仕掛け終えると、ロアルドロス(大)は痺れて動けなくなる。

そこにショウコが捕獲用麻酔玉を投げつけると、ロアルドロス(大)はウソみたいに眠りだした。

 

 

「毎回この効き目の凄さに驚かされる……。」

「ウチはもう慣れました……。」

 

 

「ネムリ草」と「マヒダケ」の二つのアイテムを組み合わせることで、完成するこの捕獲用麻酔玉だが、疲れて罠に掛かったモンスターにのみ効き目がある。

始めは、疲れて虫の息であるモンスターに、やっと効く程度の代物なのだと思っていたが……。

 

あまりに効きが早すぎる。

2つほど投げつけたら、すぐにスヤスヤ眠りにつく。

 

 

「ご主人様の麻酔玉、効きすぎです。ウチ、恐ろしなります……。」

「情報画面で調合するとどうしてもこうなるんだよなあ……。」

 

 

しかもこの即効性、どうやら俺が作った捕獲用麻酔玉だけらしい。

雑貨屋で売っているものを使用する時は、事前に麻酔玉や遠距離武器の麻酔弾などを当てておいて、そこから罠にかけて、タコ殴りにするのだとか。

 

 

「ま、何にせよ一匹捕獲成功だ。信号弾、打つぞー。」

「はい。ウチ、落とし物が無いか、見ときますね。」

 

 

信号弾を上げる。赤い煙幕が上空に向かって広がる。

ちなみに「落とし物」とは、モンスターがたまに地面に落とすモンスター素材のことである。

狩猟を行なった場所を見回すとたまに見つかるのだが、実は俺の「情報画面」の「マップ」では表示されない。

 

なので、目が良く背も低いショウコが良く見つけてくれるのである。

 

更にショウコに聞いた話だと、この落とし物拾いを生業にするアイルーがいるのだとか。

落とし物だけで生計を立てるとか、たくましい限りである。

その玄人のアイルーに会ったら、一度話を聞いてみたいものだ。

 

 

遠くの方で、青い信号弾が上がるのが確認できた。

回収班の合図だ。

 

 

「よし、一旦キャンプに戻るぞー!周囲に敵は……。」

「ど、どうしました?ご主人さま?」

 

 

マップで周囲を確認してみると。

ちょうどスタート地点の目の前の水場に。

 

 

「うーん……いるなあ、ロアルドロス。」

「えっ!?さっきのやつですか!?どこにおります!?」

「いや、驚かせてすまん。近くにいるわけじゃない。スタート地点の目の前。あー……たまにあの辺ルドロスいるもんなあ。」

「あー、あの水場ですか……。」

「うん。どうしよっか。」

 

 

ちょっと参った、スタート地点に戻って一旦仕切り直すつもりだったからな。

 

考えられる選択肢は2つ。

①予定通り、セーフポイントであるキャンプに戻り、休憩する。

②この辺である程度休憩し、スタート地点に戻らないまま狩猟続行。

 

 

「ショウコ、残りの体力は?」

「全く問題ないです。いつでもいけます。」

「俺もだ。まだいけるではなく、全く問題ない。」

 

 

「まだいける」は「もう危ない」。

ハンターたちの間でよく言われる格言である。

まだいけるか?と判断している時点で既に万全ではない。だからあきらめる方が良い、と言う意味だと、俺は解釈している。

 

だが、残りの体力、ショウコの返事、ロアルドロス(大)の強さを総合的に考えると……。

おそらくいける。

 

 

「ショウコ、このまま連戦したとして、いけると思うか?」

 

 

無闇に攻めるのは良くないとは理解している。

そのために、ショウコに確認を取る。

 

 

「何言ってますの?ご主人さま。」

 

 

ショウコがたしなめるように話す。

もしや難しいか?

 

 

だが、ショウコの返事は180°違うものだった。

 

 

「断言します。安全マージンをとれば、99%狩猟できますよ。」

「……そっちか。」

「ええ!ウチとご主人様なら、絶対大丈夫です!」

「じゃあ、やってみるか。本当の連続狩猟を。」

「はい!いきましょう!」

 

 

俺とショウコは、もう一匹のロアルドロス(小)を狩ることで意見が一致した。

なら迷うことはない。

 

とっととやってしまおう。

 

 

「あ、でも。」

 

 

ショウコが付け加える。

 

 

「もしさっきみたいにブレススレスレ回避するんやったら……ウチ、止めますからね!?」

「だ、大丈夫だ。絶対しない!」

 

 

絶対に油断はしない。

2人で村に帰るんだから。

 

 

* * * * * *

 

 

「やあぁぁぁ!!」

 

 

ショウコが反対方向からロアルドロス(小)を攻撃する。

だがロアルドロス(小)は、既に俺へと視線を向けて離さない。

 

 

「ショウコ!既に俺に向いている!いつも通り頼む!」

「はい!気をつけて……!下さいっ!!」

「あぁ!」

 

 

ザッ!!

ザシュザザザン!!!

 

 

後方に回避しながらショウコに合図。

正面に立たないように時計回りに移動しながら斬りつけ、後退。

 

意識が俺に向いている間、ショウコは攻撃を繰り返す。

 

 

「グアァァァァ!!!」

 

 

それでもロアルドロス(小)は、俺に視線を向けたままだ。

俺は、さっきからやたら体の調子がいい。今日は、訓練以上の斬撃をかなり繰り出せている。

 

 

「はあっ!!」

 

 

ザン!ザザ!ジュザン!!

 

 

「グアア!」

「ショウコ!頭部破壊確認!鬣は既に傷付いてる!」

「はい!めちゃくちゃ疲れてます!!いけます!!」

「おっけ!!」

 

 

ショウコと確認。今の言葉はつまり、捕獲可能なところまで、ロアルドロス(小)の体力を削ることができたということだ。

 

ショウコは、モンスターへの観察眼がとても優れている。

一度倒したモンスターならば、こうした捕獲のタイミングが分かるのだと言う。

 

すごいスキルだと思うのだが、これは訓練したアイルーならば誰でもできる芸当らしい。

やっぱりオトモアイルーって有用だなぁ、と感じざるを得ない。

 

 

「よし!こっち仕掛けた!」

「麻酔玉!用意できてます!!」

「よし!合流!」

 

 

俺とショウコが同じ方向に逃げ出す。

追ってくるロアルドロス(小)。だが、その方向は……。

 

 

ズドォン!!!

 

 

「ガッ!?グゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

 

うめき声か何かよくわからない声を上げるロアルドロス(小)。

 

うまく落とし穴にかかってくれた。

 

 

「麻酔玉!おやすみなさい、や!!」

 

 

ショウコがすかさず麻酔玉を当てる。

二つ当てたところで、ロアルドロス(小)は力なく項垂れ、動かなくなった。

 

 

「……目標、沈黙しました……。」

「やったか!?」

「何ですのそのフラグ……。ぐっすりスヤスヤです。」

「だな。」

 

 

狩猟はどうやら成功したようだ。

穴から上半身だけ出したロアルドロスは、鼻から提灯を出して眠ってしまっていた。

 

 

「ずいぶん間抜けな姿勢だな……。」

「野生やと考えられへん寝方ですね……。」

 

 

気持ちよさそうにしてはいるが、これからギルドの回収班がこいつを回収して、解体なり解剖なり、色々やってしまうのだろう。

少し同情してしまう。

 

今だけでも安らかにお眠り下さい。

 

 

信号弾を打ってからしばし、俺とショウコはその場に座り込んだ。

 

 

「はぁー!!しんどかった!!でも、何とかなったな!!!」

「はい!でも、ご主人さま、余裕あったんちゃいます?」

「あぁ、今日は何だか、体のキレがとてもいいんだ。」

 

 

普段の狩猟では、あまり無い感覚。

連続で狩猟をすることで、昂っていたのかも知れない。

アドレナリンドバドバ状態である。

 

 

「集中力が続いたことが、今回の一番の収穫だな。一番欲しい時に、いい斬撃を繰り出すことができた。」

「はい!」

「反省は……。」

「ご主人さま、やっぱり無茶されることが多いです。ここはきっちり、反省してもらいます。」

「アッハイ。」

「今回、何とかなった言うのは結果論です。まぁロアルドロス相手に後手は踏まんと思うてましたし、ご主人様の実力やウチらの連携を考えれば、問題はないとも思うてました。でも、初めての連続狩猟、アクシデントが起きないとも限りません。そん中で無茶な行いは、即失敗に繋がります。大体ですね……。」

「はい、すみません。はい、反省してます。はい……。」

 

 

ショウコのお説教は、しばらく続くのであった。

 

 

* * * * * *

 

 

日もそろそろ沈み始めようかという時間。ショウコと共にスタート地点のキャンプへ戻る。

 

今日の内に2頭仕留められるとは思っていなかった。

ギフトの力を借りているとはいえ、ロアルドロスへの攻撃自体は自分自身の力である。

 

地力がついてきた、と思う。自信につながる。

まだ体力にも余裕がある。

こうした狩猟を、今後も続けていこう。

 

まぁ流石に、これからもう一頭!となるとキツいかもしれない。

お腹もすいたし、ちょっと疲れている。

この状態が「まだいける」なのだろうな。

 

とっとと帰って、風呂に入って、美味しいご飯でも食べよう。

 

 

「ショウコ、大丈夫か?」

「はい!いつも心配かけて……すみません。」

「いや、いいんだ。それに、最近はクエスト終わりに、変に緊張することも無いしな。」

「そ、そうですか?そら良かったです……。ご主人さまの……おかげです。」

 

 

ショウコは、トラウマを抱えている。

運悪く、自分がオトモとして付いていったクエストで、あり得ないアクシデントが立て続けに起きた。

武器を無くす、大型モンスターが乱入する、一緒にいたハンターが死にかける。そんなアクシデントが何度も、何度も。

 

そうして、心無い一部のハンター達が、ショウコにつけたあだ名は「招き猫」。

 

俺がショウコを雇用したばかりの頃。

クエスト終わり、もう帰ろうかという時、ショウコはかなり疑心暗鬼になっていた。

クエスト中はあんなに頼りになるのに、終わった後、人が変わったように自信無さげな感じになる。そんな状態。

 

ショウコの心の傷は、根深いのだろう。

だから、俺はできるだけショウコを安心させたい。

そして、そんな不名誉なあだ名なんて、彼方にやって忘れさせてやりたい。

 

アイルーの集落で、ショウコは熱意をもって、俺に懇願してきた。

「ウチを、オトモにしてください!」と。

ショウコにとって、それはとても勇気のいる言葉だったに違いない。

だから、その思いに応えたいと思った。

 

ショウコとのクエストも、かなりの数をこなしてきた。

少しずつショウコも、クエスト終わりに疑心暗鬼になることは無くなってきたと思う。

単純に、運が悪かっただけなのだ。

よくあるアクシデントである。

 

 

「いい傾向だ、ショウコ。これからも笑って帰ろうな。」

「……はいっ!!」

 

 

いい笑顔だな、と思った。

 

スタート地点まで、もう少し。

 

そんな時だった。

 

 

キン…………キン……キン!

 

 

変な音が聞こえてきたのだ。

 

何だこの音……?まるで金属と金属がぶつかり合うような…………!?

 

 

「……ちょっと待て!ショウコ!」

「へ?どうしたんですーーー」

 

 

身震い。

ゾクッとした。

 

 

「伏せろぉ!!!!」

 

 

ビュオン!!!

 

 

ショウコを無理矢理押し倒す。

直後、とんでも無い速さの何かが、俺の頭を掠めた。

風が起きて、頬に当たる。

間一髪。

 

ショウコを立たせる。

 

 

「ショウコ!無事か!」

「ご、ご主人さま!すみません!!ありがーーー」

「礼は後だ……こいつは……。」

 

 

立ち上がり、見上げると。

 

 

「嘘だろ……。」

 

 

 

全身トゲトゲ、体色は青と赤、巨大な体を支える屈強な両足、そして何より、超大型の大剣のような尻尾。

 

 

「グルルルルル……。」

 

 

子どものころ、図鑑の中でしか見たことのない大型の肉食恐竜。

そんな大型モンスターが、俺たちの前に立ちはだかっていた。

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