モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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63女神様と直で話しましょう。

転生してここまで、いろいろ驚いたことはあった。

 

モンスターたちとの戦いでは驚きの連続。

そもそも文化さえ違うのだから、驚くことが多いのは当たり前と言えば当たり前だ。

 

そしてただいま、絶賛驚き中。

その驚き具合は、史上NO.1でございます。

 

目の前に。

目の前に女神様がいるのだ。

 

 

「双治さん。このお茶というもの、とてもおいしいです。おかわりを頂いても、よろしいですか。」

「普通に居座るなあ……。」

 

 

まぁ驚き過ぎて逆に落ち着いてしまったが。

むしろお茶を入れるくらいなら平気になるまで回復している自分に驚きである。

 

 

「え、えーと、女神様。」

「はい、何でしょうか双治さん。」

 

 

声が一緒だ!

何だろうこの「あ!あのキャラとあのキャラの声の人同じだ!」みたいな既視感。

散々聞いてきた声の主が、今目の前に。

 

しかし想像通りと言うか、何というか、完璧なまでの美人さんである。

絶世の美人などと評したが、女神さまには逆に失礼なのではないだろうか。

 

 

「あまり褒められると、恥ずかしいです。」

「あ、心の声も聞こえているんですね。」

「ええ、ですが顕現するのも久しぶりなものですから。普通に会話をしていただけるとありがたいです。」

「は、はい。」

 

 

いけない、どうにも緊張してしまう。

 

 

「ここに人が来たら、まずいですよね?」

「大丈夫です。こちらの世界の神と確認をしております。明け方近くまでこの部屋には誰も来ない様です。」

「あぁ、よかったです。……誰かに話を聞かれるという恐れは?」

「あり得ません。そもそも、双治さん以外は、私を認知できないようにしてます。」

 

 

対策はバッチリと言うことか。

 

 

「分かりました。では女神様、今日はなぜわざわざ……顕現?をしてまで、こちらに?」

 

 

一番気になることを聞いておこう。

 

 

「はい。お答えします。」

 

 

そこから女神様が、スラスラと話し始めた。

 

まずは前回の女神さまとの邂逅。

主題は「俺以外のバズりそうなネタ探し」だった。

その件に関しては、結論として成功したらしい。

 

 

「アイルー猫のショウコさん、さらにオスズさん、非常に愛らしくていらっしゃいます。予想通りの伸び具合でした。」

 

 

そう言って、前回見せてくれた「トレンドまとめ折れ線グラフ」を、今回はスケッチブックに手書きにしてまとめて見せてくれた。

……これ全部自分で書いたのかよ!定規とか使って!?

 

 

「ちなみに、全てフリーハンドです。」

 

 

美大生もびっくりだよ。文字とか完全にレタリングしたみたいだし。

暇なのかな……女神様……。

 

 

ま、まあいいや。

今回は二人のアイルーについてまとめたグラフを見せてくれた。

折れ線は、多少の上り下りはあるものの、常にMAXに近い位置を示している。驚異的ではないか。

 

 

「出現当初から今日まで、非常に高い位置を保っております。分析するに、当初は従来からのファン層、それが徐々に様々な層に移っていき、高い関心を維持しているのではないかと思われます。」

「さすがアイルー、可愛いは正義ですね。」

「ちなみにショウコさんがお風呂に向かわれるとき、非常にバズります。」

「変態じゃねえか!!!」

 

 

神達に対してのイメージはダダ下がりだったが、ここにきてとんでも変態神達がいるとは。

しかもバズるとか!結構な数変態神がいるんじゃないか!!

 

 

「まさか覗かれたりとかしてませんよね!?」

「ご安心を。その辺はばっちりフィルターをかけております。」

「あ、流石です女神さま。」

「ええ。お任せを。」

「……。」

「……。」

「……ちなみに、俺が銭湯に行っている時って―――」

「……。」

「無視かよ!!えっ!?何!?そんなプライベートまで筒抜けなの!!??やめてほしい!!」

「ご安心下さい。私しか見てません。」

「……余計嫌だよ!?なんで!?」

「ごちそうさまでした。」

「フィルター仕事してぇ!」

 

 

あきらめよう……。何せ、相手は神である。

目の前の美人が俺の裸を見てごちそうさまとか、しかもその人は女神様とか、もうツッコミどころ満載である。

それに何だこの感覚……。見られていたのか俺の裸。

 

……。

 

も、もういいや!気にしすぎると新しい何かに目覚めかねん!!

気を取り直して!

 

安定のスルーを決め込んだ女神さまが次に見せてくれたのは、俺自身に関するデータだった。

前回から今回の狩猟に至るまでのトレンド具合。

俺の写真とか俺の動画とか……なんか多くない!?

 

 

「双治さん。」

「はい。」

「まずは、生きてこちらにいらっしゃいますこと、本当に嬉しいです。」

「あ、いえいえ。何とか無事に帰れました。」

「……前回、狩猟の際は気を付けるようにお伝えしましたが。」

「はい、すみません……。」

「……双治さんが身を置く世界は、常に危険が隣り合わせです。だからこそ、戦いを好む神が多い神界で好まれます。」

「はい……だから今回も、ディノバルドとの戦いの際のグラフの伸びがすごいんですよね。」

 

 

グラフを見ると、色々な上下はあるものの、一貫して俺が戦う時、最も伸びがよくなっている。

今回はロアルドロスとの連戦の後、ディノバルド戦。その伸び率は、はっきり言って異様だ。

 

 

「結果として敗北を喫したわけですが、それがまたウケています。双治さんは順調で安定した狩りを続けておりましたから。再戦を望む声が、後を絶ちません。」

「まぁ、そうでしょうね。」

「……ですが、双治さん。」

「はい?」

 

 

おもむろに女神さまが立ち上がった。

すると、ゆっくりと手を伸ばし、俺の手を取る。

少しひんやりした感触。細くて長い指、女性らしい手だった。

 

 

「……今までの私の言動から、これから私がお伝えすることは変に思われるかもしれませんが……誤解を恐れずにお伝えします。」

「は、はい……。」

「私は……私は、双治さんが傷つくことは、本意ではありません。」

「……。」

 

 

女神さまが続ける。

 

 

「これまで以上の戦いを望む声が多いのは事実。ですが、双治さんの人生は双治さんのもの。こうして顕現したのは、いち存在として、双治さんと顔を合わせて再度確認をするべきだと感じたからです。」

「……。」

「双治さん、改めて問います。この世界で、この弱肉強食の世界で、あなたはこれからもハンターを続けるのですか?」

「……女神様。」

 

 

変な事を聞く。

そもそも危険な強敵と戦ってほしいと言ったのは、他ならぬ女神様である。

女神様と目をしっかり合わせて、答える。

 

 

「俺は、奴に再戦したい。強くなりたい。ちっとも心は折れちゃいない。」

「双治さん。ですがーーー」

「ハンターとして、俺は生きます。生きていきます。」

 

 

決意表明をする。

今までになく、俺を気遣ってくれている女神様である。

いつもの強引さは、欠片も感じられない。

 

顕現した影響なのか?

 

 

「……申し訳ありません。確認が取れて、よかったです。」

「いえ、俺も改めて決意出来て、よかった。」

「……ですが、お気をつけ下さい。再度申し上げますが、双治さんの身に何かが起きても、私にはどうすることもできません。」

「……はい。」

「どうかくれぐれも、くれぐれも、お気をつけください。」

 

 

……結構話してきたからわかる。

この人?神?は、俺のことを心配してくれているのだ。

 

始めは俺に、神様SNSとやらに一役買ってもらおうとか、そんな思いだったのかもしれない。

ところが予想以上にバズり、引くに引けないところに、今回の俺の怪我。

そこで、自分の考えがブレてしまったんだろう。

……何とも人間臭い神様である。

 

SNSあるあるだ。

自分が予期せぬところで、投稿したネタが一人歩き。

何とかしようとしても後の祭り。

前世でも、こんな感じのことが、よくネットニュースになっていた気がする。

 

 

「女神様。あなたがくれたギフトで、俺は生き残ることができた。」

「双治さん……。」

「それだけじゃありませんよ。そもそもあなたが俺を拾ってくれなかったら、俺は消えている。俺は助けられたんです。命の恩人?恩…神?なんです。」

 

 

そう、まずもって俺は元の世界から消されていたはずの存在。

女神様が拾ってくれなかったら、今頃消えていたんだ。

 

 

「そんなあなたがくれたチャンス。この世界で一生懸命生きるということ。そこは俺、絶対に達成しますから。」

「……。」

「だから、負い目を感じないで、今まで通り俺たちのこと、じゃんじゃんアピールしてくださいよ。それが……地球のため?になるんですよね?よくわからないけど。前、利益とか収入とか言ってましたし。」

「……はい、それはもう。大変ありがたく。」

「なら、いいじゃないですか。間接的に、俺は地球に残した家族や友人の役に立つんだ。頑張る甲斐もあるってもんです。」

 

 

女神様が俺から手を離し、姿勢を正す。

 

 

「……双治さん。」

「はい。」

「やはりあなたは、大変素晴らしい人間です。感服いたしました。」

「いやいや。そんなこと。……あ!でも、ショウコとかハイビスさんとかドールとか、この世界の人間に危害が加わるようなことはやめてくださいね!?プライバシーの保護もお願いします!」

「はい、そこはもう、抜かりなく。」

「よろしくお願いします。」

「双治さん以外は保証いたします。」

「わかってない!!」

 

 

チクショウ。

いいよもう。俺の裸とか大事なところとか、晒されればいいんだ。

 

 

「既に双治さんの上半身裸体については、結構な人気です。」

「聞きたくないですよ!?」

「こちらは主婦層からのアンケート結果でして。」

「見たくねえよ!?」

「マショルクさんが負傷した双治さんに布をあてがうところ、たいへんな反響です。」

「一番見られたくないところ!!」

「乳首がピン―――」

「言わせねえよ!?」

 

 

何てこった。俺は知らぬ間に、神界の素敵なマダムの皆様方にネタを提供しているようだ。

 

……まぁいいや。

女神様とは、こうしてくだらない話題で盛り上がる方がいい。

これからもこのような関係を続けていけたらと思う。

 

 

ひと段落したら、女神様がお茶を啜った。

……啜れるんですね。よく外国の人は、啜ること自体が難しいとか聞くけど。

 

ふぅ、と息を吐いて、女神様が話を続ける。

 

 

「双治さんは、これからどうされるおつもりですか?」

「そうですね……。ひとまずは怪我を治して、特訓をします。」

「……。」

「倒しますよ。やつを。」

 

 

当座の目標は決まった。

ディノバルドを、この手で、自分自身の力で、倒したい。

 

 

「……こちらの神と通信した際、確認をしました。あのモンスターは、かなり強いです。」

「ええ、でしょうね……。」

「それでも、再戦を望んでいますか?」

「すぐってわけにはいかないんでしょうけど……。まぁ地道に努力していくつもりです。いつかは手が届くようになれればな、と。」

 

 

ふむ、と手を顎に当て、考え込む女神様。

仕草がいちいち美しい。

 

 

「……これは規約違反なのですが、一つ、私から助言いたします。」

「えっ。」

「顕現を許可した以上、ここの神もこれぐらいは許してくれるでしょう。」

「だ、大丈夫ですか?」

「文句は言えないと思います。私に何かあったら、神界中からブーイングの嵐でしょうし。」

「つ、強い。」

 

 

そんなんでいいのか、神達よ。

 

すると、神様はポケットからスマホを取り出した。

……普通に持っているんですね。もう何しても驚かないけど。

林檎派なんだな、女神様って。

 

慣れた手つきで操作をしている女神様。

何かを見つけたようで、顔を上げて俺に話しかけてきた。

 

 

「……ありました。……双治さん、一度セツヒトさんを訪ねてみて下さい。」

「セツヒトさんですか……?確かに、お礼には行くつもりですが。」

「いえ、そうではなく。セツヒトさんに、特訓をお願いするのです。」

「……はい!?」

「あの方、詳しくは申し上げられませんが、とんでもない方です。師事するのも一つの手かと。」

「……成程。」

 

 

その手があったか。

いやでも、セツヒトさん……そんなん許してくれるかなぁ。

 

 

「大丈夫でしょう。あの方は、双治さんのことを……き……から……。」

「女神様!?」

 

 

急に女神様の姿がブレだす。

テレビのノイズが入ったかのように、女神様の体が消えたり見えたり。

 

 

「女神様!?大丈夫ですか!?」

「言い過ぎ……ま……様で……。ご心配な……。」

 

 

 

バチン!!ババババ!!

ザーーー……

プツン……。

 

 

一瞬アナログ放送の砂嵐みたいになったと思ったら、女神様が目の前から消えてしまった。

かろうじて声は聞こえる。

 

 

(モードを声のみにしました。やられました。)

「女神様!?無理しないでくださいね!?」

(この状態なら大丈夫です。ですが、時間がありませんね。)

「じ、時間?」

 

 

この世界に干渉できる時間が決まっているということか?

 

 

(とりあえず、私からのお願いは、今後も気をつけてくださいと言うこと、それだけです。特に何かをして、バズらせて欲しいとか、そう言うことはありません。ご安心を。そして、セツヒトさんに会うのをお忘れなく。それでは。)

「女神様!?」

 

 

突如、別れの台詞を言って、いなくなる女神様。

……忙しないなぁ。

女神様、大丈夫なのだろうか。無理をしていなければいいが。

 

 

パサッ。

 

 

すると、ベッドの上に一枚の紙が降って来た。

くしゃくしゃのそれを広げる。

 

 

『追伸。お身体の方、回復能力を限界まで上げておきました。気休め程度ですが、お早い回復をお祈り申し上げます。かみ。』

 

 

……あの人、やっぱいい人だな。

 

 

夜も更け、虫の鳴く声が窓から聞こえてくる。

俺はその紙を丁寧に畳んで、ポーチに入れた。

 

まずは回復だ。できるだけ安静にして、完治しよう。

それからは特訓だ。

 

セツヒトさん……お願い、聞いてくれるかなぁ……。

 

 

少し不安になったが、俺は横になった。

 

光虫の明かりを消すと、泥のように眠るのだった。

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