モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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64退院手続きをしましょう。

朝が来た。

ていうかもう日が高い。寝過ぎて腰が痛い。

 

だがそれはいい。

安静にして回復をはかる。今俺ができることは、それしかないのだから。

 

だが。

 

なぜ。

 

 

「なぜこの2人はここにいるんだ……。」

 

 

俺の寝るベッドに上半身を預け、スヤスヤと眠る2人。

これがショウコとか、まぁドールとかなら、百歩譲って分かる。

ショウコが深夜、寝ぼけてベッドに潜り込んでくることも、宿では珍しくなかったし。

 

だがここにいるのは。

 

野郎2人である。

 

 

「教官と……なぜイシザキさんがここに……?」

 

 

例えば、自分が寝ていたとして。

枕元に、ちょっと気のある幼馴染の女の子が、ベッドに上半身を預け寝ていたとしたら?

それだけで、少し甘酸っぱい気分になるというもの。

 

そこに「ご、ごめんね。あまりに気持ちよく眠っていたものだから。〇〇君って、寝顔かわいいね。」なんて言われてみたら。

……素敵な話が綴れそうである。

 

では、ぐっすり眠った起き抜けに、筋骨隆々のおっさん2人が枕元に眠っていたら、どうだろう。

……大抵の人間は、大混乱であろう。

いい話を綴るどころではない。

下手したら110番へテレフォン、即、事案である。

 

 

スヤスヤと眠る教官。そしてムキムキのイシザキさん。

……イラッときた。

 

 

「……起きろおおおおお!!!!!」

「のわっ!!」

「……。」

 

 

ビクッと体を起こす教官とイシザキさん。

 

 

「おお!ソウジ君!起きたか!心配したぞ!」

「心配になるのはこっちですよ!?何でこんなところで寝ているんですか!?」

「いや何、昨日イシザキ亭で飲んでいたらな!イシザキ殿と意気投合したのだ!それから……。」

「……。」

「心配になって来てみたのかもしれん!」

「かもって何!?」

「記憶が飛んでいるな!!飲みすぎてしまったようだ!!」

「……何で飲みすぎてここにくる事になったのか、全くもってよくわかりません!」

「いや、私もわからん!!ハーハッハッハッハ!」

 

 

力が抜ける。

こっちは怪我人だと言うのに。

 

 

「えーと、イシザキさん……?なぜここに……?」

「……。」

「昨日飲みすぎて?」

「……。(コクン)」

「……ここに来てしまった?」

「……。(コクン)」

「……。」

「……。」

「何か喋れよ!!」

 

 

何!?何なのこの2人!?

俺を疲れさせにきたの!?

しかも何か酸っぱい匂いがする!!酔っ払い2人ぃ!!

 

甘酸っぱいとは程遠い状況に、怪我の治りが遅くなりそう!

 

 

コンコン。

ガチャッ。

 

 

「ソウジさーん。そろそろ起きて……何をしているんですかあなた達!?」

「おぉ!看護師の方ではないか!ちょうどいい、ソウジ君を診てやってくれ!いや、我が弟子ながら、この回復力、恐れ入る!」

「ま、マショルクさん!?いや、そうじゃなくてですね!ここは患者と関係者しか入れません!て言うかどうやって入ったんですか!?あぁ!ドアが壊れている!!」

「そう言えば壊してしまったかもしれんな!!いや、ソウジ君が心配でな!!」

「「……出て行って下さい!!!」」

 

 

そそくさと去る2人。

看護師さんとハモってしまった。

そしてついに一言も発さなかったな、イシザキさん。

 

 

「す、すみませんソウジさん。あの2人は一体……。」

「あ、知らない人達です。無視してください。」

「は、はぁ……。」

 

 

俺の素敵な目覚めをぶち壊した2人には、後退出願う。

 

朝から疲れた……。

 

 

* * * * * *

 

 

お医者さんに診てもらった。

何でも、驚異的な回復を見せているらしい。

 

よく見ると、包帯や薬布が新しいものに変わっている。

とても丁寧に巻かれていた。

お医者さんの話では、昨日看護師が変えた訳ではないという。

 

……教官か……。

 

 

「この薬……秘薬ですよ。一体誰がこんな高いものを……。」

「ハハハハハ、誰でしょうねー。」

 

 

教官はもしかして、本当に心配して来てくれたのか。

しかも新しい薬を使って包帯を変えてくれていた?

 

教官の優しさに、目頭が熱くなる……

 

……そんなワケないわ!!

て言うか何!?俺が寝ている間に服を脱がせてこの処置をしてくれたってこと!?

いや、ありがたいけど、キモいわ!!

 

 

「すごいですよ、この薬効……肋骨も、ほぼ問題なくなっております。」

「そ、そうですか……。」

「心配だった内臓の損傷も見当たりませんね。一日経ってから、症状が出始めるものですが……おお、腫れもひいている。……うん、退院でいいでしょう。1週間は様子を見て安静になさってください。1週間後、また来てくださいね。」

「ありがとうございます……。」

 

 

……しかも効果は覿面で、文句も言うに言えない!

 

あれかなぁ、昔話で小人に靴を作ってもらったおじいさんも、こんな気持ちだったのかな。

子どもながらに「でも、朝起きたら勝手に完璧な靴ができているって、ホラーだよね。」とか思っていたけど。

 

うん、あの頃の俺よ。お前は正しいぞ。

ちょっと怖いわこれ。

 

 

こうしてちょっとしたホラーを味わった俺は、完治とはいかないまでも、歩けるまでになった。

もう少し安静にして、しばらくは宿で過ごすことにするか。

 

……精神的ダメージと引き換えに、肉体的な回復を手に入れた気分……。

 

 

* * * * * *

 

 

医務室を後にした俺は、ポーチを腰につけ、ゆっくりと歩いた。

怪我した箇所が少し痛む。

まだまだハンター業は難しいだろうが、ちょっとした日常生活なら問題はなさそうだ。

もしかしたら、女神様から頂いた『回復力を上げる』効果も効いているのかもしれない。

 

ギルドにいる受付嬢に、退院の手続きなどをするように言われた俺は、受付台の前を彷徨う。

 

……退院手続きってどこぉ……?

 

上から吊るされた案内板にも、そんな文字は見当たらない。

どこか適当な受付に行けばいいのだろうか。

 

迷いに迷っていた、その時だった。

 

 

「ソウジさん!?」

「あ、ハイビスさん。」

 

 

ようやく知った顔を見つけ、ホッとする。

 

 

「ソウジさん!?もう出歩いて大丈夫なんですか!?」

「ええ、お医者さんからは退院で、しばらく安静に、と。ちょっとした日常生活なら、問題なさそうです。」

「あぁ、よかったぁ……。本当に。」

「ご心配おかけしました。」

 

 

ハイビスさんは、今日も今日とて受付嬢の制服を身につけている。

昨日女神様が、俺の周りには美人が多いとか何とか言っていたが、確かにな、と思う。

女神様は絶世の美女というレベルだったが、ハイビスさんも負けてはいない。

今日も、アップにまとめた金髪が美しい。ありがとうございます。

 

 

「……わ、私の顔に、何かついていますか?」

「あぁいえ、すみません。見つめてしまって。」

「い、いえ。……ソウジさん、もしかして退院の手続きですか?」

「あ、はい。そうなんです。どうすればいいですか?」

「いいですよ、私が案内します。こちらに。」

 

 

そう言ってハイビスさんが、端の方の受付に案内してくれた。

ゆっくり座る俺。まだ素早い動きは難しい。

 

 

「大丈夫ですか?」

「す、すみません。大丈夫です。」

 

 

ゆっくりとした動きの俺を心配するハイビスさん。

 

 

「少し待っていて下さいね。」

「はい。」

 

 

そう言ってハイビスさんは、ギルド内部に向かっていった。

何かを探している……。

あ、つまずいた……。

 

……キョロキョロしている。

 

……何も見ていない振りをしよう……。

 

 

「そ、ソウジ様?」

「は、はい!?」

 

 

顔を伏せていると、急に声をかけられた。

思わず顔を上げると、受付台の向こうにヒナタさんがいた。

 

 

「ソウジ様?もう大丈夫なのですか?」

「あぁ、ええ。先ほど、退院の許可をいただきまして。その手続き?をハイビスさんにやってもらっているところです。」

 

 

そう言ってヒナタさんがハイビスさんを見る。

すると、すぐに声をかけに行った。

 

そういえば昨夜、ヒナタさんが事務的な手続きをするとか何とか、言っていたな。

朝の衝撃で忘れていた。

 

2人がこちらに戻ってくる。

 

 

「ソウジさん、お待たせしました。」

「いえいえ、ありがとうございます。」

「ヒナタが書類を持っていたのね。探しても見つからないから、焦っちゃって。」

「すみません、ハイビス先輩。ソウジ様、ここをよく見て頂き、サインをお願いします。」

「はい。」

 

 

書類に目を通す。

かかった費用の内訳や、退院で間違いないか、費用はギルドが負担する、などの内容が書かれていた。

問題はないので、サインをする。

 

 

「お願いします。」

「はい、確かに。」

 

 

周囲から何か視線を感じる。

振り返ると、主に男たちの視線が、こちらに集中していた。

 

あー……この二人、人気あるもんなぁ。

……ちがいますよー?独占しているわけではないですよー?

 

 

「そうだ。ハイビスさん。」

「はい?」

「昨日は、ショウコのこと、ありがとうございました。」

「あぁ、いえ。気にしないでください。……ショウコちゃん、昨日のことが、とてもショックだったみたいです。ソウジさんが帰ってくるまで、自分のせいだってずっと言っていて……。」

「そう、ですか。」

 

 

昨日、ずっと謝っていたショウコ。

ハイビスさんに宿に送られてからも、落ち込んだままだったようだ。

 

……早く会って、ショウコと話し合おう。

 

 

「手続き、ありがとうございました。俺、宿に戻ります。」

「はい、分かりました。……ソウジさん。」

「はい?」

「ショウコちゃんのこと、よろしくお願いします。あの子の傷はとても深い……私達も心配してるんです。」

「……はい。」

 

 

二人を見る。

心底、心配している様子だった。

 

二人の向こうを見れば、ギルドの職員もちらほら、こちらを気にしている。

……ショウコのことが、気になるのだろう。

 

ショウコは、太陽みたいな子だ。

最近はギルドに来れば、注目の的。

明るいあの子の姿に、感化された人もいるんだと思う。

 

振り返ると、笑顔だったり申し訳無さそうな顔をしたりしながら、こちらを見つめるハンター達がいた。

 

……皆、この話、聞いてたの?

 

 

「……ショウコは、愛されてるんですね。」

「……当然です。」

 

 

ヒナタさんが口を開く。

 

 

「ショウコ様は、いつも一生懸命で……不名誉なあだ名なんて吹き飛ばしてやると、ソウジ様が居ないところで、常に仰っておりました。」

「……ショウコ……。」

「空元気だったのかもしれません。それでも、そんなショウコ様に元気づけられたハンターの方々は少なくないと思います。」

「……。」

「……ソウジ様。よろしくおねがいします。」

 

 

……ショウコは、本当に愛されているなぁ。

 

……うん。元気づける算段はついた。

 

 

「ありがとうございます。」

「はい。」

「……ちょっと不躾なんですが、一つお願いをしてもいいですか?」

「……はい?」

 

 

ショウコを元気づける。

あの、いつものショウコになってもらおう。

だがその為には、俺の気持ちだけじゃちょっと足りない気がする。

 

 

「ギルドの皆さんと……後ろにいるハンターの方々に、少しご協力をお願いしたい。」

「…………ソウジさん。何を考えてます?」

「いえいえ、ちょっとした資料の収集ですよ。」

「…………?」

 

 

ギルドの皆さんに聞こえるように、少し大きめの声で話しかける。

ちょっと恥ずかしいけど。

 

 

「み、みなさーん!少しばかり、ご協力をお願いします!!」

「そ、ソウジさん!?」

 

 

前世の新人研修で学んだ綺麗な礼をかまして。

呆れる面前に、笑顔でお願いを始めた。

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