「……じさん。双治さん。」
「ふあぁいっ!!」
頭の中に響く美しい声…女神さまからの声だ。
大きな声を出してしまった。
窓から見えるのは朝焼けの空。昨日泊まった部屋で間違いない。
昨日のようなウユニ塩湖パターンでは無いのか。
だんだんと目が覚めてきた。女神さまの声が続いて響く。
「……昨日ぶりです。お元気でしょうか。」
(元気です。まったく現状が掴めないままですが、とりあえず転生初日に宿に泊まることはできました。)
……とりあえず心の中で会話を試みる。
宿「ホエール」のおじいさんに、独り言の多い変な奴だと思われたくない。
「会話は問題ありませんね。実は、双治さんが心配で駆け付けました。初日にまさか命の危機に見舞われるとは。」
(女神さまに直接心配いただくほどではないですよ。)
「いえ、アフターサービスも兼ねておりますので。それに…。」
(……それに?)
気にかけていただけたなら、ありがたい限りだ。
というか、バサルモスと戦ったのは、神様からしても「まさかの事態」だったのか。
まあ死ぬかと思ったし。
「いえ、双治さんの転生の話が、神様SNSでたいへん話題になりまして。バサルモスからお逃げになる手腕、知識も何もない中でたいへん見事だった、と、この世界の神も言っておりました。」
(それは……女神さまのギフトのおかげといいますか、むしろそれが無ければ何もできなかったといいますか……。)
「神様SNSの方も、控えめに言ってバズりました。」
(……は?)
「というかデイリーランクで一位です。このままいけばウィークリーとマンスリーもランキング上位は堅いかと。」
もう何を言っているのかわからない……。どういうこと??
「ですので、簡単に言うと、双治さんは今、バズっていらっしゃいます。そもそもの存在自体が、少し珍しい方なので。」
(……私は、神様の方々からちょっと注目を浴びている。それで私のその後が気になった女神さまは、野次馬根性7割で私のことを見に来た。というわけでしょうか。)
「あいかわらず、察しがよくて助かります。あと野次馬根性、9割です。」
ほめてないぞ。皮肉だぞ。正直すぎるぞ、女神様。
でもまあ……神様世界でどんなに話題になろうと、俺自身には何の影響もなさそう。
「なので一つ、私から神託を授けます。」
(し、神託?)
「ぶっちゃけた話、お願い、というやつです。」
ぶっちゃけてきたなあ、この女神様。
まあいいです。
命の恩人である女神さまに何をお願いされようと、聞こうとは思っております。
(女神さまの言うことは正直断れませんしね。どのようなことでしょうか。めっちゃ怖いのですが。)
「そこまで構えずに。」
構えるっちゅーの。
とにかく、そのお願いとやらを聞いてみよう。
「実は、昨日のような戦いを、今後もコンスタントに行っていってほしいのです。」
(……はぁ?)
3秒ほどの沈黙の後、俺は結構失礼な返事を申し上げたのだった。