モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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75お世話になった人に、挨拶をしましょう。

頭の中の<マップ>を広げる。

縮尺を、うんと広くしてみる。

 

北西の方に位置を合わせると、高い山の向こうに、大きな町がある。

タオカカという町。

その少し北、山脈をなぞるように行くとあるのが、ミヨシ村。

 

マップ画面だと、雪深さとかそういう情報までは分からないが……ここからそこまで離れていないように見える。

 

 

「ソウジー?……だいじょぶ?」

「あっ、はい。すみません。少しギフトの<マップ>を見てました……。」

「おー、そっかそっか。村の位置とかわかるんだねー?」

 

 

いかんいかん。

俺の力は人に見せることはできない。

ギフトを見ている時、俺はまるでボーッとしているようになってしまう。

 

 

「……ギフトで確認しました。……思っていたよりは、結構近い位置にあるんですね。」

「そなのー?ガーグァ車で5日ってことしか分からないからねー。」

「……ここに、今から向かうんですか?」

「いやいやー。準備があるからねー。もしソウジがよかったら、だけどー?」

 

 

急な話ではある。

だがまぁ……断る理由も特に無い。

 

ただ、時間は少し欲しい。

 

 

「期間は……どれぐらい?」

「んー、季節を一巡り……。モンスター達が落ち着くまで……3ヶ月ぐらい?」

「なるほど……。セツヒトさんも来るということ……ですよね。お店は……?」

「んー。基本冬は暇になるしねー。だいじょーぶ。」

 

 

なるほど、本当に期間限定のクエスト……ではなく、訓練を行うっていうイメージだろう。

あとは、この街を出た事のない俺が、急に違う村なんかに行って大丈夫なのか、ということだが……。

 

 

「その村?に行く事自体は、俺は全く問題ないです。ただ……シガイアさん。俺って、ワサドラ以外で活動しても大丈夫なものでしょうか?」

「そうですねえ……身分証は、ハンターライセンスがありますからね。大陸を跨ぐわけでも、何か商売を行うわけでも無いですし……まず大丈夫でしょう。」

「そうですか。よかった……。」

 

 

シガイアさんに、一応確認してみる。

その他、通貨や言語なども、大陸の中では一貫しているようだ。

 

……というか、大陸の外にも世界があるのか。

 

…………。

 

<マップ>で確認しようとしたが、何度やっても大陸の外にはいけない。

仕様か?

 

まぁ、そこはいいや。

大事なのは、今から準備を進め、違う町まで行かなければならないということ。

 

そう、もう肚は決めた。

 

強くなりたい。

 

そこは、ブレたくない。

 

 

「……セツヒトさん。」

「……せっちゃん。」

「せっちゃんさん。俺、行きますよ。その村に。」

「……ん。ソウジなら、そう言うと思ってたよー。」

「はい。」

 

 

まぁ、また戻ってくるわけだし。

雪に覆われた場所というのも、ちょっと興味がある。

 

 

「では、その方向で話を進めましょうか。ソウジさん、くれぐれも、あなたの力については、内密にお願いしますね。」

「了解です。ここで外部に漏れたら、俺にとってもそちらにとっても、都合が悪そうです。」

「いやはや、おっしゃる通りで。……ソウジさん、ハンターおやめになったら、ギルドで働きません?」

「いやいや、まだ考えられませんよ。……最近カミングアウトしすぎなので、ちょっと自重しようと思っています。」

「ええ、慎重な方がいいです。……私の方でも、少し手は回しておきます。」

「……よろしくお願いします。」

 

 

手を回しておくって……嫌な予感しかしないが。

シガイアさんからは悪意は感じられないんだけど、気をつけないと、えらい目に合いそうな予感が拭えないんだよなー。

 

……まぁ、気にしても仕方のないことなので、スルーしておく。

 

 

「せっちゃんさん。」

「んー?」

「よろしくおねがいします。準備って、何かしておくことはありますか?」

「んー。そーだねー。」

 

 

そう言うと、セツヒトさんが急に近づき、俺のポーチを触ってくる。

 

 

「この中のソウジの装備をー、ちょっち借りてもいいかなー?」

「へ?いいですけど……。」

 

 

何か加工でもしてくれるのだろうか?

 

 

「店で渡してもらえたら……そーだねー、出発は3日後。それまでにー、寒冷地仕様に仕上げておくよー。」

「わ、分かりました。」

 

 

言われるがままに、装備を預けることになった。

 

 

「だから、しばしのお別れをしてきてー?ドールちゃんにー、ハイビスさん、ヒナタさん……ミヤコさんとホエールさん。他にはー……。」

「ショウコとオスズ……イシザキ亭のケイさんとか、ですかね。」

「む……ソウジの周り……女の子多いねー。」

「あ、あと教官もーーー」

「アイツはいい。」

「はい……。」

 

 

言われると思った。

 

だが確かに、言われてみれば、俺の親しい人と言えば、女性が圧倒的多数。

男性達のキャラが濃すぎて気づかなかった。

 

 

「……なーんかムカつくー……。」

「へ!?何でですか!?」

「なんでもー。……何だろー、腹立ってきたよー?」

「ええぇ……。そんなんどうしようもないですよ……。」

「……決めた。訓練に冬山雪中行軍も追加してやるー。」

 

 

なんだか物騒な訓練を取り入れられてしまった。

字面からして恐ろしい……。

 

来るべき恐ろしい訓練を想像して震えていると、神妙な面持ちをしたシガイアさんから声がかかった。

 

 

「ソウジさん。」

「な、何でしょうか、シガイアさん。」

「……暗い夜道にお気をつけください。」

「なぜ急に物騒な言葉を!?」

 

 

シガイアさんがよくわからないことを言って、この場は終いになった。

 

この二人のことは、とりあえずいいや。

まずはドールやショウコ達に、話をしなければならない。

 

どうやってし話をしようとか考えながら、セツヒトさんと俺は部屋を後にするのだった。

 

 

* * * * * *

 

 

「ただいまー、かえりましたー。」

 

 

すっかりセツヒト語がうつった俺は、宿に戻ってきた。

今日はクエストも訓練も無し。

 

3日後の出発に向けて、色々と準備をしなければならない。

 

 

「まずは……。」

 

 

宿の中を見回す。

この世界にやって来てから今日まで、この宿で寝泊まりしてきたわけで。

もはや俺にとっての家は、ここである。

 

ショウコはクエスト、ドールは買い物かな?

ホエールさんは……姿が見えないから、裏手だろうか。

 

 

「……誰から打ち明けたもんかなぁ。」

「何を?」

「のわぁ!」

 

 

ドールがいつの間にか、帰ってきていた。

いつものパーカーに、エプロン姿。買い物袋に大量の食材を抱えている。

 

 

「ご、ごめんね。びっくりした?」

「す、すまん。」

「ううん。こっちこそ。……ソウジさん。何か、打ち明けるの?」

「へ?」

「だって、さっき。」

「あ、あぁ。」

 

 

ドールが心配そうな目で俺を見てくる。

 

今まで散々心配かけてきたからなぁ。

今回もとんでもないことを言い出すのではと、不安になるのもしょうがないよな。

 

 

「ドール、俺が遠いところに行くなんて言ったら、驚くか?」

「え……。」

「あぁ、すまん。言い方が悪かった。実は冬の間、訓練を兼ねて北の方の村に行こうと思ってな。」

「あ、あぁ。何だ……。びっくりしたよ、もう。」

「すまん。どこかに消えてしまうわけではないから、安心してくれ。」

 

 

言い方が悪かったな。

まるで前の世界に戻ってしまうような、そんなニュアンスになってしまうところだった。

 

 

「うん、わかった。いってらっしゃい。気を付けて、行って来てね。」

「……お、おう。」

「……?どうしたの?」

「い、いやー、何と言いますか……。随分とあっさりとしているなあ、と。」

「え?あ、えーっとね……違うよ?」

 

 

何と何が違うのかよくわからん。

もうちょっと、引き留めるまではないものの、何かしら寂しがられるかと思っていた。

……恥ずかしくなってきたぞ。

 

 

「ち、違うのソウジさん!さ、さ、……寂しいんだよ?ソウジさんが遠くに行くなんて。」

「お、おお……。そうか……。」

 

 

何だろう、期待していた返事をもらったら。

それはそれで、余計に恥ずかしくなってくる。

 

 

「え、えーっとね。……ほら、私ずっと宿屋にいるから、ハンターさんが冬にどこか行ってしまうって、よくあることなんだ。」

「あぁ。そういえば、冬はクエストが少なくなるって……。」

 

 

シガイアさんが言っていた気がする。

 

 

「だから、ソウジさんが、一時的にどこかに行くのは……さ、寂しいんだけど、大丈夫だよ?」

「そうか。確かにハンターたちって、一か所に留まるとは限らないもんなぁ。」

「うん。移動するハンターさんって、結構いるよ。昔キャラバンでやってきたハンターさんたちもいたんだ。……ごはん、大変だったなぁ……。」

 

 

ドールさんが珍しく遠い目をしてらっしゃる。

辛い経験を思い出させてしまったようだ。

 

しかし、ドールも感情が豊かになったものである。

この前まで怒っていたと思ったら、今は普通に話しているし。

 

更に……。

 

 

「じゃ、じゃあさ、ソウジさん。行く前に……その。……ん。」

「……撫でるのでしょうか?」

「……ん。」

「は、はい。わかりました。」

 

 

俺が頭を撫でるとか、俺を起こしにくるとか、とにかくそういうことになると、やけに積極的になるのである。

感情表現や意思表示が、豊かになったなぁ、と思う。

 

そういえば頭なでなでは、最近とんとご無沙汰だったなぁ。

出発前に撫でておけ、ということだろうか。

 

……いつか俺はセクハラで捕まる気がする……。

 

ドールの栗色の髪の毛に、手のひらを乗せる。

 

 

ナデナデ。

 

 

「……。」

「んっ……。」

 

 

ナデナデ。

 

 

「……。」

「……ん……。」

 

 

気分は、お寺にある霊験あらたかな撫で地蔵をさする感覚。

無事に帰ってこられますように。無事に帰ってこられますように。

 

 

「……こ、こんなところか?」

「んっ……うん、ありがと。」

「いや、お礼なんて。」

「……何だか、お祈りされた気がする……。」

 

 

ドールさん、鋭い。

ドールは俺にとって勝利の女神である。

無事に帰って、「ただいま」という相手。

この宿で待つ、ドールに伝えるのだ。

 

この子を泣かせるようなことは、したくない。

 

 

「無事に帰ってこられますようにって、お願いしたんだ。」

「……私、お祈りの像なんかじゃないんだけど……。もう。」

 

 

少しむくれたドールに謝りつつ。

これからの遠征、気を付けていこうと、引き締まった俺だった。

 

 

* * * * * *

 

 

次にショウコ。

宿でクエスト帰りのショウコと合流し、俺が北の方で訓練を行う旨を伝えた。

 

返ってきた言葉は、これまた意外なものだった。

 

 

「ウチも行きたいところですけど、我慢します。……多分、セツヒトさんは、ご主人さま1人のレベルアップを想定しとると思います。」

「そうだよなぁ。」

「……ウチかて今、クエスト受けまくってます。実力つけて、少しでもご主人さまのリベンジの力になりたいんです。」

「……あぁ。」

「ちょっと寂しいですけど、行ってきてください、ご主人さま。……冬明け、帰って来たらまた、一緒にクエスト行きましょう!」

 

 

ショウコはいつになく明るく俺を送り出してくれた。

ショウコとともに冬山の特訓というのも考えていたのだが、おそらくセツヒトさんの意図はそこには無い気がする。

 

それに……何と言うか、言うのは少しばかり悔しいのだが……ショウコは最近楽しそうなのである。

恐らく今一緒にクエストをこなしている、ハンターとお友達のオトモアイルーのおかげなのだろう。

 

……なぜ俺は悔しがっているのか。

 

 

「ご主人さま……やっぱり、妬いてますよね?」

「やややや妬いてないわ!」

 

 

そしてそれを見透かされてショウコにいじられる始末である。

 

 

「もう……そんな顔、見せんと……本気にさせんでください……。」

「へ?本気?」

「……な、何でもないです!……とりあえず!ご主人さまはいろんな人に挨拶があるんですよね?はい、行ってきてください!」

 

 

なぜか顔を赤くしたショウコに、宿を追い出されてしまった。

……まぁいいか。次は誰に報告しようか……。

 

 

* * * * * *

 

 

夕方。

腹も減ったので、次に向かったのはイシザキ亭。

ケイさんにお兄さん、オスズにも挨拶ができて一石三鳥である。

 

……ところがここで予想外の事態が。

 

 

「おぉ!ソウジ君では無いか!すっかり怪我の様子はいいようだな!」

「え!?教官!?」

 

 

教官が酒をあおりながら、酒を呑んでいたのだ。

教官は俺を半ば強引に席まで引っ張り、その場で俺の快気祝い&壮行会が始まった。

 

……まぁいいか。

残り3日、やることといえば挨拶回りぐらいだし。もう夜だし。

 

 

久々に教官と飲み交わす。

ちょっとだけ雪山のモンスターの話を聞いたところ、ポポというモンスターの肉は絶品だから絶対に食べておけ、ということだった。

いや、そういうこと聞きたいんじゃ無いんだが。

 

本格的に酔っ払う前に、ケイさんとオスズにも挨拶しておく。

 

 

「はにゃ!?ショウコは一緒に行かないのかにゃ!?」

「は、はい、オスズさん。今日ショウコには話をしました。お互い冬の間レベルアップして、また冬が明けてから契約を結ぶ事にしました。」

「そ、そうですかにゃ……!ショウコ、大丈夫かにゃあ……。」

「そ、そんなに心配ですか?」

「……いや、ソウジ様も強くなるために行くんだにゃ。むしろ泣き言言ってたら、アチシが気合いを入れてやりますにゃ!」

「あ、ありがとうございます。」

 

 

よくわからんが、これでショウコが寂しくなると言うこともないだろう。

 

オスズさんは最近、この店でバイトとして、より精を出して働いているとのこと。

今日も大きめの白いエプロンが、金髪とそのちっこい体格によく似合っている。

……賄いと弁当でその給与がほぼ相殺されていることも含めて、恐ろしい人物である。

 

 

「ソウジさん……寂しくなるねえ!」

「ケイさん。」

 

 

今まで挨拶をしてきた中で一番寂しそうにしてくれたのは、意外にもケイさんだった。

 

 

「ホント、寂しくなるよ……ソウジさん、またいつでも店に来てね!これが今生の別れってわけでも無いんだしさ!」

「……ケイさん?」

「いやぁ……短い付き合いだったけど、たくさん世話になったからねぇ……。」

「あのー、ケイさん?」

「ほらこれ、持っていっておくれよ!ウチ特製のモグモガーリックソースの瓶詰め!ポポノタンにもきっと合うからさ!」

「ケイさん……。」

 

 

あかん。

ケイさん、多分、完全に俺が戻ってこない前提で話をしている。

うーん。

「遠方に行くことになりました。」なんて中途半端な言い方をしたのがいけなかったのか。

 

 

「ケイさん、違います。」

「え?な、何がだい!?このソースじゃお気に召さなかったのかい!?ソウジさん、大好物だったじゃないの!」

「いえ、そうではなく。俺、冬の間だけです。遠方に行くの。」

「……え!?」

「えぇ、ですからその……寂しがって下さるのはとても嬉しいのですが……多分100日位したら帰ってきます。」

「……えええ!?あらら、そうなの!?アタシてっきり住む場所を変えるもんだと思って……あぁ、よかったぁ……!」

 

 

一番寂しがってくれたケイさんも、ただの勘違いでした。

 

そこから、なぜかやけくそになったケイさんも加わり、大宴会が始まった。

教官が脱いで下ネタを吐き、ケイさんがぶっ倒れ、俺が説教し、オスズが宴会芸を披露して。

 

実に楽しい夜になった。

 

 

* * * * * *

 

 

深夜店を出ようとすると、イシザキさん(兄)に肩を叩かれた。

 

 

トントン。

 

 

「……。(スッ。)」

「……い、イシザキさん、これは……いにしえの秘薬!?まさか、これを俺に……?」

「……。(ニコッ)」

「……。」

「……。」

「なんか喋れよ!!」

 

 

ありがたくも、餞別を頂いた。大事に使わせていただこう。

 

……もちろん、ハンターの道具として、である。

アチラの方で使う予定はない……。

 

 

何とも人恋しい思いをしながら、宿に帰って行く俺であった。




あとがきに失礼します。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。

活動報告でもお伝えしましたが、書き溜めが切れましたので、明日から不定期更新となります。
なにせ遅筆なもので……。

エタらせはしません、ソウジの物語の完結に向けて、筆を取り続けます。
少しばかりお待ちいただけると幸いです。
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