モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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セツヒト視点です。
全3話になります。長い……。


81あるソロハンターの話①

「はっ……はっ……はっ……!!」

 

 

走る。

ここは勝手知ったる道。

山の中は散々駆け巡ってきたから、抜け道山道獣道、何でも行ける。

 

でも……でも……。

 

 

「何あれ……聞いてない………。」

 

 

ブーーーーー!!!

 

 

後ろから虫が来てる。

でも、ただの虫じゃない。

とんでもなくでかい虫が、すごい羽音で私を追いかけ回してくる。

 

 

「うう……怖い……!」

 

 

村の人からは、感情のない子だって言われるけど。

そんなことはない。

私だって、嬉しかったら笑うし、怖かったら泣く。

皆みたいに、たくさんたくさん表情は作れないけど。

 

 

「うっ……ううっ……。」

 

 

ブーーーーーー!!

 

 

羽音が近くなってきた。

近くにいるんだ。

 

こわい……こわい……。

 

 

「誰か……誰かぁ!」

 

 

自分史上、一番の大声で叫ぶ。

でも、誰も来るはずない。

 

だってここは山の中。

絶対に一人では行くなと言われた、山。

 

アヤの村は、人が少ない。

お医者さんもいない。

おじいちゃんの薬草を探していたら……なんでこんな目に……。

 

 

「……うあっ!!」

 

 

コケる。

痛い。怖い。

 

 

「ううっ……!」

 

 

ブーーーーン!!

 

 

虫が、目の前に迫る。

もうダメだ。私はここで、このおっきな虫に、殺されるんだ。

 

 

「…………!!」

 

 

目を瞑る。

 

 

「…………フン!」

 

 

バゴォーン!!!!!!

 

 

「ピギュッ!」

 

 

ブチョッ。

 

 

…………?

 

静かになった。

 

 

「……嬢ちゃん……ここに入るなって、村で教わらなかったか?」

「なぁに!仕方あるまい!子どもとは行くなと言われたら行くものだからな!」

「そりゃおめえだけだろ!ったく……ほら、嬢ちゃん。立てるか。」

「…………は、はい……。」

 

 

あれ?

虫は?

 

…………アレかな……立派な角がひしゃげて、緑色の液体があたりに散らばっている。

 

 

「ハッハッハッ!お嬢さん!救われたな!コイツのハンマーの一撃は、マカライト鉱石をも砕く!」

「何でおめぇが自慢気なんだよ……。まぁ、嬢ちゃん。こいつがありえねぇ視力で、嬢ちゃんとこのモンスターを見つけたんだ。礼なら、こいつにも頼むわ。」

「あ、あ、あぁぁぁ…………。」

 

 

助かった。

助かったんだ。

何だか頭がツルツルのおじさんと、ツンツン頭のお兄さんに。

助けられた。

 

どっと、力が抜ける。

 

 

「う……うわぁぁぁぁぁあん!!」

「お、おいおい!泣き出しちまったぞ!!」

「案ずることはない!お嬢さん!君はアヤ村の子だろう?私達が連れていってやろう!」

 

 

ヒョイッ

 

 

軽々と抱えられて。

私は。

 

 

「うっ……うわぁぁぁぁぁあん!!!」

 

 

これまた自分史上最高に、泣き出してしまった。

 

 

「余計泣いてんじゃねえか!このバカマショルク!」

「何!?ハスガ!私は間違えてしまったのか!?」

「あーもぅ……俺たちはこれだから……こんなことならムルトとウミを連れてくるんだった……。じょ、嬢ちゃん。俺ら悪い奴らじゃねえからな!すぐ!今すぐ!村に連れて行くからよ!だから……!」

「うっ……うっ……うえぇぇぇえん……!」

「泣き止んでくれよ……。」

 

 

おっきな虫、アルセルタスに襲われて。

 

二人のハンターに助けられた。

 

これが、私と彼等との、出会い。

 

 

* * * * * *

 

 

「本当に……なんとお礼を言えばいいものか……ほらっ!アンタもいつまでも泣いてないで!頭を下げる!セツヒト!」

「うっ……うっ……ありがとう……ございましたぁ……。」

「気にしないでほしい!母君!あなたの娘さんは大変素晴らしい脚をお持ちだ!あのアルセルタスから逃げる速さ!ハンター向きと言わざるを得ない!!」

「あ、脚ですか……?ま、まぁこの子は運動に関しちゃピカイチなんですがねぇ……。」

「…………。」

 

 

村に帰ると、待っていたのは、母のお説教だった。

 

とても厳しい母。

私が死ぬところだったっていうのに、叱りつけてくる。

おかげで助けてくれたツルツル頭のおじさん……ハスガさんも、ツンツン頭のお兄さん……マショルクさんも、引いていた。

 

その日は、礼を言ってから、家に返された。

 

そしたら家に入った瞬間、母に抱きしめられた。

 

 

「このっ……大バカセツヒト!……心配させるんじゃないよ……!!」

「おかーさん……ご、ごめんなさい……うぅ……。」

 

 

母は、いつまでも、優しく頭を撫でてくれた。

急いで帰ってきた父も、抱きしめてくれた。

祖父は、泣きながら私の無事を喜んでいた。

 

この日から私は、色々考えを改めた。

 

私は、別に無表情でも無感情でもない。

たくさん笑って、たくさん泣ける。

母も父も祖父も、たくさんたくさん、私を愛してくれている。

私が分かっていなかっただけ。

 

色んなことが、いいことになって。

 

それは、私の心次第だったんだって。

それがわかって、よかったなって、思えた。

 

 

* * * * * *

 

 

銀髪は、母譲り。

そして山の走りを教えてくれたのは、父。

山菜とか山の幸とか、色んなアイテムのことは、祖父が教えてくれた。

 

毎日の薪割りも、水運びも、競争して他の子に負けたことなんてなかった。

 

自分でも、なかなかやるなって、思っている。

 

 

「……こんにちは……。」

「おや、セツヒト。いらっしゃい。」

「こ、こんにちは、ムルトさん、……ウミさん。」

「キャー!!セツヒトちゃん!!いらっしゃーい!!何々ー?おねーさんたちに会いに来てくれたのー!?」

「は、はい。遊びに来ました。」

「いやーん!うれしーーー!」

 

 

ウミさんに、ギュッと抱きしめられる。

 

 

「ウミ……それはやりすぎだよ。」

「えーだってだってー。セツヒトちゃん、めっちゃ可愛いんだもん!」

「はぁ……セツヒト、許してやって欲しい。ウミも悪気はないから。」

「は、はい。私も。嬉しいです。」

「やーーん!も、かわいいーー!」

 

 

眠たそうな目で、マイペースな男性がムルトさん。

やたらハイテンションで、私のことを可愛がってくれる女性が、ウミさん。

 

この所、彼らに会いに行くのが、日課になっている。

彼らとは、このアヤ村にやってきたハンターさんたちのこと。

 

リーダーで、ツルツル頭のハンマー使い、ハスガさん。とにかく、パワーがすごい。 

ツンツンのマショルクさんは射撃が得意。この人が的を外すを見たことがない。

のほほんとしたムルトさんは、戦いになると豹変する。近接の武器が得意で、縦横無尽に狩り場を斬り回る。

唯一の女性、ウミさんはとっても器用。感覚も鋭くて、索敵にサポートに、時には猟虫や笛を持ち出して、味方を援護する。

 

彼等は自分たちを、一つのチームだと言っていた。

名前は「カホ・チータ」。

 

隣のミヨシ村との間にある山にやって来る、たくさんのモンスターを狩りに来ているようだった。

このアヤ村を拠点にして。

滞在期間は、本人たちもわからないらしい。

数年になるとか言っていたけど。

 

ちなみに、ムルトさんとウミさんは、恋人同士らしかった。

いつも二人、一緒にいるので、怪しいなぁって思っていたけど案の定だった。

 

私は、そんな彼等の訓練の様子を見るのが好きだった。

 

 

「どうだ!試しにお嬢さんも、武器を持ってみないか!?」

「……え?」

「えー!?マショルクー!セツヒトちゃんにそんなこと教えないでよー!」

 

 

ある日、いつものように訓練を見ていたら、マショルクさんから誘われた。

武器を使ってみないかと。

 

 

「いや!私の勘では、彼女は筋がいい!気がする!」

「本当に勘なのね……。セツヒトちゃん、ちょっとやってみる?」

「……じゃ、じゃあ……。」

 

 

おっかなびっくり、片手剣を手にしてみる。

とりあえず、見様見真似で、ムルトさんの動きをやってみた。

 

 

「「!!??」」

 

 

確か、こんな感じ。

力は極力抜いて。

体重を使って、回転、勢い、振り抜く、続けて。

 

見てきたことを真似して、目標の木の木製のモンスターの模型を斬りつけてみた。

 

 

バキィ!

 

 

……壊れてしまった。

 

 

「…………ま、マショルク……私、驚いた…………。」

「あ、ああ!これは、彼女は、化けるぞ……!」

「…………?」

 

 

真似をしてみただけなんだけど。

二人はとても驚いていた。

 

 

「お嬢さん!どうだろう!私達と一緒に訓練してみないか!?」

「…………いいけど…………セツヒト。」

「ん?」

「私の名前、セツヒト。」

「…………はははははは!!す、すまんな!……改めて、セツヒト!よろしくな!」

「うん。」

 

 

一緒に、武器を振るうのを見てもらうことになった。

 

ウミさんもニコニコしていて。

マショルクにもようやく名前で呼んでもらえて。

 

私も嬉しかった。

 

 

* * * * * *

 

 

いつも見てもらえたわけじゃないけど、カホ・チータの皆は、暇があれば私に色々教えてくれた。

 

ムルトさんは、剣術を。マショルクさんは、射撃を。

ウミさんは、私と一緒に狩り場に行っては、採集や採掘、その他ハンターに必要な色んな事を教えてくれた。

 

唯一ハスガさんだけは、

 

 

「俺のやってる事って、ハンマーぶん回してるだけだからなぁ……。」

 

 

と、あまり教えてくれなかった。

 

「すまんな、セツヒト。」なんて言っていたけど、ハスガさんはこのチームのまとめ役。

何よりその頼れるパワーで、どんな敵も粉砕してきたらしい。

私はコッソリハスガさんの筋トレの仕方を盗んで、毎日トレーニングに励んだ。

 

どうやら私は、呑み込みがいいらしい。

教えてもらったことは、簡単にできた。

でも私は満足しなかった。

 

あの人たちに届くには、まだまだ技術が必要。

毎日毎日、反復練習をした。

 

 

ある日、

 

「……セツヒト、あなた、ハンターになるつもり?」

「え!?」

「最近よく鍛えてるし、よくわからない武器をたくさん使っているみたいだし……。それに、楽しそうだしね。」

 

 

母に指摘されて、初めて気がついた。

 

私は、ハンターになりたいんだと。

あの時、私を助けてくれたあのハンターのように、なりたいのだ、と。

 

 

「……おかーさん。」

「……止めやしないさ。あんなに引っ込み思案だった子が、『カホ・チータ』の方々が来てからとっても楽しそうでさ。……難しいねぇ、お母さんとしては、危ない事はして欲しくはないんだけどね……。」

「…………。」

「あなたも、そろそろ独り立ちの時かね。」

「………うん。」

 

 

ハンターになりたい。

できるなら、カホ・チータのみんなと一緒に。

 

あの頃は本気で、そう思っていた。

 

 

* * * * * *

 

 

数年が経ち。

カホ・チータの皆は、村を離れることになった。

 

盛大な宴会が開かれた。

周辺の村々を、大型モンスターの脅威から、何度も何度も救って。

今やこの辺でカホ・チータの名前を知らぬ者はいない。

首都から、お呼びがかかったらしい。

 

そんなことを、ウミさんが教えてくれた。

 

 

四人が仲良くお酒を酌み交わす中に、私は飛び込んだ。

 

 

「あら!セツヒトちゃん……本当に……お世話になったね!ありがとう。」

「本当に。……セツヒトと離れるのは、寂しいよ。」

 

 

ウミさんとムルトさんが、別れの挨拶をしてくれる。

 

 

「セツヒトくん!君は素質がある。個人的には、立派なハンターになって、ここを守ってほしいと感じている!」

「バカマショルク、そんなのセツヒトが決めることだろーが!勝手にオメェが決めるんじゃねぇ!……セツヒト、世話になったな。なんつーか、その……なぁ。」

 

 

ツルツル頭まで真っ赤にしているハスガさん。

いつもの調子のマショルクさん。

 

 

「……ありがとよ。カホ・チータを代表して、礼を言う。この数年、お前と過ごす時間は、皆楽しかったと思うぞ。……元気でやれよ!」

 

 

四人はこれから、より難易度の高いクエストを受けていくという。

だから、無理かもしれないけど。

言いたかった。

 

 

「みんな……みんなと、私、一緒に行きたい。一緒に、ハンターになって、活躍したい。」

「セツヒトちゃん……。」

「……。」

 

 

ウミさんが泣いていた。

マショルクさんは無言のまま、立ち上がる。

 

 

「……セツヒト。」

「……はい。」

「……君は、ハンターになって、どうしたいんだ?」

「えっ……。」

 

 

言葉に詰まった。

 

 

「……君は、君の素質は大変素晴らしい。我々も負けるつもりはないが、いつか同じステージに登れるだろう。」

「……。」

「だが!ハンターになってどうする?……常に命を賭け、他の命を奪い、生きていくのが我々だ。……ただの憧れでは無いのか?漠然とただ、今の状況を脱したく、ハンターになりたいだけではないのか?」

「ちょっと!マショルク!」

 

 

ウミさんがマショルクさんを止める。

 

 

「何も別れの席で、そんなこと言うものじゃないわよ!」

「……今だから言うのだ!セツヒトくんは真剣だ!真剣に、我々と共に来たいと言っている!だからこそ!我々がどんなに汚い仕事をしているか!数々の命と責任を背負って生きているか!伝えなければならない!」

「…………マショルク。」

 

 

ムルトさんが割って入ってきた。

 

 

「……その辺にしておくんだ。……セツヒト、悪いが、僕も同意見だ。それに君は、まだ若い。若すぎる。……落ち着いて、ハンターになりたいのはなぜか、考えてみるといい。」

「……ムルトさん。」

「すまない。こんなことしか言えなくて。」

「…………いえ、いいんです。正直、分かってましたから。」

 

 

無理やり笑顔を作って、言葉を紡ぐ。

 

 

「皆さんと居ると、どんどん強くなる自分が嬉しくて……憧れとか、そういう感情ばっかりで、ハンターになりたいって、思ってました。マショルクさんの言う通りです。」

 

 

分かっていた。

私は、カホ・チータにはなれないって。

でも、伝えたかった。

あなた達のようになりたい、あなた達と共に行きたいという、思いだけは。

 

 

「……俺は連れて行ってもいいと思うがな。」

 

 

ハスガさんが、野太い声で話し出す。

 

 

「なぁに、小難しく考えることじゃねぇ。嬢ちゃんは強くなる。間違いねぇ。それによ……楽しかったじゃねえか。親もいねぇ、頼れる人も家もねぇ。そんなオレたちを、この村は、セツヒトは、本当に暖かく迎えてくれた。」

「…………。」

「だからよ、連れて行って、また楽しくやれたらな、ってよ。思っちまったよ……。いけねぇ、リーダー失格だ。」

 

 

ハスガさんが立ち上がる。

私の倍はあろう体格に見下ろされる。

でも、怖くない。今は全く。

初め見たときは怖くて仕方なかったけど。

 

とても優しい目をしていた。

 

ハスガさんは、膝を曲げた。

私と同じ目線。

 

 

「嬢ちゃん……いや、セツヒト。世話になった。言ってることコロコロ変わってわりいな。やっぱり連れて行くのは無理だ。俺たちはこれから、命を賭して、戦いに行く。」

「…………。」

「おめえにゃ、家族がいるよ。優しい村の人もな。……どうか強くなって、守ってやってほしい。おめぇなら、できるさ。」

「…………はい。」

 

 

こうして、カホ・チータは首都へ行った。

 

 

翌日の見送りの際、髪の毛がよく生えるという薬草を煎じたものを、ハスガさんにプレゼントした。

何とも言えない微妙な顔をするハスガさん、周りの三人は爆笑していた。

 

明るい別れになった。

 

 

「わたしも、強くならないと。……なるんだ、みんなを守る、ハンターに。」

 

 

私の、一人の修行の日々が、ここから始まった。

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