モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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セツヒトの視点です。
前回の続きからになっています。ようやく終わり。
ほんの少しグロ描写あります。苦手な方、すみません。


83あるソロハンターの話③

ドガァァァァァァァン………。

 

 

聞いたこともないような大きな音だった。

夜半過ぎ、前線で見張っていたはずの獄狼竜が消えた。

 

 

「大型は、とてつもない跳躍や地面を掘るなどして、大移動をすることがある!」

 

 

マショルクから教わったことだろうか。

もう覚えていない。

 

とにかく、私の視認できる中に、獄狼竜はおらず。

背後の村から、轟音が響いたのだった。

 

 

「チィッ!」

 

 

バシュバシュッ!

 

 

赤い信号弾を放つ。

2回続けるのは、「最悪」の知らせ。

 

獄狼竜が村を襲った。

 

 

まずい。

 

まずいまずいまずい。

 

 

「落ち着けー……落ち着け私ー……。」

 

 

山を下る。

木々の間から、ミヨシの集落が見える。

 

獄狼竜が集落を襲っている。

 

 

「とどけぇぇぇぇぇ!!」

 

 

ヘビィボウガンを取り出す。

走りながら、届くかどうかギリギリの射程。

集中する。

 

 

ズガガガガガガガガ!!!!

ビシビシビシィ!!!

 

 

「ガァァァァァァ!!」

 

 

着弾、確認。

続いて……

 

ヘビィボウガンをその場に投げ捨て、大剣に持ち変える。

 

タイミングを合わせて……3……2……1……!!

 

ザン!!!

 

 

「グァア!」

 

 

タイミングバッチリ……うわー……効いてなさそー……。

 

 

前線に持ってきた武器は3つ。

ヘビィボウガン、大剣、双剣。

流石の私も、これ以上は重くて無理。

 

勘で持ってきた武器だけど。

 

やっぱこいつかなー。

 

 

ジャキン!

 

 

双剣を手にして、ジンオウガ亜種……獄狼竜と対峙する。

 

 

「あんたに遠距離勝負とかー、ちまい事やっても、絶対いつまでも勝てないっしょー。」

「……グルルルルルル……」

「全力でいかせて―――」

「……ウォォォォォォォォォオオオン!」

 

 

すでに体が温まっていたのか。

それとも私を前にして本気を出すことにしたのか。

 

今でもわからないけど。

 

獄狼竜が放電状態に入った。

 

 

「……クソっ。」

 

 

放電状態。

ある意味チャンスタイム。

 

無防備になる時間帯とも言えるが、完全な放電を行えば。

大量の雷光虫が寄り、手がつけられない状態になる。

 

止めなければ。

 

こんな村のど真ん中で、あの状態になられたら、周囲の被害は免れない。

一瞬で思考を終える。

 

突っ込む。

全力の全力を、ご自慢の角に、叩き込んでいく。

 

 

「うらうらうらうらあぁぁぁぁぁあ!!」

「ウォォォォォォォォォオオオン!!」

 

 

意に介さない獄狼竜。

 

くそっ!間に合わないっ……!

 

ジンオウガとは違う、赤くて黒い、不気味な光。

これは雷光虫などではない。明らかに異質な色。

 

 

「……離脱っ!」

 

 

放電待機の間に怯ませることは、かなわず。

 

獄狼竜は―――

 

 

「ウォォォォォォォォォオオオン!!!!!」

 

 

凄まじい雄叫びの後、周囲を焦がす大放電を行った。

 

 

バチッ!バチバチッ!

ドゴォン!!

 

 

ドオオォォォォォン…………!

 

 

ふっ飛ばされて、転げる私。

目一杯踏ん張って顔を上げた直後。

 

ヤツの周りには、瓦礫と化した家屋が広がっていた。

 

 

「うそ……でしょ……。」

 

 

ジンオウガは、放電待機の状態、つまりタコ殴りにできる時間がある。

しかし。それを過ぎれば、パワーアップした状態に変化する。

その変わる瞬間の放電は、たしかに凄まじいものだが。

 

獄狼竜の大放電は、ケタが違っていた。

放電などではない、異質な力の解放。

 

 

「威力が、強すぎる……」

 

 

その後は、ひどいものだった。

 

獄狼竜の力は、それはもう全く別の次元になっていて。

 

ミヨシの村の人達が一生懸命作り上げた集落が、その努力が崩れ去るのに、さほど時間はかからなかった。

 

攻撃を避けようにも遮蔽物が多すぎる。

それは獄狼竜にとっても同じようで。

 

目に入る全ての邪魔な家屋など、獄狼竜の脚の一振りで全て全壊した。

私を狙うのではなく、まずは狩場を整える。

さも当然のように、村を破壊し尽くす獄狼竜。

反撃を試みるも、意に介さず、すべてを蹂躙していく。

 

数分ほどすれば。

 

 

「…………アォォォォォン!!!」

 

 

村は、その村としての体を、失っていた。

 

 

「ふぅー……ふぅー……。」

 

 

誘いにもおびき出しにも乗ってこない。

焦る私の気持ちを、逆に誘い出すように。

 

ヤツは全てを壊し、雄叫びを上げいた。

 

 

「…………グルルルルル…………。」

「くそっ…………くそっ!」

 

 

泣きたいと思う気持ちはいつぶりだろう。

おそらく、倒壊した建物の中には避難しなかった住民が多数いたはず。

竜災害において、住民が被害を受ける際、直接このモンスターに攻撃を食らって亡くなることは、実はあまりない。

モンスターのとんでもない力で、家屋が倒壊されたり山を崩されたり水害が起きたり……そしてそれに巻き込まれるパターンが多い。

 

 

亡くなった人が見える。

ウソみたいに動かなくなったその人たち。

 

頭が潰れたり、あらぬ方向に手足が曲がっていたり。

見知った顔も居た。

服でしか判断できないような状態だが。

 

 

「ふぅーーーー…………。」

 

 

今すべきは何か。

……ひとまず、安全な場所への誘い出し。

 

私しかいない。

これ以上、被害を出すわけには―――

 

 

グッ。

 

 

獄狼竜が構えた。

背筋が凍る。

 

攻撃を行う前のモーション。

普通の狩り場なら、避ければいい。

だが。

ここは村の中。

 

避けないと、タダでは済まない。

たが、避ければ村にさらなる被害が。

でも、避けないと。

けど避けたら村が。

でも―――

 

 

「……ガァァ!」

 

 

クルンと回った獄狼竜は、その勢いのまま、右脚を振り下ろす。

私の取った選択は……回避。

凄まじい速度で連続して振り下ろし。

これも回避。

 

潰される家屋。

蹂躙されるミヨシの人たち。

 

構うことなどできなかった。

おびき出すなど、不可能。

 

そして獄狼竜は、さらに。

 

()()()()()()突進してきた。

 

いや、突進、では無い。

ボウガンで撃たれた弾のように、私めがけて突っ込んできた。

 

 

「ふんっ!!!」

 

 

私も体を思い切り回転させる。

卓越した双剣使いにだけ許された、ジャスト回避&斬り返し。

タイミングは合っていた。

 

なのに。

 

 

「ぐぁぁっ!!」

 

 

私はふっ飛ばされた。

 

 

「ぐっ!…………あぁっ!!」

 

 

痛い。久しぶりの、痛み。

 

避けるか否かの判断が遅れた。

ジャスト回避はうまくいったと思ったのに。

精度が甘かった。

 

……すぐに立ち上がる。

 

 

「うぁっ…………!」

 

 

右腕の腱が、やられた。

 

全身の裂傷と、上がらない腕。

骨も……いってるな、これ。

 

 

「……グルルルルル……」

 

 

獄狼竜が、唸る。

 

 

勝ち誇った顔を、するんじゃない。

私はまだ、負けていない。

 

 

「…………舐めんなぁぁぁぁぁあ!!」

 

 

脱力。

力が抜けてドロドロになった体を、倒れ込むようにして、加速。

一瞬で獄狼竜と間合いをつめる。

 

 

「鬼神化……!」

 

 

狙うは、ヤツの頭部。

油断しているヤツの、ご自慢の角。

 

 

「おらぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

 

ザン!ザシュ!!ズザン!!!

ヒュバッ……ズザン!!!!

 

 

バキン!!

 

 

「グォォォォォ!!」

「どうだコラァ!!」

 

 

折ってやった。

 

倒れ込む獄狼竜。

チャンス。

 

 

「オラオラオラオラオラオラ!!!!!」

「グァッ!ガッ……!ガァァ!!」

 

 

ありったけを、叩き込んだ。

今殺してやる。

今、ここで、お前を絶対に、殺す。

 

よくも……よくも村の人達を……!!

 

 

「ぅらぁっ!!」

「ギャゥン!!」

 

 

自分でも体がどう動いているのか、分からない。

 

だが、死んでもいい。

 

こいつを、こいつだけは、必ず!必ず!!

 

 

ザン!!

 

 

「ガァァァ!」

 

 

忌々しそうにこちらを見つめる獄狼竜。

 

くそっ……倒しきれなかった……!!

 

 

「グルルルルル……。」

 

 

起き上がった獄狼竜は、こちらを睨みつけ。

 

 

クルッ。

 

 

ダダッ。

 

 

ドスンドスンドスンドスン…………。

 

 

山の向こうに消えていった。

 

 

「待て―――」

 

 

私は、追いかけることもできずに。

 

 

ドサっ………。

 

 

その場に倒れ込んでしまった。

 

 

* * * * * *

 

 

「…………!?」

 

 

パチッ。

 

 

目を覚ます。

 

意識が戻った。

知らない場所で寝ていた。

 

 

「…………ッ!」

 

 

体を起こそうとするも、できない。

 

 

「いたい…………。」

 

 

包帯が巻かれた、全身。

腕も脚も、固定されていた。

動かそうとすると、強烈な痛みが走る。

 

 

「ご、獄狼竜は……。」

 

 

声を絞り出す。

 

 

ガチャッ!

 

 

「セツヒト!!」

「あ……シガイアさん……。」

「…………良かった…………あぁ、良かった…………。」

「…………シガイアさん……今、獄狼竜は…………。」

「……あぁ、無理に話すな。ヤツは、去った。」

 

 

去った……?

いなくなったってこと……?

 

 

「覚えていないか……観測班からの報告でしかないが……対象は遠く山を離れ、北東の霊峰近くまで逃げたと。そう、報告があった。」

「…………そう、ですか……。」

「あぁ……それが、二日前の報告だ……当面の危機は去ったと言っていい。」

「…………はい。」

 

 

シガイアさんが色々教えてくれた。

 

あの後、応援に駆けつけたタオカカのハンターたちが見たのは、崩壊したミヨシ村と、その震源地らしきところに寝転ぶ私。

息をしていなかったらしい。

すぐに住民の救助が始まり、私はタオカカの医務室まで運ばれた。

息を吹き返し尚、危険な状態だったとか。

 

 

「ミヨシは……ミヨシは……?」

「…………落ち着いて聞け、セツヒト。」

「…………。」

「…………村は全壊。避難拒否の村民35人の内、当時屋内に身を潜めていた25人が被害……死者、16名。生存者のうち3名は重体、意識は戻っていない。」

「…………。」

「…………アヤ村にも被害が出ている。」

「えっ!?」

 

 

思わず首を起こす。

ビキッと全身が痛んだ。

 

 

「…………!!」

「動くな!お前も、何故生きているかわからないと言われたんだぞ……!」

「…………はい…………。」

「…………続けるぞ。」

 

 

放電を撒き散らしながら、ミヨシを去った獄狼竜は、まるでその憂さを晴らすかのようにアヤ村を襲撃。

 

一瞬の出来事に、避難拒否の住民もなすすべなく、被害を受けた。

 

 

「…………アヤは……アヤの村は…………?」

「…………全壊は免れたようだ。……セツヒト、お前の家族はもちろん無事だ。安心しろ。」

「…………そんなこと……言ったって…………!」

 

 

少し安心してしまった自分が、憎い。

私の家族は全員避難していたから、そりゃ無事だろうけど…………。

 

……私の村まで……。

 

 

「…………被害を受けたのは7名、死亡者2名だ。一瞬で立ち去ったらしく、ミヨシほどの被害は出ていない。」

「…………2名は…………。」

「あぁ…………死んだ。獄狼竜の手によってな。」

「…………。」

「勇敢なハンターの二人だ。下位とはいえ、村民が山に逃げるまで、体を張って時間を稼いだそうだ。」

「…………そう、ですか…………。」

 

 

ハンターの仕事。

村を、みんなを、守る。

 

その人たちは命を使って、仕事をやってのけた。

 

私は……私は………。

 

 

「あっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「…………。」

 

 

動かない体。

唯一使える、声を振り絞り。

 

 

「あぁぁぁぁぁぁ……………。」

「…………。」

 

 

私は、悔しさをぶつけた。

私自身に。

 

 

「…………セツヒト、お前は守った。」

「…………。」

「お前がいなければ、これ以上の被害が出ていた……間違いなく、な。ここに強者がいるとわかれば、モンスターもおいそれと手出しはすまい。モンスターたちのスタンピードも、パタリとなくなったしな……。だから……ギルドマスターとして、礼を言う。…………ありがとう。」

「…………。」

「…………かなりの大怪我だ。一度、しっかりと体を見てもらえ…………私は仕事に戻る。」

 

 

ザッザッザッ……。

 

 

バタン。

 

 

 

 

シガイアさんがいなくなってから。

 

私は、泣いた。

 

 

* * * * * *

 

 

涙も出なくなった頃、病室に色んな人が訪れた。

アヤやミヨシの人たちが、たくさんたくさん、礼を言ってくれた。

ろくな返事もできないまま、私は頷くだけ。

 

母と父も来た。

よくやったねと、労ってくれた。

 

よくやった?

誰が?

私が?

 

沢山の人を、村を、守れなかった私が……?

 

みんなが立ち去った後、私はまた、自分に怒りをぶつけ続けた。

 

 

次の日。

来客がようやく落ち着いた頃。

 

 

コンコン。

 

 

ガチャッ。

 

 

「……セツヒト、元気か?」

「……え……?」

 

 

意外な人間がやってきた。

 

 

「……久しぶりだな……生きていて、良かった。」

「……マショルク?……なんで……?」

 

 

……今頃……?

 

 

「首都の防衛もそこそこに、すっ飛んできた。……間に合わなかったようだがな。」

「…………カホ・チータの、みんなは……?」

「いない。私一人だ。」

「…………そう。」

 

 

何故、今頃?

首都の防衛が済んで来たって。

 

 

「……首都は何とかなるおそらくな。リオ夫婦は、両方ともハスガ達が仕留めるだろう。………ここに来る途中に村も、見た…………。」

「…………。」

「ひどいものだった……。私達を受け入れてくれた場所が、こうも壊されていてはな。」

「…………それで?私を笑いに来たの?」

「違う!…………よく守った。セツヒト。」

「…………何で?」

 

 

そんな労いの言葉などいらない。

私が聞きたいのは、そういうことではない。

 

 

「何で……何ですぐに来れなかった!?そんなに首都が大事か!?あんたの……あんたたちの力を、村の人達がどれだけ欲していたか!わかるか!?」

「…………。」

「みんな言っていた!あんたたちがいればって!…………私じゃ……私だけじゃ……ダメだったんだ!!人が……!!」

「…………。」

「人が……たくさん死んだんだ…………。」

 

 

思わず叫んでしまった。

だが、止まらない。

感情が、思いが、あふれる。

 

 

「なぜ!?なぜ、知らせを聞いてすぐ来られなかった!?もしかしたら、もしかしたら間に合ったかも知れないのに!!何で…………。」

「セツヒト…………。」

「…………。」

 

 

マショルクが、口を開けた。

 

 

「私は……()()は、間違った選択は、していないと思っている。」

「…………え?」

 

 

聞き間違いか?

何を、何を言っているんだ?

 

 

「私達の活動理念は、『より多くの人間を守る』ことにある。首都だけではない。世界を救う。私達の根底は、そこにある。」

「マショルク……?」

「首都にリオ夫婦が襲来した。正確には、夜間に突如襲来し、被害を出しては帰っていく……卑怯な奴らだ。首都の民衆は恐怖に陥った。我々は、ザキミーユの筆頭だ。頼りの我々が居なくなれば、どうか。」

「…………。」

「私達は話し合った。…………結論は『首都の防衛を最優先。タオカカ周辺への助力をその後行う』ことになった。」

 

 

つまり……?

こいつらは、人間の数を判断の基準にしたのか?

この……山あいの村落の集まりで。

頼りにするものも少ない、そんなか弱い私達。

 

対して潤沢な設備も、優秀なハンターも揃っている首都。

 

天秤にかけて。

首都の方が、優先すべき、と。

 

 

「…………だから、私達は間違っていない。より良い方法はあったとは思うがな。」

「…………ふざけるな。」

「…………。」

「ふざけるなぁ!!」

 

 

ようやく動くようになった右腕を、ベッドに叩きつける。

軋んだ音がした。

 

 

「『カホ・チータ』の力があれば!亡くなる人もいなかった!!」

「首都の防衛を優先することこそが、我々の理念であり、結論だったのだ!」

「あんたらは、人間を数で考えただけだ!!」

「違う!」

「違わない!首都の……よくわからない権力に飲まれ、どうにもならない自分たちの行いを正当化したいだけだろ!」

「違うぞセツヒト!首都の人間は脆い!モンスターなど見たことも無いようなものが殆どだ!だからこそ、そんな弱き民衆を―――」

「この集落の人間の方が、強いって!?だからそっち優先ってこと!?ふざけている!!私が……私達がどれだけ……!」

「…………。」

「頼るものも無く、日々を過ごしてきたか…………!分かっているだろ!?あんたらだって……ここにいたんだよ!!」

「セツヒト……。」

「あんたらの……あんたらのいた場所は……もうボロボロだよ…………。」

「…………。」

 

 

私は泣いた。

 

もう、流す涙も無いかと思っていたのに。

 

崩れ落ちてしまった。

 

 

* * * * * *

 

 

マショルクは、すぐに帰っていった。

 

私は、カホ・チータが許せなくなっていた。

 

 

程なくして、私は首都の病院に行った。

一向に良くならない腕を診てもらうためだ。

 

首都での人々の話題は、カホ・チータ一色だった。

彼等は、リオ夫婦から首都を救ったヒーローとして、もてはやされていた。

 

胸糞が、悪かった。

カホ・チータは、英雄か。

 

…………ここの住人で、あの村で起こった惨劇を知っている人はどれだけいるのだろうか。

 

益々、カホ・チータが憎らしくなった。

 

 

* * * * * *

 

 

「引退する?」

「はい。」

「…………そこまで、怪我はひどかったか……?」

「まー動けなくは無いですけどねー……上がらないんですよねー、腕。はははー。」

「…………私もここを離れることになった。」

「え!?」

「……ここからしばらく行ったところにある、ワサドラへ異動だ。安心しろ、次来るやつは首都には染まっていない、俺の友人だ。…………俺なんかより、よっぽど向いている。」

「そうですか……。」

 

 

首都で、私の腕は以前のように上がらないと診断された。

リハビリを続ければ、日常生活を送るには問題のないレベルまでいけるらしい。

だが、肉体を酷使するハンターは、難しいかもしれないと言われた。

 

 

「…………私も、ついて行っていいですかー?」

「ワサドラにか?」

「はい……私も……もうここには居たくないんですよねー。」

「……お前の故郷が、すぐそこにあるんだぞ?」

「……帰るべきところなんて、もうありませんよー。」

「……そうか。分かった。」

 

 

シガイアさんはそれ以上何も聞かなかった。

私は、逃げるようにワサドラへ向かった。

 

父と母も祖父も、何も言わなかった。

ただ、笑顔で、「行ってらっしゃい」と言ってくれた。

 

 

ワサドラに着いたら、どうしようかな。

まずは仕事を探さないとね。

私ができる仕事…………何だろ?

得意なこと……なんでも武器を扱えます?

 

武具屋とか開いてみるかなー。

 

 

そんなことを呑気に考えながら、車に揺られる。

 

もう、戦いに身を置くことはしないなと、ぼんやりと考えながら。

 

 

なるようになるか、と独り言ちた。

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