モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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86雪玉の名人に会いに行きましょう。

雪山の朝は暗い。

意識していなかったが、山合いの集落であるここミヨシは、日の昇りは遅く、日の入りは早い。

特にこの季節は日が短いようで、増々顕著になる。

 

 

「…………いってきまーす…………。」

 

 

まだみんなが寝静まっている時間。

厚着をして、外に出る。

雪は降っていないようだが、辺りは一面の真っ白。

薄暗くても分かる。

目の前の息も、真っ白だ。

 

 

「さて……。」

 

 

暗い中だが、そろそろ走り込みをしておきたい。

ずーっと座って移動や寝泊まりの日々だったので、体がなまってしょうがない。

特訓を始めるに当たり、ランニングはしておこうと思い立ったのだ。

 

 

「その前に……。」

 

 

ちょっとワクワクする心が抑えられず、俺は徐に、ログハウス入り口の手すりに乗っていた雪を拾う。

 

 

「おぉ……すごい、全然ベチョってしてない。」

 

 

これだよ、思い描いていた雪は。

雪を知らない男が想像していた、理想の雪。

 

ふわふわで優しい感触。

 

 

「よーし……じゃあまず……。」

 

 

一昨日は怪我をして、昨日は鼻風邪を引いていた男は。

 

 

「うわー……雪だるまってこうやるのかな……おぉ、すげえ。くっつくんだな!!よしっ!」

 

 

もはややるべきことも忘れて、雪だるま作りに没頭するのだった。

 

 

* * * * * *

 

 

「……ソウジさぁん?」

「は、はい……。」

「…………一体何をしているんですかぁ?」

「え、えーっと……そ、創作活動を一つ。」

「そうですかぁ……随分と熱心にされていましたねぇ……?」

「い、いやー。ちょっと気合が入りまして……。」

 

 

アカン。

見つかってしまった。

立派な雪だるまを作っている姿を、よりにもよってハイビスさんに。

 

笑顔が美しい。

完璧な営業スマイルに冷や汗が止まらない。

 

 

「ソウジさん、昨日は確か……お風邪を召してましたよねぇ……。」

 

 

ゴゴゴゴゴゴ……。

 

 

おかしいな。

冬なのにハイビスさんの背後に熱い何かを感じる……。

 

 

「え、えぇ、そうですね。」

「たしか一昨日は怪我もされてましたよねぇ……!」

「は、はい!怪我しました!」

 

 

イェス!マム!

 

 

「…………なーんでこんな寒い中……一時間も外に出て雪遊びしてるんですかーーーー!!!」

「は、はいぃ!」

「体調管理って!わかりますか!?ソウジさん!?」

「わ、分かります。知っております。」

「じゃあなんで外にいるの!!」

 

 

何で?

何でだっけ。

 

あっ。

 

 

「ランニングを、しようと。」

「しようと?」

「……しようとしたところですね、その、雪が私を離してくれず……。」

「…………。(ニコッ)」

「…………。(ニコッ)」

「言い訳はいいです!!とっとと部屋に入って暖まってください!!」

「は、はいぃ!!!」

 

 

何でって聞いたの、ハイビスさんですよ!

こぇぇ……。

まるで母ちゃんの様な。

 

 

「なんか今変なこと考えてませんか!?」

「いえ!何にも!!」

 

 

恐ろしい勘!!

すぐさま暖炉の前に行き、温まる俺。

濡れたズボンと手袋を見ながら「もう!まったく!」と言っているハイビスさん。

 

んー、やってしまった。

 

雪の魔力を思い知った朝であった。

 

 

* * * * * *

 

 

「雪の中のランニングー?ソウジ死ぬ気ー?」

「いやいや、大真面目なんですが……。」

「もっと言ってやって下さい!セツヒトさん!」

 

 

朝怒られた件をセツヒトさんにチクられた。

セツヒトさんは笑って流すかと思ったら、意外や死ぬ気かと突っ込まれた。

 

死ぬ気はないんですけど。

 

 

「ソウジー、ちょっと反省しなさーい。」

「いてっ。」

 

 

優しくチョップをされた。

 

 

「あのねー、道もわからないのに雪の中走るとかー、危ないんだよー。」

「は、はい。」

「まぁ鍛えようという気持ちはわからなくもないけどさー。」

「…………セツヒトさんセツヒトさん、しかもソウジさん、走ってないんです。」

「なにー。」

 

 

今日はチクリ魔なハイビスさん。

何だこの、女性が徒党を組む感じ。

 

 

「なんと、雪だるまを作っていたんです!」

「ソウジー……おねーさんは悲しいぞー。」

 

 

家族ごっこが始まってしまっている。

何だこのノリ。

 

 

「よし、そんなに雪だるまが好きならー。」

「す、好きなら?」

「名人に、会いに行こうかー。」

「…………へ?」

 

 

以上。

新しい朝が来た、ログハウスの様子でした。

 

 

* * * * * *

 

 

3人で一緒に、早朝の集会所へ。

集会所とは、村の人達が集まって会議をしたり、周囲の村の偉い人たちが集まったり、時には緊急の避難所となったりするところ。

この季節は使用の頻度が減るため、ギルドの仮設出張所として、ここが使われるということらしい。

 

建物は、また木造だ。

左右対称な三角屋根が美しい、でもどこか懐かしい。

屋根の勾配がきつく、雪国仕様であることがわかる。

屋根の下には「落雪注意!!」の看板が。

違う場所に来たな、と改めて実感する。

 

ギルドの横には、湯気が立ち上るこれまた木造の家屋がある。

ギルドより大きい、左右非対称な屋根の建物。

ここは、屋根に雪が乗っていない。

 

 

「こっちはねー、温泉があるんだってー。」

「お、温泉!?」

 

 

マジですか!?

温泉!? 

 

 

「集会所の改築工事の時、真下からお湯が湧いたらしいよー?すごいよねー。」

「温泉……温泉……!」

 

 

湯に浸かるとか、しばらくしていない俺。

ワサドラでは、サウナで汗をかき、汲み置きのお湯で体を洗うぐらいだ。もしくは水浴び。

 

雪国に温泉とか、日本人の俺は嫌が応にもテンションが上がる。

 

 

「……ソウジー、また鼻息荒いよー?」

「え!?」

「本当です……今度は温泉でのぼせて倒れるとか、そんなことしそうです。」

「ハイビスさんまで!?」

 

 

し、失礼な!

いくら俺でも、そんな子どもじみたこと!

 

……うーん。否定できない。

 

 

「とにかくここはー、クエストの後の楽しみにしておこーねー。」

「は、はい……ん!?クエストに行くんですか?」

「うん。」

「今から!?」

「まー、あれば、だけど。」

「おぉ……。」

 

 

早速か。

気合を入れねば。

 

 

「……おや!セツヒトさん!今から狩りですか?」

「んー?あー村長さん。」

 

 

気合を入れようとしたら、ギルドの入り口から出てきた人に声をかけられた。

昨日セツヒトさんに挨拶していた人だ。

恰幅のいい男性で、鼻の下のヒゲが似合っている。

 

 

「どうも、私、ミヨシ村の村長兼、ここの取りまとめをしております、アワキと申します。」

「どうも、お世話になります。」

「いやー、昨日は挨拶もせずに申し訳ない!よろしくお願いします!」

 

 

簡単な挨拶を交わす。

どうやらセツヒトさんとはお知り合いらしい。

年齢は、前世の俺の上司くらいだろうか。

いかにも村長さんって感じの貫禄である。

 

 

「こっちがハイビスさんでー、ワサドラギルドの敏腕受付嬢です。んでー、こっちはソウジ。ワサドラ期待の新人ハンターです。」

「び、びんわ……!?」

「これはこれは!よろしくお願いいたします!とても、助かりますよ。」

「よ、よろしくおねがいします。ワサドラより参りました、ハイビスです。……こちら、シガイアから預かりました、書面です。」

「これはどうも……後ほど拝見いたします。」

 

 

何やらビジネス会話?が始まっている。

全く入っていけない俺。バリバリサラリーマンだったんだけどなぁ。

 

 

「シガイアさんは、お元気でしょうか?」

「元気ですよー、タオカカにいた頃よりも腹黒くなってますー。」

「ははは、それはそれは。」

「はははー。」

 

 

昔話に花を咲かせているセツヒトさんと村長のアワキさん。

アワキさんは、笑う度にドンと出たお腹をボヨンと揺らしている。

 

…………ヨツミワドウ…………。

 

 

「……あなたが、ソウジさんですね!」

「は、はい!」

 

 

なんて失礼な事を考えていたら、急に名前を呼ばれた。

 

 

「既に上位の腕前だと言うことで、心強いです。ミヨシの冬山は強者揃い!どうか、良い狩猟をお願いします。」

「い、いえ。まだまだですが、よろしくおねがいします。」

「それでは、ハイビスさん。こちらへお願いします。早速見ていただきたい仕事がありまして……。」

「わ、分かりました!では、ソウジさん、セツヒトさん、また後ほど!」

 

 

嵐のように去っていった。

何というか、勢いのある人だ。

 

 

「……いやー、話し込んじゃったねー。」

「シガイアさんと一緒に働いていた方ですか?」

「そー。タオカカでー。いやーまさか、ミヨシの村長とは知らなかったなー。」

 

 

取引先で仲良くなった人が、久しぶりに会ったら大出世していたような気持ちだろうか。

 

セツヒトさんが、俺の肩をツンツンとしてきた。

 

 

「ほらー、じゃークエストボード見に行くよー?」

「わ、分かりました!」

「あいつのクエストがあるといいねー。」

「あいつ?」

「……雪だるまのー、名人ー。」

 

 

どんなモンスターだろう?

雪山は初めてだし、あんまり強いのは御免被りたいのだが。

 

 

そんな弱気なことを考えながら、俺はクエストボードに向かった。

 

 

* * * * * *

 

 

山は、歩きにくかった。

 

ちゃんと踏み固められたり、雪掻きされている村とは違い、積もったまんま放置の雪。

そんなに深くはないのがせめてもの救いだが、かなりツラい。

あんなにはしゃいでいたのが、今はもうこんなに憎らしい。

 

 

「セツヒトさん……!」

「せっちゃんー。どしたのー?」

「せっちゃんさん……歩きにくいです!」

「そりゃー雪道だからねー。慣れるしかないよー。」

「は、はい!」

 

 

雪は見る分にはいいんだけどな……。

 

 

「ソウジー?ウルクススはいそうー?」

「北に反応がありますっ!」

「よっしゃ、じゃー走っていくよー。」

「ええっ!?走るんですか!?」

「そりゃそーだよー、雪に慣れなきゃー。……私の足跡なぞるんだよー。」

「マジですか……。」

 

 

ザックザックと進む事自体はできる。

ただ、いつもより足に力を込めなければいけない。

すると必然、疲れてきてしまう。

村で体力をつけていなければ、とっくに諦めていただろう。

 

セツヒトさんはこんな環境で育ったのか。

狩猟中のあの動きの速さも、うなずけるというものだ。

めっちゃ辛いこれ。

 

 

…………。

 

 

「居ました……洞窟を抜けた先、開けたところを……ノシノシ歩いています。」

「ホントだー……おっけー。じゃ、行ってらっしゃーい。」

「……………………俺一人、ですよね。」

「もち。」

「…………。」

「ごー、ソウジー。」

 

 

何とも気の抜けた挨拶に押され、俺は初見のウルクススの前に向かった。

 

ウルクススは、後ろから見るとずんぐりむっくりとした体格。

雪の中のラングロトラみたいな感じだろうか。

耳が生えていて、もしキュートなお顔だったらやりにくいなぁとか思っていたけど。

 

 

「……グルルルルル…………。」

 

 

あ、気づいた。

 

……顔怖っ!全然かわいくない!

ウサミミは可愛いとかそんな先入観は、たった今ガラガラと音を立てて崩れ去った。

 

 

ジャキン!

 

 

双剣を構える。

 

あのセツヒトさんが一言「ごー」だけで済ませた相手。

恐らく、ジンオウガ並みに強いとか、そんなことは無いはずだ。

無い……よね?

 

まだ間合いは遠い。

雪の中を、ゆっくりと近づいていく。

 

 

「……グァァァァァ!!!」

 

 

両手を広げて声を上げ、威嚇してくる。

そんなに大きな声ではない。怯まずに済んだ。

 

 

「グァ!!」

 

 

振りかぶるモーション……!爪の攻撃!

バッとバックステップで躱す。

連続でくる気配がしたので、少し余裕を持って。

 

 

「グァ!ガァ!!」

 

 

やっぱり、連続の攻撃だった。

しかも3回、めっちゃ大振りだけど、当たると痛そうだ。

ジンオウガも連続攻撃だったからなぁ。

まずは安全にいこう。

 

 

「グルルル……グルァ!!」

 

 

何だ?雪に両手を突っ込んで……?

……モゾモゾしている……?

 

 

と思ったその時。

 

 

「グァ!」

 

 

両手を振り上げたウルクスス。

下から「そぉーっれっ」って感じで。

遠い位置にいた俺めがけて、雪玉が飛んできた。

 

……え!?なにそれ!?そんなのアリ!??

 

 

「うぉぉぉっとぉ!!」

 

 

避ける。

驚いた。雪玉づくりの名人とは、このことだったのか!

謎が判明。

 

 

「もう一回……来るよねぇ!!」

 

 

すかさず二回目の雪玉攻撃を繰り返すウルクスス。

これも避ける。

……当たったらなんか嫌な予感がする。絶対避けよう。

 

 

さてお次は……?

 

 

「グルルル……ガァッ!」

 

 

うぉっ!!飛んだぞ!?

俺めがけてケツから落ちてくる!!

 

 

「よっ……とぉ!!」

 

 

ズゥン!

 

 

プレスする機械のように、俺を潰そうとしてきた。

地面が衝撃で揺れて、少し足を取られる。

 

あぶねぇ……っと!?

 

 

ゴロンゴロン

 

 

更に前回り!?

 

 

「連続技……多いなっ!!」

 

 

こっちだって、負けないぞ。

負けじとゴロンと横に転げる俺。

 

回避に成功。

 

 

「ちょっと技が厄介だ……なぁ!!」

 

 

転げた後、あまりにもスキが多かったので、ケツのあたりを切り刻む。

 

 

ザシュザシュザシュ!!

 

 

「ギャァァァァ!!」

 

 

普通に通るな……良かった、強靭な硬さのケツとかじゃなくて。

おっと、ケツからはすぐに退避。

アオアシラのように、尻攻撃をして来ないとも限らない。

 

 

「……グルゥ。」

 

 

だいぶ離れてしまった。

また雪玉でも飛ばしてくるのか?

 

ん?……身を低くして―――

 

 

シャーーーーー!!!

 

 

「!?」

 

 

雪玉が来るか来るかと考えていたら。

 

何とウルクススは、スノーモービルの様に俺めがけて突っ込んで来る。

モーションが殆ど無いので分からなかった。

 

 

ドゴォ!

 

 

「ぶへぇ!」

 

 

体当たりをぶちかまされて、転げる俺。

すぐに体勢を立て直すも、再度スノーモービルウルクススが突っ込んできた。

 

 

「なるほど……!!」

 

 

今度は間一髪で避ける。

 

 

ドゴォ!!!

 

 

岩に激突するウルクスス。

…………動かないぞ?

 

 

とりあえず自分のダメージの確認……うん、全身痛いけど、平気そう。

ジンオウガと比べれば、大したことない。

アイツのは痛かったなぁ……。

 

よし。

 

 

「チャンスっ!」

 

 

速攻でウルクススに駆け寄る。

岩山に当たったのが相当効いたのか、フラフラしている様子。

これを逃す手はない。

 

 

「おらぁ!!」

 

 

ザン!

 

 

「鬼神化……!!」

 

 

ザン!ザシュッザシュザシュ!!ザザザザサン!!!

 

 

「うらぁ!!!」

 

 

脱力。

力を抜いて、ある一瞬のタイミングだけ全力を込める。

繰り返し繰り返し、双剣の連続性の良さを失わないように。

乱舞を、繰り返す。

 

 

ザシュ!!

 

 

「ギャァァァア!!」

 

 

よし、忌々しいウサミミ破壊!

 

体勢を立て直したウルクスス。こちらもバックステップで間合いをとる。

 

 

「……グォォ…………。」

 

 

クルッ。

 

 

シャーーーーー…………。

 

 

「……あれ?」

 

 

俺を一瞥したかと思ったら、振り向いて居なくなってしまった。

スノーモービルのように滑りつつ、雪山の向こうに消えていく。

 

 

「場所を変えたのかな……?」

 

 

モンスターはある程度ダメージを食らうと、場所を変えて仕切り直してくる。

多分さっきのウルクススもそんな感じだろう。

 

 

「ひとまず……研いでおくか。」

 

 

砥石を出し、双剣を研ぐ。

<砥石使用高速化>のスキルがある俺は、すぐに研ぎ終える。

……そういやこういうスキル系の質問を、セツヒトさんにする予定だった。

帰ったら早速聞いてみよう。

 

 

「っと……いかんいかん。」

 

 

<マップ>で周辺を確認。

ショウコが居ないので、こういうこともマメにやらないとな。

 

 

「敵影無し……小型はまぁ、無視しよう。……移動するか。」

 

 

<アイテム>から、ホットドリンクを選んで飲んだ俺は、ウルクススを追いかけて、走り出した。

 

 

* * * * * *

 

 

結論から言うと。

ウルクスス、狩猟できました。

 

あの後、すでに見切った攻撃を繰り返してきたウルクススは、俺に攻撃を当てられず。

ジリ貧でクタクタになったところを、俺が攻撃。

 

疲労困憊の様子でスノーモービルを繰り出してきたが、直線的な動きを避けるのは慣れている。

散々バサルモスビームで練習したあの動き。

過去の経験が生かされた。

 

 

『ご主人さまは無茶が過ぎます!!』

 

 

舐めてかかると、頭の中のショウコから説教を食らう気がする。

油断するな。

 

……とは思っていたのだが、クタクタのウルクススは、突進を避けるとそのまま地面に伏せてしまった。

何か申し訳なくなりそうになったが、そんな感情は持ってはいけない。

命を狩る者として、全力でウルクススを仕留める。

 

結果、一時間半ほどでウルクススの討伐に成功。

 

 

「…………うら!」

「グァァァァァァ…………。」

 

 

ズゥン…………。

 

 

両手を上げて威嚇してきたスキに、頭部に二段斬りをお見舞いすると、ウルクススは音を立てて倒れた。

 

 

「ふぅー……。やった……かな?」

 

 

息をしていないウルクスス。

亡くなったものにこんなことを言うのは良くないと思うのだが……。

 

 

「ウサミミは……もっと可愛いやつが付けるべきだな……。」

 

 

すまん、ウルクスス。

雪山での動き、勉強になった。

ありがとうございました。

 

 

バシュッ!

 

 

信号弾を打つ。

回収班への連絡を済ませると、周囲を確認。

……うん、向こうに何か小型がいるが、問題はないだろう。

 

 

「……お疲れー、ソウジー。」

「あ、せ……せっちゃんさん。お疲れさまです。」

「いやー、見事見事。初見のウルクススにここまでやるとはねー。おねーさん、鼻が高い高いー。」

「あ、ありがとうございます。」

「ご褒美にー、頭、撫でようかー?」

「それは遠慮します。」

「ハグはー?」

「ぶっ!……それも!遠慮、します!」

 

 

アホなことを言わない!セツヒトさん!

 

 

「むー……ソウジのイジりも倦怠期ですかなー。……まー冗談は置いといてー。」

「置いとくんですね。」

「おー?何々ソウジー?ハグに興味津々ー??掘り下げよっかー?」

「いいえ!だ、大丈夫ですから!」

「んふふー……でもソウジ?」

「は、はい。」

 

 

セツヒトさんが少し真面目な顔をした。

この人のこの顔には、俺は弱い。

 

 

「強く、なってるね。かっこいいよ。」

「…………。」

 

 

素で照れてしまった。

 

 

 

こうしてセツヒトさんと合流した俺は、周りの落とし物に注意しながら帰路についた。

 

顔を赤くしてしまった俺を、その道中何度もイジってくるセツヒトさん。

でも何だか嬉しそうで。

 

俺も久々に、たっぷりとイジられてあげることにしたのだった。

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