モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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09モンスターを倒す職業について知りましょう。

宿の一階では、朝食が用意されていた。

 

固めのパンに、ベーコンと野菜が入ったスープ、ドリンクは柑橘系の果実のジュースだった。

とても美味しそうなにおいがして、食欲をそそる。

昨晩の夕食もうまかった、この世界の食事レベルはかなり高い。

 

 

「…おはようございま……おじいさんはいないのかな?」

 

 

何となく独り言をつぶやく。

女神さまとの会話?念話?では全くしゃべっていなかったからか、妙に声を出して話をしたい欲求に駆られてしまう。

 

周りには誰もいないことが分かり、ほっとした。

 

ところが、その独り言に、返事が返ってきた。

 

「おじいちゃんなら、いないよ?今頃裏手でなんか作業しているんじゃないかな。」

「お、君は……?」

 

 

少し驚いた。受付にも誰もいないかと思っていたら、そのカウンターの向こう側からひょっこりと、女の子が顔を出してきたのだ。

 

歳は中学生ぐらいだろうか。7分丈のズボンとTシャツにエプロンを身に付けている。

茶色がかった黒髪のボブカットで、鋭く大きな目が、どことなく猫を連想させる。

 

 

「私はドール……って言います。ようこそ、宿屋『ホエール』へ。狭いし古いけど、ゆっくりしていってね。」

「ありがとう。俺は……ソウジ。」

「ソウジさんね。知ってるよ。宿帳見たもん。」

 

 

淡々と受け答えする姿は、体育会系の女子、って感じだ。

そうだよな、さすがにおじいさん一人で切り盛りできないよなぁ。

 

 

「その朝食、私の手作り。冷めないうちに食べて。感想、後で聞かせてね……聞かせてくださいね。」

「ははは、無理に敬語つかわなくてもいいよ。」

「そう。助かる。ありがと。」

「あぁ、じゃあいただきます。」

 

 

両手を合わせて、フォークを手に取る。

一瞬変な顔をされたが、日本式のいただきますは染み付いた習慣なのだ。許してほしい。

 

 

* * * * * *

 

 

「そうだ、ドールさん。聞きたいことがあるんだけど。」

「さん付け、しなくていいよ?」

「じゃあドール、教えてほしいんだ。」

 

 

中身的には一回り以上年下なのに、しっかりしている子だ。

今一番聞きたいことを素直に聞いてみることにした。

 

 

「モンスターと戦う職業、といえば、どんなのが思い浮かぶ?」

「……え?」

 

 

キョトンとされてしまった。質問がまずかったのだろうか。

 

 

「い、いや実はね……。」

 

 

取り繕うように、俺は昨日の門番のおじさんにした、記憶喪失(という設定)の話をしてみた。

 

 

「というわけなんで、事情に疎くて。変な質問したなら申し訳ない。」

「そうか……。ごめんなさい、ソウジさん。私よくわかっていなくて。」

 

話をするなり謝られてしまった。

やはりこの村、いい人が多すぎる気がする。大丈夫なのか。

 

 

「いやいやいや、分からなくて当然だ。俺もいきなり、ごめん。」

「ううん、私てっきりソウジさんがプロのハンターさんなんだって思ってて。一式装備身に付けているし、筋肉もそれなりについていたから。」

「……は、はんたー?」

 

 

聞き慣れない単語が出てきた。

 

 

「うん、通称ハンター。モンスターハンターのことだよ。」

「モンスターハンター……それがつまり、さっき俺が質問した……。」

「そう、この世界に生きる人なら、だれでも必ず知っているよ。モンスターと戦う人なんて、みんな『ハンター』って答えると思うよ?」

「そうか……ありがとう。」

 

 

やはり、常識レベルのことだったらしい。

よし、とにかくそのハンターとやらに、なってみよう。

 

 

「じゃあドール、最後の質問。そのハンターとやらになるためには、どうしたらいいの?」

「村で一番大きな建物に行って、登録すればいいんだよ。」

「と、登録?」

「そう。『ハンターズギルド』にいって、ハンター登録してくれば、ハンターになれるんだ。」

 

 

学生時代、派遣のバイトをしていたことを思い出した。

登録講習受けて、いろんなバイトを請け負ったものだが、あのノリなのだろうか。

 

 

「でも、ハンターになる前にやるべきことがいっぱいあって——」

「じゃあひとまず、そのギルドってところに行ってみるよ。」

「……えっ!?」

「ごちそうさま。部屋はもう一泊していきたい。きれいにしているつもりだけど、汚れていたらごめん。」

「そ、そうじゃなくて、ソウジさん、ハンターになるの!?」

「ああ、試しにね。」

「試しに、って!悪いことは言わないから、やめておいた方がいいって!」

「すまん、スポンサーが望んでいることでさ。危ないことは重々承知だ。」

 

 

命を賭ける仕事なんだもんな。そりゃ止められもするよ。

やっぱりいい子だな、このドールって子。

頭もよさそうだし、おじいさんが溺愛しているのではないだろうか。

 

 

「行ってくる。今夜もここに泊まるつもりだから、よろしく頼んだ。」

「す、すぽんさー?……え、えええ……。」

 

 

肯定とも否定ともとれないドールの返事だったが、まあ部屋は取っておいてくれるだろう。

そう楽観的に考えながら、俺は村で一番大きな建物へと足を向けた。

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