モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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91雪の鬼を倒しましょう。

討伐開始からしばらく。

 

俺は、ゴシャハギ……改めゴシャハギさんの攻撃を、ずっと避け続けていた。

 

気づいたことが一つ。

 

確かに攻撃力は凄まじい。

先程刀身から放たれた氷の破片は、少し掠っただけなのに結構な出血になっている。

それに、パワーも半端ない。

多分あの氷の刀……だと思うのだが、それを頭部をガツンと食らってしまったら、俺は死ぬ気がする。

それぐらい、感じるパワーは凄まじいものがある。

 

だが、動作のスキは大きい。

 

回避に専念すれば……おそらく自惚れでも何でもなく、避け続けられると思う。

動きが分かってきたから、余計に。

 

 

「とは言っても……なっ!」

 

 

ゴシャハギさんの双剣の上段からのブチかましを、横に避ける。

右に右に、たまに左に。

基本は反時計回りで、たまに左。

 

基本の避けるための立ち回りはこうだ。

 

目も慣れてきた。

 

 

「……やってみるか。」

 

 

決心をして。

 

 

ジャキン―――

 

 

俺はようやく剣を抜いた。

 

 

「グルルルルル……。」

 

 

動きを止めるゴシャハギさん。

 

そうなんです、偶然ですね。

俺も双剣なんです。

まぁ……。

 

 

「はっ!」

 

 

ギン!

 

 

「グァ……。」

 

 

威力は全く違いますけど……。

 

 

「…………グァァァァァ!!」

 

 

舐めんな貧弱野郎、と言わんばかりに。

ゴシャハギさんが襲いかかってきた。

 

 

「ふっ!」

 

 

まともにかち合ったら、もちろん勝ち目はない。

パワーで勝てる人なんて、いるのだろうか。

…………セツヒトさんや教官とかなら、やってしまいそうではあるが。

 

まずは基本。

 

避けて、いなして、スキを見て攻撃する。

狙う場所は。

 

 

「やっぱりそこだよ……なっ!!」

 

 

ギキン!ギン!

 

 

「グァァァ!」

 

 

ゴシャハギさんの武器である氷の双剣。

そのどちらかに狙いを定める。

 

必ずある、スキを見つける。

攻撃と攻撃の間。

息をつく瞬間を狙って、攻撃。

 

第一優先は、左腕の氷剣。

次に右腕。

弱点であろう顔の周辺は届かなそう。

 

無理はしない、まずは届くところ。

 

 

「ふっ……ふっ……。」

「…………グアァァァ!!」

 

 

ギン!ガシュ!

 

ギン!!

 

 

コツコツと、左の氷剣を削る。

 

 

「うらっ!!」

 

 

ガキン!!

 

ビキッ!

 

 

大振りに構えたゴシャハギさんの横斬りを交わした俺は、少しふらついたスキを逃さなかった。

いい一撃が入った!

ヒビが入った!よし、もう少しで……!

 

 

ピキ……ピキピキピキ…………。

 

 

「…………マジか……。」

 

 

頑張って頑張ってヒビを入れた氷剣は、何でも無かったかのように元に戻ってしまった。

ゴシャハギさんが修復したのだろうか。

 

 

「ガァァァァ…………。」

 

 

白い息を吐き出しながら、剣先を口元にやるゴシャハギさん。

そう何度も直されてはかなわない。

 

これを壊せば、ダウンをとれると、情報画面には書いてあったのに……。

 

 

「グルゥゥゥゥゥ…………!」

 

 

ダンッ!

 

 

ドシンドシンドシンドシン……。

 

 

「あー……。」

 

 

ゴシャハギさんは、その身を翻すと、街道方面に向けて走り出した。

逃げた……?いや、体勢を立て直すんだろう。

致命傷を与えられずに苛ついたのかな。

 

……まぁいいか。無理して追いかけることもない。

 

俺の双剣もそろそろ研いでおきたかったし、ホットドリンクも切れそうだ。

こいつが切れたら、寒くてかなわない。

 

 

シャキン!

 

 

シャッ……シャッ……。

ザッ……ザッ……ザッ……。

 

 

砥石の音が辺りに響く。

静かな一帯に聞こえるのは、俺が刀を研ぐ音と……近づいてくる足音。

 

セツヒトさんだ。

 

 

「……ソウジー、お疲れー。」

「セツ……せっちゃんさん。」

「いやー、うまくいってたのにねー。これから反撃ーって感じだったのにー。」

「いや、完全にのまれてましたよ。あいつ怖すぎです……。」

 

 

終始ビビりっぱなしだった。

何なら攻撃が効いた感じは全くしない。

 

 

「怪我は平気ー?」

「はい、そんなには。避けるだけなら……まぁ何とかなりそうです。問題は攻撃ですね。全然効いてないです。」

「いやー?あの氷の剣には、結構いい感じだったよー?もうちょっとで割れてたよ、あれ。」

「ヒビは見えたんですけどね……。」

 

 

より強い攻撃か、またはより手数を増やすか。

強い一撃は、双剣の目指すところではない。

そうすると、やはり手数を増やす方向だろう。

 

 

「…………次は、空中回転斬り、やってみます。」

「……気負わずにねー。後ろ、私もいるからー。」

「はい。」

 

 

セツヒトさんの頼もしい言葉。

今は、頼りにさせていただきます。

 

待ってろ、ゴシャハギさん。

 

 

* * * * * *

 

 

街道沿いには、雪の山奥らしい針葉樹林が立ち並ぶ。

湖から街道方面に向かうと、その林にぶつかる。

モンスターを倒す際に遮蔽物となるその木々は、邪魔なときもあれば有効活用できるときもある。

今回は広く狩り場を使いたい。

 

 

「いました……。」

「おけー。すぐフォローできるようにしておくー。」

 

 

そう言うとセツヒトさんは、木々の上に飛び乗った。

音もしない、まるで忍者。

 

すげえなぁ……。

 

 

(ゴシャハギさんは……街道のど真ん中……強者の風格バリバリだな……。)

 

 

件のゴシャハギさん、街道の真ん中を悠然と闊歩していた。

人の気配でモンスターは縄張りを変えていくと聞いたが、それは弱いモンスターのみに適用されるようだ。

ゴシャハギさんには関係ないらしい。

 

 

「さて……。」

 

 

朝のことを思い出す。

標的としてはかなり小さい、ファンゴ。

奴らに「空中回転乱舞」を当てることはできた。

 

完全に成功したのは一回だけだけど。

 

 

(標的は大きい。当てることはできるだろうな……問題はその後だ。)

 

 

「空中回転乱舞」は、確かにたくさんの剣撃を食らわすことができるが、その分スキも大きい。

気をつけねば。

 

 

(……落ち着け……よし。)

 

 

「……ふぅー。」

 

 

ゆっくりと、息を吐く。

体と心を再度整える。

 

ゴシャハギさんの両腕に、例の双剣は無い。

解除したのかな。

自在にできるとか、俺のギフトみたいだ。

 

 

「…………シッ!」

 

 

短く息を吐くと、俺はゴシャハギさんに接近した。

 

 

「グァァ!」

 

 

気づいたゴシャハギさん。

体をゆっくりとこちらに向ける。

 

 

(……イケる!)

 

 

体をこちらに向けるゴシャハギさんに合わせて、俺は進行方向を少し右に。

狙うは、左腕。

 

 

「…………うらあっ!」

 

 

戦い始め。

ゴシャハギさんも体勢が整っていない。

チャンス。

 

 

(………後ろから回転……!)

 

 

両の剣を後ろ手に向け、俺は跳躍した。

高さはいらない。

クルッと空中で回って。

振り向きざま、切っ先を当てる。

 

回し蹴りの要領で回転を力に変え…………。

 

 

(当てる!)

 

 

ズザン!

 

 

「グアァァ!」

 

 

成功。

両手に力を込め、更に飛び上がる。

顔の高さまで、クルクルと跳躍した俺は。

 

 

「ふんっ!」

「ゲァ!!」

 

 

ズザザザザザザザン!!

 

ザシュ!!

 

 

低く素早く回転しながら、ゴシャハギさんの体をなぞるように剣を当て。

 

 

ザザン!

 

 

「ギャァァァ!」

 

 

着地。

回転斬りもお見舞いする。

 

 

ザザザザン!!

 

 

「グァァ!!!」

 

 

たまらず後退するゴシャハギさん。

 

俺も、その動きを確認して後退。

俺のスキを、相手に与えてはならない。

 

 

(いけた!!成功!!)

 

 

まだ氷剣を生成していない左腕。

そこを中心に、左半身の全体的にダメージを与えられたように思う。

 

 

(ダメージは……わからん!だが、押し切る!)

 

 

次。

雄叫びをあげられそうな気配。

構わず突っ込む!

 

ゴシャハギさんの右に右に位置を取る。

 

 

「…………グァ―――」

 

 

ここ!

 

跳躍。

 

縦に回転。

切っ先を再び左腕に当てる!

 

 

ザシュザシュ!

 

 

「―――ァァァァ……。」

 

 

ゴシャハギさんの声は力なく霧散。

叫び声は響くことなく。

 

 

「らあぁぁぁ!!」

 

 

グルングルンと回る視界の中、回転して斬る意識を保つ。

飛び過ぎはしない、浅い跳躍からの回転斬り。

 

 

ザザザザザン!!

 

 

「……らぁ!!」

 

 

着地、剣を振り抜く。

 

 

「……グァ!!」

 

 

よろめくゴシャハギさん。

だが、目は死んでない。

 

 

(……来る!)

 

 

数瞬の間。

体勢を一気に立て直したゴシャハギさんは、大きく振りかぶり。

 

俺に右前脚の鉤爪を向けた。

 

 

ヒュオン!!

 

 

(あぶねぇ!!)

 

 

スウェー、鼻先を氷剣が掠める。

すぐにバックステップ。

間一髪!

 

 

「ガァ!…………グルルルルル…………。」

 

 

力任せの右前脚の引っかきを、何とか避けられた。

危なかった。

モーションを学習していたからこそ、避けられたが……。

 

 

(ヨツミワドウとの戦いを見ていなかったら……ヤバかったな。)

 

 

ツー……。

 

 

頭から汗が垂れる。

寒いのに。

 

 

(……一瞬も、気は抜けない……。)

 

 

「…………。」

「…………。」

 

 

睨み合う俺たち。

 

ゴシャハギさんの顔つきは、心なしか先程より険しく見える。

怖さ2倍増し。

 

 

(少しは敵と認められたか……?)

 

 

捕食する弱い生き物から、倒すべき強者に認識が変わった……なら嬉しいんだけど。

 

 

バッ!

 

 

(……!!)

 

 

動いた!

両手を振り上げるモーション!

メチャクチャなぶん殴りが来る!

 

 

「グァァァァア!!」

 

 

(こえぇぇ!!)

 

 

とんでもない形相をしていたと思う。

良くは見ていないけど。

俺は、避けるのに必死だったから。

 

 

ゴロンゴロン。

 

 

バッ!

 

 

右足の力を抜き、そのまま倒れ込むように転げる。

すぐ横を、腕をブンブン振りながらゴシャハギさんが通り過ぎる。

俺はすぐに体勢を立て直し、起き上がった。

 

 

「グァッ!!」

 

 

ダンッ!

 

 

(飛び上が……地面バキバキか!!)

 

 

もう攻撃の名前などどうでもいい。

とにかく、後ろに大きく跳躍したゴシャハギさんは、地面に両拳を叩きつけた。

 

 

ドガァン!!

バキバキバキバキ!!

 

 

(よっ……と。)

 

 

あんまりスピードは無い、余裕で避ける。

ゴシャハギさんまでは……遠い。

 

 

(近づいて攻撃を……またか!)

 

 

猛攻は続く。

続けて、口に見える白い何か。

 

 

(ブレス!!)

 

 

白い雪の光線が、舞い上がる。

 

 

(悠長に避けてる場合じゃねえ!)

 

 

ブレスの向こう、ゴシャハギさんに近づく。

急げ!急げ!!

 

 

(鬼神化……!!)

 

 

鬼神化を行うと、動きが格段に速くなる。

スタミナは激しく消耗するけど。

 

 

「よっ……と!!」

 

 

滑り込むようにゴシャハギさんの足元にスライディング。ゴシャハギさんは、前方にブレスを吐いたままである。

 

 

(チャンス!)

 

 

ダンッ!

 

 

ザシュザシュ!!ザザザザザン!

ザン!

 

ザザン!!

 

 

クルクルと、空中回転斬り。

ブレスをしているゴシャハギさんの背中から後頭部にかけて、斬り刻む。

 

 

(鬼神化中だと……キッツいな!!)

 

 

より重く、速い連撃。

その分、体力の消耗も激しい。

 

 

ズザザザザザザン!!!

 

 

着地と同時に追撃!

 

 

「グァア!!」

「うらぁ!!」

 

 

ズザン!

 

 

「ガッ……。」

 

 

厳つい顔が離れる。

 

 

「はぁっ……はぁっ……はぁっ…………。」

「グルル……。」

 

 

疲れた……!

でも、追撃含め、完璧だった気が……する。

これでも倒れないゴシャハギさん。恐れ入ります。

 

それもそうか。

だって……。

 

 

「……ハァァァァ……。」

 

 

パキパキパキ……バキン!

 

 

(来たか……。)

 

 

本気は、これから。

両手に氷の剣を作り出すゴシャハギさん。

口から出てくるのは冷気なのだろうか。

とんでもない速さで氷剣が形作られる。

 

 

(…………ん?)

 

 

左手は剣ではない……もっと無骨な、氷の棍棒が作られている。

いやアレはアレで、なぐられたらタダでは済まなそうな感じはある。

双剣使いゴシャハギさんは、新たに片手剣&棍棒使いに進化。

多彩でクリエィティブ、またまた恐れ入ります。

 

 

「……ガアァッ!!」

 

 

気合を入れ直すかのように、両の剣……ではなく、剣と氷の塊を構えるゴシャハギさん。

 

…………怖すぎるって。

 

 

* * * * * *

 

 

「グァ!!」

 

 

飛んで垂直に剣を振り下ろすゴシャハギさん。

 

 

「よっ。」

 

 

避けてから……。

 

 

ザン!ザン!ザザン!

 

 

「グァァァァア!!」

 

 

斬る。

 

再びの追撃。

今度は……三連かな?

 

 

「よっ……と……おわっ!!」

 

 

何とか避ける。

 

地面に剣が突き刺さった。そのスキに……。

 

 

「うらぁ!!」

 

 

鬼神化、乱舞。

 

 

「グァ……!!」

 

 

ビキッ!

 

バキン!!

 

 

壊れる氷剣と棍棒。

そしてダウン。

転げるゴシャハギさん。

 

逃すものか。

 

 

「きじんかぁ!!乱舞!!」

 

 

ズザン!!ズザザザザザザン!

ザシュ!ザザザン!!

 

 

「ついでにぃ……!」

 

 

ダン!!

 

 

跳躍。

後ろから剣を回し斬り。

からの回転斬り、振り下ろし、着地後の回転斬り。

 

 

ザザン!!

 

 

「らぁ!」

「グァァッ…………。」

 

 

バッ。

 

 

後退する。

追撃は一回まで。

 

ゴシャハギさんの立て直しは、早い。

 

 

「グァァ……。」

 

 

立ち上がったゴシャハギさんは、まっすぐこちらを睨みつけてくる。

 

 

(……すげぇ体力……。)

 

 

氷の片手剣と棍棒を装備したゴシャハギさんは、そこから猛攻を始めた。

が、俺も大体のモーションは分かった。

 

数度ダメージは受けたが、問題なし。

回復薬グレートをそのたびに服用。

持ち直している。

 

罠も使い、砥石を使う時間も確保。

無理はしない。

 

 

「グァっ!!」

「おわっとぉ!!」

 

 

両腕を振り上げ、地面に叩きつけるゴシャハギさん。

だが、地面バキバキビームは飛んでこない。

 

……おそらく疲れている。

 

攻撃と攻撃の感覚も、緩慢になってきた。

 

 

(一番気を抜いてはいけない時間帯……今まで通りに!)

 

 

「シッ!」

「ガッ!?」

 

 

駆け寄る。

肉薄。

 

拳が振り上げられる。

知ったことか。

 

 

小さく、跳躍。

―――空中回転乱舞!!

 

 

ズザザザザザザン!

 

 

「グァァ!!」

「もう一丁!」

 

 

ザシュザシュ!ザザン!!

 

 

「グァ……。」

 

 

ズゥン……。

 

 

「グルッ!ガァ!……グルル……ガァ!」

 

 

地面にひれ伏して、もがくゴシャハギさん。

 

 

「…………。」

 

 

スチャッ。

 

 

俺は、シビレ罠を仕掛けた。

 

 

「グォ!?グゴォォォォォ!!!?」

 

 

困惑している。

 

 

(麻酔玉…………。)

 

 

ボフッボフン……。

 

 

2発の麻酔玉を、地面に叩きつけると。

 

 

「ガァァアァ…………。」

 

 

ゴシャハギさんは、動かなくなった。

 

 

「………………。」

 

 

スヤスヤと寝ている。

これで、捕獲成功……かな。

 

 

「…………っふぅぅ…………よぉしっ!」

 

 

ジャキン!

 

 

双剣をしまう。

 

 

「ゴシャハギ……捕獲完了!」

 

 

いつもショウコに頼っていた、捕獲のタイミング。

ミヨシにやってきてから、それがだんだん分かるようになってきた。

要は、相当にダメージを与えていればいいのだ。

……まだショウコのように、バッチリ分かるわけではないけど……。

 

今回は足も引きずっていたし、呼吸もおかしかった。

おそらくあのままやっていたら、討伐していたと思う。

 

 

「……ただのエゴだけどな……。」

 

 

せめてもの、敬意。

似たような武器を操る者として。

今回は捕獲、ということで一つ。

 

 

「強かったぁ……。」

 

 

一撃の重さは、はっきり言って俺が遭ったモンスター史上最強クラス。

ディノバルドの尻尾のような強烈な感じではないが、それに匹敵する重い攻撃を、常に繰り出してくる。

 

避ければいい、というのは、避けきれなかったら終わりなわけで。

 

そういう意味では、回避主体の俺とは、確かに相性は良かった。

スキは大きかったし。

 

それに、セツヒトさんが後ろに控えているという安心感。

狩猟の前にヨツミワドウとの戦いを見られたという幸運。

この辺が、気持ち的に少し楽になった要因だ。

 

 

「…………強くなっているぞ……俺。」

 

 

モンスターを倒した達成感は、何物にも代えがたい。

……倒したというか、捕獲したんですけど。

 

セツヒトさんは、何て言うだろう。

冷酷にやらなきゃー、ソウジー、なんて言うだろうか。

 

いずれにせよ、回収班へ連絡しよう。

セツヒトさんとの反省会はその後だ。

 

 

バシュッ……。

 

 

俺はポーチから取り出した信号弾を上空に放った。

山にこだまする音。

 

毎回、勝利の後に打つその音は、心から安心する。

 

村の人に被害が無くて、よかったと安堵する俺であった。

 

 

* * * * * *

 

 

「やっぱり甘いってー。」

「はい、すみません……。」

 

 

信号弾を撃って少し。

やたらセクシーな装備を纏った女性が、こちらに駆け寄ってきた。

 

怪我のことをまずはとにかく心配された。

だが血は止まっているし、何度か受けた攻撃も、そこまで痛くはない。

 

 

「完勝だねー……でもソウジー?」

 

 

そこから、俺は反省。

甘い、討伐しなきゃいけない案件だよ、と。

 

そうですよね……敬意とか払っている場合じゃなかったですね……。

……でも仕方がない。と割り切る。

 

俺はまだまだ覚悟が足りない。

命を屠るという覚悟。

セツヒトさんに教えられたその覚悟は、まだまだできていない。

 

 

「まー……そういうところも……いいんだけどねー……。」

「へ?」

「んーんー、こっちの話ー。とにかくさー、ソウジー?」

「は、はい。」

 

 

何だ、まだ反省点でも―――。

 

 

「―――狩猟、お疲れ様。よかったよ、とても。」

「………っ。」

 

 

素直に褒められ、俺は。

 

照れてしまった。

 

 

「あー、ソウジはこういうのに弱いんだねー。」

「よ、弱いって何ですか!?」

「んー……攻略の糸口が見えてきたというか……やっと射程範囲ー?」

「聞かれてもワケ分かんないっす!」

「あははー……。」

 

 

笑顔のセツヒトさん。

いつもの含んだ笑いでは無い、普通の笑顔。

 

 

「じゃーソウジー、帰ろっかー?」

「……はい!」

 

 

今日の狩猟も無事、終了。

想定外の敵だったが、何とかクリアした。

 

 

「ソウジー、顔真っ赤だよー?」

「ホットドリンク飲みすぎました。」

 

 

笑顔にやられましたとは言えない。

そんなん言ったら、恐らく今夜遅くまでイジられコース確定である。

 

 

「ふーん……まぁいいやー……フフッ。」

「……っ。」

 

 

またも見せる、その見慣れない笑顔に。

俺はまたも、ドギマギしてしまうのだった。

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