モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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92飲み会をしましょう。

ミヨシの村に、娯楽は少ない。

 

ワサドラは、多少の娯楽があった。

居酒屋が軒を連ね、その日の気分によって場所を変える。

酒を呑むため、呑まれるため、歌うため、喧嘩をするためにあるような殺伐とした飲み屋まである。

最近じゃ、プロのダンサーや歌い手が集い、お金を払って見る場所まで出店されている。

そう言えば……若い女の子の店員だらけのあのレストランは、まだあるのだろうか……。

イシザキ亭が繁盛したあおりで、経営が傾いていると聞いたが……。

……ま、まぁとにかく、発展著しい楽しい町だ。

 

では対して、このミヨシには何があるか。

僅かばかりの居酒屋、そして温泉。

以上。

 

だから、ここにやってくるハンターも商人も、夜は酒を飲んでは寝るばかり。

娯楽に飢えている。

 

まぁつまりその…………村の一大事が何とかなったということで…………。

 

 

「酒持ってきたぞー!」

「おー、商店の!雪の中のスマンな!」

「おーい!こっちにも売ってくれー!」

「お料理でーす!」

「こっちにも酒とメシー!頼んだー!!」

 

 

飛び交う声、集まる酒と料理。

老若男女関係なく、そこらにテーブルと椅子を置いて大宴会。

一番でかい机に、俺とセツヒトさんは座っているだけなのに、どんどんテーブルの上が酒と料理で埋まっていく。

 

 

「はい!じゃあいまグラスを持っている方だけでとりあえず……乾杯!」

「「「乾杯!」」」

 

 

村で一番でかい屋内。

つまりは集会所の中。

アワキ村長の乾杯の声から、大宴会が始まった。

楽しさを求めて、来るわ来るわ村中の人、人、人。

こんなにいたのか。

 

おかげで集会所は満員御礼。

早朝のワサドラギルドさながらである。

 

 

「いやー!セツヒトさんにソウジさん!今日は村の奢りですから!飲んでいってくださいよ!」

「ど、どうも。ありがとうござい―――」

「わーい!ブレスワインだー!」

「おっ!セツヒトさん!イケる口でしたね!私もご相伴に……。」

「これは、私のー!」

「そ、そんな!!セツヒトさん!それ私の蔵から出したんですよ!!」

「せっちゃんさん……。」

 

 

村長さんとセツヒトさんとのやり取り。

まだ呑んでないのに、酔っぱらい同士の絡みさながらである。

ボトルを抱きしめて離さないセツヒトさん。

 

 

……何故こんなことになったか、経緯を話そう……。

 

 

* * * * * *

 

 

村に徒歩で帰ってきた俺たち。

日は暮れかけ。

暗くなるのが早い山間の村とはいえ、時間がかかってしまった。

 

その足で集会所に到着。

その入り口に入った……その瞬間。

 

怒号のような歓声。

そして拍手。

 

 

「な、なんの騒ぎですか?」

「おー……すごいねー。分かんないけどー……この村にとってすごいことしたからじゃなーい?」

「おぉ……。」

 

 

ワサドラでもこんな事無かった。

そんだけ強かったんだな、ゴシャハギさん。

 

 

「ソ、ソウジさん!セツヒトさん!お怪我はありませんか!?」

「ハイビスさん。」

 

 

駆け寄ってくる、正式な受付嬢制服を着た女性。

ハイビスさんである。

 

 

「あぁ!ソウジさん!こんなに血が!!」

「だ、大丈夫です!大した怪我じゃないですよ!」

「そうですか……良かったです……セツヒトさんは無傷ですね!流石です!」

「んー?そりゃーねー。」

 

 

周囲の一同が、こちらを見ている。

なんか恥ずかしい。

いや、歓迎してくれるのは嬉しいんだけども。

 

 

「ソウジ一人でー、やっつけたんだよー?ゴシャハギ。」

「………………え?」

「…………。」

 

 

ピタッと止む周りの声。

「え?今なんて言った?」「あの男性のハンター一人で?」「いやいやまさか。」みたいなヒソヒソ声が聞こえる。

…………マジなんですけど。

 

 

「だからー、私は本当にー、何にもしてないのー。ほら、無傷だし、剣も綺麗でしょー?」

「…………えっ!?ソウジさん、本当ですか!?」

「は、はい。ソロで、何とか。」

「…………えーーーー!?」

 

 

直後、周囲の歓声が再び上がった。

 

 

「マジで!?あの人一人で雪鬼獣やったの!?え!?一人!?」

「ソロでゴシャハギとか聞いたことないよ!自殺未遂じゃん!」

「あの人吹雪の中ランニングする頭おかしい人じゃなかったんだ……。」

「セツヒトさん好きぃ!」

「もげればいいのに。」

「信じられない!」

 

 

鳴り止まない歓声と拍手。

すげぇ、こんなに褒められるとか思っていなかった。

なんか変な声も複数聞こえた気がするが。

 

めっちゃ恥ずい。

 

 

「ソウジさん!セツヒトさん!狩猟お疲れさまでした!!ど、どうぞこちらへ!!」

「村長さん。」

「おー、アワキさーん、助けてー。」

「は、はい!こちらに!早く!」

 

 

歓声が収まると同時に周囲の人が集まりそうな気配。

セツヒトさんの人気も相まって、もみくちゃにされそうな予感。

そんな中、村長さんが助け舟を出してくれた。

ハイビスさんも伴って、臨時のギルド長の部屋に駆け込んだ。

 

 

『み、みなさーん!とりあえずクエスト完了報告を受けますのでー!こちらには集まらないで下さーい!!』

 

 

扉の向こうで、ハイビスさんとは違う受付の方の大声が響く。

すんません、よろしくおねがいします。

 

 

そのまま俺たちは、ほとぼりが冷めるまで村長さんと話をすることにした。

 

 

…………。

 

 

「いやはや……ソロで雪鬼獣を討伐とは……信じられませんな……。」

「観測班にでも聞いてみてくださいってー。ガチでー。ソロでしたよー?ソウジはー。」

「い、いえいえ!疑っているわけでは!いやぁしかし、驚かされましたよソウジさん。」

「いや、セツヒトさんが後ろにいてくれたからですよ。本当の本当に一人、ではありませんでしたし、幸運でした。」

「いえいえ!ご謙遜されず!我々としては、ヤツを捕獲してくれただけでもう、十分に十分すぎますので!」

「いやいや、あ、ありがとうございます。」

「いえいえ!お礼を言うのはこちらです!ありがとうございます!」

「いやいや……。」

「いえいえ!」

「……いつまでやってんのー?」

 

 

セツヒトさんが止めてくれた。

元現代日本社会人vs腰の低い村長、アワキさん。

いつまでも続くであろういやいやいえいえ対決は、決着もつくことなくお流れに。

 

 

「……では、私が討伐完了報告を進めてもよろしいですか?」

「えぇハイビスさん!お願いします!」

 

 

村長さんの声とともに、ハイビスさんが手に持っていた資料を机に広げ、胸ポケットからペンを取り出す。

お、そのペン、ワサドラで人気の、猫肉球柄ですね。

俺も持っていますよ!

 

……とは言わず、淡々と事務作業を進める。

 

その脇では、村長さんとセツヒトさんが話をしている。

 

 

「いやー、冬の間だけとはいえ、このミヨシにお三方がいらっしゃること、大変ありがたいです。」

「ソウジもレベルアップできてますしー、ハイビスちゃんもがんばってくれていてー。こっちもこっちで嬉しいですよー。」

「しかし、ソウジさんはセツヒトさんにも迫る腕前ですなぁ……セツヒトさんもウカウカしていられないのでは?」

「まだまだ負けませんってー。でも……私は一度引退しましたしねー。ソウジにはまだまだ強くなってもらいますよー。」

「いやぁ、頼もしいですな!ハッハッハッ!」

 

 

ボヨン。

 

 

アワキさんの腹が揺れる。

 

ヨツミワドウ…………。

 

 

「……ジさん?ソウジさん?こちらもよろしいですか?」

「は、はい!」

 

 

いかんいかん、また失礼なことを考えてしまった。

 

おれはペンをお借りし、素材の預かり証にサインをする。

手続きの大体は、これで済んだと思う。

 

 

「…………はい、ありがとうございます……狩猟、たいへんお疲れさまでした。これで一通り終わりです。」

「いえ、いつもありがとうございます。」

「いえ……それより……これからどうされますか?」

「……?どうというのは?」

 

 

これから?

これからなんて……風呂入って装備の整備をして飯食って寝るだけだが。

 

 

「風呂入って装備の整備をして飯食って寝るだけ……なんて考えてないよねー、ソウジー?」

「なんでわかるんですか!?」

 

 

ピッタリ言い当てられてしまった。

 

 

「だめだめー、今日はもう、飲むんだよー?せっかくソウジが格上を倒せたんだからー。さっきまで下位だったハンターがゴシャハギ狩猟とかー、聞いたこと無いってー。」

「は、はぁ。」

 

 

宴会&反省会ってことかな?

それは全くもって構わないんですけど。

 

 

「そんちょー!……お酒って、ありますー?」

「…………セツヒトさん、いいのがありますよ?」

「おー?マジでー?」

「それは……ゴニョゴニョ。」

「ふんふん……おーなるほどー!いいねー!」

 

 

何やら企むセツヒトさんとアワキ村長。

何かが起ころうとしている……。

 

 

「ハイビスさん、どういうことですかね。」

「……まぁ恐らく、村を上げての宴会を計画されているのでは無いかと……。」

「む……村ぁ!?」

 

 

え?村を上げて?

何でそうなるの!?

 

 

「ソウジさん……あのですね、このような小さい村に、あんな恐ろしく強いモンスターが出てくるなんて、首都に古龍が現れた!ぐらいの一大事なんですよ?」

「は、はい……。」

「それに娯楽も何も無い環境……更にはさっきまで下位ハンターだった方が、それを成し遂げたという話題……今日はソウジさん、痛飲をご覚悟くださいね。」

「…………マジですか。」

「大マジです。毎冬現れるジンオウガが狩猟されたら、大宴会を開くそうですよ?この村。……さー!私も飲みますよー!!退屈してたんですからー!!」

「おぉぉ……。」

 

 

こうして、集会所に村中の酒と肴と人が集まり、大宴会が開かれる運びとなった。

 

 

* * * * * *

 

 

というわけである。

回想終了。

 

 

人は増え、喧騒が増すばかりの集会所。

仮のギルドとして運営は大丈夫なのか!?

ただでさえ少ないスタッフにも酒が入ってますけど!?

 

 

「いやいや、ソウジさん。まままま……。」

「あ、これはこれは村長さん……ととととと……。」

 

 

白く濁った酒を、俺の盃に入れてくるアワキ村長。

ぷわんと甘く漂う香り。

いいお酒だろうな、これ。

 

 

「アワキさんも……まままま……。」

「おおっと……すみませんな主賓に……ととととと……。」

 

 

なんだこれ。

日本の企業の新年会とやってること変わらないわ。

 

 

「改めまして……狩猟、お疲れさまでした。」

「いやー、ありがとうございます……アワキさん、だ、大丈夫ですかね?」

「え?何がです?」

「その、ギルドとして。ここが機能しなくなったら大変じゃ……。」

「あー!それはそうですな!ハッハッハッ!」

 

 

ボヨンボヨヨン。

 

腹太鼓が音を立てて震える。

うーん立派。

ヨツミワドウ。

 

 

「たまには、まぁこういうことをするんですよ。この村では。」

「そうなんですか?」

「はい……何せ何もない村ですから。みんなで助け合って生きていかなくてはならない。幸い温泉も出たおかげで、村の経済は発展してきていますが……冬の間は気持ちも塞がりますからねぇ。」

「……なるほど。息抜き、ですか。」

「そうです、そう。ソウジさんはきっちり周りを見てますなぁ!流石ゴシャハギを狩る猛者でいらっしゃる!ハッハッハッ!!」

「あ、あははは。」

 

 

村長さん。

顔つきも言動も、もう完全に酔っぱらいである。

 

だが、なんとなく分かった。

この人は、村長として村の全員の気持ちが塞がらないようにしているのだ。

もちろん、ミヨシ村にとってめでたいことがあった時に開催する、という体なのだろうが。

 

村長さんが酒をチビリと飲むと、ゆっくりと話し始めた。

 

 

「……この村は、まだまだ復興途中の『再生の村』です……。頑張りすぎたり、まだ心に大きなキズを負っていたりする方もいる……村長としてできることは少ないですが、まぁ、これくらいなら、とですね。」

「……いや、そのお考え、素敵だと思います。……俺の故郷にも、災害があったら共に悲しみ、嬉しいことがあったら皆で盛り上がる。そういうことがありました。……だから……なんかわかります。」

 

 

そこから男二人、酒を酌み交わしながら駄弁った。

村長さんは、セツヒトさんから少し聞いていたが、タオカカのギルドの元職員さんだ。

ミヨシ村全壊の際にも、色々と尽力されたらしい。

 

人に歴史あり。

 

 

「ソウジさんは、どこか達観していらっしゃいますなぁ……見たところ相当にお若いのに、かなりの苦労をされてきたのでは?」

「い、いやいや!そんなことは!」

 

 

鋭い。

人生経験と言うなら、結構なことをしてきている。

まさか「第二の人生中なんです」と言うわけにもいかず、口ごもる俺。

 

 

「ハンターさんは、この世界の要。我々の生活に欠かせない方々です。……命を賭けて我々を守るその姿は、本当に素晴らしいと思いますよ。……ぜひ、これからも頑張ってください!」

「は、はい!」

 

 

実際の歳は近いはずなのに、貫禄がそれを上回る。

若い男のムーブを決め込む俺、なんか恥ずかしい。

 

でも、やる気にはなる。

 

 

「それでは、また……私は席を外しますが、ゆっくりされていってくださいね!」

「ありがとうございました!このような席を設けていただいて。」

「しつこいようですが、お礼を言うのは我々ですぞ!堂々とされていてください。それでは!」

 

 

礼をしたアワキ村長は、商人が集まっている場所に向かっていった。

風格あるなぁ……。

……ハンターもすごいかもしれないが、それを支えていてくださる方も、それはそれはすごいわけで。

 

自分の仕事が一番辛いと思うやつにはならない。

 

前世で好きだった歌のフレーズをふと思い出し、俺は気を引き締めることにした。

まぁ今夜は楽しむけど。

 

ワークライフバランス。

 

 

* * * * * *

 

 

その後は結構大変だった。

 

顔しか知らないようなハンターの方々に囲まれ、どうやって雪鬼獣を倒したのか根掘り葉掘り聞かれた。

 

別に隠すこともないので、ギフトのところには触れないようにしながら情報提供。

酔っ払いながらもメモを取って真剣に聞く様は、プロとしての根性を感じさせた。

 

 

「なるほど……その、空中回転……ですか?それはそんなにダメージが増えるものですか?」

「ええ。双剣に限らず、空中からの攻撃は様々な武器で応用できるかと思います。モンスターも、予想外の動きには対処が難しい。」

「大剣や斧なんかも?」

「私は扱えないので自信はないんですが……自分より小さい敵が、目線以上の高さから攻撃するなんて、意外という他ないんじゃないかなーっと。……手数が増える利点は、確かに双剣ならではだとは思いますが。」

「なるほどなるほど……。」

「あと、スキも大きい。ここぞというときがわかるまでは、慎重に行きましょう。ゴシャハギさ……雪鬼獣も、まずは私、避けることだけ考えてましたから。」

「ふむふむ……(カリカリ)」

 

 

その中でも、一際熱心に話を聞いてくる女性のハンターさんが一人。

恐らく武器は近接だろう、先程握手をした時、手のひらからは相当な力を感じた。

それに、手の平はゴツゴツしていた。

ぱっと見た感じでは、ボブ気味の茶色いショートヘアーに大きな目をしていて、その辺のかわいい大学生みたいな印象を受けるのに。

この若さでハンターとして身を立てて、更に向上しようと頑張っている。

偉いなぁ……。

まだ下位の方らしいが、腕の筋肉の付きや防具の傷跡からは、努力が感じられる。

 

ゴシャハギに限らず、冬の間、ミヨシのモンスターは増える。

お金もそうだが、名声やスキルアップを求めてこの村にやってくる手合いは多い。

 

そんな一人だろう。

 

話も弾む中、もう一人の主賓がこちらにやってきた。

 

 

「うわー、勉強熱心ー……ソウジー、ちょっとは忘れて楽しみなよー?」

「セツヒトさ―――」

「せっちゃんー。」

「せっちゃんさん、どこ行ってたんですか?」

「どこって……あそこー。」

 

 

セツヒトさんが目線を向ける先。

俺もそこを見る。

 

何やら熱い視線がこちらに注がれている……。

5、6人の女性。村に着いたときに俺を睨みつけてきた方々である。

 

 

「……あー、なるほど……。」

「うん。お酒くれたから一緒にいたけどー、ソウジが気になってこっち来ちゃったー。」

「……あー……。」

 

 

それであの視線か。

うん。

怖い。

 

スルースルー。

 

 

「……せ、せ、せ、セツヒトさん!」

「おわー。なにー?」

「わ、私、下位ハンターのハンズと申します!せ、セツヒトさんのお噂はか、かねがね!」

「おー、おちついてー。」

「は、はいい!!」

 

 

俺に色々聞いてきたハンズさん。

突如、舞い上がるかのような声色で、セツヒトさんに話しかけ始めた。

 

 

「わ、わたひはー!セツヒトさんに憧れてこちらに来ましたー!」

「……うん。」

 

 

ハンズさんが語尾を伸ばす。

…………セツヒト語を真似しているのか!?

何故!?

 

セツヒトさんも若干引いているけど……。

 

 

「まーまー、普通に話してよー。」

「は、はい!……それでその、ま、まさかこの村にいらっしゃるとは思いもよらず……!も、もしよろしければ!」

「ばー?」

「私と、ぜひ!手合わせをお願いしたきゅ!!」

 

 

ガリッ。

 

 

おぉ、すげえ。

舌噛んだ音がここまで響いた。

 

 

「〜〜!!!」

「あーあーあー……もー、そんなに言うほどの人間じゃないってー……ソウジーごめーん。水ー。」

「……承知しました。」

 

 

近くのテーブルにあったグラスに水を注ぐ。

舌を噛んだハンズさんは、痛いのか恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしてグラスを受け取った。

 

 

ゴクッゴクッ……。

 

 

「大丈夫ですか?」

「は、はい……すみません、ソウジさん……。」

「いえいえ。」

 

 

落ち着いた様子のハンズさん。

ふうっと息を吐いて、顔を上げた。

 

 

「セツヒトさん……不躾で申し訳ありませんでした……。」

「いーよいーよ、どんまい?うん。」

「は、はい!」

「しかしねー、手合わせねー。」

 

 

考え込むセツヒトさん。

…………何か企んでいる顔である。

 

 

「…………今からやるー?手合わせー。」

「…………へ?」

 

 

やっぱりな……。

ろくなことじゃないと思った。

 

 

「ソウジー。何かいいの無いー?怪我しないような武器みたいなー。」

「そんなんないですよ……あ、ロアルドロスのたてがみで作った防具なら有りますけど。」

「……なにそれー?何でそんなのあるのー?」

 

 

以前、ショウコに素手での戦い方をレクチャーして欲しいと頼んだ時に使ったやつだ。

ポーチの肥やしになっていたのを思い出した。

 

 

ゴソゴソ。

 

 

「…………これですよ。」

「おー……いいね、これ分解していーい?」

「構いませんけど……何企んでます?」

「ふふー。ひみつー。」

 

 

隠しながら出した、その防具を見つめながらニヤッと笑うセツヒトさん。

 

置いてけぼりの俺と、熱心なハンター、ハンズさん。

 

何やらゴソゴソし始めるセツヒトさんを、不安げに見つめるのだった。

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