モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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93宴を盛り上げましょう。

セツヒトさんの本職?は武具屋である。

様々な武器に精通し、天才的に器用である為、もう天職と言えるだろう。

 

そしてその才能を遺憾なく発揮して、たった今作り上げられた作品がこちら。

 

 

「はーい、かんせーい。」

「これは……?」

「うーん、命名……ロアル剣!」

「……まんまですね。」

「ろーあーるーけーん。」

 

 

セツヒト語にかかれば、もはやドラ◯もん調に聞こえてしまう。

俺はその剣を受け取り、試しに振ってみた。

 

 

ブォン!

 

 

おぉ。

竹刀なんて持ったこともないが、それぐらい軽い気はする。

短時間で急に作ったとは思えないクオリティ。

 

 

「竹をベースに、細かく縛って強度を調整してみましたー。」

「あ……これすごいですね。全然痛くなさそう。……丈夫なのに。」

 

 

よく見ると、麻の様な繊維で刀身にロアルドロスの鬣が巻きつけられている。

その巻きつけられた紐はきれいな柄にも見えるよう工夫されている。実用性も高そう。

 

……見た目もいいし……これ、売れるんじゃないか?

 

 

「でしょー。これなら怪我しないねー……えーっと、バンズさん?だっけー?」

「は、ハンズです!でもバンズでもいいです!もはや!」

「いやいやいや。」

 

 

危うく肉を挟むアレになるところである。

どんだけこの人、セツヒトさん好きなんだ。

 

 

「じゃーこれー……ろーあーるーけーん。」

「気に入ったんですね、その言い方……。」

 

 

ポイッと手渡すセツヒトさん。

ハンズさんは、全長70cmぐらいのそれを受け取ると、ペタペタ触り始めた。

 

 

「で、伝説のセツヒトさんが作られた武器……はぁぁ……。」

 

 

……もはや変態っぽいぞ……。

 

 

「んじゃー、私も手に取ってー……その辺借りよっかー。」

 

 

二人は集会所の中央、少し広くなっているスペースに進んでいった。

周囲の人もこちらを見ていたようで、机や椅子を移動している。

 

一瞬で人垣の即席リングが出来上がった。

 

 

「お?何か始まるのか?」

「剣持ってね?」

「え?あの娘、今から一騎打ち?ヤバくない?」

「お!決闘か!?」

「いいぞー!やれやれー!!ほら、そこ場所開けろって!」

 

 

迷惑極まりないと思ったのも束の間、完全に歓迎ムード。

やはりこの村の人、娯楽に飢えているな……。

……セツヒトさんの剣技を生で見られるのだ、そりゃ盛り上がって当たり前か。

セツヒトさん、この辺りじゃ超絶有名人らしいし。

 

 

「あー、みなさーん、ごめんなさーい。ちょっと場所借りますよー。」

 

 

一応の挨拶を済ますセツヒトさん。

うん。前にもこんなことあった。

酔った勢いで俺と模擬戦を行い、俺の首を完全にキメたあの日。

強かったなぁ、セツヒトさん。

 

 

「そんじゃー、ハンズ?用意はいーい?」

「は、はい!……………よろしくおねがいします。」

 

 

おっ。

ハンズさんの表情が変わった。

一呼吸置いたあと、凛々しい顔付きに。

 

とても先程までセツヒト製ロアル剣にハァハァしていた人には見えない。

 

 

「ソウジー!」

「は、はい!」

「開始の合図、頼んだー!」

「わ、わかりましたぁ!」

 

 

いきなりセツヒトさんに呼ばれ、ビビった。

俺が言うのか!?

この聴衆の前で!?

なんか恥ずかしい!

 

 

「えー。……いきますよー?」

「…………。」

「…………。」

 

 

ジリッ。

 

 

二人の足に力が入っていくのが分かる。

 

 

「用意……始め!!」

「やぁぁ―――」

「……。」

 

 

スパァン!!!

 

 

「あ…………れ…………?」

 

 

バタン。

 

 

力なく倒れるハンズさん。

 

 

「「「………………。」」」

 

 

見守っていた観衆も、静まり返っていた。

 

しばらくして。

 

 

「…………す、すげぇ!!」

 

 

若い男性ハンターの声を皮切りに。

 

 

「うぉぉぉお!!一瞬だ!」

「やっば……見えなかった……!」

「え?えええ!?終わったぁ!?何で!?」

「セツヒトさん素敵ー!!」

「キャーー!!」

 

 

うぉぉぉぉぉ、と。

オーディエンスからの大喝采が起こった。

 

当の本人は。

 

 

「…………ほらー、意識あるー?」

 

 

ペチペチ。

 

 

まるで王子様のように片膝でハンズさんを支え、優しく頬をタッチ。

 

絵になるなぁ……。

 

 

「あ……だめ……私もう無理……。」

「鼻血出そう。」

 

 

その様子、一部の方々には大好評の様である。

 

 

「つ、次!俺も!!」

「あ!ずりぃぞ!俺も!」

「私もお願いします!!」

 

 

次々に来るわ来るわ、立ち会いたいハンター達。

血気盛んな若い人たちが中心である。

逆に玄人臭のする渋いオジサマハンター達は、睨みつける勢いでセツヒトさんを見ている。

 

 

「……おい、見えたか?」

「かろうじてな……あれが生きる伝説か……。」

「……顎の下にキレイに入れてたな。」

「すげぇなお前、見えたのか。」

 

 

セツヒトさんの剣が見えていたらしく、分析を始めている。

こちらはこちらで、とても勉強熱心だ。

 

 

ちなみに、俺も見えていた。

「始め」の声の瞬間、セツヒトさんは()()、踏み込んでいた。

ダラリと構えた下段から、顎の下に一発、掠めた。

一瞬でキレイにキメたなぁ。

 

だからって防げる自信はないが。

 

 

「ソウジー、ごめーん、この子いーい?」

「はいはい……よっと。」

 

 

気絶しているハンズさんを介護するため、お姫様抱っこの要領で抱き上げる。

…………変なことは考えてないからな。

 

 

ハイビスさんを探して、ベッドを借りよう。

 

…………どこにもいない。

 

仕方がないので、その辺にあった机に布を敷いてベッド代わりに。

横に寝かせて気道は確保して……。

 

 

「こんなもんかな……おーい。ハンズさーん……だめか。」

 

 

幸せそうな寝顔でスヤスヤと息を立てるハンズさん。

セクハラにならないよう、肩を叩くも、反応なし。

……このまま寝かしとくか。

 

 

セツヒトさんは……。

 

 

「うぉぉぉ!!」

 

 

スパァン!

 

 

「ぐえ!!」

「んー……次ー。」

 

 

次々と倒してらっしゃる……。

 

周囲の盛り上がりも凄いことに。

そら楽しいわなぁ、一流の剣技がすぐそばで見られるんだから。

 

 

トントン。

 

 

「ん……あっ。」

「探しました、ソウジさん。お隣よろしいですか?」

「え、えぇどうぞ。」

 

 

ボーッとセツヒトさんの剣を見ていたら、後ろから声をかけられた。

我らが敏腕受付嬢、ハイビスさんである。

よく見る制服の格好なのに、お酒を持って顔も赤い。

いつもとは少し雰囲気も違う。

 

そんなハイビスさんは、俺が座る長椅子のすぐ隣に腰掛けた。

 

正面には人だかり、その向こうにセツヒトさん。

後ろの机には、スヤスヤとのびているハンズさん。

そして右隣、肩の当たる距離にハイビスさん。

 

……近い。

 

 

「ソウジさん?飲んでます?」

「あぁ、はい。まぁボチボチ。」

「主賓なんですから、もっと飲まなきゃですね。これ、どうぞ。」

「あ、どうも。」

 

 

瓶に入ったビールを差し出してきた。

ありがたくいただく。

 

 

「いや、ありがとうございます。本格的に飲もうとしても中々話がこんでしまって。」

「チラチラソウジさんを見てましたけど……熱心にハンターさんとお話されてたので。あんまり飲んでないのかなー、と。」

 

 

気を利かせてくれたのか……ありがたいです。

 

ハイビスさんは後ろ、ハンズさんに目を下ろす。

幸せそうに寝る寝顔を真顔で見つめている……何だ?

 

 

「ソウジさんの周りには女性が多いですね……。」

「え?」

「い、いえいえ、こちらの話です。…………こんなにすぐ次の方を……しかも可愛いし……気をつけないと……!!」

「?」

 

 

よく分からないことをブツブツ言っているハイビスさん。

 

 

「す、すみません。こちらの話です。」

「は、はぁ。」

 

 

ハイビスさんは少し気恥ずかしそうにしながら、今度は喧騒の先、セツヒトさんを見ている。

視線をやると、セツヒトさんはすでに4人ぐらいをのしていた。

息も上がっていない。流石だ。

 

 

「……流石ですね……。」

 

 

ハイビスさんも同じ感想。

 

 

「えぇ、本当にあの人は……追いつける気がしないです。」

「ソウジさんは……いつか追いつけますよ。」

「どうでしょうね……。でも、目標にはしますよ。憧れます、あの強さ。」

 

 

瓶をあおる。

冷たいビールが喉を濡らす。

……ちょっと酔ってきたのか、クサイことを言ってしまった……。

 

 

「私は……ハンターさんじゃありません。」

「…………。」

「でも、受付嬢という、ハンターさんを支える自分の仕事に、誇りを持っています……いえ、そんなに誇りはもってなかったんですけど……ソウジさんに出会えて、本当にそう思えるようになりました。」

「は、はい。」

 

 

真面目なムード。

緊張してしまう。

 

 

「……感謝しています。ソウジさん……あなたはいつも一生懸命で、だから目が離せなくて……こんなところまで来ちゃいました。」

「……はい……。」

「私をこんな風に仕事熱心にしちゃったんですから……責任、取って下さい。」

「せ、責任?」

 

 

んな大げさな。

……とはツッコまない。多分真面目に言っているぞ。ハイビスさんは。

 

 

「えぇ……私が専属で受け待つハンターさんは、きっとセツヒトさんよりもすごい人になるんです……初め見たときは……正直全然頼りなかったですけど……ソウジさんはすごい人になるって……予感がしたんです。」

「は、はい。」

 

 

あの時か。

 

……考えたら、俺のハンター人生は、この人から始まったんだよな。

ハイビスさんにハンター登録の受付をしてもらって、明らかに幻滅されて、でもハイビスさんは投げやりにもならず、俺を初心者講習に誘ってくれた。

 

感謝している。

 

 

「予感……というよりも確信したんです!だから……そ……その!ソウジさん!」

「は、はい!」

 

 

力強い目で見つめられる。

まつ毛長い!ていうか近い!そしてやっぱりやっぱり美人だなこの人!!

 

 

「…………絶対!ぜったい!!この大陸に名を馳せるようなハンターさんになって下さいね!…………いつも近くで見ていた私が、これからもずっと、応援しますから!!…………や、や、やや約束!……ですよ?」

「…………。」

 

 

顔が真っ赤だ。

でも、真面目に、大真面目に言ってくれているのが分かる。

 

この飲みの席、皆が皆、褒めてくれた。

嬉しかった、誇らしかった。

自分がやってきた今までの事は、決して無駄じゃなかったと。

 

でも、ここまでなのか、と。

邪推してしまった。

俺は、ギフトの力を大いに活用して、ここまでやってこれたけど……あの人垣の向こうにいる凄腕のハンターのようにやれるのかと、そう自問自答が止まらなかった。

みんなが褒めてくれる度に。

捻くれているな、と、自分でも思う。

 

…………でも、ハイビスさんは違った。

 

俺はここまでじゃない。

これからも頑張るんだと。頑張れるんだと。

ハイビスさんが、俺をずっと見てくれていたこの人が、そう教えてくれている。

励ましてくれている。

 

神様がくれたこの命、それを最初にハンターとして結びつけてくれたこの人が。

 

 

ありがたい。

 

 

ゴシャハギさんを倒して尚、俺は強くなる。

強くなれる。

 

なりたい。

 

 

「…………。」

 

 

再びセツヒトさんを見る。

周りが盛り上がる中、チラチラとこちらを見ている。

「ソウジはー?」と、俺を呼んでいる気がした。

 

 

「ハイビスさん。」

「は、はい!」

「感謝します。……目が覚めた……いや、もう一度やる気になりました。」

「…………それは……ふふっ、良かったです。」

「……はい。」

 

 

ハイビスさんの笑顔から顔を外す。

セツヒトさんが、こちらを見ながら右手を上げた。

人差し指で、クイクイっと俺を招いている。

 

視線が、俺に集まる。

 

 

「ハイビスさん……マショルク教官に俺、教えられたんです。」

「……何をですか?」

「『無様でもいい、卑怯でもいい、生きて帰ることこそが、ハンターにとって一番の資質だ』って。」

「……。」

「行ってきます……無様でも何でも、あの人に少しでも足掻いてみます!!」

「……ふふ……はいっ!ご武運を!!」

 

 

真っ直ぐセツヒトさんの元に向かう。

人垣が、道を作ってくれた。

 

 

ポイポイッ。

 

パシッ、バシッ。

 

 

セツヒトさんが、二つのロアル剣を無造作に放ってきた。

軽くキャッチ、握りを確かめる。

俺は双剣で来いってことか。……よし。

 

 

「……やーっと来たねー……親玉登場?」

「誰が親玉ですか……敵でも何でもないですよ。」

「じゃー、何ー?」

 

 

チャッ。

 

 

セツヒトさんが構えた。

 

 

スッ。

 

 

俺もいつもの姿勢で双剣を構える。

 

 

「何でしょう……挑戦者、でお願いします。」

「ふふー……ハイビスちゃんに何言われたか知らないけどー……いい顔してるよー、ソウジー。」

「ありがとうございます……合図は?」

「いいよ、動いて。合わせるから。」

 

 

ハンデか、それともカウンター狙いか。

 

……両方だな。

 

 

「いきます。」

「はーい…………全力で来い、ソウジ。」

「…………っ!!」

 

 

セツヒトさんが殺気を放ったと同時。

 

俺は右足を踏み込んだ。

 

 

スパァン!スパパン!!

 

 

高い音が響く。

剣を握る手がビリビリと痺れる。

 

セツヒトさんの攻撃は、とにかく重い。

そして速い。

 

だが、何とか()()()()()

 

 

「「「…………。」」」

 

 

観衆が、しんと静まりかえっている。

 

 

「……お、おぉぉぉ!!あの兄ちゃん!倒れてねえぞ!!」

「マジか!?流石だな!!」

「ゴシャハギやった話、やっぱ本当なんだ!」

「今まで全員一発だったのに!すごいぞ兄ちゃん!いや、ソウジー!」

 

 

ザワザワ。

 

 

歓声というより、驚きの声が上がっている。

 

 

「……ソウジー?よく防いだねー?」

「はい……腕痺れてますけど……。」

 

 

セツヒトさんは、本気で来るといった。

だから、本気で来ると思った。

セツヒトさんは優しい人だ。

初心者ハンターだろうと何だろうと、挑んできた人たちには全力で応えていた。

それが礼儀だと言わんばかりに。

弱点を一発。

それで終わり。

 

じゃあ、一発で気絶させるような弱点とはどこか。

……顔だ。

 

ヤマを張った。

絶対顔の近くに剣を向けると。

 

動きは見えている。

下から構えたセツヒトさんの剣は、実はギリギリまで上がっていない。

脅威の速さで二歩踏み込んだ後、膝腰肩腕剣の順に捻転。

周りには超加速したような速さで、最後の最後に剣を振り上げ、顎に一閃。

それが狙いだ。

 

わかっているなら話は早い。

俺は、両の刀で攻撃を防ぐ。

タイミングはシビアだが、その瞬間右半身を捻る。

斬り上げの一撃を双剣で防いでいなし、勢いを闘牛士のように後ろへ逸らす。

 

つまり、俺は一切、攻撃していない。

防ぎ切っただけである。

 

 

「……うまーく回避したねー、ソウジー。」

「どうも……次通用するかは知りませんけど……。」

「うーん……じゃー一撃狙いはやめとくよー……行くよ。」

「はい……!」

 

 

再びの殺気。

静まる観衆。

 

 

よく見ろ、集中……!

動き出しの足、手の握り、重心、その全てを、全体的に見る!!

 

 

(………左!)

 

 

スパァン!

 

 

消えたように見えたセツヒトさんだが、その直前の重心を若干左に傾けていた。

だから、またヤマをはる。

 

 

(防げた!回れ!勢いにやられるな!)

 

 

剣でいなす。

俺は駒のように右回転。

そのまま……。

 

 

(届け!)

 

 

切っ先をセツヒトさんへ向ける。

回転の力をそのまま伝えながら……!

 

 

スパパァン!

 

 

「ん……。」

 

 

……向けた双剣は、だが届かず。

セツヒトさんは剣を片手に受け切った。

 

 

グ……グググ…………!

 

 

(片手かよ!ま、全く動かねえ!!力……強すぎ……!!!)

 

 

「……いいねー、ソウジー……ここまでやるとは……ねっ!!」

「のわっ!!」

 

 

剣ごと押された俺は、無様に転げてしまった。

どこにそんな力があるのか全く分からん……まるで岩に押されたかのようだった。

 

 

スッ……。

 

 

セツヒトさんが剣先を俺の鼻に向ける。

 

 

「……はい、私の勝ちー。」

「……参りました。」

 

 

結果は、セツヒトさんに力負けした俺の降参。

負けである。

 

 

「力強すぎますよ、セツヒトさん……。」

「せっちゃんー。あと女の子に力が強いは失礼だよー。」

「す、すいませんせっちゃんさん……。」

「……んふふー、いいねーソウジー。やっぱりいいよー。強くなってる。」

 

 

認めたくはないが、負けである。

剣自体では負けたわけではないと強がれるが、腕力の差は壮絶な壁があるなぁ……。

鍛え直しだ。

 

 

「おぉぉ……すげえもん見たなぁ……。」

「あぁ、達人同士、って感じがした。」

「キャー!!セツヒトさーん!!かっこいいー!!」

「そのままやっつけちゃえー!!」

「よくやったぞー!ゴシャハギ倒した奴……名前わからんけど凄かったぞー!!」

 

 

パチパチパチパチ。

 

 

拍手を頂いてしまった。

一部の方からは余計に反感を食らってしまったようだが。

 

 

「あ、あはは、どうもどうも。」

 

 

ペコリペコリ。

 

 

お辞儀をしまくる俺。

この世界にきてお辞儀なんでほとんど見たことないのだが……許して欲しい。染み付いた習慣、というやつだ。

 

 

「ソウジー?」

「あ、はい!」

 

 

セツヒトさんに呼ばれて振り返る。

するとセツヒトさんは、小声で俺に話し始めた。

 

 

(ソウジー……ちょっと例の奴、やってみー?あの、「ひょーいじょーたい」ってやつー。)

(……えぇぇ!?)

(せっかくだしさー、受けてみたいんだよねー、例の剣技。)

(だ、ダメですよ!マショルク教官だって吹っ飛ばしたんですよ?これ。怪我したら……。)

(……何?あいつは良くて私はダメなの?)

 

 

ひいっ!

 

 

(そ、そういうわけでは……!)

(じゃ、かもーん。)

 

 

チャッ。

 

 

構えるセツヒトさん。

……え!?マジでやるの!?

 

 

「…………(コクコク)。」

 

 

無言で頷くセツヒトさん。

マジか……。

 

 

「お、おいおい!セツヒトさんがもう一度構えたぞ!!」

「男の方のリベンジってやつか!いいぞ!!」

「今度こそ完璧に倒してー!セツヒトさーん!!」

「おーい、ソウジって方ー!死ぬなよー!」

 

 

どうやら周囲は、またやることに反対はない模様。

むしろやれやっちまえムード全開。

 

…………しょうがない……腹を決めよう。

……セツヒトさんなら大丈夫だろ、多分。

 

 

「じゃ、じゃあ行きますよ?」

「…………。(コクン)」

 

 

しんと静まり返る場。

 

俺はポーチに触れた。

表示される項目から、<操作方法>、「鬼人突進連斬」を選択。

 

突如、自分の意識とは関係なく、動き出す体。

動き出すは語弊がある。膝の力を一瞬抜き、倒れ込むように前へ前へ。

ちょうど二歩踏み出す感じで加速。

 

こんな剣技、やったこともない。

前教官とやったときとはまた違う動き。

 

相手に向かって回転しながら横一閃を食らわすこの技、前回とはまるで勢いが違う。

速さが、勢いが、目に映るもの体に伝わるもの全てが、違う。

 

俺はもう、自分でも訳のわからないほどの速さで体をクルクルと回転させながら剣を振り抜き。

 

 

「うぇ―――」

 

 

気が付いたら、セツヒトさんを。

 

あの、セツヒトさんの顎下を。

 

 

スパァン!!!!

 

 

振り抜いていた。

 

 

「――――わ、わー……。」

 

 

ドスン。

 

 

このロアル剣のおかげなのか、セツヒトさんが上手く避けたのかは分からない。

とりあえずセツヒトさんは、以前の教官のようにふっ飛ばされてはいなかった。

 

…………なのだが、とにかく俺は双剣を振り抜いていて。

 

 

「…………ソウジー…………すごいじゃん…………。」

 

 

一応無事なセツヒトさんは、しりもちをつく形でおれを見上げていて。

 

ボーッと、俺を見つめていた。

 

 

「…………。」

 

 

俺もボーッとなっていて……。

 

 

しばらくの間の後。

 

 

「「「…………うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」

 

 

観衆の大声で、我に返ったのだった。

 

 

マジか。

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