モンハン世界に成り行きで転生した中身おっさん   作:びびんば

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94新たな武器を探しましょう。

飲み会は続いた。

 

俺にやられたというのにめちゃくちゃごきげんなセツヒトさん。

その後も飲むわ飲むわ酒の神の如し。

早々にコテンと床で寝てしまった。

 

可愛く猫のように寝るものだから、例のセツヒトさん大好きガールズたちの鼻血出血祭り。

「あ、尊過ぎ……。」「セツヒトさんしか勝たん……。」とか言ってバタバタ倒れる子もいたりして。

 

…………俺はいつかこの方々に殺される気がする。

(この村に来て二度目の確信。)

 

 

俺の方は、セツヒトさんを下してからもう質問攻めの嵐。

何をやったんだ、どんな心境だった、あのひそひそ話は何を言っていたんだ、等の問いかけに何とか応えた。

 

ハイビスさんが止めてくれなかったら、恐らく未明まで帰してくれなかったと思う。

 

 

「……ソウジさん、とりあえず宿に戻りましょうか。」

「そうですね。」

 

 

宴もたけなわな所で、アワキ村長に一言断りを入れて、宿に戻ることに。

 

 

「いやぁ素晴らしかったですぞ!お二人の勇姿!酒も料理もすすみましたなぁ!!ハッハッハッハッ!」

 

 

ボヨヨンボヨヨン。

 

ヨツミワドウ…………。

 

 

村長さんのウエスト周りに、これからも健康が末永く続くことを祈りつつ。

俺はセツヒトさんを担いで宿に戻ることにした。

 

 

「「「………………。」」」

 

 

実に恨めしそうに俺を見つめる女性達は、おそらくは俺のことを「◯ね!」とか思っていることだろう。

スルースルー。

さわらぬ神に祟りなし。

 

 

「…………寒っ!!」

「わぁ……気をつけて帰りましょうね。」

 

 

当たり前だが外は寒い。

酒が入っているとは言え、真冬も近い。

 

ハイビスさんも酒が入っているからか、結構ハイテンション。

先程のセツヒトさんとの模擬戦を話題にしながら帰った。

 

背中のセツヒトさんは、可愛らしく寝息を立てている。

 

 

「すー……すー……んー、ソウジー……そっちはちがうよぉ……。」

「…………なんの夢見てるんでしょうね…………。」

「俺が何かを間違えた夢でしょうね……。」

 

 

気になる夢の中身を知ることは終ぞ無く。

宿に帰った俺達は、寝支度も早々に、就寝と相なった。

 

 

ちなみにセツヒトさんの部屋で、ハイビスさんが一緒に寝てくれた。

 

 

「何かあったらいけませんから……ソウジさんはしっかり休んでくださいね!」

「は、はい。よろしくおねがいします。」

「では……お休みなさい。」

「はい、お休みです。」

「…………あ、あの、ソウジさん。」

「はい?」

「先程は…………かっこよかったですよ?凄く。」

 

 

先程。

あの模擬戦のことか。

 

 

「いやいや、あれは完全にギフトの力ですよ。俺の実力じゃ―――」

「いえ、そこじゃなくて……その前です。」

「前?」

「…………無様かもしれないですけど、って言ってたじゃないですか。あそこ……か、かっこよかったですよ?」

「……そ、そうですか?」

 

 

…………かっこいいのか?

よく分からんが。

 

 

「じゃ、じゃあ今度こそ、おやすみなさいませ。」

「あ、はい。お休みなさい。」

 

 

バタン。

 

 

…………どこかカッコいいところがあったのだろうか。

まぁ本人がカッコいいと言うなら、まぁありがたくお言葉を頂いておこう。

 

 

兎にも角にも、今日は疲れた。

アルコールはそんなに摂取していないが、体はいつも以上に疲弊している。

 

俺は、リビングのソファーに体を預け、一瞬で眠りに誘われた。

 

おやすみなさーい。

 

 

* * * * * *

 

 

翌朝。

ランニングは今日はお休み。

 

 

 

『もうっ!服は着てから起きてください!!セツヒトさん!』

『うーん……服を斬るー……。』

 

 

『バスン!』

 

 

『斬ってどうするんですか!!着るんです!着る!ソウジさんに嫌われますよ!!』

『えー、それは困るよー……。』

『じゃあ……その裸はおしまいにして、はい服です!どうぞ!』

 

 

…………何やら女性陣が部屋の中でワーワー言っている。

主な原因は、セツヒトさんの脱ぎグセにあるのだが…………。

 

こんな朝も聞き慣れてきた。

セツヒトさんは朝に弱いのだ。このやり取りは珍しくはない。

 

 

…………。

 

 

 

二人が起きて、3人で朝食をとる。

今日はやっぱり休みにします、と二人に伝えると、「え?働くつもりだったの?」という顔をされた。

 

ニホンジン、ハタラキスギー。

 

前世でいつぞやの外資系の金髪イケメンに言われたセリフを思い出した。

 

 

「休むと言っても、アイテムの補充とか装備の手入れとか色々やるつもりですけど……あ、そうだ。セツヒトさん、一緒に武器、見に行きませんか?」

「武器ー?……あー、ソウジ、そう言えばそのままだったねー。いいかもー。」

「ですよね。そろそろ強化しといて、ジンオウガに備えないと……。」

「そーいえばー、属性武器ー……これ教えて無かったねー。」

「属性?」

 

 

急に魔法的なことを言うセツヒトさん。

食後の珈琲を口にすると、話し始めた。

 

 

「あー……こーひーうまー……属性って言ってねー、モンスターによってはー、苦手な属性があるんだよー。」

「苦手な属性……剣よりもハンマーとか、ボウガンとかのがいいとか?」

「まーそれもあるんだけどー……例えば昨日のゴシャハギ、火属性が苦手なんだー。」

「…………え?」

 

 

ん?

なんか聞き捨てならない言葉を聞いたぞ。

 

 

「なんですかそれ、聞いてないです。」

「言ってないしー。」

「…………ちなみにどれくらい違うもんですか?」

「んー……体感1.2倍増し位かなー……。」

「めっちゃすごいやんそれ。」

 

 

思わずショウコみたいなことを言ってしまった。

え?なんでそんな有利なこと教えてくれなかったの?

 

 

「属性武器はねー、基本の動きを身につけてから手にしてもらわないと……何ていうか、ちゃんとしなくなるー?」

「……えーっと、つまり、基本が出来てないうちから手を出すと、良くないということでしょうか。」

「そーそー。ヒドイやつなんか、モンスターが苦手な属性弾をライトボウガンでバババーッてやっちゃって、それで『勝った』みたいなー……。」

「あぁ……。」

 

 

なるほど。

そういう手合いを知らないわけではない。

パーティー4人、全員遠距離武器を用いて遠くから「ハメ殺し」なるものを行うというのを、聞いたことがある。

 

 

「そういう人たちはー……本当に強いヤツが現れたら、あっけなくやられちゃう。必要なのは、生きる力……生き残る力、だからねー。」

「…………。」

「ソウジのいろんな動きを見ているとわかるよー。ムカつくけど、マショルクが徹底してたんだねー。『死なない』ことを教えていたってのが、ビシバシ伝わるよー。」

「……教官には、そこは本当に、口を酸っぱくして教えられました……。」

 

 

まぁなるほど。

確かにその属性武器とやらを使って「俺強いわ!」って増長でもしてみたとして。

……調子乗って死ぬかもなぁ。俺アホだし。

 

俺がそれを使ってこれなかったことの理由は分かった。

 

 

「じゃあ……いつ頃ハンターって属性武器使っていいんですかね。」

「まぁ人にも武器にもよるけどー、上位いける実力があるならいいと思うよー?だからソウジもー、おっけー。」

「ど、どうも。」

 

 

どうやら俺は合格らしい。良かった。

 

 

「私はギルドに行きますが……セツヒトさん、ちょ、ちょっと……。」

「んー?なにー?」

 

 

ハイビスさんが出かける前、セツヒトさんを呼んで、なにやらひそひそ話している。

何だろうか。

 

 

「……あははー。そんなことないってー。」

「でもでも!一応あちらから誘われた訳ですから!」

「まー……そういう感じでは……。」

 

 

二人してこっちを見る。

白いモコモコのコートを着ているハイビスさんと、完全部屋着のセツヒトさん。

……な、何だ。

 

 

「…………そういう感じじゃ、無いっしょー?」

「そうですね……ソウジさんですから……。」

「そーそー。ソウジだからさー。」

 

 

…………よく分からんが、何やら失礼なことを言われている気がする。

 

 

「それでは、言って参ります!」

「はーい、気をつけてねー。」

「…………お気をつけて。」

 

 

バタン。

 

 

『さむぅ!!』

 

 

…………何だったんだ。

 

 

「…………何話してたんですか?」

「ん?女の子同士のひみつー。ふふー……気になるー?」

「…………やめときます…………。」

「おー?賢明だねー。」

 

 

触らぬ神に祟りなし。

やめておこう……。

 

 

「じゃー私は着替えてくるけど……覗かないでねー。」

「はいはい。」

 

 

この辺はいつものやり取りなんだが。

……なんだろう、この宿で二人きりというのも初めてである。

 

 

…………。

 

 

…………考えないようにしよう、よし。

 

 

* * * * * *

 

 

「あんまりいいの、無かったねー。」

「うーん……そうですねー。」

 

 

二人で雪の中訪れた武具屋は、一応の品揃えはあったものの、双剣は少なかった。

属性武器もあるにはあったが、数が少ない。

雪山のモンスターに強いという火属性の武器となると、これまた数が少なくなり……。

 

 

「まーまー、ソウジー。私が打ったその武器もー、中々いいやつだしさー。」

「そうですよね……ちなみに、この武器を強化するのって……。」

「んー、できなくはないねー。」

 

 

この村には一応の鍛冶場がある。

セツヒトさんも興味があったのか、道中そこを覗いだ

たが、なかなか本格的な造り……のように見えた。

流石、武器加工の村。

 

 

「……ただねー、そのソウジが使ってるハリケーン……その強化派生はサイクロンって言うんだけどさー。」

「サイクロン……。」

 

 

ハリケーンの次はサイクロンか。

世代的に、レッツでゴーな兄弟を想起させてくれる名前だ。

懐かしい…………。

 

 

「素材が厳しいかなー……。火山の鉱石を取りに行かなきゃならないしー、すぐには難しいかもよー?」

「そうですか……。」

「いい鍛冶場があったしー、貸してもらえたら私やってもいいんだけどねー。」

 

 

少し詳しく聞くと、その必要な鉱石とは「獄炎石」というもの。

5つほどあれば足りるが、何とその鉱石、火山のさらに中の溶岩に近い場所でしか採掘できない代物だという。

ポーチを一応確認してみたが、無い。

 

詰んだ。

 

 

「はぁぁ……。」

「まーまー、落ち込まないでよー。ハリケーンを強化しても、属性がつくわけでもないしさー。」

「そうですね……最終目標のジンオウガに届く武器ができたらなぁ、って期待してたんです。」

「そうだ……ねー…………あれ?」

 

 

セツヒトさんが突如止まった。

考え込むポーズ。

今日のセツヒトさんのファッションは、面倒くさいからとジーパンにモッコモコの茶色のコート。

めっちゃ似合っているのだが、フードをかぶり考え込む姿は少し怪しい。

 

何だ?

 

 

「どうしました?セツヒトさん。」

「…………ソウジー。問題。」

「…………は?」

 

 

何だ急に。

 

 

「ジンオウガの弱点属性って、何でしょーか?」

「へ?そりゃ……雪山に居るってんなら……火属性なんじゃないですか?」

「んー、半分正解ー。」

 

 

半分?

どゆこと?

 

 

「…………ごめんねーソウジー、私抜けてるわー……うーん、武具屋失格ー。」

「…………どういうことですか?」

 

 

よく分からんので、その真意を聞いてみる。

 

 

「…………ジンオウガはねー、苦手な属性がー、氷なのさー。」

「…………は?」

「だからー、氷ー。」

 

 

いやいやいや。

何を仰る。

 

 

「…………え!?何でそんな氷に弱いやつが、こんな雪山に現れるんですか!?」

「それはこっちが聞きたいよー……でもねー、ギルドの資料的にも、私の経験的にも、アイツは氷属性に弱いよー?」

「…………マジっすか。」

 

 

俺はすぐさまポーチに触れる。

情報画面起動、<モンスター情報>を確認してみる。

 

 

【モンスター名】ジンオウガ

【種族】牙竜種

【別名】雷狼竜、無双の狩人

【詳細】

山岳地帯の奥地に生息する牙竜種の大型モンスター。

青緑の鱗、頭部や背面、腕部などに立ち並ぶ黄色の甲殻、そして腹部や首回りなどを中心に生え揃った白色の体毛が特徴。

甲殻は「蓄電殻」、体毛は「帯電毛」と呼ばれ、戦闘の際にはこれらを利用して発生させた電気エネルギーを全身に纏う。

険しい山間部での移動を可能とするため、強靭に発達した四肢を持つ。特に前脚は著しく強靭な筋肉を備え、尋常ではない膂力を持っている。爪も極めて鋭利な形状をしており…………

 

 

長いよ!

部位の弱点とかは、背中や脚、頭部と書かれてはいるが、属性の弱点は書いてないし!

 

どういうこと!?

 

 

「…………セツヒトさん、一応俺のギフトのモンスターの記述みたいなところを見たんですが……書いてないです。」

「えー?マジでー?」

「マジです。……あ、あります!ありました!」

「おー、何てー?」

 

 

傍から見たら、目線を地面に落としながら何やらブツブツ言っている男と、それに応対する女性。

完全に変な奴らである。

 

気にせず画面を見ると……。

 

 

『…………弱点の属性は氷、続いて火や水に弱い。属性耐久力は高く、物理攻撃力の高い武器でも有効。』

 

 

有効。

物理でもいい。

 

……うーん。

 

 

「せつ……せっちゃんさん。属性は氷で正解みたいです。」

「おー。やっぱりねー。」

「でも、攻撃力の高い武器でもいいとあります。」

「あ、ホントー?……んー、でも作ってみたらー?」

「そうですか?」

「うん。双剣ってさー、手数の武器だしー?属性の力がそれだけかかる武器なのさー。馬鹿にできないよー?マジで。」

「な、なるほど。」

 

 

それは何か納得。

多分全近接武器の中で、一番手数が多いのって双剣だし。

一発のどでかいダメージっていうより、小さいダメージを蓄積させていく感じだもんな。

 

よし、方向性は決まった。

火属性武器はとりあえず置いといて、まずは氷属性だ。

ジンオウガを倒すために。

 

 

「じゃあセツヒトさん、もう一度武具屋に―――」

「ソウジー、ちょっとまってー。」

 

 

腕を引っ張られ、引き戻される俺。

な、何だ!?

 

 

「ど、どうしたんですか?セツヒトさん。」

「まーまー焦んないでよー?……ソウジー、ここで大先輩せっちゃんさんからの耳寄り情報でーす。」

「…………何でしょう。」

 

 

ふざけている感じではない。

むしろなんかニヤニヤして、今にも俺を弄り倒しそうないたずら顔である。

 

 

「…………氷属性の、私がおすすめする双剣は2つあるんだけどさー……必要な素材は何でしょー?」

「…………素材か…………!それを忘れていた。」

 

 

武器の加工にはモンスターの素材を使うことが多い。

モンスターの帯びる性質や特別な素材の特性を生かして、武具加工の職人たちの手により作られる。

セツヒトさんはそのエキスパートである。

 

 

「氷武器の素材なんですから…………まさか……!?」

「おー?気づいたー?」

 

 

またもニヤニヤしているセツヒトさん。

だが、まさか、まさか。

もしかして。

 

 

「…………ゴシャハギさんの素材が使えるってことですか!?」

「ピンポーン。だいせいかーい。」

「マジですか!?」

「ついでに言うとー、そのおすすめのうちの一つはー、ベリオロスの素材も必要でーす。」

「…………狩ってますよ!?俺!!」

「そーなのー。」

 

 

何そのちょうどいい感じ!?

ピタゴラ◯イッチみたいに気持ちいい感じ!

 

 

「いやー、ごめんねー?私も盲点だったよー。雪山にいるせいか、ジンオウガにも弱点は火属性だーって固定観念に囚われていたけど……思い出せてよかったー。」

「じゃ、じゃあ、氷属性武器に必要な素材は、もしかしたら……。」

「もうあるかも、知れないねー。」

 

 

これは嬉しい。

 

 

「…………ソウジー、よかったらさー、私に打たせてよ、その武器ー。」

「…………えぇ!?」

「ここの職人さん見てたら、加工したい欲求が滾って滾ってさー。めっちゃすごいんだよー?あのおじさん達ー。」

「おぉ、流石武具加工の盛んなミヨシですね。…………いいんですか?」

 

 

セツヒトさんが武器を打ってくれるなら、こんなに嬉しいことはない。

頑固そうな鍛冶屋の職人さんが、自分の仕事場を簡単に貸すとは思えないが。

 

 

「まー頼んでみてー、無理ならもうその人に丸投げしちゃおうよー。ソウジはとりあえずー、必要な素材があるか確認してみてー。」

「は、はい。」

「ちなみにこれから言うのはー、『ベルゲルブリザード』っていう双剣に必要なやつねー?」

 

 

俺はセツヒトさんの言う素材をメモすることに。

急いでアイテム画面と照合しよう!

 

 

「オサイズチの刃尾でしょー?ベリオロスの毛皮と上毛皮あればあるだけー、甲殻に堅殻、棘と牙と鋭牙もいっぱいでしょー?あとは鋭爪が少しにー、ゴシャハギの剛毛でしょー?あと竜玉ー。多分これがあればいけるよー。」

「ちょちょちょ、ちょっとお待ち下さい。」

 

 

口頭で伝えられるよくわからん素材名に四苦八苦しながら。

おれは銀行員さながらの照合作業を行う。

 

 

素材が揃えば、武器を作れる。

あのジンオウガに届き得る武器が。

 

 

俺はそのまま雪の中、一生懸命に素材を探し続けるのであった。

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