駄文かもしれませんがどうぞ。
第1話 世にも奇妙な5つ子達
「おい起きろ!花嫁の準備が整ってるぜ⁉︎」
眠っているやつを揺さぶると、そいつは気怠げに目を開けた。
「そろそろ式が始まるってのに、ガチ寝とはいいご身分じゃないか」
俺が呆れたように告げると、目を擦り。
「悪い……夢を見てたんだ」
夢?
どう言うことだと聞き返すより早く、答えを出してくる。
「アイツ……いや、アイツらとの夢のような日の夢をな」
……成る程な。
「確かに。アレほどの日々はそうそうねえもんな」
それは長くもなるはずだと、納得してしまった。
そう。これはウソのようで本当の話なのだから………。
5年前。
「……はあ」
「……どうした風太郎さんよ?いつも勉強してるお前が珍しいじゃないか」
「………ちょっとな」
「上杉 風太郎」は、所謂勉強の虫だ。
休み時間に俺以外の誰かと話すことは無く、高校生活において割と大切なクラスの連中からの評価も「勉学の邪魔」と切り捨てて気にも留めない。
学年1位の成績を誇りながらも、勉強に時間を費やし続ける勉強の虫………それがコイツなのだ。
勿論、普段なら午後の授業の前の今頃にも机に齧り付いているのだが………このケースは初めてなので、俺は困惑のまま話を聞く。
「相場の5倍の額の家庭教師?闇バイトじゃねえよな?」
「ああ……親父がバイトを見つけて来てな。なんでも、最近こっちに越してきた金持ちの娘さんらしいが……怪しさしか感じん」
切り出された内容の胡散臭さに眉を顰めると、お前もそう思うかという顔で続ける。
………ん?そう言えば。
「最近越してきた、ねえ……そういや今日、なんか見たことない美少女が居るとか騒いでたな。もしかしてそいつらじゃねえか?」
「そいつ"ら"……って、どう言うことだ? 奏ニ」
俺が思い出した事の内容に、風太郎が食いついた。
いつものコイツなら「下らん」で終わりなんだが……明日は槍でも降るんじゃないか?
「いや、俺も又聞きなんだけどよ?ここじゃない学校の制服着た美少女がウロウロしてたらしい」
しかも、1人では無く5人……この時期によくもまあこんなに来たものである。
なんせ、今は進級シーズンでも無く、夏休み明けから半月は経っている。
そもそも、高校で転校生というのも中々聞かない話だしな。
………ん?なんか偶然にしてはできすぎてるような。
俺は、突拍子もなく出した推測を投げかけてみることにした。
「案外、その5人の家庭教師だったりしてな……お前、教え切れるのか?」
すると、風太郎は顔を少し青ざめさせ。
「怖いこと言うなよ……ほら、午後の授業が始まるから戻れ」
俺は予鈴が鳴る前に、自分の席に追い返された。
予鈴が鳴ると、担任が軽く話をしてから、午後の授業が始まるのがこの学校の時間の流れである。
そんなのいいからとっとと授業進めて帰らせろと思うのだが……こう決まってるのだから仕方ない。
だが、俺と似たような考えをする奴は多いもので、大体この話は聞き流すのが定例となっているのだが………今日は違った。
「おい、まさかこのクラスに来るのか!」
「奏ニ!そこ変われ!」
「誰が変わるかっての!」
「うるさいぞお前達!」
俺の隣に空席が置かれたことにより、先程の「5人の美少女」のうちの1人が、このクラスに来ることが確定したからである。
クラスメイトとのやり取りの末に、担任に怒られたので大人しく座って、その転校生とやらを待つことにする。
その静まりを確認した担任が、ドアの外に手招きをすると………
「……成る程、確かに美少女だ」
ウェーブがかかった赤髪を靡かせ、星型のヘアピンを左右につけた少女が教室に入ってきた。
そして、そいつは教室において一番視線を集める場所……つまりは教壇の上に立ち。
「中野 五月(なかの いつき)です。 どうぞよろしくお願いします」
よく通る声で自己紹介をした。
途端にクラスの中はざわめきだす。
男子は美少女の降臨に浮き足立ち、女子は来ている制服にどよめく。
「………なあ、あの制服ってそんなにすごいのか?」
気になって、前の席にいる女子に話しかけると。
「町谷(まちや)君、あの制服を知らないの⁉︎
アレは黒薔薇女子学院って言う、超お嬢様学校の制服なのに……」
「名前は聞いたことがあったけど、あれがそれかよ…」
興奮冷めやらぬといった感じで食い気味に話してきたので、ちょっと引きながら返事をする。
黒薔薇女子学院とは、かなりの家のお嬢様がこぞって通うとんでもなく厳しい事で有名な学校の事だ。
そんな学校の制服を着ていると言うことは……コイツの家は相当な金持ちなのだろう。
アイツの受けたバイトの内容と被るよな、と風太郎の方を伺うと。
「……………」
「………アイツ何やった?」
周りの空気とは対照的に、頭を抱えていた。
レアシーンのオンパレードだな、と思っていると転校生……中野があてがわれた席にやって来る。
「……どーも」
「………!」
その途中で、風太郎が見たこともないような顔で挨拶をするが、中野はプイッとそっぽを向いた。
「……アイツ、何やった?」
大事なことなので2回目入りました。
やや不自然なそのやりとりに疑問符を抱える俺に、周りから視線が飛んできた。
…………「情報を引き出せ」か。
「任務了解っと……」
担任にバレないようにサムズアップで応えると、隣に座った中野に。
「アイツとなんかあったのかい?」
視線だけ向けて話しかけると。
「………話したくありません」
頬を少しだけ赤らめて、答えた。
話したくないってことは、アイツが失言でもしたのだろう。
……しょうがねえ奴だ。
「アイツは無神経の鑑みたいな奴だが……決して悪い奴じゃないぜ」
「………いきなりなんなのですか?
それに、あなたの顔をどこかで……」
警戒の視線を送ってきた中野。
なんか、聞き捨てならない事を言っているようだが……取り敢えず、自己紹介をさせてもらうことにしよう。
「俺は町谷 奏ニ(まちや そうじ)。
……ある男の言葉を借りるなら、
逃げも隠れもするが、嘘はつかない町谷 奏ニだ」
これが、奇妙な五つ子とその家庭教師………彼らの物語に俺が組み込まれた瞬間であった。
翌日。
「焼肉定食の焼肉抜きで」
「お前、またその精進料理かよ……あ、俺は天ぷらうどんで」
「これが一番コスパがいいんだからいいだろ……先行ってるぞ」
昼休みの食堂にて、俺は風太郎から話を持ちかけられた。
それは………。
「どうやったらアイツのご機嫌を取れるかを考える」と言うことだ。
話を聞くと、昼食時に中野と学食で先んじて会っていた風太郎がかなりの量を頼んだ中野に対して爆弾発言をかましたらしい。
それで家庭教師の件の話がお流れになったら借金返済が遠のいてしまう為、何とか話を保とうってわけだな。
「素直に謝ればそれで解決だと思うけど……あいつ、ジジイみたいな頑固者だし…」
まあ、暇潰しにはなりそうだし協力するけどさ。
そんな訳で出来た定食を受け取り、風太郎の後を追うと。
「おい、友達と食べてるんだが……」
「いや、それで驚かれても困るぜ……?」
中野は、他の女子達と同席していた。
慄く風太郎だが……驚きのレベルが低すぎやしないだろうか。
なかなかに失礼な話である。
しかし、昨日お嬢様学校から越してきたやつが、いきなりこんな大勢の友達を作れるのかと考えれば……ちょっと考えにくいのもまた確かだ。
と、ここで中野は俺たちの視線に気づいたのか、してやったりと言わんばかりに告げた。
「席は埋まっていますよ?」
「……奏ニ、別の場所に行くぞ」
「え?お、おう……」
旗色が悪いと判断したのか、風太郎が別の場所に行こうとすると、席にいた女子達の1人が。
「あれ?行っちゃうの?」
俺達に声をかけてきた。
その子はショートカットで、制服をかなり着崩していた。
おまけに胸元を開いており……目のやり場に困るので目線を上げると、中野と顔立ちがどこか似てるような……?
姉妹か双子か?
「2人とも席、探してたんでしょ?
私たちと一緒に食べていけばいいよ」
その子の申し出に、特に断る理由もない俺が承諾しようとすると風太郎に制された。
「食えるか!」
中野とのトラブルがあったからか、それとも女子数人と飯を食うことに危険を感じたのか、断固とした口調で断りを入れている。
「……」
人間関係への考慮を微塵も感じられない断り方だが、それを受けた反応は……
「なんでー?
美少女に囲まれてご飯食べたくないの?
彼女いないのに?」
「き、決めつけんな!」
「まあ、彼女どころか友達も全然いないけどな」
「おい、プライパシーの侵害だぞ!」
意外や意外。
面白そうなおもちゃを見つけた、と言わんばかりの質問責めだった。
どうやらコイツはいじめっ子気質でもあるらしい。
珍しく風太郎が女子生徒と話をしているのを横目に同席していた女子達に話を振る。
「アイツ、あんなこと言ってるけどアンタらはいいのか?」
すると、この中で唯一身元が判明している中野が答えてくれた。
「彼と話さなければ良い話なので、それで構いませんよ。尤も………彼はもういませんが」
そう言われて横を向くと確かにアイツは別の席に避難していた。
本来なら俺もその後を追うべきなんだろうが……正直、この色々と謎な面々に興味が湧いたので残る事にしよう。
「なら、ここでご一緒させてもらうかな……」
すると、風太郎と話していた奴が意外そうな顔で。
「あの子の友達にしてはノリがいいね。私の前の席においでよ」
そう言われて向かいの席を差し出されたので大人しく座る。
「それで、君も五月ちゃんが狙いなのかな?」
「狙いって訳じゃ………まあ、気になった事があるのは事実だけど」
すると、ズイと顔を近づけて。
「ふむふむ。お姉さんに話してみなよ」
整った顔立ちの女子に詰め寄られてちょっと気恥ずかしいものがあるが、改めて見ると本当に似ている。
きっとコイツと中野が家族なんだろうが……確認してみるか。
「アンタらは中野と姉妹か双子なのか?顔立ちが似てるというか似すぎと言うか…」
「へえ………なかなか鋭いね」
口に出た疑問にそいつは、いたずらを思いついたような顔をする。
「じゃあ、私たちは何人姉妹でしょうか?」
「姉妹だったのね。人数は2人か3人……」
問題を出されたので、他の女子達にも改めて目を向けると…………なんと、そいつらも似たような顔立ちをしていた。
まさかとは思うが……
「4人……いや、今上杉のところに行ったやつを含めて5人か?」
確か、日本人女性が一生に生む子供の人数は平均的に1人か2人。
それを5人も同時期に産むなんて、普通はありえない。
そんな常識のもとに半ば冗談で答えると。
「………大正解!」
「マジで⁉︎」
まさかの返答が返ってきたのであった。
その日の夜。
「しっかしまあ、5つ子で同い年、更には全員ハイレベルな美少女とはね……」
家のリビングにて、パソコンをいじりながら俺はひとりつぶやく。
ちなみに家には誰もいない。
一人暮らし………と言うより、天涯孤独ってやつだ。
今は、遺産と何でも屋の仕事で食い繋いでいる。
とは言っても、何でも屋の仕事は放課後と休日しかできないので、主に遺産を切り崩しながら生活しているのだ。
にしても……。
「家庭教師、ね………風太郎ほどじゃないにせよ、学力はそれなりにあるし、仕事の一つに取り入れても良いかもな」
誰かの返事もない言葉を紡ぎつつ、何か依頼はないかとネットサーフィンを続けていると、電話が鳴ったので応対する。
「はい、こちらよろず屋町谷ですが」
仕事の依頼かと思い、業務口調で話しかけると男の声が聞こえてきた。
「………町谷奏ニ君でまちがいないね?」
「……よくご存知で。仕事の依頼ですか?」
よろず屋を訪ねるかと思いきや、いきなりフルネームで呼んできたソイツに警戒を強めて聞き返す。
すると、その男は。
「……僕は中野。君のお父さんには世話になったよ」
「中野……?」
今日越してきた転校生と、同じ名字を名乗ってきた。
「そこまで珍しい名前でもないだろう?」
「……いやあ。偶然今日同じ名字の知り合いができたもんで」
「……成る程、同じ学校の同級生と言うわけか」
「………待ってくれ。まさかそちらさん、5人の娘を持つ父親とか?」
納得したような話の進め方に、待ったをかけて聞くと。
「ああ。旭高校……君が通っている高校にね」
「………あの5つ子の父親か。で、そんなお方が俺に何の用件で?」
まさか、転校生の父親から名指しでの電話が来るとは。
世間は狭いなと改めて感じながら続きを促すと。
「単刀直入に言うと、僕が雇った家庭教師のサポートをしてもらいたい」
「んな⁉︎」
とんでもなくタイムリーな内容に俺は変な反応を返してしまった。
「どうかしたのかね?」
「いや、その家庭教師に心当たりがあるもんで……」
頭に双葉をのっけたあの男が思い出される。
「彼の友人だったか……なら、話が早い。
彼が1人では流石に荷が重いとのことで、君を指名してきたのさ」
やっぱりあの男だったか。
そして、やっぱり無理だったか。
「俺、アイツほど頭は良くないんですが」
俺の平均は75点くらいで、100点の常連である風太郎と比べると見劣りしてしまうだろう。
「基本的には彼が仕切るので、それをサポートしてくれればいい。勿論報酬は出そう」
そうして告げられた金額と条件はこんな感じだ。
1人につき1回2500円
月一で経過を報告すること
俺が赤点を叩き出したら即解雇
家庭教師の相場がどれくらいかはわからないが1日で12500円稼げるとなれば相当なものだろう。
「どうだね?」
今日のやりとりから、なんとなくアイツ1人じゃ手に負えない光景が目に見える。
……と言うか、一人で5人も見るなんて普通の家庭教師でも難しいだろう。
「……分かった。その依頼を引き受けますよ」
「………では、よろしく頼むよ。娘や彼には私から伝えておこう」
こうして、家庭教師補佐という新しい仕事が俺の元に舞い込み……これが、俺のこれからの人生に大きな影響を与えてくるとは、この時の俺は思いもしていなかった。
いかがでしたか?
ここで主人公の設定を。
町谷 奏ニ(まちや そうじ)
高校2年生
身長 165cm 体重55kg
誕生日 9月13日
好物 エビフライ
主人公。
面倒見が良く社交的な性格で、上杉風太郎の数少ない友人。
5つ子の家庭教師を行う事になった風太郎によって、補佐役に指名された。
産まれてからすぐに家族を事故で亡くし、預けられた施設も無差別犯罪に巻き込まれて、そこの職員や子供達とも死別するという悲惨な過去を過ごす。
たまたま何でも屋をやっていた「町谷 奏一」に拾われて、そこで様々なことを学んだので、基本的に何でもできる。
彼の病死後に尊敬していた「奏一」を由来として「奏ニ」を名乗り、名字は町谷をそのまま使用しているので、本名は別にある。
茶髪でヘアスタイルは後ろに一本の長い三つ編みだが、これは施設での思い出の現れである。
だいたいこんな感じです。
次回は5つ子と本格的に絡んでいきますので、どうぞよろしくお願いします。