五等分の花嫁 家庭教師の二重奏   作:暇人の鑑

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今回は少し短いです。

過去編を入れるとえらい長さになりそうだったので短くしました。

奏ニの秘密
好きな漫画は「最遊記」だが、「西遊記」をよく知らない。


第2章 それぞれの恋
第11話 0点と初恋は誰だ


 ポニーテール。

 

 馬の尻尾のようだからと名付けられた髪型の一つであり、浴衣や七夕の織姫に似合うからと、7月7日にはポニーテールの日というものがあるんだとか。

 

 

……なんともアホらしい理由だが、日本人はこういうアホな日を作り出すことに関しては天才的なので仕方がない。

 

 なんせ、信仰心の薄さから、いろんな宗教から面白そうなイベントだけをかき集めて自国の文化にしちまうという、敬虔な信者からしたら無礼極まりない行為を平然とやらかす国だからな。

 

 勇者にも程があることをしようとする奴もいれば、それと紙一重なバカなことをする奴もいるもんさ。

 

 

 

……いかん、話が逸れた。

 

 と言うか、どうして俺がこんなことを考え出したかと言うと……それは、目の前に広がるポニーテールの園が原因だった。

 

 

 風太郎が病院から退院して、はじめての家庭教師の日。

 

 俺が5つ子達が住まうマンションの部屋に入ると。

 

「……お前ら、何やってるんだ?」

 

 目の前には髪型をポニーテールに変えた5つ子と、その5人を前に難しい顔をしている風太郎がいた。 

 

「私も今聞こうとしてたのよ……今日は家庭教師の日じゃなかったの?」

 ニ乃がそう聞くと、風太郎は。

 

「なんだニ乃、らしくもなく前のめりじゃないか」

「ニ乃は私よ」

「ボケ老人か、お前は」

 

 何故か三玖を見て意外そうに話し出したので、実はまだ入院してた方が良いんじゃないかと思っていると、意を決したように。

 

「一花、ニ乃、四葉、三玖、五月だ‼︎」

「ニ乃、三玖、五月、四葉、一花よ‼︎」

「お前、ニ乃と三玖は正解しろよ…」

 さっき訂正されたところも不正解じゃねえか。三玖の頬がどんどん膨れてんぞ。

 

 と、俺たち6人から微妙な視線を受けていた風太郎が仕切り直すかのように。

「………と、このように、なんのヒントもなければ誰が誰かもわからない。最近のアイドルのようにな!」

 

「それはフータロー君が無関心なだけでしょ」

「本人を前によく言えたなお前……」

「いちいち揚げ足取るな…ここからが本題だ!」

 

 そう言って机の上に出したのは……

「全教科0点…」

 

 名前は破られているが、全て0点の答案用紙だった。

 

 

 

 風太郎が言うには、10分前に来た時にバスタオル姿の奴が罵声と共に投げつけてきたらしい。

 

 

 つまり、このテストはのび太くんのテストではなくこの5人のうちの誰かってわけだが……

「これちょっと前にやった小テストのやつだな……ご丁寧に名前は破られてるが」

「バスタオル姿でわからなかったが犯人はこの中にいる!

 

……四葉、白状しろ!」

「当然のように疑われてる⁉︎」

………まあ、四葉には悪いがとってても不思議じゃないんだがな。

 

「顔さえ見分けられるようになれば、今回のこともスキーの時みたいな一件も起きないだろうからな」

「それでこの髪型だったんだ」

「反省してます…」

 この姉妹の顔立ちは、ちょこちょこ違いはあれども基本的には同じなので、風太郎にはまだ早そうな気がするが……やる気に水を差すことはしない。

 

 

「あの五月はマスクさえなければ私たちもわかったんだけど」

「なんでお前らは、顔だけで見分けがつくんだ?」

 ニ乃の呟きへ問いかけた風太郎に、ニ乃と三玖が互いを見合わせて。

 

「は?」

「なんでって……」

 

 

「こんな薄い顔三玖しかいないわ」

「こんなうるさい顔ニ乃しかいない」

「薄いって何?」

「うるさいこそ何よ!」

 

 

 互いの顔についての評価が気に入らないのか、2人の間に火花が散っていた。

 

 まあ、この2人がこうなりやすいのは前の料理対決でなんとなく分かってるのでそっとしておこう。

 

「奏ニ、お前は?」

 風太郎も同じことを考えていたのか、俺に振ってきたので。

「一花は悪戯小僧、ニ乃はネコ、三玖は眠そうで四葉は能天気……五月はそれっぽくなければそうだぜ」

「悪戯小僧って、女の子の顔の評価じゃないよ?」

「最後、考えるのが面倒くさくなってませんか?」

「お前の場合は髪型が特徴的な分、顔は普通なんだよ……要はバランスがいいってことさ」

「そ、そうですか……それなら最初からそう言ってください!」

 実際考えるのが面倒だったのだが……世の中には知らない方が幸せな事もあるもんだ。

 

 俺と一花、五月がやりとりをしている隣で四葉が風太郎に。

 

「良いこと教えてあげます。

 

 

私たちの見分け方は、お母さんが昔言ってました。

 

 

「愛さえあれば、自然とわかる」って!」

 

「どうりでわからないはずだ……」

「抽象的すぎる……ともかく、俺の顔での見分け方はこんな感じだぜ」

「俺からみれば同じに見えるんだが」

「なら髪の長さとかで……」

 

 俺と風太郎で見分け方について話し合っている隣で、一花と五月が髪を解いた。

 

「もう戻しても良いかなー?

 

 なんで今日はそんな真剣になってるんだろ」

 すると……風太郎が、なんとその匂いを嗅ぎ始めた。

 

「え……えっ?」

「なんかキモ……」

「おいおい、それはアウトじゃねえか?」

 

 突然の奇行に三玖は困惑し、ニ乃と俺が引いた視線を送っていると風太郎は何かに閃いたように。

 

「これだ!お前達に頼みがある!

 

 

 俺を変態と罵ってくれ‼︎」

 

「………ッ‼︎」

 

 突拍子もないことを言い出したのに、俺は吹き出してしまった。

 

 そんな風太郎に引いた視線を送る姉妹達は少し話し合い…ニ乃が代表するように。

「あんた……手の施しようのない変態だわ……」

「そう言う心にくるやつじゃなくていい!」

 

 ニ乃はこう言う罵倒に関しては板につくと笑いながら考えていると、三玖が今度はホクロで見分けることが出来ると言い出した。

 

 

 しかし、こいつらの顔にホクロはなかったような気がするが……。

 

 

 だが、風太郎はお手軽な見分け方だと、嬉々としてどこにあるんだと聞く。すると……何故か三玖は仰向けに寝転がり。

 

 

「フータローになら、見せても良いよ?」

「ダメです!」

「どこのホクロ見せる気だ⁉︎」

 

 なんだかR18なことを言い出そうとしていたので、五月と俺が待ったをかけた。

 

「そもそも、犯人のホクロを見てないと意味がないでしょう…」

「それもそうか……」

 

 五月が風太郎を諭す隣で俺は体だけ起こした三玖に。

 

「そこまで出来るなら、いっそ既成事実でも作っちまうのも手かもしれないぜ?」

「え?………ああ……」

 冗談めかして言ったのだが……三玖は少しの間を置いてモジモジとし始めた。

「三玖さん?一体どうした?」

「……ま、まだ私たち高校生なのに、子供は早いよ……でも……フータローとの子供……あっ、ダメ……やめないで……」

「冗談で言ったのに本気にされちまった…」

「あんたはなんてことを唆してんのよ⁉︎

 ……三玖も、声に出てるから早く帰ってきなさい!」

 ただの戯言のつもりで言った言葉が、三玖の妄想の着火剤となってしまい、顔を赤くしたニ乃からツッコミを受けた。

 

 すると、一花が一石を投じるように。

「フータロー君……もしかしたら、この中にいないのかもしれないよ?」

「どう言うことだ?」

「落ち着いて聞いてね。

 

 

 私達には、隠された6人目の姉妹………六海がいるんだよ!」

「おい、一度に何人産んでんだ」

 

 平均出産人数を、一日で更新しすぎてギネスでも取れるんじゃなかろうか。

 

 そのことを打診しようかと口を開きかけた時。

「なんだってー‼︎

 

 む……六海は今どこに…」

「ふふふ……あの子がいるのは、この家の誰も知らない秘密の部屋……」

「なんだ、ただの作り話か」

「勝手にやってろ……となると、残された手がかりはこの答案用紙か」

「そうなるな……俺にもよく見せてくれよ」

 

 広げられた答案用紙を見ていくと……一枚ずつに文字の書き方や消し方、用紙そのものの状態が違う。

 

 

「1人が全て0点取ったとしても、こうも状態がばらけるもんかな……」

「名前の破られ方は同じだぞ?」

「そこが妙なんだよな……」

 

 こうして悩んでから少しして。

「………ややこしい顔しやがって!

 

 こうなったら最終手段だ。これを使わせてもらう」

 

 焦れたように叫んだ風太郎が取り出した紙は……問題集だった。

 

 

「はーい、一番乗り」

「んぁ……一花が一番とは珍しい」

 微睡んでいた俺の目を覚ましたのは、一花の終わった宣言だった。

 

 風太郎の最終手段とは、あの問題集を解かせて点が取れなかった奴が犯人……と言うより、筆跡を見比べる事だった。

 

 他のやつを見ると、目を回してるやつや手こずっている奴ばかりだ。

 

 あれ、そんなに難しい問題あったかな……?

 

「ソージ君?補佐とは言え君も家庭教師でしょ?居眠りとはお姉さん感心しないぞー?」

「だって眠いんだもん……お前もわかるだろ?」

「まあ、この時間は寝る時間だよねー」

「だろ?」

 そうして2人で笑い合っていると、呆れたような顔の風太郎が。

「おい奏ニ。んな事言ってるなら、ノート見せてやらんぞ」

「悪い悪い。……んで、どうしたよ」

「ああ……ちょっと犯人に話があってな」

 

一花の頭に答案用紙を乗せた。

 

「……お前が犯人か」

「……あれっ、なんで?筆跡だって変えたのに」

 

……いま、なんか他の奴らがホッとしたのは気のせいか?

 

 俺が目を向けると、露骨に目を逸らし出したので、気のせいではないようだ。

 

 そんな無言の応酬の横では、風太郎が推理していた。

「ここ……bの書き方。

 

 1人だけ筆記体で書くことは覚えてた。

 

 

 俺はお前たちの顔を見分けられるほど知らないが、お前達の文字は嫌と言うほど見てるからな」

 

………まさに勉強の虫に相応しい推理方法だな。

 

 

 そして、一花は……ガックリと膝をついた。

「やられた〜」

「フハハハハハハ!」

 

 高笑いをする風太郎に五月がそろそろと。

「あのー、一応私たちも終わりました」

「ご苦労。ひとまず採点を……」

 

他の4人分の答案を渡し、それを勝利に酔いしれるように受け取るが……すぐに怪訝な顔をした。

 

「どうした?」

「五月の「そ」……これ、あの答案用紙になかったか?」

「………たしかに、あったな」

 

 風太郎の確認に俺が答案を見ながら答えると、五月がビクッとした。

 

「………ニ乃のこの「門構え」と同じのも別のやつにあったぜ」

「……他は?」

 

 ニ乃が余計なことに気づきやがってと言わんばかりに、こちらを睨みつけ。

 

「三玖の「4」……四葉の送り仮名も全部違う紙にあるな」

「………」

 三玖が目を逸らし、四葉がお祈りのポーズを向けてきたが……もう言ってしまったから遅い。

 

 そして、風太郎がワナワナと震えたかと思えば。

「お前ら………1人ずつ0点の犯人じゃねーか!」

「………バレた」

 

 と、今回の結論を叫んだ。

 

「俺が入院してた途端これか………おい奏ニ!お前ちゃんとこいつらの勉強見てたのかよ⁉︎」

「見てたわ!見ててこれな俺の気持ちを考えろってんだ!」

 

 一応この範囲の小テストがあるからって事で釘を刺して、一通りやったんだが……どうやら、それっきり勉強をやってなかったようだ。

 

 落胆する俺と風太郎に、五月が囁く。

 

「上杉君……今日あなたが顔の判別にこだわったのは、昨日話してくれた5年前の女の子と関係があるのでしょう?

 

 

 私たちの中の誰かだったと思ってるんですね?」

「……あの写真の子の話か」

「写真の子?」

「奏ニにはそう話してるだけで同じ子を指してると思うぞ…そして、五月の言う通りだ」

 

「……なんか、物語みたいな関係性だな。お前ら」

 

 前に俺は「なんでそんなに勉強するんだ」と聞いた。

 

 その時に話してくれたのだが……こいつには初恋の子との約束がある。

 

 修学旅行で行った京都にて。

「一生懸命勉強して、必要ある人間になれるように頑張る」ってその子と約束をしたんだとか。

 

 そのためにこいつはここまで勉強をしていたのだ……まあ、呆れるほどに一途な奴だと言っておこう。

 

 そして、その初恋の子がこの中にいるとしたら………なんかもう、運命を信じない俺でも、運命めいたものを感じてしまう。

 

 

……おっと、らしくもなく感傷に浸ってしまった。

 こんなのは俺じゃない。こんな俺じゃ、アイツらに合わせる顔が……。

 

「……町谷君?」

「ん?」

「どうしたのですか?なんだか辛そうですが……」

「あら、まだ眠そうだったか?ならもう一眠りするかな」

 

 どうやら顔に出ていたらしく、五月が心配そうな目を向けていたので慌てて誤魔化していると。

「………と思ったが、この中で昔、俺に会ったことがあるよって人ー?」

 

 タイミングよく風太郎が話題を晒してくれた。

「何よ、急に」

「どう言うこと?」

 

 当然、寝耳に水と言わんばかりにニ乃や三玖が首を傾げている。

 

 すると、風太郎はなぜかホッとしたような笑みを浮かべて。

 

「そりゃそうだよな。

 

 そんなに都合よく近くにいるわけがねえ。

 

 

 それに………お前らみたいな馬鹿があの子のはずがねーわ」

「ば……馬鹿とはなんですか」

「0点取るようなやつを馬鹿って言うんだと思うが」

 

 ヒヤリとさせられた仕返しも込めて乗っかってやると、風太郎が頷き。

「そう言うことだ……よくも0点のテストを隠してくれたな?五月。

 

 今日はみっちりと復習……」

 五月に話しかけようとしたらしいがそれは………

 

「もしかして、わざと間違えてる?」

「……あれ?」

「フータローのことなんてもう知らない」

「す、すまん!」

 先程何度も訂正された三玖であり、拗ねた三玖に謝り倒すのをみんなで笑って見ている中で……俺はふと考えた。

 

 

 あの写真の子は、母親の遺影の前で泣いていた奴らの1人……つまり、本当にこの5人の中の誰かだったのでは?と。




いかがでしたか?

次回からは姉妹たちの心情が変化していく「7つのさよなら」に入っていきます。

 お楽しみに!
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