五等分の花嫁 家庭教師の二重奏   作:暇人の鑑

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12話です。

今回からは「7つのさよなら」のストーリーに入ります。

ぜひ、楽しんでいってください。

奏二の秘密
胸か太ももか尻、どれが好きかと言う問題を長らく脳内で議論している。


第12話 期末前の亀裂

「遅いですね……」

 

 期末試験が迫ってきた中で、いつもの勉強会をやるべく俺は中野家にやって来たのだが……何故か風太郎が来なかった。

 

「……休むって連絡もないぜ」

「折角みんな集まっているのに、何をして……」

 五月が首を傾げていたのでスマホを見るが……風太郎からの連絡はない。

 

「ねえ?アイツが来ないなら今日は休みで…」

「俺がいるから休みにはならんぞ」

 参加するようにはなったものの、まだモチベーションが低いニ乃に釘を刺しておくと、五月が焦れたように。

 

「ちょっと見てきます」

「脱走すんなよ?」

「しませんよ!」

 

 外に出て行ったかと思いきや。

 

 

「町谷君、ちょっとこっちに来てください!」

 

 

 慌てたような口ぶりで、俺を呼びにやってきた。

 

 

 何事かと思ってきた俺の目に飛び込んだのは、死んだような顔をして眠る風太郎の姿だった。

「死んだように寝てる……」

「コイツ、またやったな……」

「また?」

 

「コイツの習性だ。

 勉強のあまり朝までオールさ………ほら、起きろバカ野郎」

 五月に軽く返した俺が、地べたで眠る風太郎をゆすると。

 

「またやってしまった……勉強に集中しすぎて気づいたら朝だった」

 のそりと起き上がりながら、やっぱりそれだったことを白状した。

 

「勉強でそこまで集中できるか……本当、お前の頭はいったいどうなってんだ?」

「朝勉は効果的らしいぞ?」

「朝まで勉強することを朝勉とは言いません」

 一夜漬けが正しい表現だな。

 

 

「お前がおせーから、俺らで先に始めてたんだ。さっさと目を覚ましな」

 五月の後を追う形でリビングへ戻りながら風太郎に話しかけると。

 

「まあ、そう慌てるなよ……試験まで後1週間。

 

 俺だってただ闇雲に勉強してたわけじゃない」

 

 なんだか悪い顔を浮かべ出したので俺と五月は後ずさる。

 

「町谷君?私なんだか嫌な予感がするのですが」

「……奇遇だな。俺もだ」

 

 互いに引き攣った笑いしか出ないでいる前で、カバンを漁っていた風太郎は。

 

「……これを用意した!

 

 今回の範囲を全てカバーした想定問題集だ。

 

 人数分用意したので、課題が終わり次第始めてもらうぞ…これを一通りこなせれば勝機はあるはずだ」

 

 

 やたらと分厚い紙の束を取り出した。

 

「………!」

「良かったな五月。期末テストの攻略本だぞ」

 

 俺が冗談めかして言うと、呆気に取られていた五月はその紙束の受け取りを拒否した。

 

「や、やっぱ今日の約束はなしで!お引き取りください!」

「逃げんな!お前がこれをお引き取るんだよ!」

 

 だが、結局押し切られることになり顔を青ざめさせることになった。

 

 意外と感情表現が豊かな五月だが、その問題集を見て……負けたと言わんばかりに苦笑した。

 

「……呆れました。まさかこれが原因で徹夜したんですか?」

「そ、そんなことはどうでも良いだろ?

 

 

 お前たちだけやらせてもフェアじゃない。

 

 俺がお手本になんなきゃな」

「……だ、そうですよ?町谷君」

「生憎、誰かの手本になろうだなんて立派な志は持ち合わせちゃいないんでね」

 したいやつは勝手にすれば良いのであり、そんなものを意識してると肩が凝ってくるからな。

 

 ……まあ、さらっとこちらも頑張らざるを得ない状況にしやがった風太郎や、なんだか失礼な五月に文句の一つも言ってやりたいところだが……今日は勘弁してやろう。

 

 

「つーか、誰か逃げ出さないうちに行こうぜ」

「は、はい。そうですね……また二乃を引き留めるのは骨が折れそうですから」

「やたら休みにしようとしてたと思えば、そんなことしてやがったのか」

「成る程成る程……それじゃあ、一言灸をすえてやらねばならんな」

「あの…揉め事は勘弁してくださいね?

 

 時間は限られてるんですから、仲良く協力し合いましょう!」

 

 なんだか深夜のテンションを引きずってそうな風太郎と冷や汗をかく五月の後を追ってリビングへ向かうと。

 

 

「三玖、この手を退けなさい!」

「二乃こそ諦めて」

「はあ?あんたが諦めなさい」

「諦めない」

 

 

 二乃と三玖の間でチャンネル争いが勃発していた。

 

「みんなで……なんだっけ?」

「……仲良く、協力しあう筈だったんですが」

「はぁ……お二人さん、何やってんの?」

 

 

 風太郎が2人に話しかけると。

「今やってるバラエティに、お気にの俳優が出てるのに三玖が……!」

「この時間はドキュメンタリー……今日の特集は見逃せないのに二乃が……フータローはどっちの番組がいい?」

「勉強中は消しまーす」

「「あー⁉︎」」

 

 予想通りのチャンネル争いだったが、選ばれたのはバラエティでもドキュメンタリーでもなく、真っ暗闇だった。

 

 反応が被ったかと思えば、そっぽを向き合う2人を前に風太郎と一花がため息をつく。

 

「前から思ってたが、あの2人仲が悪いのか?」

「んー、どうだろう。犬猿の仲って奴?

 

 特に二乃はあんなふうに見えて一番繊細だから。

 

 衝突も多いんだよね」

 威勢のいいやつに限って豆腐メンタルってケースは、施設でもよく見たな。

 

 そう言うやつは、扱いに困ったものだ。

「はーい!みんな再開するよー」

 

 一花がそんな二乃達や四葉、五月に勉強の再開を促し。

 

「それじゃあ2人とも?

 

 

 これから1週間、私達のことをお願いします」

 

 俺たちにも、勉強会を始めるように促すのであった。

 

「……ああ、リベンジマッチだ」

 

 

 そんなこんなで勉強会が始まったのだが……新たな問題が発生した。

 

「あ、それ私の消しゴム!」

「借りただけ」

 

三玖が二乃の消しゴムを使い。

 

「……それ、私のジュース」

「借りるだけよ……まずっ⁉︎」

 

二乃が三玖の抹茶ソーダを吹き出し、またも2人の間に緊張が走った。

 

 やっと5人揃って勉強をするようになったのだが……それだけで上手くいくわけがないと言うことだ。

 

 

 そこで、どうしたらみんなで仲良く勉強してくれるかを試してみることになった。

 

 

作戦① みんな仲良し作戦 by四葉

作戦内容

「きっと2人は慣れない勉強でカリカリしてるんです。上杉さんがいい気分にのせてあげたら喧嘩も治まる筈ですよ!」

 

実践結果

 

「はっはっは!

 

 いやー、いいねえ」

 

 なんだその作り笑顔は。のっけから笑わせにくるな。

 

「⁉︎」

 ほら、三玖達もおかしなものを見るような顔してる。

 

「2人ともいい感じだね。

 

 なんというか……凄くいい!

 

 

 しっかりしてて……健康的で………

 

 

 良いね!うーん………偉い!」

「褒めるの下手くそ⁉︎」

「笑かしにきてるだろそれ!」

 

 褒めるところを考えてないのが丸わかりである。

 

「どうしたのフータロー?」

「気持ち悪いわね」

 三玖が心配そうな顔をする一方で、二乃は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

「気持ち悪くはないから」

 

「本当のことを言っただけよ」

 

「それは言い過ぎ。取り消して」

 

「あれー?って事は、あんたも少しは思ったんじゃない?」

 

 

 これはもう失敗としか言いようがない。てか、笑いすぎて腹が痛い。

 

 

 

 てなわけで次の作戦だ。

 

作戦② 第3の勢力作戦 by一花

 

作戦内容

「あえて厳しく当たることで、ヘイトがフータロー君へ向くはず。

 

 共通の敵が現れたら2人の結束力が強まる筈だよ」

 

 

 と、ここで風太郎が難しそうな顔をした。

 

「どうした?ノンデリカシーはおまえの十八番じゃないか」

「どういう意味だ。一応それなりに頑張ってるアイツらに、強くいうのは心が痛む…」

「あなたにも人の心があったのですね」

「『一応』とか『それなり』ってつけてる時点ですでに失礼な気がするぞ」

 

 俺と五月のツッコミを聞かなかったことにした風太郎は、とりあえずやってみる事にしたようだった。

 

 作戦結果

 

「おいおい!まだそれしか課題終わってねーのかよ!

 

 

 と言っても、半人前のお前らは課題を終わらせるだけじゃ足りないだろうけどな!

 

……あ!違った!

 半人前じゃなくて5分の1人前か!

 

ハハハハハハ‼︎」

 

「ねえ、フータロー君なんだかイキイキしてない?」

「ストレス溜まってるんだろ。そっとしておいてやろうぜ……」

「お前ら、可哀想なものを見る目で見るんじゃない!」

 

作戦としては……これはお蔵入りで。

 

 俺と一花でヒソヒソやっていると、二乃が鼻をあかしてやると言わんばかりにノートを広げて見せたが。

 

「……そこ、テスト範囲じゃないぞ?」

「あれぇ⁉︎やば……」

 

 テストとは関係のないところをやっていたらしく、風太郎の指摘を受けて慌てふためいていた。

 

……でもまあ、コイツがこれだけ真面目にやってるんだし褒めてやるか。

 

「まあ、真面目にやってるのは「二乃……やるなら真面目にやって」

 

 フォローに入ろうとした俺の言葉を遮って、三玖がこの状況では戦犯のような言葉を放り込みやがった。

 

 範囲を間違えたとは言えコイツは真面目にやっていたのだから、ここはよいしょをする場面だったのに……。

 

 そして、案の定二乃は不貞腐れたように。

 

「こんな退屈な事真面目にやってられないわ!

 

 部屋でやってるからほっといて!」

「お、おい!」

 自分の部屋へと戻ろうとしてしまった。

 

 

「くっ……ワンセット無駄になっちまった」

 机に出された想定問題集に四葉がビクッとする隣で五月が。

「お手本になるんでしょう?

 

 頼りにしてますから」

 発破をかけるような事を言い、それを聞いた風太郎は二乃の後を追いかけ、引き留めた。

 

「待てよ二乃。

 

 まだ始まったばかりだ……もう少し残れよ。

 

 

 ただでさえお前は出遅れてるんだ。

 

 4人にしっかりと追いつこうぜ」

 

 

 すると……一瞬の不自然な沈黙の後。

 

「うるさいわね……何も知らないくせにとやかく言われる筋合いは無いわ!

 

 あんたなんかただの雇われ家庭教師……部外者よ!」

 

 

 目障りだと言わんばかりに指を突きつけた。

 

 そして、そこで風太郎の味方である三玖が黙るはずもなく。

 

「……これ、フータローが私たちのために作ってくれた。

 

 

 受け取って」

 

 どこか冷めたような目をした三玖が、問題集を突き出した。

 

「問題集作ったくらいでなんだって言うのよ。

 

 そんなの……要らないわ!」

 売り言葉に買い言葉というべきか、二乃がそんな言葉と共に払い除け……問題集は足元にばらけてしまった。

 

 

 完全に一触即発なムードに一花と風太郎が待ったをかけるがそれで止まるはずもない。

「ね、ねえ……2人とも落ち着こう?」

「そうだ、お前ら……」

 

 これなら、分断でもしておけばよかったと頭を抱える俺の前では、三玖が冷たくも圧のあるような声で。

 

「拾って」

 

 たった一言だけ告げた。

 それを受けた二乃が一瞬だけたじろぐ。

 

 それを見る限り、二乃もここまで大事にするつもりはなかったんだろうが……ここまで拗れた以上、プライドの高いアイツが引き下がることも出来ず。

 

「こんな紙切れに騙されてるんじゃないわよ。

 

 今日だって遅刻したじゃない!

 

 それでこんなもの渡して……良い加減なのよ!

 

 それで教えてるつもりなら大間違いだわ‼︎」

 

 追い詰められてやけにでもなったかのように、一枚を破り捨てた。

 

「……二乃!」

「三玖、落ち着け!俺は良いから……」

 そして……三玖が完全にキレて、二乃に詰め寄ろうとした時。

 

 

 

 

 

「……………え?」

 

 風太郎が三玖を止めた隙を突くように、五月が二乃の頬を張った。

 

 

 まさかの五月の行動に、その場の全員が凍りつく。

 

 

 

「……五月、お前何やって「二乃………彼に謝罪を」

 いち早く解凍された俺が五月に一言言おうとする前に、五月が裁判官の如くはっきりと二乃に宣告した。

 

 

 

 お返しとばかりに二乃が五月の頬を張る。

「五月……急に何すんのよ⁉︎」

 当然抗議もしてきたが、五月はそれに構わず問題集を拾い上げた。

 

「この問題集は上杉君が私たちのために作ってくれたものです。

 

 

……決して、粗末に扱って良いものではありません。

 

 彼に謝罪を」

 

 有無を言わさないような五月の言葉に二乃は動揺と困惑、怒りを交えたように。

 

「あんた……いつの間にコイツの味方になったのよ!

 

 まんまとこいつらの口車に乗せられたってわけね。

 

 そんな紙切れに熱くなっちゃって」

 

 そこで、三玖が一枚を手に取り二乃に見せた。

「ただの紙切れじゃない……よく見て」

「は?」

 

「待て、二乃の言う通りだ。俺が甘かった」

「あなたは黙っていてください」

 

 風太郎が二乃に謝ろうとしたのを五月が一蹴し、未だに落ちているプリントに目をやり。

 

「彼はプリンターもコピー機も持っていません。

 

……本当に呆れました。全部手書きなんです」

 

 風太郎が一晩かけて作り出した問題集の真実を明かした。

 

……まあ、コイツは電子機器に関しては音痴という理由もあるがこれは言わないでおこう。

 

「だから何よ……」

「私たちも真剣に取り組むべきです。上杉君に負けないように」

 

 五月が説得するように二乃に語りかけるが……俺が真剣に取り組んでないように言いやがった。

 まあ、いつもおちゃらけているから仕方ない部分もあるのだろうが………。

 

「二乃……」

「良い加減受け入れて」

 

 そんな俺の葛藤など関係なく事態は進み、一花が困った顔で名前を呼び、三玖が最後通牒のような言葉を突きつけた。

 

 すると、それを受けた二乃は唇を噛み締め。

 

「分かったわ……アンタ達は私よりコイツを選ぶってわけね」

 

 

 

「いいわ……こんな家出てってやる!」

 

 やりきれなさを滲ませたような顔で、出て行くと言い出した。

 

「……お前、ここ出て行っても生活どうすんだよ」

「そうです。こんなの誰も得しません!」

 コイツの気持ちはなんとなくわかるが、感情を先行させての行動はまずいので声をかけ、五月がそれに乗っかるが。

 

「前から考えてたことよ。この家は私を腐らせる…もうこれ以上我慢ならないわ!」

 もう後戻りできないと頑なになった二乃は、聞く耳を持ってないようだった。

「こんなの、お母さんが悲しみます。やめましょう!」

 

 五月が尚も食い下がっていると、二乃は一瞥して。

 

「………未練がましく母親の代わりを演じるのはやめなさいよ」

 

 まだ引きずってんのかと言わんばかりの一言に五月が凍りついた。

 

「二乃、早まらないで!」

「そうそう、話し合おうよ…」

 

 一花と四葉も仲裁に入るが、二乃は。

「話し合いですって?

 先に手を出してきたのはあっちよ!

 

 

……あんなドメスティックバイオレンス肉まんおばけとは一緒にいられないわ!」

「……」

 いかん、ちょっと吹きそうになった。

 

 

 不謹慎さには余念がないことに、我ながらびっくりしていると五月が先程の静かな怒りとは打って変わって、よくも言ってくれたなと言わんばかりの顔で。

「ど、ドメ……肉……⁉︎

 

 そんなにお邪魔なようなら私が出て行きます‼︎」

「あっそ!勝手にすれば?」

「もー、なんでそうなるのよー⁉︎」

 四葉の叫んだ通り、唐突すぎる家出宣言と共に五月が自分の部屋に駆け込み……二乃も同じく自分の部屋に。

 

 

 そんな、突然の大惨事に俺は。

「……ど、どうすれば………」

「もうどうにでもなーれ!」

「奏二⁉︎」

 

 バカにでもなったかのように笑うしかなかった。

 

 

 

 翌日。

 

 日曜日なので朝飯を作るのが面倒だった俺は、適当な喫茶店で朝飯を取ることにした。

 

 なにせ、朝のコーヒーを頼めば色々ついてくるからな。

 

 安上がりかつ、味も確かと一人暮らしの友と呼んでいい。

 

 そしてバイクに乗りながら……俺は三玖からきた連絡に、何度目かわからないため息をついた。

 

「はぁ……どいつもこいつもバカばっかだ」

 

 あの2人が部屋にこもってしまった為に、やれるようなムードでは無くなったので早めにお開きになった昨日。

 

 

 その後に再び喧嘩になったらしく、それで今度こそ本当に出て行ってしまったらしいのだ。

 

 

 

 そこで、俺たちは朝早くから集まり、風太郎と三玖のコンビと俺1人に分かれて2人を探すことにしたのだが……俺は探す気はさらさらない。

 

 なにせ、今回のことの発端は風太郎の遅刻と三玖の余計な深追いなのだ。2人にある程度投げるのも、お仕置きにはちょうどいいだろう。

 

 そんなこんなで俺は大きな橋を渡ろうとしたが………あるものに気づいた俺は、その下を思わず二度見した。

 

 

 何故なら………

 

 

 

「お仕置きどころか手助けしちまってどうすんだよ、俺……」

 そこには、見覚えのあるアホ毛が段ボールにくるまっていたのだから。

 

 

 

「い、生き返りました……」

「家出するのに財布忘れたって……お前、しっかりしてそうで詰めが甘いよな」

「……反省してます」

 

 喫茶店ではなく、俺の家にて。

 

 カップ麺をスープまで飲み干した五月が幸せそうに息を吐いた。

 

 因みに俺はコーヒーとトーストのみだが……もう、正直これ以上の料理を作る気は起きなかった。

 

 受け取った割り箸とカップをゴミ箱に放り込みながら言うと、昨日と同じ姿の五月は肩を落とした。

 

 どうやらこいつは家出した後に財布を忘れたことに気づき、一晩は橋の下で過ごしたらしい。

 んで、そこに俺が通りかかったわけだな。

 

咄嗟に保護したものの、どうしたもんか……

「……文無しじゃきついだろ。大人しく家に帰ったらどうだ?」

 

 とりあえず資金もなしに生活はできないだろうし、帰るように促すが五月が首を振った。

「嫌です。3人には悪いですが、今回ばかりは二乃が謝るまで帰りません」

「でもな……宿の当てはあるのか?友達の家とか……いや、それはハードル高いな」

「どう言う意味ですか?それ……

 と言うか、そもそもこんなことで頼れませんよ」

 

 こいつの交友関係を鑑みたと言うのに、何故俺はジト目を向けられなければならないのか。

 

 

 そうなると風太郎の家考えたが………アイツの家は今いる住民で容量がギリギリだ。

 

 これ以上人を入れたらパンクするかもしれない。

 

 

 と、知り合いの家を頭の中で検討していた俺に五月が。

 

「あの……もし、ご迷惑でなければここにいさせてもらえませんか?」

「………え?」

 

 顔を赤くしてまた意外な事を言い出した。

 

 

「なんでまた……一応部屋は余ってるけど、住民は俺1人だぜ?」

「その……先程凄んだ後で言うのは恥ずかしいのですが、あまり頼れる人がいないもので……」

「でも、お前……年頃の男女が2人で共同生活って……」

 

 一応こいつは同級生で生徒で、客の御令嬢だ。

 男女の関係になるには強固な壁はあるし、なんと言うか美味しい状況ではあるのだが………世間体的にどうなんだろうか。

 

「お前はそれでいいのか?」

「有事です。この際なりふり構ってられません」

「あらやだこの子、随分と積極的……」

 

 しかし、五月は覚悟を決めたようで頭を下げた。

 

「お願いします……上杉君の家に迷惑をかけるわけにはいきません。そうなるともう……あなたしか頼れないんです」

 

……しょうがねえな。

 こいつがここまで覚悟を決めたなら、俺がビビるのも馬鹿馬鹿しい。

 

「ちょっと臭うから、シャワー浴びてこい。お前風呂入ってねえだろ」

「に、臭う⁉︎………今回は、聞かなかったことにしてあげます」

 

 俺は、五月を持っていた鞄と共にシャワーに押しやって。

 

「……片付けますか」

 

 掃除道具を片手に奏一さんがかつて使っていた部屋に向かうのであった。

 

 

「気持ちいい……」

 一日ぶりに浴びたシャワーに、私は思わず息を吐いた。

 

……同級生の男の子の家で生まれたままの姿になっていると言うことだが、シャワーを浴びているのだからこの際仕方ないと言うことにしよう。

 

「……一応、念入りに洗っておきましょうか」

 

 彼はそんな事をしないと分かってはいるものの……状況的にそうなっても良いように体を念入りに……って、何を言っているんだ私は。

 

 

 でも、彼は空腹の私を助けてくれただけでなく、こうして世話まで焼いてくれる。

 

 そんな彼にお金のない私が、何をすればお返しできるかと考えたら………

 

「……もうちょっと、細い方が好みなのかな」

 

 二乃に言われた「肉まんお化け」を思い出し、私は自分のお腹に目を落とした。

 

「………って、違う。あくまでお掃除とかお料理で……」




いかがでしたか?

今回の二乃と五月の家出ですが、三玖が結構戦犯な気がするんですよね。

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