五等分の花嫁 家庭教師の二重奏   作:暇人の鑑

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第2話です。

今回から少しずつ5つ子達と絡んでいきます。
とりあえずまずは三玖が勉強会に加入するところですな。


第2話 告白の舞台裏

 翌日。

 

 例の5つ子が住まう高級マンションの最上階にて。

「てな訳で、この上杉の補佐役に指名された町谷奏ニだ。よろしく頼むぜ?5つ子さん達」

「まさか、補佐役があなただったとは……」

 

 俺は改めて5人に向けて自己紹介をしていた。

 学食で一緒に昼飯を食べた時には、自己紹介をしてなかったからな。

 

 そうして、挨拶を済ませると5つ子のうちの1人が不服さを隠しもしないで。

 

「ウチには家庭教師なんていらないんだけど?」

 

 と、明らかに歓迎していない旨を伝えてきやがった。

 初っ端からいい根性をしてやがるが、俺は争いが嫌いだからな。

 

「いらないんなら、頼まれないはずだが?」

「………チッ!」

 

 図星をつかれて舌打ちをするのは長い髪をストレートに伸ばし、前髪が切り揃えられている少女で、蝶を思わせるような二つのリボンをつけているのが特徴だ。

 

……兎に角、反対意見もかわしたところで本題に入るか。

 

「………で、今日は何をするんだよ」

 

 俺が視線を向けると、カバンから何かを出していた風太郎は。

 

 

「………卒業試験だ」

 

 と、ドヤ顔で良くわからないことを言い出した。

 

 

 

「「「「卒業試験?」」」」

 昨日の今日で……俺からすれば初日の初っ端でやることがまさかの「卒業試験」だった。

 

 

 あまりに意味がわからず、その場にいたほぼ全員の声がハモる。

 

 

 その反応を聞いた風太郎は、パッツンの方を向く。

 

「さっき、お前は家庭教師はいらないって言ったな………なら、それを証明してもらおうじゃないか」

「……証明?」

 

話を振られたぱっつんは、冷や汗と共に返事をした。

 

「このテストは昨日やろうと思って、できなかったテストだが………

 

 合格点を超えたやつには、俺達は金輪際近づかない事を約束しよう。

 

 

 勝手に卒業していってくれ」

 

 要するに、的を絞りに来たってところか。

 

「あと、奏ニにも受けてもらう」

……は?

 

「おいおい、どう言うことだそりゃ」

「補佐ができるかどうか確かめておきたいからな」

「ああ……そう言うことね」

 

 ビビって損したぜ。

 

 俺が安堵していると、ぱっつんが妙な事になったと言わんばかりの顔で。

 

「………なんでアタシがそんなめんどーなことしなきゃ…」

 何かを言いかける前に、中野が静かに。

 

「分かりました。受けましょう」

 と、いつもの良く通る声で承諾した。

 

 

「は?五月アンタ、本気…?」

 ぱっつんが面くらった表情をしているのにも構わず、メガネケースから眼鏡を取り出した。

 

「合格すればいいんです……これで、あなたの顔を見なくて済みます」

 

 そもそもコイツの場合は同じクラスだからこのテストで得点を取れてもあんまり意味はないのだが……まあ、やる気になってるのに水を差すことはないか。

 

 

「……そう言うことならやりますか」

「みんな、がんばろー‼︎」

 

 今まで眠っていたショートカットや、何も考えてなさそうなうさ耳リボンも承諾したので、残ったヘッドホンに視線を向けると。

 

「合格ラインは?」

 

 どうやら受けてくれるようだ。

 

「60……いや、50点あればそれでいい。ただし、奏ニは60点未満の点数なら家庭教師補佐の話は無かった事にさせてもらう」

「あれ?俺だけ厳しくね?」

「お前なら普通にできるだろうしな」

 

 まあ、教える側に立つなら…ってやつだろう。

 

 

 そして、他の奴らが受けるならと言わんばかりの渋い顔で。

「……別に受ける義理はないんだけど、あんまりアタシ達を侮らないでよね」

 

 ぱっつんも了承してくれた。

 

 

 と、言うことでテストが開始した。

 

 

1時間後。

 

 

 採点を終えた風太郎が、テストを受けた俺たちの前に現れる。

 

「採点が終わったぞ……まずは奏ニ。

 

 まあ、普通に解けばこんなもんか」

 そうして返された答案は……80点だった。

 

「俺の実力を、分かってもらえて何よりだ」

「ああ。ただしこれからも油断すんなよ」

 

 答案をバッグに仕舞うと、次は5つ子達の採点結果だが………それはひどいものだった。

 

中野一花(ショートカット) 12点

 

中野四葉(うさ耳リボン) 8点

 

中野三玖(ヘッドホン) 32点

 

中野ニ乃(ぱっつん) 20点

 

中野五月(中野) 28点

 

 

「全員合わせて100点かよ……」

 先程の物言いがフラグに思えるレベルの点数で、生徒人数が減ることはなかったのである。

 

「お前ら、まさか……」

「逃げろ‼︎」

「あ、おい!」

 風太郎が震えながら出した言葉に、5つ子達は逃走という反応を見せる。

 

 

 そして、リビングには誰もいなくなったのであった。

「……とりあえず、俺たちも帰るか」

「はあ、少しでも楽になると思った俺がバカだった……」

 

 

 

 2日後の月曜日。

 

「……へえ、あのテストの復習か?」

「……そうですが、何か?」

 

 飯を食い終えた俺が教室に戻ると、中野……もうややこしいから五月でいいや。

 

 五月があのテストを広げて勉強をしていた。

 

 そんな光景を、クラスの連中は遠巻きに見つめているようだ。

「てっきりアイツの作ったテストなんて!って破り捨てるかと思ってたからさ……5人揃って勉強嫌いっぽいしよ」

 風太郎の仲間とでも思われてるのか、警戒の視線を向けてくる五月に弁明するかのように答えると。

 

「確かに、彼の作ったテストなんてできればもう見たくありませんでしたが……今の私が力不足なのも思い知らされました。

 

 だから……」

「自分で勉強して俺らを追い返そうってわけね……」

「………これでも気を遣おうとしてたのですが」

 しかめ面で頷く五月。

 

……全く、不器用な奴だ。

 

「……わかんないとこ見せてみろよ。教えるから」

「わ、私の話を聞いてたんですか?あなたの力を借りなくても……」

 

分からないくせに下手な意地を張ろうとするんだから。

「ノートがあんまり進んでないように見えるが?」

「………!」

 

 ノートを指差して聞いてみると、ウッとした顔になる………実は適当に言ってみたらあたりだっただけだが、それを顔に出さないように。

 

「俺を信じろとまでは言わないが、今は意地を張らずに教わった方がいいんじゃないのか?」

 

 そう提案すると、少しの沈黙の後。

 

「……悔しいですが、今は仕方ありませんね」

 

 根負けしたかのようでありながら、どこか憑き物が晴れたように息をついた。

 

 

「ここはこうして……こうするのさ。そうすれば……な?」

「成る程、こうすればよかったのですね……」

「そうだ。んで、次の問題は……」

隣の席に椅子をくっつけた俺は、五月の隣で問題を解いて見せるとそれは盲点だった、と言う表情を見せた。

 

 どうやらコイツは一度スイッチが入ればしっかりやってくれるタイプらしく、俺が教えているのを真摯に聞いてくれている。

 

 点数的には空回り気味だが、根っこは真面目なのだろう。

「……」

「次は……どうしたのですか?」

「いや、意外と真面目に受けてくれてると思ってさ」

 風太郎に対する反応的にいちいち噛み付いてくるか、気に入らなそうにやると思っていたのだが……。

 

「そうですか?……私からすれば、あなたが真面目に教えてくれる事が意外でしたよ」

 と、先ほどと比べるといかばくか軟化した態度でなかなか失礼なことを言ってきた。

 どうやら、俺への警戒心は解けてきたようだが……俺はしんみりとした空気は苦手だ。

 

「滅多な事言うなよ。持ちかけた以上は真面目にやるのが俺ってもんさ………って、あれ?」

 

 ちょっと茶化すように返そうとして……ふと思った。

 

「……何か?」

「そちらさん、飯食ったのか?学食に今から行っても混雑で間に合わないぜ?」

「………あ」

 

 不思議そうな顔をしてみてくる五月に聞くと、しまったと言う表情で自分の腹に視線を落とした。

 

 まさか、飯を楽しみにしてる感がある癖に、飯を食わずに今まで勉強してたのかよ。

 

……なんだか笑えてきたぜ。

「お前、真面目なんだか天然なんだかはっきりしたらどうだ?」

「……!この学校に購買は?」

「行っても売り切れの嵐だ。争奪戦舐めんなよ?」

 

 露骨に狼狽え出した五月に、カバンに入れてあるチョコレートでもやろうかと思い出した時だった。

 

 

 急にクラスが静まり返ったので、何があったと視線を上げると。

「………ヘッドホン?」

「三玖がどうしてここに……?」

 

 5つ子の1人である「中野 三玖」が、この教室にやってきていた。

 

 何を考えているか分からないくらいに動かない表情に、ヘッドホンが特徴のやつだが…なぜコイツがここに。

 

 俺と五月が顔を見合わせていると、ヘッドホンこと三玖がこちらにやって来た。

 

「五月……フータローの席はどこ」

「彼の席ですか?あそこですが……」

 

 抑揚の少ない声で聞かれた五月が、困惑しながらも風太郎の席を指さすと。

 

「そう……分かった」

 

 机の中に白い封筒のようなものを入れて、そのまま立ち去っていった。

 

 

 

……少しの沈黙の後、クラスの面々がどよめきだすのを横目に。

 

「……あいつ、自分のやったことを理解してないのか?」

「三玖はあまり人の目を気にしませんからね」

 

 俺は、三女に関する情報を一つ手に入れた。

 

 

 

 数分後。

 

 

「そんな過保護にならなくてもいいんじゃないか?同い年の姉だろ?」

 

 戻ってきた風太郎がその手紙を読み、そわそわとした感じで部屋を出ていったのだが、それにより俺は猛る五月を抑える役回りになった。

 

「三玖は私たちの中で一番頭はいいのですが、体力に欠けてるんですよ?もし襲われたら……」

「アイツもクラスの中で一番体力ないしそんなことできないと思うが」

 典型的なガリ勉だし。

 

 どうやらコイツはなかなかのシスコンらしく、しかもオカン気質ときた。

 

 それでさっきから俺がやったチョコレートを片手にワナワナと震えている。

 

 先ほどまでざわめいていたクラスメイトも、そんな五月の様子を見てある程度落ち着きを取り戻してるようなので、現在この話題に沸いてるのはコイツ1人だけってことだ。

 

 落ち着くように促すも、五月の混乱は収まらないようで。

「どうでしょうね?男の人は狼とよく言いますし………⁉︎まさかあなたも私を狙ってるんじゃ…」

「おい!こっちにまで飛び火させんな……まあ、心配する気持ちはわかるけど……自分の姉貴を信じてやれよ」

「……これで何かあったら、私は一生あなたを恨みますからね」

 

 割とマジトーンで返された脅しに、俺も少し心配になりつつも俺はあの2人に想いを馳せるのであった。

 

 

 

 放課後。

 

「お前……なんだその本の数々は。しかもほとんど歴史系じゃねえか」

「これは俺の負けられない戦いなんだ。放っておいてくれ」

 

 五月が「三玖に何かされてないか聞いてきます!」と、教室を飛び出した後に風太郎が教室に入ってきたのだが……同時に入ってきた物に俺は困惑していた。

 

 なんと、大量の歴史系の本を持ってきたのだ。

 

 先程三玖に手紙をもらったとして一躍時の人になったコイツだが、その後にこの行動である。

「歴史オタクの目覚めか?」

「……アイツに勉強で負けるわけに行くか!」

 帰ってきた言葉の意味もわからないので適当に言ってみると、マジトーンで告げられた。

 

「………何があった?」

 その鬼気迫る感じに圧倒された俺がたじろいているにも関わらず、風太郎は教室を出ていき……代わりに五月が戻ってきた。

 

「三玖は無事なようです!……って、どうしたのですか?」

「いや……風太郎が大量の本と共に出ていった……なんか、「アイツに勉強で負けるわけに行くか!」とか言ってたぞ」

 

 とりあえずこっちでの出来事を話すと、五月がどこか引っかかると言った様子で。

「……そういえば「あんまり大したことなかった」とか、三玖が言ってましたが、それと何か関係が?」

 

 と、向こうでの会話の一部を教えてくれた。

 

 この二つの情報をつなげると……

「……アイツって言うのが三玖のことを指すなら、歴史関連の知識量で風太郎が負けて。

 

 それで、リベンジマッチのために歴史系の本を読み漁ろう……って話じゃないのか?」

 

 出してみた推測に、五月が呆れたようにため息をつくが。

「負けず嫌いと言うか、諦めが悪いと言うか……でも、なんか少し見直したような気がします」

 

 

……最後に、ここにいない風太郎に対して少しだけ穏やかそうな顔をしているが、俺も似たようなことを思った。

 

 なんというか……誰かを意識して全力で動くなんてしないやつだと思ってたから。

「アイツ……意外と見どころあるじゃん」

 

 

 

 数日後。

 

「せっかくだしお前さんも行ってみたらどうだ?」

 と誘ったのだが。

「いいえ。彼の力を借りるわけにはいきません」

 

 と、例のやらかしがまだ尾を引いているらしく断られたので、俺は1人で図書室に向かう。

 

 現在の家庭教師の進捗状況としては、最初から風太郎に協力的だった四葉には風太郎が、警戒心を解いてくれたらしい五月には「復習の手伝い」という事で俺が教えており、他の3人はまだ参加していない状況だ。

 

 しかし……五月は今日こんなことを話してきた。

 

「三玖が少し変わったような気がします。……なんというか、自分に自信がついたような感じが」

 

 そして……風太郎はどこかやり遂げたような顔をしていた。

 

 きっと、例のリベンジマッチが成功したのだろう。

 

 そんな、昨日とは間違いなく何かが変わっていることへの期待を込めて、風太郎と四葉が拠点にしている図書室の扉を開けると。

 

 

 

 

 

「だから、何回言ったら分かるんだ……ライスはLじゃなくてR!

 

 お前シラミ食うのか!」

「あわわわ!」

 四葉が風太郎に絞られていた。

 

 他の連中はこの光景に慣れているのか、注意する様子はない。

「お前ら、図書室では静かにしねえとダメだぜ?」

「おう奏ニ。お前も来たか」

「まあな………あと、光の英訳の頭文字はRじゃなくてLだからな?」

「あ、そっちはそうなんですね!」

 

 四葉がやっている英語の問題集を見ると、スペル間違いがちょこちょこあるが、その度にこのやりとりをするのだろうか。

 

 騒がしくも微笑ましそうな光景を想像していると、風太郎が。

 

「四葉……なんで怒られてんのにニコニコしてんだ?」

 と、不思議そうに尋ねた。

 

 確かに、少しくらい不貞腐れてもおかしくなさそうだがコイツにその様子はない。

 

 俺も気になったのでその答えを待つと。

 

「家庭教師の日でもないのに、上杉さんが宿題を見てくれるのが嬉しくって」

 

 と、なんともシンプルな答えだった。

 

 で、その言葉に風太郎はため息を吐き。

「残りの4人もお前くらい物分かりがいいと助かるんだが」

……そういやコイツはまだ知らなかったな。

「五月には今俺が教えてるが……メインはお前なんだ。アイツとの確執も早めに対処しとけよ?」

「……待て、お前いつの間に五月と仲良くなった?」

「お前が知らない間」

 

 すると、俺たちのやりとりを見ていた四葉が。

 

「でも、お二人とも間違えてますよ……3人じゃなくて2人ですよ。

 

 

ね?」

 

 と、視線を向けた先を見ると。

 

 

「……三玖!来てくれたのか?」

 そこには気恥ずかしそうな顔をした三玖が立っていた。

 

 だが、風太郎が近づくと何故か三玖は素通りして、とある場所へと向かう。

 

 

 それは、歴史系の本が収まっている本棚で……そこに詰まっているのは風太郎が借りていた本達がある。

 

 そして、それを少しめくって。

 

「フータローのせいで考えちゃった。

 

 

 ほんのちょっとだけ。

 

 

 私にもできるんじゃないかって……だから。

 

 

 

 

 責任、取ってよね」

 

 と、何故かスッキリしたような顔で風太郎に告げ。

 

「任せろ」

 風太郎は、自信過剰とも取れる返事をした。

 

 

 だが……俺はなんとなく察する。

 五月が言っていた三玖の変化とは………。

 

 

「恋、ってやつか?」

「……⁉︎」

 

 

 何となく発した言葉に、三玖がビクッと震えた。

 

 




いかがでしたか?
三玖さんいいですよね。なんというかあの作品の中で一番ヒロインやっていたんじゃないでしょうか。

 そして、主人公の相棒枠として五月を選ばせていただきました。
現状として彼女に取っての主人公は「初めてできた友達」であり、主人公にとっては「女版風太郎」的な感じで放っておけない感じです。

 では、次のお話でお会いしましょう。

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