五等分の花嫁 家庭教師の二重奏   作:暇人の鑑

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今年最後の更新です。


楽しんでいただければ幸いですな。


奏二の秘密
厨二病ではないが、よく間違えられる。


第21話 それぞれの恋路

 学年末テストは、2ヶ月もの準備期間に相反して、たった1日で終わってしまった。

 

 なんだかあっけない気もするが……俺たちにとってのメインイベントはこの後だし、そもそも何日もテストはめんどくせえわな。

 

 

 で、そのメインイベントは何かと聞かれれば………。

 

 

 それは点数発表。

あの5人の今後に関わる、大事なイベントだった。

 

 

 だが、自分の心配はしなくてはならない。

 アイツらの点が良くても、俺の点がダメならクビなのだ。

 

 んで、俺の点数は……。

 

 

国語 81点

 

数学 82点

 

理科 77点

 

社会 85点

 

英語 80点

 

 

合計 405点

 

 ついに、400点台を叩き出していた。

 

 

 俺の中では最高得点なのだが………それよりもアイツらの点数の方が重要だ。

 

 

 とりあえず、隣の奴に目を向けると。

 

 

 

「………平静装いきれてねえぞ」

「………それはそうですよ。やっと、達成できたのですから」

 

 

 すまし顔をしているが、口元が緩みまくっている五女様が俺に点数表を見せてきた。

 

 

 

 中野五月

 

国語 48点

 

数学 36点

 

理科 74点

 

社会 32点

 

英語 42点

 

合計 232点

 

 

「………まずは1人、だな。よくやったぜ」

「ええ………みんなの元に、笑顔で報告できそうです」

 

 嬉しそうに言う五月から、風太郎に目を向けると………あれ?

 

 

 なんと言うか、呆然としているような。

 

 

 何か言っている五月に、適当な返事を返しながら、俺は風太郎の様子にどこか腑に落ちないものを感じていた。

 

 

 その日の昼休み。

 

 

 

 風太郎の様子がおかしかったので、屋上で話を聞くことにした俺は……とんでもないものを目にしていた。

 

 

 上杉風太郎

国語 89点

 

数学 97点

 

英語 88点

 

理科 94点

 

社会 91点

 

合計459点

 

 

「全教科100じゃない………だと?」

「一生の不覚だ。………他のやつには言うなよ」

 

 

 

 あの勉強の虫だった風太郎が、なんと全教科において100点を逃したのだ。

「でも……、5人教えてて今までキープできてた方が不思議だったんだ。

 

 そう挫けるもんじゃないさ」

 

 とりあえず、前の家出騒動の時のように精神的にきてるかもしれないので、当たり障りのない言葉で励ましてみると。

 

 

 風太郎は、俺が奢ったお茶の缶を煽り。

「………今までの俺だったら、こんな点数を取った日には落ち込むなんてレベルの話じゃなかった」

 

 

 どこかスッキリしたような顔で。

 

「だが、今の俺にはお前が心配するほどのショックは無い。

 

 

 

 勉強以外のものにも……ある程度目を向けられるようになったからな」

 

 意外な事を言い出した。

「………そう言う面では、あの5人に感謝だな」

「……ああ」

 

 アイツらが、学力面において半年で大きく成長したように、風太郎も精神的に成長してるって事だな。

 

 

 だからこそ………もし、今回全員赤点を回避したら訪れる、仕事の終わりがどこか寂しいものに思えた。

 

 

 

 放課後、五月に引っ張られて風太郎のバイト先のケーキ屋にきた俺は。

 

 

「四葉、やりましたね!一番危なかったのに!」

「おめでとう」

「えへへ……

 

 私史上1番の得点です。合計190点とギリギリでしたけど……」

 

 赤点を突破した三玖、四葉、五月が喜んでいるのを遠目に見守っていた。

 

 

中野四葉

 

国語 54点

 

数学 34点

 

理科 32点

 

社会 37点

 

英語 33点

 

合計 190点

 

 

 点数としては……まず、一番危うかった四葉が赤点回避を成し遂げた。

 

 これなら、他の姉妹はもう大丈夫だろうが……まあ、全員分聞くまでは過信はいけない。

 

「私は232点。

 

 少し危ない科目もあったのが、今後の課題ですね」

「そうだな………で、三玖はどうだった?」

 

 五月に頷いた俺が、会話の輪の中に入りながら三玖に話を振ると……。

 

「248点」

 

 と、点数表を見せてきた。

 

 

中野三玖

 

国語 45点

 

数学 49点

 

理科 44点

 

社会 75点

 

英語 35点

 

合計 248点

 

 

「えー、凄い!」

「流石三玖ですね」

 

 四葉と五月が褒め称えていると、後ろで見守っていた風太郎が。

 

 

「見違えたな三玖。

 

 

 やはり、お前が1番の成長株だ」

「フータロー………!」

 

 それを受けた三玖が、何かを言おうとした時。

 

 

「あ、一花が来たよ。

 

 

 二乃はまだかな?」

「試験結果が返ってきたら、ここに集まると伝えてあるはずですが……もしかして?」

「さあな……で、一花はどうだった?」

 

 この場にいない二乃が少し心配になったが、とりあえず目の前の一花に点数を聞くと。

 

「えーっとね……250点」

 

 

国語 40点

 

数学 65点

 

理科 54点

 

社会 42点

 

英語 47点

 

 

合計250点

 

「……って事は!」

「一花が一番じゃないですか!」

 

 四葉と五月が顔を輝かせた通り、これまでのパターンを裏切る一花が一番と言う結果だった。

 

 

 だが………それよりも俺が気になったのは。

 

 

「…………え?」

「あ、そうなんだ…………

 

 

 やった」

 

 

 唖然としたような三玖と、してやったりと言わんばかりの一花の表情だった。

 

 

 

 こうして4人の赤点突破が確認され、後は二乃の結果を待つのみとなった中。

 

 

 俺たちはケーキ屋の中で駄弁っていた。

 

「今のところ、一花が一番だね」

「いやー、頑張りました」

「お仕事もあったのに、本当にすごいです!

 

 私、てっきり今回も三玖が一番かと」

 

 

 五月の言葉に、一花はハッとした顔になり。

 

「三玖………?

 

そ、その……私、そんなつもりじゃなくて………」

「一花………おめでとう。

 

 

 私もまだまだだね」

 

 

 三玖は………何かを諦めたかのような、笑顔を見せた。

「……………三玖………」

 

 

 その笑顔と、さっき一瞬三玖から感じた絶望。

 

 

 そして一花から前に受けた相談から、俺はなんとなく仮説を立てた。

 

 

 つまり、三玖は今回の試験において赤点突破+姉妹の中でトップを条件に、風太郎へ告白しようとしていたが。

 

 

 一花が一番になった事で、それが阻止されてしまった。

 

 そのことへの絶望と、一番になった一花への賞賛が混じり合った結果があの笑顔であり。

 

 逆に一花は、告白を阻止できたことに一瞬歓喜したものの、三玖の告白の条件を知っていたのか。

 あるいは知らなくてもチョコの件で三玖の風太郎への好意を知っているから、罪悪感でも湧かせたのだろう。

 

 

………なんと言うかくだらない気の遣い合いだな。

 

 そんな条件をつけなくても、好きになったなら言えばいいのに。

 

 

 現在、風太郎へ何らかの好意を抱いているのは三玖と一花だけじゃない。

 

 五月や二乃は兎も角……四葉は五月から聞いた話から察するに、相当入れ込んでいる。

 

 

 つまりは、最低3人最大5人での、風太郎を巡るゼロサムゲームが始まろうとしているのだ。

 

 

 そんな中でくだらない遠慮をしているやつは、不完全燃焼で終わるのがオチだと俺は思う。

 

 

 

 これはちょいと働きかけるかと、頭の中で色々考え始めた俺は、五月に肩を叩かれた。

 

 

「町谷君、二乃はどうやら先に来たようです」

「んあ?そりゃどう言うことだ」

 

 

 五月の言葉に首を傾げた俺は、五月が渡してきた紙を受け取る。

 

 

 するとそこには……。

 

 

 中野二乃

 

国語 34点

 

数学 33点

 

理科 42点

 

社会 50点

 

英語 60点

 

 

合計 219点

 

 

 

 

「任務完了……だな」

 家庭教師の仕事を始めてから半年。

 

 ついに、俺たちに課せられた任務が完了した事が、しっかりと記されていた。

 

 

 

 

 

 

 赤点回避を記念した祝賀会に、二乃を連れてくると言って上杉君が出て行ったので。

 

 

 私は、店の外へ町谷君を連れ出していた。

 

 

「3人と一緒に居なくていいのかよ?」

「あなたに、伝えたいことがありまして」

 

 

 理由は……決まっている。

 

「ありがとうございます。あなた達のおかげで、自分の力で進級できそうです」

「俺は任務を遂行しただけだ。気にすることじゃないぜ」

 

 

 これまでのお礼を言うためと………。

 

 

 今の私が、彼にしたい事をするためだ。

 

「………あと、ごめんなさい」

「…なんだよ急に」

 

 私は、首をかしげる町谷君に……打ち明けた。

 

「あなたの昔の話……村山さんから聞かせていただきました」

 

 

 

 

 すると、町谷君は素早く距離を取り。

 

「………バレンタインの時か?どこまで知っている」

 

 警戒の視線を向けてきた。

 

「あなたがあの施設に来た時から……その施設が壊滅するまでです」

 

 

 私が彼の質問に答えると、当然と言えば当然か。

 町谷君は古傷が痛んだような顔をしながらもキッパリと。

 

 

「下手に同情なんかしやがったら、お前でも許さない。

 

 

俺はずっと、死神のまんまでいいのさ」

「そうすれば、他の誰にも同じ道を辿らせないで済むから……ですか?」

 

 意固地に自分の中に押し込めようとする町谷君に、食らいついていると、疑いの目を向けてきた。

 

「……お前本当に五月か?勘が良すぎると言うか……」

「失礼ですね。二乃から聞いたんですよ」

「アイツ………まあ、口を滑らせたのは俺のミスか」

 

 彼は、むくれた私にしまったと言わんばかりに天を仰ぐ。

 

 きっと、詮索をされるきっかけになったと考えているんだろう。

……彼の考え方的には多分それであっている。

 

 

 どれだけ傷ついても、どれだけ辛くても。

 

 町谷君は、全て自分で背負おうとするから。

 

「…………優しすぎるんですよ。あなたは」

  

「…………だから、生きていられるんだ」

 

 そして……罪と罰を自分に課して、その償いのために生きている。

 

 

 だけど、彼の今までが罰せられるべき罪ばかりだなんて、絶対にない。

 

 

 私と二乃が喧嘩して、2人とも家出した時。

 私たちの絆を消させまいと行動して……結果、私たちの絆は守られた。

 

 

 私をお母さんを失った絶望から救ってくれたし、四葉が苦しんでいるのを助けてくれた。

 

 

 守れたものや、救えたものは確かにあることを私は知っている。

 

 

 だから私は………

「町谷君。それならあなたに覚えておいてほしいことがあります」

 

 町谷君に一歩ずつ近づき。

「なんだよ……⁉︎」

 

 後退りしようとする町谷君の顔を掴み、こっちに向けさせた。

 

 今から私が話す事に、目を逸らしてほしくないから。

 

 

「五月……?」

「あなたがそう言う生き方を望むように、私は……あなたに幸せになってほしいと願っています。

 

 誰にだって、幸せになる権利はある筈ですし……

 

 

 私は、あなたに何度も救われたんですから」

 

 

 彼の過去は間違いなく辛いものだし、その償いを止める事はない。

 

 

 でも……それでも、これからはどうにでもなる。

 

 

 だからそこに……すこしでも、自分の幸せを考えてほしい。

 

 

「どうして、そこまで俺に執着する?」

 

 何て言えばいいのかわからない、って顔をする町谷君の問いかけに、私は少しだけ考える。

 

 そして……結論はすぐに出た。

 

 

 

 

「私は………あなたの事が好きですから」

 

 

 

 

 私は、町谷君の事が好きだから。

 

 友達としても…………い、異性としても。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それだけは……忘れないでください」

 

 

 柔らかな笑みを浮かべた後、少しだけ頬を赤くして店へと戻ったので、俺1人が暗闇の中にいた。

 

 

 

「守れなかったと嘆くのは、守れたものを見ないだけ………か」

 

 五月に言われたことを自分なりに噛み砕いているが、気持ちは信じたい方半分と、楽な方に逃れてはいけないと言う戒めが半分だ。

 

 

 ここで五月に……甘い言葉に甘えてはいけない。

 

 

 でも……彼女の言葉で、どこか気持ちが少し楽になっている自分もいる。 

 

 

 そして、最後の言葉が本心なのか、ただの引き止め文句なのかはわからない。

 

 だが………コイツが軽々しく好きなんて言葉を使うやつじゃない事は、よく知っている。

 

 

 

「やってくれたな、あの肉まんお化け…」

 

 色々とよくわからない感情を、いきなり俺の中にぶち込んできやがった彼女に、俺は思わず言葉が漏れた。

 

 

 

 

「そう言えば、さっき五月ちゃんと一緒に外に行った後、五月ちゃんより随分遅く戻ってきたね。なにかあったの?」

「いやあ、ちょっと仕事の電話をね」

 しばらく、夜の闇の中で自分を落ち着かせていると風太郎と二乃がやってきたので、祝賀会は今度こそ開かれた。

 

 

 俺は、店長に頼まれて風太郎と共に客を捌いていたが、ひと段落したのでトイレへ向かったところで、一花と鉢合わせした。

 

 そうして今、一花にも呼び止められて話をしている。

 

 正直、今は五月からの言葉について考えたいので、そこまで他のことで頭を使いたくないので、さっさと答えて話を終わらせよう。

 

 

 

 そんな失礼な事を考えている俺に一花は。

「で、用件はなんだ?手短に頼むぜ」

「うん、えっと………えっとね?

 

 実は三玖、今回の試験で5人の中で1番の成績を取ったら告白するって言ってたの。

 

 

 でも……今回は私が一番だったじゃん?

 

 私、フータロー君に告白してもいいのかな……?って」

 

 

 食傷気味な恋愛相談を持ちかけてきやがった。

 

 

 まあ、俺も考えたほうが良さそうだから考えるけど……やっぱり。

 

 

「後ろめたい事じゃないんだし、堂々と告白してもいいんじゃねえの?

 

 

 その恋心は勘のいいやつには気付かれるだろうし。

 

……むしろ、三玖もお前さんも回りくどすぎだぜ」

「ソージ君……簡単に言ってくれるよね」

「簡単な事だしな」

「………それもそうだね。ありがとう」

 

 

 と、お礼を言った一花の後をついてく形で、厨房の方へと向かった時。

 

 

 

 

 

 

「あんたが好きだって言ったのよ」

 

 

 二乃の声で愛の告白めいた言葉が飛び出した。

 

 一花と俺が顔を見合わせて、厨房をこっそり覗くと……そこには二乃と風太郎が向き合っている。

 

 

「やっぱ、迷ってる場合じゃないぜ」

「フータロー君…………二乃…………」

 

 

 そして、二乃がまたも口を開いた。

「対象外なら、無理にでも意識させてやるわ。

 

 

 あんたみたいな男でも、好きになる女子……

 

 

 そんな奇特な子が地球上に1人くらいいるって、言ったわよね?

 

 

 

 つまり、それが私よ。

 

 

……残念ながらね」

 

 

 一花がえらいことになったと、目を丸くする隣で。

 

 

 

 

 俺は、風太郎を巡るゼロサムゲーム……「シスターズ・ウォー」の幕が切って落とされた事を悟った。

 

 

 

 さあ……ゲームの時間だ、ってね?

 




いかがでしたか?

今回で第2章はおしまいです。
次回からはシスターズ・ウォーへと突入していくことになります。


 それではお楽しみに!

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