今回から、視点が変わるときには誰視点でのモノローグになるのかを分かりやすくしてみました。
それがなくてもいいのか、はたまたこのスタイルがいいのかを意見していただけるもありがたいです。
奏二の秘密
制服の着こなしはまとも。
「くそっ、四葉の野郎余計なことを……」
「まあまあ、新規開拓ってことでいいんじゃねえか?」
「お前、他人事みたいに……そうだ、お前を推薦すればよかったんじゃ」
「もう決まってるんだなあ、これが」
「全く……」
風太郎が学級長に抜擢されたあとの休み時間、トイレで話をしていた俺らは、風太郎の横にいる人物に気が気ではなかった。
そいつに対して、どっちが話しかけるかの押し付けあいを少しした後……
「なんだよ」
風太郎が応対する事に。
すると、その隣にいた奴……武田は待ちかねたと言った様子で。
「上杉君に町谷君、君達は随分彼女達に信頼されているみたいだ……ね?」
いつものメッキめいたオーラと共に会話に加わってきた。
「親父さんと仕事の付き合いがあるだけだぜ」
「それに、学級長なんて勉強の足枷でしかねえ」
俺が何でも屋をやっているというのは割と周知の事実なので、それをダシに答え、風太郎が嘆息すると武田は笑みを崩さず。
「昔から変わらないね、君は………さすがは僕のライバルだ」
その一言を置いて立ち去って行った。
「なんなんだ、全く……」
「さあな…」
その後、入り口で待ち構えていた三玖が風太郎に用があるそうなので、俺は先に教室に戻っていると。
「町谷君、四葉ちゃん知らない?」
クラスメイトの女子二人が、四葉はどこかと聞いてきた。
「四葉?教室とかにいるんじゃねえの?」
覚えがないので質問で返すと、二人曰くどうやら担任が呼んでいたらしいが、いなかったので探しにきたらしい。
「悪い、わかんねえわ」
「そっか……うん?」
だが、それでも俺にはわからないので謝ると、そのうちの一人が俺の後ろで話をしている三玖を見て。
「あ、あれじゃない⁉︎」
「ホントだ!四葉ちゃーん!」
「ちょい待ち、それは………!」
俺の制止も叶わず、三玖の所へと突撃して行った。
side三玖
「四葉ちゃーん!先生が呼んでたよ!」
フータローから5つの願いを引き出していた私は、今まで数多くあった洗礼を受けていた。
私たち姉妹は、初対面に近い相手には間違われやすいのだ。
「おい待て、ソイツは四葉じゃなくて……」
その後ろからソージが慌てた様子でこちらにやってくるが、二人の耳には入ってないのか、私が四葉として先生の元に連れてかれそうになっていると。
「そいつは四葉じゃないぞ。
三女の三玖だ」
フータローが、間違いを訂正してくれた。
「えっ」
「そうなの?」
女生徒達の問いかけに、首を縦に振って肯定すると、やはり覚えきれていなかったことを告げられる。
「問題ない、慣れてる」
そして、その一人がソージに。
「ねえ、ならあれが四葉ちゃんじゃない?」
「ん?………待て、そいつも違う!」
通りかかった五月を四葉かどうか聞き、待ったをかけられていた。
「も〜〜皆んな同じ顔でわからないよ〜」
「だったらすぐ突撃すんな……」
ソージが疲れたようにぼやいている隣で、フータローが焦れたように。
「いいか⁉︎
面倒なら身につけてるアイテムだけで覚えろ!
このセンスのかけらもないヘアピンが、五女の五月だ!」
「いきなり失礼な話ですね…⁉︎」
「本人を前によく言えるなお前⁉︎」
五月とソージのツッコミを無視して、フータローは続ける。
「四葉はあの悪目立ちリボンだ、それだけ覚えておけば間違いない!」
と、ここまで言ったところで女生徒達は少しポカンとした後。
「上杉君凄いね!
意外とちゃんと中野さん達のこと見てたんだ!」
「ありがと!
流石学級長だね!」
「いや、そうじゃなくて………」
フータローにお礼を言っていた。
言っていただけなら良かったのだ。
その女生徒達は、フータローの腕を組み。
「5人のこともっと教えて!」
「は?それなら奏二が………」
「ほら、付いてきて!
向こうにもう一人いたんだ………おーい、四葉ちゃん!」
「まて、アレは二乃……⁉︎」
あっという間に私、五月、ソージは取り残されてしまったのだった。
「あの女生徒、フータローにベタベタと……」
私だってやりたいけど、まだそこまでやったら変かなって思って思いとどまっているのに、あんなあっさりとフータローと密着して………!
「まあいいじゃねえか。アイツの印象が上がってハナタカって事でよ」
「きっと、彼も変わってきてるんですよ」
ソージと五月が呑気な事を言っているが、私にとっては重大な問題だ。
「四葉が推薦したのも間違いじゃなかったですよね。
……でも、少し妬けてしまうのもわかります」
「お前さんも風太郎を?こりゃあライバルが増えたな」
まさか、本当に五月まで……⁉︎
「町谷君⁉︎そこでなぜ三玖を煽るのですか⁉︎三玖もそんな目で見ないでください、あくまで友達としてですよ!」
「む〜…」
五月がソージに食ってかかりながら否定しているのを見て、とりあえずそう言う事にしてあげるけど………何気にこの二人のやりとりも、私にとってはどこか羨ましいのであった。
side四葉
なんて事だ。
私は、風太郎君が凄い人なんだってみんなに知ってもらいたくて、学級長に立候補して、彼を推薦した。
それなのに………
「え?上杉って誰?」
「ほら、学級長の……」
「あー、そんな名前だっけ」
もう忘れられているのも問題だけど………それ以上に。
「小耳に挟んだんだけど………これってホント?
四葉ちゃんと上杉君が付き合ってるって噂」
なんと、私と風太郎君が付き合っているという噂が立っているらしい。
「わ、私と上杉さんが……⁉︎そ、そんな事ないですよ⁉︎」
「二人とも学級長で仲良さそうだし、あんな大胆に推薦するなんて勘繰っちゃうよね」
その光景は想像するだけで恐れ多いので、慌てて否定するが、目の前にいる二人のうちのもう一人は。
「でも、火のないところに煙は立たないって言うし」
「そ、そんな……恐れ多いです!」
知らないうちに自分でやらかしていたらしく、確かにアレはそうとられても無理はなかったかなと思いながらも否定を続けると。
「どうかなー?
案外、上杉君の方は満更でもないかもよ」
一人の言葉に、心のどこかで望んでいても、思ってはならないと封じ込めていた「もしかしたら」を呼び起こされてしまった。
そう、私は5年前から風太郎君のことが好きだ。
できる事なら………そうあってくれたら嬉しいと思っている。
でも………私はみんなの為に生きるって、黒薔薇を退学する事になったあの日に誓ったんだ。
だから、みんなが風太郎君の事が好きなら……私は自分の気持ちくらいは譲ってみせる。
そう、決めたんだ………!
目の前の二人の前で、改めてそのことを誓いながらも………私は、その「もしかしたら」への期待が、前よりも大きくなっているのを感じていた。
更衣室で四葉がそんなやりとりをしているのと同刻。
似たような話題は五月の元にもやってきていた。
side五月
「ねえねえ、町谷君と五月ちゃんって付き合ってるの?」
「わ、私と町谷君が……ですか⁉︎」
体育の授業のため、運動場に向かっていた私はクラスメイトからとんでもない質問を受けていた。
なんと、私と町谷君が付き合ってるのでは……と、言い出したのだ。
「そ、そんな事ないですよ?大体、どうしてそんな話が……」
確かに私は彼のことが好きだけど、それでも付き合ってはいないし、そもそも、彼が私のことをどう思っているのかわからないのだ。
そんな私たちのどこに、こんなことを疑われる要素があるのかと聞いてみると。
「えー?だって2年生の頃から一緒にいたでしょ?」
「それに、五月ちゃんは困った時、大体町谷君に頼ってるような気がするんだけど……町谷君も、五月ちゃんと話してる時、なんだか楽しそうだし」
「あと、林間学校の時も………」
「えーと、そうでしたっけ?」
意外と疑わしいことしてたんだなと少し反省する。
確かに、この学校だと町谷君としかあんまりやり取りしていなかったからか、彼に頼りがちになっていたし………
バレンタインの時に村山さんからも似たようなことを言われていた。
でも、私としては………
「あの人はいつも、楽しそうにしてるような気がしますが……」
いつも何かしら笑っている気がするし、他の人への態度と私への態度に大した違いはないように思える。
「んー、確かにそうなんだけど……」
だからこそ、時折見せる真剣な顔や行動が………って、いけないいけない。
なんだか頬が熱くなってきたような気がするので、パタパタと仰いでいると。
「やっぱり、なんか違う気がするんだよね。
その………気のおけない相手みたいな感じで」
「うん、きっと町谷君も五月ちゃんのこと……好きなんじゃないかな?」
聞き捨てならないことを言い出した。
side奏二
「6.9秒。流石中四だ、鬼速ぇ…」
「んで、こっちは10.5秒……おいおい、大丈夫かよお婆ちゃん…」
「お、お婆ちゃんじゃない……!」
「こーら、ソージ君。女の子に失礼だぞ?」
今日の体育の授業は、50m走。
なので、男女で順番にタイムを測っていくことになり、先に走り終えた男子陣の中から選ばれた俺と加藤は、女子のタイムを記録していたのだが……三玖のタイムはクラスの中で最下位となってしまった。
たった50mを一回走っただけなのに、この疲れ様を見せる三玖に声をかけると、三玖は荒い息を吐きながら否定したが……どっからどうみてもソレである。
「いや、でも……流石にこのタイムは」
「下には下がいるし、上には上がいるもんさ。
とりあえず、あっちに爺さんもいるから休ませようぜ」
「……フータロー君、まだあそこで休んでるの?」
そんなやりとりを見咎めて来た一花や、結果に苦笑いを見せる加藤と共に階段の方を見ると………男子の中で最下位となった、風太郎がうずくまっていた。
因みにタイムは10.3である。
と、そんなやりとりをしている間にも次の二人が用意していたのでこっちも名前を探して記録の準備をしていると。
「体育委員いるかー?これ、片付けておいてくれ」
「あ、今日は休みです」
「では学級長、頼んだ」
「はーい」
ボールの入ったカゴの片付けを頼まれた四葉が、風太郎と共に向かっていく。
その様子をもう少し眺めていたかったが、タイム計測の準備が完了したので、一花と三玖を応援にやり、こちらは記録作業に戻るのであった。
side四葉
「五月!学級長変わって‼︎」
「えっ」
昼休みの学食にて。
私は、呼び出した五月に、学級長を変わってもらえないかを頼んでいた。
風太郎君と学級長の仕事をしていると、何かを探るような視線を感じたのだ。
それがなんなのかは……多分、さっき聞かされた噂についてだろう。
だから、真面目な妹にこうして頼んでいるのだ。
「あんなにやる気だったじゃないですか」
「お願いだよー、コロッケパンあげるから」
「た、食べ物で釣ろうとしても無駄ですよ!」
そう言いながらも、そのコロッケパンを既に食べているのは………
まあ、話を聞いてくれそうだしいいか。
「変な噂が流れていて困ってるんだ。
だから、学級長を五月にやって欲しいんだよー……」
「噂と言うと?」
怪訝な顔をした五月に、その内容を言おうとしたが……口にするのはなんだか………
「わ、私と上杉さんが………つ、つき………突っつき……」
「つ、つき……もしかして、四葉も「もー!こんなことになるなら推薦しなきゃよかったな!」
思わず突っ伏してしまうが、私の頭だとこれくらいが処理の限界なので勘弁して欲しい。
私と風太郎君が付き合ってるなんて、噂だけでも………嬉しいけど、それ以上にみんなに悪い。
それに………この推薦だって何度も言うが。
「上杉さんが凄い人だって、みんなに知って欲しかっただけなのに………」
私は、風太郎君がみんなと仲良くなれるようにって、やっただけなのだ。
side五月
四葉に呼び出された私は、噂について相談しようとしたのだが……時を同じくして、四葉も似たような噂に困っていることを知った。
上杉君の事を大好きと言っていた三玖や、上杉君と何年も前から出会い、一途に思い続けて来た四葉に、町谷君との噂についての解決案のヒントをもらおうと思っていたのに………これでは相談し難い。
「それじゃあ、上杉さんにも話してみるから。
返事はその後でね!」
「え?ええ………」
私は、とりあえず頭を使いそうなので目の前のカツ丼を食べることにした。
「………少し冷めてしまいましたね」
side風太郎
「ったく……学級長って肩書きの割には、やってることは雑用ばっかじゃねーか」
四葉と共に返却されたノートをクラスメイトの机に置く雑用をこなしているが、なんだか四葉の様子がおかしい気がする。
と言うより、体育の授業の時から誰かにじろじろ見られている気がするし、四葉もらしくもなく何かに悩んでいる様子だった。
なんとなく調子が狂うし……これでまた家庭教師の話が危うくなるのは勘弁なので。
「四葉、どうしんだお前今日」
ぼーっとしているコイツに話しかけると。
「う、上杉さん……一つ聞いてもいいですか?」
「………なんだよ」
面倒ごとになるんだろうなと思いつつ、話を促すと。
「上杉さんは、私の事どう思ってますか?」
また、よくわかんねえ質問をしてきた。
「何言ってんだ、おま「私は上杉さんが嫌いです」」
もう少し詳しく話してもらおうとしたが、四葉はなぜか距離を取る。
「ほ、本当ですからね!
だから、もう私に近づかない方が身のためです!」
そのいつも以上の変な言動に俺が困惑の極みに陥っている前でも、四葉は予防線でも貼るように警告を続けて来た。
「でないと………たっ、大変なことになります!」
「はあ……」
だが…ここまで距離を置くと言うことは、俺と四葉の間で何か起こったのだろう。
大変遺憾ながら、俺にはデリカシーがないらしいので知らないうちに何かをやらかしたかもしれない。
理由を聞いてさっさと謝ろうと、俺は。
「何を気にしてんだ?」
顔を赤くして、下を向いている四葉に改めて問いかけてみた。
side四葉
「俺と四葉が付き合ってる⁉︎」
噂のことを話したら、風太郎君はそんな馬鹿なと言わんばかりの顔を見せて、ため息をついた。
「………ったく。
どうしたらそう見えるんだ、あり得ないだろ」
「でも、女の子ってそう言う恋バナ大好きですから。仕方ありませんよ…」
苦笑いしながらそう答えると、彼は遠い目をして。
「恋ねぇ……」
と、窓の外を見てぼやいている。
……そういえば。
「えっと……こう言う話はお嫌いでしたよね?
たしか、学業から……」
確か、風太郎君がこの手の話についてよく言っていたことがあったはず。
それを思い出そうとしていると。
「最もかけ離れた愚かな行為………って、思ってたんだが」
風太郎君が補足と共に。
「あそこまで真剣な気持ちを、前ほど馬鹿にする気はもうないな」
なんとも予想外なことを言い出した。
そんな彼に一抹の期待を抱く。
もしかしたら……
「どうしたんですか?
まさか、ついに誰かを好きに………ま、まさか!」
「……なんだよ」
「本当に私の事「ねーよ」
………ちょっと傷ついた。せめて言い切ってから否定してほしかったな………。
でも、風太郎君自身もさっきあり得ないって言ってたし、仕方ないか………。
そんな私の傷心に気づいてないらしい風太郎君が話を続ける。
「つーか、そんな事自分で聞くな……」
「ししし、火のないところに煙は立たないらしいですので!」
「それに、特定の誰かがいるわけじゃなくて………」
そんな、バツの悪そうな風太郎君にちょっとした仕返しを試みる。
「そうなんですかー?誰も好きじゃないんですかー?
例えば………三玖とか!」
ついでに三玖についてどう思っているかも聞いてみると、本当に意味がわからないと言った顔で。
「………何故に三玖?」
「うーん、道のりはまだ長そうですね」
どうやら、恋愛についての印象が変わっただけで、鈍感なのは変わってないらしい。
でも……それだけでも確かな進歩だ。
「でも……良かった。上杉さんが恋愛を愚かじゃないと思ってくれて。
だから……私から一つ言わせてもらうと。
「この先、上杉さんにも好きな人ができるかもしれません。
その時、誰を好きになったとしても………私は味方です。
全力で応援します!」
「………気がはえーよ」
私は……例え選ばれることはないとしても、ずっと君の味方だよ。
風太郎君。
そうして、風太郎君がトイレに向かったが、「先に行っててくれ」と言う言いつけ通り、先に帰ろうとしていると。
「四葉ちゃん!また上杉君といたでしょ!」
「見ちゃったよー!」
私に噂のことを教えてくれた二人組が、私達のやりとりを見ていたらしく、詰め寄って来た。
………正直、今は話しかけないでほしかった。
「放課後の教室で二人きりだなんて!」
「キャー!ロマンチック!」
今は、いつも通りに笑えそうにない。
「やっぱり、上杉君と四葉ちゃんって……「ないよ」
だって………
「あり得ません」
好きな人に、自分以外の子を見ろだなんて、言いたくなかったから。
例え、それを私が望んだとしても………。
side奏二
体育の授業の後あたりから、俺は妙にチラチラとした視線を感じていた。
その方角を見るとそいつは目を逸らす癖に、またすぐするとチラチラしだす………まるでどこかのテレサだな。
そして、放課後となってもそんなことが続いたので。
「………なあ、俺の顔になんかついてんのか?」
「え?そんなことは……」
俺は隣にいる「そいつ」こと五月に話を振ってみることにした。
いくらある程度の親交があるとは言えど、こうもされると流石にうざったいのだ。
「それじゃあなんだよ。体育の授業の時からチラチラこっち見て…」
「………気づいてました?」
「気づいてなきゃ聞いてねえよ。さっさと話しな」
びっくりしたような顔をする五月に、話を促すと意を決したように。
「えーと………その、町谷君は、私の事好きなんですか?」
「……おいおい、なんの真似だよ」
まるで期末テストの後の一幕を思い出させるかのようなことを言い出した。
数分後。
「なーるほどね。要は俺とお前が付き合ってるって噂が流れてて、それにあてられたってわけか」
「そんな軽々しく言わないでください、これでも勇気を出したのに……」
突然の話に困惑した俺に、五月が説明した内容を照らし合わせると、どうやら俺と五月が交際してるのでは?と言う話が持ち上がったらしかった。
付き合ってないんだし、そうはっきり言えばいいと思うんだが………まあ、確かに今までのことを考えると、ちょいと距離が近すぎたかもしれない。
「それで……どうなんです?」
と、少し反省して、ちょっとだけ距離を空けると、その距離を何故か詰めて来た。
まるで、いつもみたいな冗談は無しだと言われているように感じたので、真面目に考えて数分後。
「まあ、俺もお前のことは好きだぜ?
話してて面白いし………悪意なく俺のことを知ろうとしてくれる奴を、嫌いになったりはしない。
何より見た目と中身がいいしな」
「最後の一言が余計ですが……ありがとうございます。
私も前に言った通り、あなたの事が好きですよ」
少し頬を染めながらも言い切る五月との、直球の言葉のやりとりに少しやりにくさを感じるが………だからこそ。
「今はまだその好意は受けられない。
俺は………自分の中で踏ん切りをつけきれてないから」
「町谷君………」
死神の自分の宿命とそれが及ぼすことへの恐怖。
……これを乗り切らない限り、俺はコイツの飾り気のない好意を受け止められないと思うのだ。
「でも……少しずつ、その答えが見えて来た気がする」
自分を許すこと……自分を信じることができて。
そして………後悔を拭う新しい方法を見つけることができたら。
俺は………約束しよう。
「だから……「分かりました。………その答えが見つかったら、私にも教えてください」
言葉を続けようとしたら、五月が満足げに。
「私も………そのあなたの答えを受け取れるような自分を目指します」
「ハードル高えなあ…」
夕焼け空に照らされながら、正面から告げて来るのであった。
side五月
「どうしたの?五月。随分ご機嫌だね」
「そうですか?」
久しぶりに大人数での勉強会をやろうと言う時。つい顔に出ていたのか、四葉が声をかけて来た。
それはそうだろう。
私が抱いている想いを、町谷君も抱いていて………頑張って応えようとしてくれていることを知ったのだから。
この通じ合っていることへの喜びが、「恋」と言うものかもしれない。
だから、私がやるべき事は一つ。
「私も、前に進まないといけませんね」
彼が答えを見つけるその日に相応しい私になろうと、まずは目の前の問題集に予習として取り掛かるのであった。
「にしても、最近はバイトばっかで勉強してないけど、大丈夫かな〜?」
「………ギクッ」
あと、下田さんへの話も早く通しておかないと……。
いかがでしたか?
今回は「五月の想いに応えるために、改めて自分を探そうと誓う奏二」と「さらに成長するであろう奏二の隣に立てるように、奮起を誓った五月」が想いの共有をして、それぞれの成長を誓い合うところまで書かせていただきました。
お互いを認めているからこそ、相手の輝きに負けないように自分を磨く……そんな、リスペクトしあい、高め合うという恋人ともライバルとも親友とも言えるようなある意味理想てんこもりな関係性になりましたな。
次回は武田との新・川中島編に入り、そこでは風太郎の成長を書いていければいいなと思っております。
それでは、また次回にお会いしましょう。