今回は修学旅行が始まるまでのお話になります。
それではどうぞ!
奏二の秘密
全国模試は全国20位。
全国模試を終え、初夏の風が吹いて来たある日のこと。
俺達は目の前の風太郎と四葉に視線を集めていた。
その理由は………
「全国模試も無事終わったと言う事で、修学旅行の話に本格的に入りたいと思います。
事前に配られたパンフレットに、三日間の流れは書いてありますが………皆さんは、明日までに班を決めて置いてください」
いよいよ、修学旅行に向けた準備が始めようとしているからだった。
まず、この班の組み方を明らかにしておこう。
今回の旅行における一班の定員は5人で、男女比率は特に問わないらしい。
だが、一人班はなしとの事なので、2〜5人での班を組めとのこと。
つまり、彼氏彼女で組んでイチャイチャするのもよし。
友達同士でワイワイ組んでもよしってわけだな。
だが……班長を決める必要があるため、それをやりたくなければ班長をやりそうな奴を仲間にしなければならない。
………まあ、そこまで考える必要性もないのかもしれないが。
そんなわけで、ひとまず加藤か風太郎のどちらかを誘おうとした時。
「ソージ君、ちょっと相談なんだけど………
五月ちゃんをソージ君の班に入れてあげてくれないかな?」
一花に連れ込まれた空き教室で、そんな提案を受けていた。
side 一花
「私と四葉とフータロー君で一班………いいよね?」
四葉にこう頼んだ私は、次はソージ君に五月ちゃんの事について頼んでいた。
……正直、五月ちゃんはソージ君にゾッコンだしそこまで心配じゃないんだけど、念のためだ。
それに、五月ちゃんが昔から友達を作るのが苦手なことはわかってるからね。
「何でまた……てか、多分五月のことだからお前ら5姉妹でー、とかになるんじゃねえのか?」
案の定訝しむような視線を向けてくるソージ君。
確かに、五月ちゃんならまずそう言い出すと思う。
だが、流石に班を決めてしまえば、それを崩してでも皆んなでいたいって言い出しはしないだろう。
良心が痛まないといえば嘘になるが、私だってフータロー君の隣という座を、他の誰にも譲りたくないのだ。
「自由行動の時とかに5人になることは出来ると思うよ?
だから、二乃もいつも一緒にいる子達と班を組もうかって考えてるみたいだし」
そう、咄嗟に二乃のことを話題に出すと。
「……アイツのことだから風太郎との二人班狙いじゃねえの?
つか、お前もそれを狙ってるから五月を厄介払いしたいんじゃ………」
「じゃあ、私先生に呼ばれているから、よろしくね」
「ちょ、待てよ……!」
一体どんな思考回路をしているのか、何かに勘付いたかのようなソージ君から逃げるように、教室を後にした。
side四葉
「お、今日は珍しく三玖がいるな」
「この後バイトだけど、ちょっとだけ参加する」
「俺もこの後、何でも屋の仕事があるから、途中でお暇させてもらうぜ」
「全国模試以来の全員集合ですね」
「そうだな……アレから1週間か」
図書室に集まったみんなの前で、私は一人悩んでいた。
三玖と風太郎君と私の3人で班を組もうとしたら、一花と風太郎君と私の3人で班を組めるようにして欲しいと頼まれてしまったのだ。
出来ればみんなの希望を叶えてあげたいけど、それはできない。
これはどうしたものかと、パンク寸前になるまで考えていると二乃が。
「四葉、どうしたのよ?そんなに唸っちゃって」
怪訝な顔を向けて来たので、慌てて誤魔化す。
「い、いえ!ちょっと考え事を………さ、さあ!勉強を始めましょう上杉さん!」
そうして、いったんこの話題は後回しにしようとしたら。
「その前に、修学旅行の話がしたい。
フータロー、誰と組むか決めた?」
三玖によって、その願望は潰えることになった。
………私の頭にこれ以上の負荷をかけないで!
side 奏二
三玖が切り出した、班決めについての話題。
「あの………町谷君?何だか空気が張り詰めたような気がしますが?」
「ようなじゃなくて、実際張り詰めてるぜコイツは……」
それにより、和気藹々としたムードから一転、どこか張り詰めたような空気がこの場を占めたような感じになる。
冷や汗を流す五月と共に成り行きを見守っていると。
「俺は……」
「待って!四葉が話したいことがあるって!」
「ええ⁉︎」
何故か一花が四葉に話を振った。
「四葉にも何かやったな、アレは……」
話を振られた四葉の「ついに来てしまった」と言わんばかりの顔から、恐らく俺だけじゃなくて四葉にも何か頼んだのだろう。
だが………
「ほら……ね?」
「…え、えーと……」
一花だけじゃなく三玖も四葉に話すように促す。
「何?」
「うーんと………」
三玖も何か頼んだのかもしれないが、四葉はその二つの依頼で頭を回転させているのだろう。
「早く言えよ」
「あー……」
そして、風太郎にも早く話すように促され、しばらく唸った後。
「あ、あのですね…
三玖も一花も一緒に………
だけど五月と二乃は………」
と、しどろもどろになったかと思えば。
「あ、そうだ!
この際みんなで同じ班になろうよ!上杉さんも一緒に!」
「え?」
思いついたような無茶振りを言い出した。
「確かに、それが一番だけど……」
「定員は5人だぜ?」
確かに、6人全員で組めれば一花の希望も三玖の希望も叶えられるが………現実は八方美人に甘くはない。
誰かの希望を叶えると言うことは、誰かの希望を叶えないことでもあるのだ。
そんな念も込めて口を挟むと、少し寂しそうな顔をしながら。
「だから……私と町谷さん以外のみんなでってこと!
これなら万事解決だね」
つまり、四葉は俺と自分を抜くことで一花と三玖の希望を叶えようとしたわけだな。
「それは……いくらなんでも………」
流石の一花もそれは申し訳ないらしく、難色を示すが。
「何か問題あるかな?」
と、やはりどこか諦めたような顔で笑う。
多分、四葉も風太郎と回りたいんだろうなと思った。
だが…コイツはなにがあったかは知らないが、自分より他人の幸せを取ろうとしているのだ。
そんな四葉に、一花と三玖がどこが申し訳なさそうな顔をしていると、そこに待ったをかける声が。
「ま、待ってください………それなら、私が町谷君と二人班を組みます!それなら四葉も………」
これ以上見ていられないと言わんばかりの顔の五月が、何かを言い出そうとした時。
「待ちなさい四葉。
そんなこと誰も望んでないわ………だから、こんなのはどうかしら。
まあ、最初から決めてたことだけど…………私とフー君が二人っきりの班を組むの。
好きな人と回る………いい?あんたに拒否権はないから」
二乃がまた、ど直球な案を風太郎に提案して来た。
………だが、風太郎はそもそも…………。
side五月
みんなの間で何が起こっていたのかは、正直わからない。
でも……四葉がまた、自分の気持ちを抑えてまでみんなのために動こうとしているのだけは、何となくわかった。
四葉だけが割を食うだなんて絶対にあってはならない……だから、私が一肌脱ごうとしたら。
二乃が、上杉君を好きだと公言した上で二人班を組むことを提案して来た。
………まさか、上杉君の言ってたことは嘘じゃなかったとは。
そして、それはつまり本当に一花も………!
そうして視線を向けた先で一花は、やられたと言わんばかりの顔を見せていた。
side一花
二乃の突然の提案に、私は先手を打たれたことを悟った。
四葉に私からのお願いを提案してもらう為に、話を振ったところまでは良かったのだ。
だが……どうやら三玖にも似たようなことを頼まれていたようで、その板挟みになった結果、四葉に割を食わせてしまう結果となってしまいそうになってしまい。
そこから、五月ちゃんが何か言い出す前に、二乃が清々しいほどに堂々と宣言したのだ。
ここまではっきり言われては、手の出しようがない。
「おい二乃、勝手に……」
「フー君は黙ってて!」
待ったをかけようとしたフータロー君にも釘を刺す二乃に、何とか食らいつく方法はないかと考えていると。
「ふ、フー君!
わ………
私も…………」
三玖も、顔を真っ赤にしながら、絞り出すように言い出そうとして………。
「何よアンタ達。
言いたいことがあるなら、いまここではっきりと言いなさい」
それに対する反応は、三玖だけならず私にも向けられているような気がした。
三玖にまで言われたら、ただでさえ手が出せないのに余計に出せなくなってしまうので、肝が冷えたが………三玖は結局言い出すことができず。
「………決まりね」
そんな三玖に呆れたように鼻を鳴らし、話は終わりだと締めくくろうとすると。
「いや、決まったところ悪いんだが………恐らくそれは無理だ」
ソージ君が、突然このやり取りの意味をなくすようなことを言い出す。
「はあ?何でよ」
「それでは種明かしを頼むぜ?風太郎」
二乃がそれに噛み付くと、ソージ君はフータロー君に話を振り。
「その……悪いんだが、俺、もう奏二と武田と前田とで班組んだぞ」
フータロー君は、申し訳なさそうに告げて来て。
………もしかしたら、最大の敵はソージ君かもしれないと、私はこの時密かに思うのであった。
side五月
その日の夜。
「なるほど、そんな事が……」
「ああ。四葉は元々三玖と風太郎での3人班を組もうとしてたらしいんだが……そこに一花が自分と四葉と風太郎での3人班を組むように言い置いていったんだと」
家の中なのに、どこか張り詰めたような空気を感じながら、それぞれの時間を過ごしている中で。
私は仕事終わりの町谷君と通話していた。
四葉が自分を犠牲に何かをしようとしていたのはわかったが、それがどう言う経緯からかわかっていなかったからだ。
なので、何か知っている様子だった町谷君に心当たりはないか聞いてみて今に至る。
「それで四葉はあんなことを言い出したのですね……それに、私とあなたでの班を組ませようとしてたとは、俄には信じ難いですよ」
「それだけ奴さんは本気って事さ」
まさか、おかしくなってしまった上杉君の妄想かと思っていたが本当に一花と二乃が上杉君を好きだったなんて………
「そう言えば、お前二乃が言う前になんか言ってたよな?」
それに、三玖と四葉も………ああ、それなら。
「あなたと班を組もうとしてたんですよ………ハッ⁉︎
ゆ、誘導尋問とはズルいです!」
「どっちかってーと自滅だろ、今のは………で、理由は?」
呆れたように言う町谷君に、誘導尋問の仕返しの念も込めて。
「四葉に、これ以上我慢して欲しくなかった………のは半分で。
………もう半分は、二乃と同じです。
好きな人と回りたい、から…………」
すると、しばらくの沈黙の後。
「な、何か言ってくださいよ」
「いや、なんかむず痒くてな………でも、それならちょっと勿体ねえことしたかも」
どこか照れたような口振りの町谷君だが、こんな恥ずかしいことを言った私はもっと照れていると、熱くなった頬が教えてくれていた。
………これじゃあ本当に自爆したみたいじゃないか。
side 風太郎
「下着と靴下……歯ブラシは持ってくんだっけ?」
「ああ。今回は私服じゃなくていいらしいから、ここで買うもんと言ったらそれくらいだな」
「おい、らいは。わざわざ新調しなくていいだろ?」
そろそろ修学旅行との事で、俺はらいはに連れられてショッピングモールにやって来ていた。
そこで、たまたまやって来ていた奏二と合流して、下着コーナーにいる。
「えー?
だってお兄ちゃんのパンツビロビロだもん。
クラスの人に笑われちゃうよ!」
「今笑われてるんですが…」
「これは買うしかねえな?風太郎さんよ」
らいはのネタバラシに、そこらからくすくすとした声が聞こえてくるのを聞き流す。
「それに、折角家庭教師に復帰できたんだし、少しくらい自分のために使ってもバチは当たらないよ………あ!
そして、そこまで言ったらいはは思い出したように。
「でも、五月さん達への誕生日プレゼントをケチってたら嫌われちゃうよ?」
「へぇ、あいつら誕生日なのか」
あいつらの誕生日について………
「えっ、もう過ぎてるけど」
「お前、やってねえのかよ……」
一拍おいて、らいはと奏二からジト目を向けられた俺は少し考えて。
「まあ、やらなくても………
つーか、あいつらも遅れてたし?
いや、そもそもあっちから言わないと言う事は………」
「お、お前って奴は……。釣った魚に餌くらいやれや…」
「頂いたらお返しでしょ!
小学生でも知ってる常識だよ!」
と、そこまで言われて渡さないのは、何だかあくどいことをしてる気分になって来たので、らいはと奏二が向かっていった方向に俺も向かい。
「やっぱ、あげたほうがいいかな?」
「ひゃあっ!
………って、誰かと思えば上杉君もいたのですか……」
「上杉さん!らいはちゃんと町谷さんもこんにちは!」
らいはにむけて声をかけたつもりが、そこにいたのは五月と四葉だった。
らいはの話によると、昨日五月と買い物をする約束をしていたんだとか。
で、折角だしコイツらの買い物を見て、欲しがりそうなもんを探そうと思ったが。
「下着を買いに来たんですよ!ついて来ないでください!」
どうやら向こうも下着を買いに来たらしく、懐かしい反応と共に追い返されてしまい。
そうしてらいはと五月が下着売り場に行ったので、残る俺と奏二と四葉はベンチで一息ついていた。
「お前さんはいいのかい?四葉さんよ」
「ふふん…私、こう見えて物持ちがいいんですよ?」
「どうせお子様パンツだろ」
「な、なぜそれを……‼︎」
「おい。どっから仕入れて来た?その謎情報」
不思議そうに尋ねる奏二にドヤ顔で答える四葉に付け足してやると、予想外と言わんばかりの反応が返って来る。
「ったく、模試を終えたばかりとは言え、こんなことしてる場合かよ……」
「まあ、この先のお楽しみなんてこれと文化祭くらいしかねえんだし、浮かれさせてやろうぜ?」
相変わらず気楽そうに言う奏二にため息を吐く。
……なんか、こいつに毒されたのか、色々悩んでるのが馬鹿馬鹿しくなって来たような気がする。
………よし。
俺は、隣に座っている四葉に。
「……お前、将来なりたいものとかあるか?」
意を決して聞いてみたが。
「………考えた事なかった」
「やはりか……」
「まあ、お前もまだ考えてないだろうし、そう焦るもんじゃないさ。最悪その場の勢いでどうにかしちまえばいいしな」
まるでダメ人間の教えみたいなことを言い出す奏二だが、実際俺も四葉と似たようなもんだし言い返せない……。
しかし、コイツにはずば抜けた身体能力がある。
その方面で探してやれば、きっと適したものが見つかる筈だ。
とりあえず、要検討と言うことにしておくと、ほくほくした様子のらいはがやってきた。
「あら?五月はどうしたよ」
「奥で採寸と試着してるよ」
「五つ子なんだから、他のやつと同じサイズでいいだろ」
「あ!五つ子ハラスメントですよ、イツハラ!」
そう言ってホイッスルを鳴らす四葉だが、確かに不自然だと唸った後。
「もしや五月……一人だけ抜け駆けしたんじゃ………」
「まあ、あんだけ食ってりゃ、萎むことはねえだろうよ」
「五つ子の皆さんも大変なんだね」
自分の胸を抱えてなんだかブツブツ言い出した四葉は、らいはのぼやきに反応して。
「そうなんですよ、最近なんて特に………」
何かを言いかけたが、慌てて誤魔化すように立ち上がり。
「い、いえっ!
兎に角林間学校は散々な結果で終わってしまったので、今度こそ!
後悔のない修学旅行にしましょうね!」
屈託ない顔がどこか眩しいので目を逸らす。
「どうでもいいがな。体調管理は気をつけるさ」
「もー、本当は楽しみにしてるくせに!
家で何度もしおりを確認してるんだから」
「らいは!」
「お前案外可愛いところあんじゃねえか。武田あたりに教えてやるぜ」
「やめてくれ、なんかアイツからたまに寒気を感じるんだ……」
らいはと奏二に食ってかかろうとした時、らいはが。
「それに、写真の子に会えるかもしれないしね」
最近色々忙しくて、薄れかけてきた記憶を呼び起こした。
side四葉
「写真の子にも会えるかもしれないしね」
「それはないだろ……」
「あれ?京都じゃなかったっけ?
お父さんそう言ってたけど……」
「だとしても、あっちも旅行者だから………」
風太郎君とらいはちゃんのお話に、私はドキッとした。
なんたって、その女の子は私だから。
とは言っても、今ここで明かすべきじゃないような気がしたので、知らないふりをする。
「写真の子ってなんですか?」
「ほら、四葉さんも気になってるみたいだし、見せてあげなよー」
そう言って、風太郎君の周りを回るらいはちゃん。
「……なんでもねーよ、写真ももうない」
「むっ」
そんならいはちゃんにせびられても尚、誤魔化すように言う風太郎君に、私は詰め寄る。
私は、みんなの為に生きると誓った。
誓ったけど………でも、やっぱり思ってしまう。
私のことを好きであり続けてくれたらって。
「なんだか怪しいですね!
何もないなら言える筈ですよ!」
未練がましいと言われてもいい。
「何故話せないのか、私にはわかります!
それは未練があるからです!
さぁ、話してスッキリしちゃいましょう!」
ずっと、風太郎君は私の………
その続きが出ようとしたところで、風太郎くんは。
「京都で偶然会った女の子だ。
名前は零奈」
「えっ?
零奈って……」
私達5姉妹にとって、余りにも覚えのある名前を出してきた。
何せ、その名前は……
「おしまい」
「えっ」
私たちのお母さんの名前であり、その名前を何故五月が使ったのか気になったが………それよりも、かなり気になるところで風太郎君は話を終えてしまった。
「か、かなり気になるんですが………もう少し教えてくださいよ〜」
そう頼むが、風太郎君は目を逸らしてこちらを向こうとしない。
だが、そんな風太郎君の隣でらいはちゃんは。
「つまり、お兄ちゃんの初恋の人だよね」
「は、初恋‼︎」
先程出かかった言葉を口にしてきた。
そう。風太郎君は、私の初恋で。
そして、風太郎君の初恋が私…………
どうしよう。今すぐに踊り出したいくらい嬉しい。
今もそうであってくれたらもっと嬉しいけど………でも、少しの間でも好きでいてくれたなら、今はそれでいい。
顔がにやけないように必死に表情を作っていると、ちょうどよくらいはちゃんがお腹が空いたと言い出したので。
「じゃ、じゃあ!
私がなんでも買ってあげちゃいますよ!
上杉さんと町谷さんは五月を待ってる係です!」
私は、これはいい機会とらいはちゃんを連れて、フードコートの方へと向かうことにした。
side風太郎
四葉とらいはがフードコートに向かった後、奏二は靴屋に行ってくると、人ごみの中に消えた。
「疲れた……」
色々聞かれて疲れていた俺は、ベンチに腰掛けて息を吐く。
…………その隣には、また相手をするのに疲れそうなやつがいるけどな。
「2回目は驚かねえぞ………零奈」
俺が、視線を合わせることなく話しかけると。
「なーんだ、残念」
どこか、残念そうな声が聞こえてきた。
「修学旅行、京都らしいね。
懐かしいな〜」
昔を懐かしむ声音で話しかけてくる零奈。
「もう姿を見せないんじゃなかったのか?」
だが、俺は気になっていたことを聞くことにした。
これでは、1回目にあんなに必死に引き留めたのがバカみたいに思えたからだ。
「なぜ、また現れた」
あの時のことが頭にちらつきながらも聞いてみると、どこか悪戯めいたような笑みを浮かべ。
「君に会いたくて………って言ったら、どうする?」
頓珍漢なことを言い出した。
いや、だって………
「こんなことしなくても、いつも会ってるだろ」
「えっ」
そう、誰かまではわからないが、こいつからは、毎日会っているような感じがしたからだ。
そして………
「なぜ、母親の名前を名乗った」
この名前を出した時、四葉は驚いたような顔をした………つまり、アイツの関係者の名前で。
零……一の前の漢数字を冠すると言う事は、多分母親なのだろうとカマをかけてみると。
「はは……そこまでバレちゃってるんだ………」
そいつは、白状するかのように軽く笑い。
「なら、問題……
私は、五つ子のうちの一人です。
さあ、私は誰でしょう?」
質問に質問で返してきたが………。
「わからん!早く教えろ」
「諦め早っ!」
「この手のクイズはもううんざりだからな」
最近この手のクイズに食傷気味だった俺は、速攻で答えを求めてやった。
何というか………誰が誰とか、誰のふりをした誰だとか、もううんざりだったからだ。
ただ………
「お前には……感謝してるけどよ」
そう伝えようとしたが、もう隣に零奈と名乗ったあの子の姿は見えなかった。
「………嵐みてえな奴だ」
いかがでしたか?
次回からはいよいよ京都を舞台にシスターズ・ウォー開戦でございます。
色々考えを捻り出し中ですので、待っていただけると幸いです。
それではお楽しみに!