基本は原作通りにしながらも、ちょいちょい変えるのは苦労しますね。
色々と変なところがあるかもしれませんが、楽しんでいただけると幸いです。
奏二の秘密
依頼で、ゲームキャラの声を当てたところ、なぜか歌わされた。
それは、6年前の京都でのこと。
当時小6の風太郎がゴスロリババアに絡まれ、あわや警察沙汰になりかけたところで。
修学旅行でやってきて、京都ではぐれた四葉に助けられ。
そこで清水寺やら京都駅周辺やらを回ったとのこと。
そうして二人で「必要のある人間になる」という誓いを立てた………。
風太郎、五月、四葉からの情報をまとめるとこんな感じで。
それを踏まえて現状を整理しよう。
まず、一花は他の姉妹を偽って、四葉や俺にサポートを押し付けてまでも風太郎をものにしようとしている。
まあ、このゼロサムゲームに対して、最もまともな考えをしていると言っていいだろう。
次に二乃は、最初から風太郎との二人班を狙っていたが……搦め手なしの真っ向勝負ってところか。
まあ、一花以外は正攻法で行こうとしているわけだが、1番その傾向が強いと言える。
三玖は一花と同様に、風太郎と同じ班を狙ってはいたものの……元々の引っ込み思案から、どうにも踏み切れてない様子だ。
……まあ、何か狙ってはいるようだが。
四葉は、二人の板挟みにあったものの最終的には5姉妹での班に落ち着いた。
そして、恐らくは三玖のフォローに回るだろう。
アイツの性格的に、風太郎へのアプローチ手段を決めあぐねている三玖に味方するはずだ。
………正直、この中で一番理解しかねるのがこいつなんだよな。
四葉も間違いなく風太郎のことが好きだろうし、思ってきた年月はこの中の誰よりも長い。
いくら負い目があるからと言っても……そんな、使われっぱなしな生き方なんて俺はゴメンである。
最後に五月は、風太郎に6年前のことをより深く思い出してもらおうとしている。
立場的には四葉の味方………と言ったところだが、姉妹の中では唯一、この争いに参加しておらず、独自の行動ってわけだな。
四葉に頼まれた域を超えて「初恋の子」としての働きかけを行なっていたのも、おそらくそこからの行動だろう。
そんなこんなで、それぞれの想いが交差する修学旅行が、今始まるのであった…………。
京都へ向かう新幹線の中。
「ロイヤルストレートフラッシュ」
「だーっ!町谷てめえ強すぎだろ!」
「うーむ……イカサマしてるわけでもなさそうなのに、僕らさっきから一回も勝ててないよ」
「次だ次!」
俺、風太郎、武田にコラ助はトランプと洒落込んでいた。
新幹線で1時間くらいの暇があるので、折角だからと持ち寄ったのだ。
「チェスや将棋は風太郎の独壇場だったろ。神経衰弱でもコラ助以外に勝てる気しねえしな」
「フッ……今まで負けたことはなかったんだけどね。さすがは僕のライバルだ」
「コラ助言うな……上杉と武田がやってたのを見てたが、さっぱりわかんねえぞコラ」
「次は何やるんだ?どんどんやろうぜ!」
ついさっき無双していた風太郎は、林間学校でも見せたハイテンションの片鱗を見せており、少しだけ心配になる。
ここでも風邪でダウンしたら、逆に面白いのかもしれないが……
「んじゃ、風太郎のお守り頼むわ。おやすみ………」
兎に角、後20分くらいで着きそうなので、俺は京都に備えて仮眠を取る事にした。
side四葉
「はい、フルハウスー」
「ぐぬぬ……」
「負けました……」
新幹線の中で皆んなとトランプをしていた私は、隣で物音立てずに眠っていた三玖に声をかけた。
「終わったよ」
「……あ、ツーペア」
「遅いし弱い!」
別に、具合が悪いわけじゃなさそうだけど………あ、そうだ。
「ひょっとして、今朝早起きしてどこか行ってたのって……」
「うん。
バイト先に無理言って、朝から厨房貸してもらってた」
思い当たるところがあったので、そこを指摘してみると当たりだったようで、三玖は天井の荷物入れに視線を向ける。
それはつまり……
「パンを食べてもらって、いよいよか……」
三玖は風太郎君に告白をするつもりなんだ。
そして、場合によっては………私の初恋は終わってしまう。
でも………三玖がこの日のために、頑張ってきたことは、紛れもない事実。
「ずっと今日のために頑張ってきたんだもんね。
最後まで応援するよ」
「うん……ありがとう、四葉」
だから私は、自分に納得させると言う意味も込めて、三玖へのエールを送った。
……納得しようとしても、できることはないのかもしれないけど。
「……そうだ、次勝った人はなんでも命令できるってルールでやろうよ」
「なんでも、ね……」
「負けない」
「いいね、私も負けないよ!」
「みんな、妙に気合入ってませんか?」
あ………多分コレ私の勝ちだ。
side奏二
京都駅に降り立ち、学年主任からの注意事項を皆んなソワソワしながら聞き流し。
一日目の自由行動が始まったところで、俺、武田、コラ助は風太郎にある依頼を受けていた。
それは……
「コラ助、盗撮は雑音があって、撮影音が紛れそうな時にやるもんだぜ」
「そんな知識いらねえよコラ」
中野家の五つ子を、撮れるだけ写真に収めてくれとの事………要は隠し撮りである。
「多分、あれ二乃が少し勘づいてるぞ」
「確かに、彼女警戒心が強そうだしね……これは手強くなりそうだ」
だが、コラ助は撮影音が聞こえやすい状況で撮ってしまい、二乃がキョロキョロし始めていた。
「……まあ、まだ一日目だ。三日もあるんだしそこまで必死にならなくていいぞ」
そんなこんなで、俺達は作戦を練りつつも、予定通り東丸神社へ向かう事にした。
数十分後。
「なんだここ………」
「見ての通り東丸神社だ。北野天満宮ほどメジャーじゃないにせよ、学問の神様が祀られている神社だぜ」
「君の成績は見るに堪えないんだから、深ーく祈りたまえ。前田君」
「んだとコラァ!」
「お前らうっせー!」
目的地に到達し、前田と武田、風太郎がコントを繰り広げている隣で
、俺はどこからか視線を感じ取っていた。
正確には俺に向けてじゃなくて、風太郎に向けてのものなんだが……。
「奏二、どうした?そっちには何もないだろ」
「んあ?ま、まあな…」
「おい、なんか霊が視えてんじゃねえのか?」
「安心したまえ。
お墓があるのはお寺だけだ」
「こ、怖くなんかねえぞコラァ!」
「お前、自爆してんじゃねえか」
意外と怖がりらしい前田に苦笑する風太郎達を横目に。
「悪りぃ、俺トイレに行ってくるから先に行っててくれ」
「んあ?おう……」
俺は、その視線の主を突き止めるべく一旦みんなから離れて動く事にした。
……突き止めると言うより答え合わせだな、多分。
side五月
「なんか地味ね……」
「こらこら」
上杉君達が騒いでいるのを、私達5人は物陰から見つめていた。
………皆んな、上杉君と一緒に回りたいはずなのに、なぜか隠れて尾行しているのだ。
私としても、彼と京都駅周辺を周って昔を思い出して欲しかったんだけど………町谷君達と楽しそうにしている彼を連れ回すのは、流石に気が引ける。
ショッピングしたいと言っていた二乃が微妙な顔をしているのを横目に、観察を続けていると……
「移動するみたいだよ」
「隣にも神社があるみたいね……行くわよ」
「自由昼食は今日しかないのに……分かっていたけど、この班行動が最大の難関……」
「大丈夫!きっと二人きりになれるチャンスは有るはずだよ」
紙の袋を抱えた三玖と四葉が、何をしようとしているのか気になりつつも、動き出した上杉君達の跡を追いかけようとした時。
「おいおい……雁首揃えて野郎のストーカーかよ」
「え」
どこか呆れた様な顔をした町谷君が、後ろから声をかけてきた。
「そ、ソージ君⁉︎」
「あんた、急に出てくるんじゃないわよ!」
「おかしい……気づかれない様に気配消してたのに」
「町谷さん、ひょっとして忍者……⁉︎」
確か彼はトイレのある方向へ向かっていたはずだが………
「背後の人数と足音の数が合わなかったからな。それに……お前らの諦めが、そうそういいとは思えないぜ」
「……本当、油断も隙もありませんね」
まさか、そんなところから私たちに行き着くとは思わず、一層感心している私の隣で。
「で、なんでこんな事をしてたんだよ。一緒に回りたいなら普通に回ればいいってのに」
一応の確認みたいな感じの、町谷君の質問に。
一花と二乃が軽く目配せしたかと思えば。
「じ、実は五月ちゃんが、ソージ君と一緒に回りたいって!」
「でもこの子方向音痴の恥ずかしがりだから、アンタが一人になるのを待ってたのよ!」
「ええ⁉︎一花、二乃⁉︎」
息ぴったりに、いきなり私を引き合いに出してきたので、思わず素っ頓狂な声を上げるが、それで三玖と四葉も何かを察したのか。
「……だから、五月と一緒に回ってあげて。私たちは先に行ってるから……」
「そ、そうだね!お邪魔しちゃ悪いよね!」
どうやら、私と町谷君を引き合わせる機会を窺っていた……と言う事にするつもりのようだ。
確かに、町谷君と一緒に回りたいのは事実だけど、いきなりだと緊張しちゃうし、私には私のやることが……。
しかも、なんだか押しつけようとしている感じがして、流石に待ったをかけようとしたら。
「……行っちまいやがった」
みんなは上杉君達が向かった方へ向かっており、ここにいるのは私と町谷君の二人だけになるのであった。
「……その、ここで立ち話もなんですし、私たちも跡を追いかけませんか?」
「……そうするしかねえか」
町谷君の話だと、上杉君達は東丸神社から伏見稲荷大社の本殿に向かい、そこから千本鳥居、四ツ辻を行って山の頂上まで向かうとの事。
きっとみんなはその後を追うと思うので、私達もそのさらに後を追うことにした。
……まあ、そんな考え事は後にしよう。
「写真では見ていましたが、やはり実物は壮観ですね」
「ああ、何を思ってこんな数作ったのかは理解できねえが、そんな野暮はなしだな」
見渡す限りの緋色の鳥居が織りなす、壮観な景色に失礼だ。
その景色につい心が躍るのを感じていると、町谷君は私に向かってスマホを……って!
「………撮るなら先に言ってくださいよ」
「悪りぃ悪りぃ。……お前さんとここの組み合わせが、あまりに綺麗だったもんで、つい……」
「………褒めてくれるのはうれしいですけど、私にも心の準備が」
「されてると表情作られちゃうだろ。ありのままの五月と、ここの組み合わせが良かったんだから」
「そ、そうですか………」
どうやら町谷君は、いつもの私が良かったらしい。
……そう言われると、ニマニマしちゃいそうだ。
「んじゃ、アイツらに追いつこうぜ。三玖がいるから追いつけないことはないと思うが……」
「あ、待ってくださいよ!あと、それ三玖が聞いたら怒られますからね?」
そうして歩き出した町谷君の後を、さっきよりも軽くなった足取りで追いかけるのであった。
みんなに後でお礼言わないとな……。
side二乃
「け、結構きついわね………」
「足が痛くなってきたよ……」
写真映えすると喜んでいたのも束の間。
私は長すぎる鳥居の道を前に痛くなった足を動かしていた。
長いスパンの罠に引っかかったものである。
そんな私と一花の前を行き、三玖を支えながらも未だ堪えている様子もない四葉が。
「もー、皆遅ーい‼︎」
能天気な声を上げた。
「全く……あの子は気楽でいいわね」
「あはは……あれが四葉の良いとこだよ』
まあ……一花の言う通り、それが良いところなのは間違いない。
「そうね……どこかの誰かさんとは大違いだわ」
私の隣にいる、どこかの誰かさんとは違って。
さっきの五月の件に関しては、私も同罪ではあるけど……図書室で班決めの話が出たあの時、四葉に何かを促していた。
それは恐らく、自分とフー君、四葉での班を組ませようとしていたんじゃないだろうか。
そして、五月と町谷の通話を偶然聞いたのだが……町谷にも働きかけていたらしい。
そんな誰か……一花がこの修学旅行で、何も仕掛けてこないわけがない。
「どうせ今日も悪巧みを企ててるんでしょ」
そんな私の問いかけに一花は。
「ははは………しないよ、そんなこと」
そう言いながらも、なぜか持っていた手提げ鞄に手をやっていた。
side奏二
「四ツ辻か……風太郎達は確かここで休憩してるはずだが…お前も休憩した方がいいな」
「お願いします……流石に疲れました…」
千本鳥居を渡り、そこからさらに歩いたところにある四ツ辻。
疲れた五月に合わせて動いたお陰で、そこまで疲れてない俺は風太郎達にメールを送っていた。
どこかで飯でも食っていてくれると合流しやすいんだが……。
兎も角、返信を待っている間にどこか休める場所を探すべく、五月の方を見ると。
「皆んなはもう、山頂のほうに向かっているそうです。
三玖と四葉はこの先の分かれ道において右のルートを………一花と二乃は左のルートへ向かうらしいですよ?」
グループチャットで情報共有をしていたらしく、姉妹達の現状を教えてくれた。
アイツらは風太郎たちの後をついていく様にコースを決めている。
つまり……
「風太郎達は山頂にいるか……どうする?
お前疲れてるだろうし、ここで待ってても良いと思うぜ?」
この場合、風太郎達はその先を行っていると考えるのが妥当だろう。
ただ、五月が疲れている以上、無理に歩かせるのも気が引けるので一応どうするか聞いてみると。
「仲間はずれみたいで寂しいので、行きましょう」
負けず嫌いが発動したのか、行く事を選択した。
side二乃
「あ、一花!二乃!」
「やっと追いついたぜ……」
「随分と急いできたわね」
一花と一緒に左ルートに差し掛かったところで、町谷と五月が追いついてきた。
二人とも急いできたのか、少し息が上がっている。
「コレでやっと聞けるな。
お前ら、何で俺達を尾け回してた?」
そんな中で、少し前に五月を差し出して回避した話題を再び再燃させようとしてきたので……いや、もう良いか。
「フー君と一緒になる機会を窺ってたのよ。
尾行したことは悪かったわね」
「んあ?珍しく素直じゃねえか。雨でも降るのか?」
「うっさいわよ」
一言余計な町谷に突っ込みながら周りを見るが……やっぱり。
「人の流れから見て、あっちが正規ルートよ。もしかしたら先に合流されるかも……一花、あんたが余計なこと提案したせいで、変なことになっちゃったじゃない」
「いや〜、運命の女神様は意地悪だよね」
「えっと、二乃達は何の話を?」
私たちの会話についていけてない五月だったが……。
「あ、お手洗いです。
ちょうど行きたかったので助かりました」
公衆便所に安堵した顔を見せていた。
「たしか、この先はまだ距離があるよな……俺も行っておくぜ」
町谷も地図を見ながら五月の後に続いて男子の方に入っていく。
たしかに、地図を見る限りこの先には無さそうだ。
正直、一花が何かしそうであまり目を離したく無いけど……催すよりはよほどマシだろう。
「なら私も行くわ」
そうして、私もトイレに入ってから数分後。
「もうお昼なのに、お腹空きましたね……」
「フー君達は、お昼どうするつもりだったのかしら…」
トイレから出てきた時には、町谷しかいなかった。
「なあ、一花そっちに行かなかったか?」
「………いえ、来ませんでしたね……二乃?」
………やっぱり。
「町谷、ちょっと急ぐわよ」
「……何か仕掛けてくるか」
「ええ?」
side一花
皆んながトイレに向かった隙に、私は一人頂上を目指していた。
フータロー君に会って何をしたいのか?
……それはわからないし、例え会えたとしても、あの男の子二人がいる可能性がある。
でも………それでも、三玖と四葉の動きが怪しい。
図書室で私が四葉に話を振った時、三玖も何かを促す様子だった。
そして……四葉は、現状三玖のサポートに回っている。
きっと、この修学旅行中に何かアクションを起こすのだろう。
………となれば、やることは一つ。
私は、バッグの中に隠していたウィッグとヘッドホンを装着する。
一度ついた嘘はもう取り消せないなら、突き進むだけだ。
「三玖を止める為、私は嘘つきを演じ続ける……!」
地図を見る限り、左のルートの方が山頂まで近いし、四葉だけならまだしも、向こうには体力のない三玖がいる。
……つまり、私のほうが先に着く確率が高い。
もし、向こうのほうが早ければ茂みに隠れるなりすれば良いと、私は走り続け………
山頂に辿り着いた時には誰もいなかった。
つまりは、フータロー君は右ルートの途中にいるのだ。
「………急がなきゃ!」
コレだけ走ったんだから、三玖達はまだ…………。
side三玖
「三玖〜、早くしないとお昼終わっちゃうよ〜」
「う、うん……あと少し……」
体力不足を痛感しながらも、私は前を行く四葉に頑張ってついて行っていた。
普段の私ならここでもうダウンしているだろう。
でも今日は………今日だけは、ここで止まるわけには行かない。
「この日のためにずっと頑張って来たんだもん。
あと少しだけ頑張ろっ!」
「四葉………ありがと………」
今日のために、ずっと私に協力してくれた四葉の為。
そして、このパンを食べてもらって、私はフータローに想いを伝えるんだ。
でも、いくらそう思っても、ひ弱なこの身体はもう限界を………
「三玖、私の後ろに捕まって。
……おんぶしていくよ」
「………うん、本当にありがとう」
そんな私を背負った四葉が、全くブレない足取りで登っていき。
もう少しで頂上と言ったところで……………
「え………」
「「え?」」
私の格好をした一花が、そんなまさかと言った顔を浮かべて立ち尽くしていた。
「一花…………何で、私の変装してるの?」
side四葉
私と三玖が頂上に着きかけた時、私たちの前に三玖の格好をした一花がいた。
そして………その表情から、私は何となく理解してしまう。
「一花……私、そんなつもりで言ったんじゃないよ……」
確かに私は、「一花だけ我慢しないで、やりたいことをして欲しい」って言った。
でも………私はこんな事をさせたくて言ったんじゃない。
こんな………みんなの仲を引き裂きかねないような事を。
「それが本当にしたい事なの……?
答えてよ、一花!」
何でこんな事をしているのかと言う混乱と、裏切られたような悲しみが混じった様な気分の私に、よくわかっていない様子の三玖が。
「四葉……どう言う事?
一花も、何か理由があるなら……」
少し震えた声で聞いてきたので、私は……周りに目を向けることもなく。
「一花は邪魔しようとしてる」
「邪魔って何の………」
そんなのは決まってる。
「それは……「四葉、まっ……「三玖から上杉さんへの告白を、だよ!」
「よし!1番乗り!」
そう、今一番乗りした風太郎君の……………
「あ」
「は?
今………なんて………?」
なんで、今このタイミングで来るの……?
そんな感想が喉から出かかったが、何とか堪えて一縷の望みをかけ。
「上杉さん……もしかして、今の聞こえて………?」
聞こえてないかもしれないと聞こうとしたその時。
「…………!」
これ以上この場にはいられないと、三玖が左コースの方へと向かって走って行ってしまった。
「三玖!」
side奏二
「三玖!」
頂上まで走っていた俺達の耳に、四葉の声が聞こえてきたと思えば。
その上から泣きながら三玖がこちらにやってきた。
「ちょ、三玖⁉︎」
「待ってください、どこに行くのですか⁉︎」
二乃と五月の声も聞かずに、そのまま下へと降りて行ってしまう。
「……まさか………行くわよ、町谷!」
「おう……五月は三玖を頼む!」
「ええ⁉︎二乃、町谷君まで……‼︎」
その光景に何かを悟った俺と二乃は、五月に三玖を任せて少し先の頂上へ視線を向ける。
そこには………
一花の後ろ姿があったが、その手にはヘッドホンとウイッグが。
「………遅かったか」
「…………一花、やったのね」
要は、一花がまたあの変装をして、三玖の行動を邪魔したのだろう。
「あんた、いい加減にしなさいよ。
あの子を泣かせて、コレで満足⁉︎」
それを大体察したのか、二乃がふざけるなと言わんばかりに一花の胸ぐらを掴む。
その光景を見た四葉が待ったをかけようとするが、そこに一花が待ったをかける。
「四葉………良いから。
結果はどうであれ、私がしようとしてたのはこう言うことだから」
その冷静さが神経を逆撫でしたのか、二乃が冷たい目線を向ける。
「あんた、どこまで………「二乃がそれ言っちゃうの?
温泉で言ってたよね……「他人を蹴落としてでも叶えたい」って。
私と二乃の何が違うのか、教えてくれないかな?」
そんな二乃に、一花はいっその事演じ切ることにしたのか、芝居めいた口調で問い詰めていた。
少しの沈黙が、その場を否応なく張り詰めさせる。
そして、その沈黙を破ったのは二乃。
「………確かにそう言ったわ。
他の誰にも譲るつもりもない」
一花の言葉は事実らしく、そこは認めたが。
「でも………私たち5人の絆だって、同じくらい大切だわ……」
絞り出す様な言葉の後。
「例え……あんたが選ばれる日が来たとしても、私は……
私は!
祝福したかった……!」
と、目尻に涙を浮かべながらそう叫んだ。
まさに痴話喧嘩……いや、修羅場となった頂上。
「ううっ……もう一歩も歩けねぇ……」
「全く………下のお店でお昼ご飯の食べ過ぎだよ………
おや?そこでみんな何しているんだい?」
「いや……俺にも何が何だか………」
どうやら下で飯を食っていたらしい武田とコラ助が困惑顔でその成り行きを見守り。
「………お前ら、一旦落ち着け」
俺より先にいた風太郎が、場を収めようとやってくるが。
「うるさい!
あんたが来るとややこしいわ!
すぐに三玖を追いかけなさい!」
二乃がそこに噛み付く。
「早く!ダッシュよ!」
ポカンとした風太郎に、早く行く様にさらに促すと、渋々と言った感じで風太郎も武田達に一言残して、四葉と共に降りて行った。
だが………流石に天下の往来でやるのは不味かったのか、ゾロゾロと野次馬があつまっている。
コレは……もし、一花が女優の中野一花だと知られると色々まずいことになりそうだ。
そうなると………仕方ないな。
「さあさお立ち会い‼︎
今からちょっとしたマジックショーするから、ぜひ見てってね‼︎」
俺は、持っていたトランプを見せて、野次馬達の目線をこっちに向けさせることにした。
「……全く、甘い奴らばっかだぜ」
………それに付き合ってる俺も大概かもしれないが。
いかがでしたか?
今までちょいちょい出てたけど紹介してなかったキャラがいたので、ここで紹介します。
加藤
本名「加藤 倫也」(かとう ともや)。
陸上部に所属する奏二のクラスメイト。
奏二や風太郎と言ったクセの強い人物が多い中で数少ない普通の常識人だが、中野家の五つ子のことを「中一」〜「中五」と略するとんでもないセンスを持ち合わせている。
「安芸 恵」(あき めぐみ)と言う彼女がおり、そのやりとりはまるで熟年夫婦の様だと奏二は言う。
はい、お名前のモチーフは冴えカノの主人公とメインヒロインです。
折角ですので揃えて出してみました。
そして、二乃と奏二の絡みが今回多かったのですが、まあ、コレに関しては、このシスターズ・ウォーにおいては、五月より勘が鋭くて話が通じやすいため、自然とそこでタッグの様な状態になったわけですな。
あと実は、五月と二乃で奏二を取り合うと言うストーリーも考えていたのです。
ツッコミ役ポジションで似てますしね。
次回は、中野家の五つ子試練の時ですな。
果たして彼らはどうなっていくのか………次回にご期待ください。
感想や評価の方もお待ちしています。