五等分の花嫁 家庭教師の二重奏   作:暇人の鑑

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更新です。

最近、pixiv様でもこの作品のアップを開始してみました。


似たような作品名にピンと来たら、見ていってくれるとありがたいです。

それではどうぞ!

奏ニの秘密

デュオ・マックスウェル+モモタロス+玄奘三蔵の性格や言動を足して3で割ったようなものを目指してキャラの台詞回しを考えてます。


第32話 掲げた旗は降ろせず、覆水は盆に帰らない

「五月と電話がつながりました!

 

 三玖と一緒にバスに乗ってるそうです!」

「そうか……なら、俺たちも乗るぞ」

 

 三玖を追いかけていた俺は、付いてきた四葉と共にバスに乗っていた。

 

 

 乗ったはいいものの、起こったことがことだけに妙な沈黙が続く。

 

 

 そして……その沈黙は四葉が破る。

 

 

「上杉さん………

 

 

 

 さっき頂上で私の言ったこと………

 

 

 

 聞こえてましたよね?」

「聞こえてねーよ?」

「あ!

 その反応絶対聞こえてます!」

 

 案外と鋭い四葉に、先ほどの四葉の言葉を聞いていたことがバレてしまったが、聞いたところでこの状況でできることなどありはしない。

 

 

 だから、聞こえてなくても問題はないのだ。

「聞こえてねーって、それでいいだろ」

 

 

 兎に角この話題を終わらせたかった俺だが、四葉は悔やみきれないと言った感じで。

 

 

「とは言え………私の発言で、三玖を傷つけてしまったのは事実です。

 

 

 ずっと………あんなに一生懸命頑張ってたのに……。

 

 

 それに……一花も家族旅行の時に私が言ったせいで……」

 

 顔を暗くする四葉だが………言ってることはまさに全て事実。

 

 

「そうだな………お前のせいだ。

 

 

 あんなこと、もっと周りを見てから言え」

「……聞こえてたんじゃないですか」

 

 

 

 

 弁護や慰めをする余地はないが……一つだけ付け加える。

 

「まあ、知ってたけどな」

 

「え?」

 

 

 四葉が「何を?」と言った顔をしているが………そんなの決まっている。

 

 

「知ってたって………何をです?」

 

 

 

「だから…………その、あれだよ…………

 

 

 

 

 

 

 み、三玖が俺に……………好意を抱いてくれてたことだ」

 

 

 自分で言っててクソ恥ずかしいが、自惚れじゃなければ真実だろう。

 

 

 

 そんな、俺の告白は………

 

 

「聞き間違いでしょうか?

 

 

 もう一回………」

「やめろ!もう言わねえよ!」

 

 

 四葉が、そんなバカなと言う様な顔で、失礼な反応を受けていた。

 

 

「あの、鈍感上杉さんが………信じられません………」

「まあ、色々あったからな」

 

 

 まあ確かに、そう言われても仕方ないところはあるが……流石にあそこまで見せられては気づかないわけがない。

 

 

 だからこそ………廊下での告白には困惑していたが、コレではっきりした。

 

 

「あの三玖はアイツじゃない。

 

 

…………あの予感は間違いじゃなかったんだな」

 

 

 あの、一花との仲を応援すると言った三玖に困惑したのは………あれが本物じゃなかったからだ。

 

 

 

 

 そう考えていた俺を、四葉が不思議そうな顔をして覗き込んできたので俺は手を振る。

 

 

 

 

 そして、前々から思っていたことをこの際ぶちまけることにした。

「だから気にすんな。

 

 お前は人に気を遣いすぎだ…………

 

 

 

 はっきり言って度が過ぎている」

 

 

 

 

 

side四葉

 

 

「お前は人に気を遣いすぎだ…………

 

 

 はっきり言って度が過ぎている」

 

 

 風太郎君の指摘に、私は苦笑いをするしかなかった。

 

 

 確かに、側から見たら変かもしれないと言うのは、自分でも薄々思っていたからだ。

 

 

 だが……それはいいのだ。

 

「落第した私にみんなが付いてきてくれた話は、前にしましたよね?

 

 

 

 私がみんなを不幸に巻き込んじゃったんです。

 

 

 簡単に取り返せるものではありません」

 

 そう………私がみんなを不幸にしてしまった。

 

 そして、今回もまたやってしまった。

 

 

 

「姉妹の皆んなが、私より幸せになるのは当然です」

 だから………それが当然の報いだ。

 

 

 

「そんなもんかね……」

 

 そんな、ため息混じりの反応を見せる風太郎君に。

 

 

「上杉さん……

 

 

 

皆んなが幸せになる方法ってないんでしょうか?」

 

 

 この修学旅行のあたりから探していたものが、どこにあるのか聞いてみると。

 

 

 

 

 

 

「あるぞ」

 前を向いている風太郎君が何かを教えてくれる様だ。

 

 

「人と比較なんてせす、個人ごとに幸せと感じられる。

 

 

 

 もし、そんなことが出来たら、それはお前の望む世界だ」

 

「そ、そうですよね!」

 

 そして、その世界に行き着く方法を聞こうとしたが。

 

 

「だが、所詮は夢の話。

 

 現実的には、誰かの幸せによって別の誰かの不幸が生まれるなんて、珍しくもないさ。

 

 

 競い合って………奪い合って。

 

 

 そうやって勝ち取る幸せもあるだろ」

 

 

 

 風太郎君によって、その世界は否定されてしまった。

 

 

 じゃあ、私はどうしたらいいんだろうか。

 

 

「そんなこと言ったら、私のできることなんて………!」

 

 何も出来ないと言う悔しさから、さらに言葉を発しようとしたが。

「あるわけねーだろ。

 

 

……流石に欲張りすぎだ。全てを得ようだなんて。

 

 

 

 だから………俺も、いつかは決めなくちゃいけない日が来るんだろうな」

 

 

 風太郎君の意味深な言葉に、封じられることになった。

 

 

 

 だが、その言葉に私はなんとなく思う。

 

…………決着の時は近い、って。

 

 

 

 

 

 

 

side奏二

 

「いやー、楽しかった。おひねりもらっちまったし満足だぜ」

 

「芸は人を助ける」とはよく言ったもので。

 

 奏一さん仕込みのトランプマジックを使って、一花達がこっそり下山する為の時間稼ぎをした俺は、やってきた警備員に、事情を話して謝り倒して難を逃れた。

 

 

 因みに、その場にいた武田とコラ助はしばらくしたら見えなくなっていた。

 

 恐らく、俺がマジックの後半に、時間稼ぎから純粋なパフォーマンスが目的になっていたのを見て、ほっとくことにしたのだろう。

 

「よーし、売店で豪遊しちまうとするか!」

 そうして小銭が入った袋を片手に、ホクホクしながら夕食をとるべくホテルに戻ると。

 

 

 

「来たわね町谷………あんたに話があるからついて来なさい」

 

 二乃が、いつもより気持ち張り詰めたような顔で出迎えて来た。

 

 

 

 

 二乃に言われるがままについて行くと、そこは食堂であり。

 

 

 テーブルに案内された俺と、既にその席にいた四葉と五月の前で。

 

 

 

「みんな聞いて。

 

 

 

 盗撮犯に追われているわ」

 

 

 なんだか、妙な状況に立たされようとしていた。

 

 

「えっ」

「……いつからだ?」

 一縷の望み……これが本当の盗撮犯ならと、希望を込めて聞いてみたが。

 

 

「京都駅にいたころから、ずっと感じてたの。

 

……間違いないわ。

 

 修学旅行生がターゲットにされるって、前にニュースで見たもの」

「なるほどな……」

 

 

 やっぱり、コラ助の行動が勘付かれているようだ。

 

………いや、本物の盗撮犯ならってなんだ。

 

 

「だとしても、何故二乃なのですか?」

「ど、どう言う意味よ!」

 

 なんとかボロを出さないようにしなければと思っていると、この話の中普通に食ってる五月が地味に失礼なことを言い出し。

 

 二乃に噛みつかれていた時……シャッター音がなった。

 

 

「‼︎やっぱり!」

「ご馳走だねー」

「インスタあげよー」

 

 だが、その方向には食事を撮影している女子二人がおり、コラ助じゃなければ盗撮犯でもなかった。

 

……ここはちょい有耶無耶にしてみるか。

「ピリピリしすぎじゃねーの?

 

 大体、撮影音なんてどこでも聞くだろ」

「あんたね、盗撮されてるかもしれないってなって、平然としていられるわけないでしょ⁉︎」

「まあまあ二乃……不安なのはわかりますが、考えすぎではないですか?町谷君の言うことも一理ありますよ」

 

 

 どうやら神経質になりかけている二乃を、五月が宥めていると。

 

 四葉が、ふと気になったように。

 

「そう言えば、三玖と一花は……?

 

 結局、日中には追いつけなかったけどホテルに帰ってはいるんだよね?」

「ええ、2人とも歩き疲れてしまったようで、自室で休んでいます」

 

 聞かれた五月はそう言うが………

「それはねえと思うぜ?流石にアレの後じゃ」

 

 流石に、それが出来るようなメンタルなら、滅多なことでは逃げ出したりはしないだろう。

 二乃も同じことを考えていたのか、首を流石に縦に振る。

「そ、そうですか?………でも、どうしたのでしょう。三玖もいきなり単独行動を取り出して………」

「………五月さんよ、三玖から今回のことについてなんか聞いたか?」

「い、いいえ……そっとしておいたのですが…」

 

 これは後でことの成り行きを話す必要があるな……

 

 なんだかんだで蚊帳の外にいがちな五月が、深刻な顔をしながらも食事の手を止めないでいると、四葉が立ち上がって。

 

 

「やっぱり、私見てくるよ!」

 と、おそらく姉妹達の部屋に行こうとすると、二乃がそれに待ったをかける。

 

 

「待ちなさい。

 

 

………もうすぐ食べ終わるから、一緒に行くわよ。

 

町谷も、さっさと食べちゃいなさい」

「因みに私はもう食べ終わってます!」

「全く……人遣いが荒いお嬢さんだぜ」

 

 そんなこんなで、俺の一日目の夕食は、何故か早食いを強いられることになった。

 

 

 

 

side三玖

 

 

 部屋の中で、私はひとりベッドとベッドの隙間に縮こまっていた。

 

 

 

 フータローに想いを知られてしまった。

 

 

 四葉の気遣いを、無駄にしてしまった。

 

 

 みんなから、逃げ出してしまった。

 

 

 

 そんな私が、どんな顔をしてみんなに会えば良いのかわからないし……怖い。

 

 

 

 だから、部屋の隙間に収まっていると。

 

 

 

「三玖ー、一花ー?

 

 

 いるんでしょー、鍵開けなさーい?」

 

 

 ノックと共に二乃の声が聞こえて来たので、私は羽織っていた毛布を頭まで被って、その声を頭から追い出す。

 

 

「反応なし、だね……」

「電話も無視、と……一応、ここ私たちの部屋でもあるんだけど」

「問答もめんどいし、ピッキングで強行突入を試してみるか?」

「そんなものを、真っ先に視野に入れないでくださいよ……」

 

 

 扉の奥からうっすらと聞こえてくる会話に、内心冷や汗を流していると。

 

 

 

「三玖、ごめん!

 

 

 私のせいで………

 

 

 

 でも、まだ修学旅行は2日あるんだよ?

 

 

 これから私に取り返させて欲しいんだ!」

 

 

 と、謝罪をして来たけど………四葉は何も悪くない。

 

 

 だって、これは………

 

 

 その先の言葉が頭に浮かぼうとした時。

 

 

 

 

 

 

「キャアアアア‼︎」

「ちょ、おい⁉︎待てって!」

 

 

 突然響いた3人分の悲鳴と、それに驚くソージの声。

 

 

 その後に続く足音に、流石の私も思考がかき消された。

 

 

 

 

 

side奏二 

 

「……悪い、ミスった」

「だから言ったろうが……あんな所で撮ったら確実に勘付かれる」

 悲鳴を上げて逃げて行った3人を追いかけるフリをして、俺はしくじりやがったコラ助と合流していた。

 

 

 示し合わせてはいないが、まさかこんな人通りの少ない所で実行に移すとは……流石に間抜けすぎである。

 依頼を果たそうとする心意気は買うが、それで撮りにくくされたら意味がないと言うことだ。

 

 

 

「兎に角お前さんはさっさと逃げな……パクられないように注意しろよ」

「あ、ああ……」

 

 

 兎に角、これで盗撮犯が内部犯と言う可能性を検討されることになってしまったので、慎重に立ち回っていかないといけない。

 

 

 そんな訳で、コラ助を逃した俺はどこかへ逃げて行った五月達を追いかける事にした。

 

 

……盗撮犯を追いかけてたけど、取り逃したとでも言えばなんとかなるだろ。

 

 

 

 翌日。

 

 俺達は本来なら清水寺に行く予定だったが。

 

 

 風太郎が三玖に用があると言い出し、俺も三玖に用があったので、団体行動を取るのは武田とコラ助のみとなった。

 

 

 

「………てな訳で、風太郎に三玖から話があるそうだが、多分アイツ本人の話じゃねえな」

「あの子の性格的に、昨日の今日でそんなこと言うとは思えないわね」

「となると………まあ、一花が何か仕掛けてくるか」

「全く、あの女狐は……」

 

 だが、三玖とサシで話そうとしても多分無理なので、俺は三玖の格好をした二乃と合流していた。

 

 

 同じように話があったらしい二乃に、協力を仰いだのだ。

 で、話し合った結果三玖の格好をした二乃が仮病を使って、俺はその付き添いとして忍び込み、三玖と話をしようと言う算段だ。

 

 

 

「だが、今回の風太郎を巡っての争いでは、一花が一番まともだ。

 

 風太郎を手に入れることができるのは1人だけ……そこに敵との馴れ合いは要らないことを、アイツは分かってる」

「………分かってるわよ。

 

 フー君を手に入れるには、他の姉妹たちを蹴落とさないといけないことは分かってるわ。

 

 

 今、私がやろうとしてることは、敵に塩を送るようなこと……」

 

 

 昨日言えなかった事を視線を合わせずに告げると、同じように視線を合わせずに反応が返って来た。

 

 

「でも………それでも大事な姉妹だもの。

 

 ライバルでも………たった4人の大事な家族よ」

 

 まあ、昨日聞いてた事と大して変わらないが……つまりは、アレがコイツの本心って事だろう。

「そうかい……まあ、言うだけならタダだ。

 

 その世迷い言がどこまで貫けるか、見ものだぜ」

 

「言ってくれるじゃないの……良いわ。

 

あまり私を……私たちを舐めないでよね」

 

 

 憎まれ口を叩き合いながら、俺達は先公を見つけて仮病の旨を伝え。

 

 

 

「二乃、ソージ……何してるの」

「知りがたきこと陰の如く、だっけ?」

「いやー、案外騙せるもんだな」

 

 

 俺達は、無事三玖と話す機会を手に入れていた。

 

 

 

 

side二乃

 

 

「アンタの真似よ。二つの意味でね。

 

 で、町谷はアンタに話があるんだって……そう言えば、次の点呼って」

「まだ時間はあるが、のんびりもしてられないな……まあ、多分二乃が言おうとしてる事と被りそうだし、お先にどうぞ」

「ソージは分かったけど、二乃はなんでここに来たのか聞きたいんだけど…」

「電話でも言ったでしょ。アンタに話があるって……」

 

 

 髪を戻していると、三玖が訝しげな目を向けていたが、私の話のあとに少しの沈黙があって。

 

 

「……慰めならいらない」

 

 見当違いも甚だしい事を言い出した。

 

 

 

「おいおい……慰めをもらえるとか思ってるのかよ」

「全くね……そんなことする訳ないじゃない」

 私は、慰めなんてしない。

 

 

「恋のライバルが勝手に手をひいてくれたんだもの。

 

 私にとってはラッキー以外の何物でもないわ」

 

 この子が勝手に手を引いたんだから、罪悪感なんて湧かないし……

 

 みんなよりもアプローチ期間が短い私にとっては幸運以外の何物でもない。

 

 

 四葉はわからないけど、五月はそもそもこの戦いに関与していない。

 

 つまりは……

 

「あとは一花を倒すだけね。

 

 

 あの女狐め……どうしてやれば良いかしら?」

「お前は恋愛脳筋なんだし、パワープレイで十分だろ」

「ぶっ飛ばすわよ」

 

 失礼な事を言う町谷を、追い出してやろうか迷ったけど……今は押し倒した三玖が優先だ。

 

 

 

「……って事で、フー君は私が貰うわ。

 

 それで良いわね……答えは聞いてないけど」

 

 私がそう確認すると、三玖は冷や汗を流しながら。

 

 

「フー君……二乃はいつから」

 困惑気味に聞いてくる。

 

「何よ。

 

 まさか、自分の方が早かったから譲れって言いたいの?」

「そ、そう言う訳じゃ……」

「そりゃ、アンタが一番だったかもしれないわね」

 

 確かに、みんなの中で1番最初にフー君の味方になったのは三玖だったと思う。

 

「愛に時間は関係ないなんて言えるほど、私もよくわからないわ」

 

 

 今までの人生の中で、ここまで1人の男に想いを寄せることなんてなかった私には、何が正しくて何が間違ってるのかなんてわからない。

 

 

 でも……確かなことは一つだけある。

 

 

 

「確かなのは、誰よりも私がフー君の事を好きだって事よ」

 

 

 

 

side三玖

 

 

 二乃の堂々とした宣言に、何を言えば良いのかわからないけど、何かを言わないといけないと思った私は。

 

「私だって………諦めてない」

 

 

 まず、思った事を口にしてみるが。

 

 

「折角の修学旅行で接近するチャンスを、こんな部屋に閉じこもって無駄にしてる時点で、諦めたようなものよ。

 

 

 アンタのターンはこれでおしまい」

「全くだな。

 

 昨日の自分に負けてるような奴のくせして……」

 

 

 二乃とソージは、当然と言わんばかりに突き放してくるが、2人は自分に自信があって……それほどの強さがあるからそんなことが言えるんだ。

 

 

「諦めたくない!」

 

 

 私だって、フータローのことを諦めたくない。

 

 諦めたくないけど………

 

 

「でも……怖いよ」

 

 

 

……お好きにどうぞ、負けないから……

 私以外の誰かが、同じようにフータローが好きになった時。

 

 

 

 心のどこかでは、こうなるって分かっていた。

 

 

 分かっていたはずなのに………。

 

 

「いざ、自分の気持ちがフータローに知られたら、私なんかじゃダメだって思えてきて………」

 

 みんな、私なんかよりもずっと良いところがある。

 

 そんなみんなと戦っても………

 

 

「私なんかが、フータローから好かれるわけないよ……」

 

 

 私が選ばれることなんてない。

 そう思うと、なんだか怖くなってきて………

 

「公平に戦うことが、こんなに怖いなんて思わなかった」

 

 

 縮こまって、恋敵を前にみっともなく泣く私に、二乃はため息をついて。

 

 

 

「なんで負ける前提なのよ。

 

 

 そこからして気持ちで負けてるのよ」

「旗を掲げておいて、戦うのが怖いってなんの冗談だよ……」

 

 そこに首肯と共に呆れたように言うソージ。

 

 

 でも……例えば私と一花や二乃が並んでいたら。

 

「だって、相手はあの一花だもん。

 

 

 可愛くて、社交的で、男子からも人気で………自分の夢を持つ強さもある。

 

 

 私が男子だったとしても……多分、一花を選ぶ。

 

 

 それに、二乃だって………」

 

 

 家庭的で、自分の意見をはっきり言えて、オシャレで……

 

「それはどうも………ま、まあ⁉︎私が可愛いなんて分かりきってた事だけどね!」

「まあ、自信過剰ですぐ調子に乗るけどな」

「何ですって⁉︎」

「そしてすぐ怒る……」

「あんたね…‼︎」

 

 茶々を入れるソージに、ヘッドロックをかけている二乃だけど、残念ながらそれも事実だ。

 

 

 

「んん……!

 

 

 それだけに、アイツは変なのよね。

 

 私の告白を即OKしなかったのよ?どれだけ勇気を振り絞ったことか……。

 

 

 まあ?返事を先延ばしさせたのは私の方だけど、でもムカつくわ!

 

 

 そうでしょう町谷?」

「ヘッドロックを敢行しながら聞くな……!」

 

 解放されたソージが咳き込んでいるが、私はそれどころじゃない。

 

 

 やっぱり二乃はすごい。

 

 

 告白までもうしたんだ………。

 

 

「兎に角、あの朴念仁は言わなきゃ分かんないわよ」

「ハーレムラブコメ主人公は、得てして鈍感なもんだぜ?」

「私だって、告白したことはあるけど……」

 

……まあ、不発だったけど。

 

 

 でも、あの時できていた事が今は……

 

「もう今は、そんな自信湧いてこない。

 

 

 テストで1番になったら。

 

 

 美味しいパンが焼けたらって……

 

 

 

 そうやって、先延ばしにしてたのは私。

 

 

 一花も誰も悪くない‥‥自業自得だよ」

 

 

 色々言い訳をつけて、実行に移してこなかった意気地なしは、自分の思いを伝える機会を悉く不意にしてしまったのだ。

 

 

 

 そうして、どんどんと思考の沼に沈んでいくような私に。

 

 

 

「………おい、顔を上げろ」

 

 ソージが、私の目を正面から見据えてきた。

 

 

side奏ニ

 

 今回俺が三玖と話をするのは、励ましたり慰めるためじゃない。

 

 

 

 俺の目の前でウジウジされるのがうざったいから、ケツを蹴り飛ばしても退かせるためだ。

 

 

「お前のその言葉は、今ここにいる二乃だけじゃねえ。

 

 一花や四葉……そして、お前が大好きな風太郎への愚弄もいいところだ」

 

 

 一花は、三玖が恋敵に値すると思ったから、搦め手を使っても止めようとした。

 

 

 二乃や四葉は、三玖の行動に本気を感じたから、支えたり……立ちはだかった。

 

 

 風太郎は、三玖の事を少なからず想っていたからこそ、温泉旅館で必死こいて見つけようとした。

 

 

 

 みんな一者一様に、コイツの想いを認めていた。

 

 それなのに……コイツときたら。

 

「たかが露見したくらいで、臆病風に吹かれて?

 

 

 ソイツらの思いを踏み躙って……そんで、自信が湧いてこないだあ?

 

 

 悲劇のヒロインぶってんじゃねえ。

 

 

 旗を掲げた以上は、立て!

 

………精々、格好つけやがれ!」

 

「ソージ……?」

 

 こんな簡単にへし折られては、葛藤の末に狂わされた一花や、自分の思いを押し込めてサポートに回った四葉があまりにやりきれない。

 

 

 と言うかそもそも………

「それに……お前が思ってるほど、他人はそこまで思ってねえんだよ!」

 

 

 俺は、怯えたような目を向ける三玖から、後ろの二乃に視線を移す。

 

 

「だろ?二乃」

「………アンタ、それ女の子への発破の掛け方じゃないわよ」

「知るか。

 

 老若男女関係ねえ……中途半端に迷うなら、即蹴り飛ばすさ。

 

 俺の道の邪魔だ」

「あっそ……まあ、話したいことがあったからちょうどいいわ」

 

 

 頭を掻きながら、二乃は扉に向かう。

 

 

「三玖、よく聞きなさい。

 

 

 アンタとはやっぱりソリが合わないわ。

 

 

 いつまでもウジウジと塞ぎ込んで……」

「二乃…?」

 

 

 そして、そこまで言ってから振り返り。

 

 

「………私の目をバカにしてんじゃないわよ!

 

 

 私はアンタをライバルだと思ってたわ!

 

 

 アンタは私とじゃ勝負にならないって言ってたけど……冷静に考えてみなさいよ。

 

 

 

 

 

 

 私がアンタが認めるほど可愛いのなら、アンタも可愛いに決まってんじゃん‼︎」

 

「………二乃………」

 

「………じゃあね!行くわよ町谷!」

 

 

 特級のツンデレなエールと共に、部屋から出ていくのであった。

 

 

  

 

「……素直じゃねえな、相変わらず」

「アンタこそ、もっとマシな励まし方を考えなさいよ」

 

 

 

 

「間に合わなかったか……」

 そんなこんなで、三玖の部屋からでた俺は二乃と別れ、急いで清水寺に向かっていた。

 

 

 折角の修学旅行2日目を、お説教で終わらせたくなかったし、一花が何か仕掛けてくるはずなので、それが気掛かりだったのだ。

 

 

 

 そんなこんなで、清水寺に着いた俺が、曇天の雨降りの下で傘を差して歩いていると。

 

 

 

「風太郎、お前………」

「悪い、今はそっとしておいてくれ…

 

 

 あと、一花を頼む」

 

 

 濡れ鼠となった風太郎が、すれ違い様に肩に手を置いてきた。

 

 

 そして、その手の震えから……

 

 

 

「……だから言ったろ?一花」

 

 

 一花が何か仕掛けて、玉砕した事を何となく悟った。




いかがでしたか?

次回は上手くいけば、第3章の最終回となるかと思われます。

奏ニと五月のいつものやりとりが描きたいですな。


それでは、ごきげんよう。

 評価や感想などありましたら、宜しくお願いします。

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