いろいろ悩んでいたのと、生活環境が変わったのが相まって遅くなってしまいました。
色々変な部分もあるでしょうが、楽しんでいただければ幸いです。
奏二の秘密
朝食はソイジョイ派。
「あれ、二乃と町谷君も今帰りですか?」
「いや、俺は直で自動車学校に行くところだぜ」
「私は一緒に帰る人探してるとこよ」
俺と二乃が玄関に向かうと、同じように帰ろうとしていた五月と遭遇した。
「そうですか……でしたらすみません。
私はこれから塾に直接向かいますので」
その質問に各々答えると、五月は申し訳なさそうに二乃に謝る。
「いいわよ。真面目にやってる人の邪魔はしないわ」
二乃が気にするなと言わんばかりに手をヒラヒラさせ、靴箱から靴を取り出していた時。
「あの……二乃は………入試判定どうでしたか?」
と、どこか期待を滲ませながら聞いてきた。
「思ったほど悪くなかったわ。Bだったっけ……まあ、受けるところ選んでるってのもあるけどね」
その声に怪訝な顔をしながらも答えると。
「うううう…」
下を向いた五月が、謎の唸り声を発し出した。
「ん?」
「い、五月?」
突然の奇行に俺と二乃が戸惑いを見せるが、五月は止まる様子もなく。
「……ううううう………うううううううう………!」
「……どうなってやがる?」
「聞いてみないとわかんないわよ!……ど、どうしたの?」
とりあえず、人語を話してもらわないと理解できないので、二乃がそれとなく答えてみると。
「2人とも、どうしましょう……。
全力で取り組んでいる筈なのに、この結果です!
お先真っ暗です!」
そうして見せられたのは、合格判定にデカデカと「D」と書かれた判定用紙だった。
「所詮私はお母さんの真似事!
学校の先生なんて夢のまた夢なんですー!」
「ちょ、落ち着きなさい!」
「世話の焼ける奴……」
side二乃
数分後。
「……落ち着いた?」
「はい、取り乱してしまいすみません……」
結果が振るわなかったことで自棄になっていた五月を、なんとか宥めた私はベンチに座っていた。
因みに町谷は自動車学校に向かったので、ここにはいない。
「……まあ、あのテストを受けた段階ではD判定ってだけよ。
落ち込むことはないわ」
「……はい…」
とりあえず言葉をかけてみるが、返事をする五月は元気がない。
……そうだ。
「フー君には言ったの?」
「お忙しそうでしたし……何より申し訳なくて………」
フー君に相談したのか聞いてみるが、五月は表情を曇らせたままだ。
「先生は、一度親と相談したほうがいいと……でも……」
そうして、親との相談を持ちかけられたみたいだが……
「そんなことをしてくれる親でもないか」
あの人がそんな事をしてくれるとは思えないと、半ば諦めたように自己完結するが。
「い、いえ!
そう言う意味ではなく……これ以上、お父さんに心配をかけたくないんです」
聞き捨てならない事を言い出した。
「心配ですって⁉︎
あの人がいつ……」
あの人が、いつ私たちのことを気にかけてくれた?
…‥確かに、お母さんが死んでしまった後に私たちを引き取り、ここまで面倒を見てきてくれた事は分かっている。
でも、面倒を見てきたと言っても、衣食住を与えて後は放任気味だったのだ。
……なんなら、町谷の方があの人に気にかけられているような気がする。
正気とは思えない事を言い出した五月に詰め寄ろうとしたが、それでも五月は止まる事なく。
「私たちが、ここまで成長できたのはお父さんのおかげ。
……私も、そう思えるようになってきました。
あの花は、間違いなくお父さんです。
直接何かをしてもらったことは少ないですが、ずっと気にかけてくれたんだと思いますよ」
そう言われはしたものの、やはりどうしても今までのことがチラついてしまう。
「そんなわけ………」
「ひとまず下田さん……塾でお世話になっている先生に、相談してみます」
ごちゃごちゃの感情が拒否反応を言葉にしていると、五月はそう立ち上がり。
「それに近日、有名な講師の方による特別教室が開かれるらしいのです。……二乃も来ますか?」
「何それ、怪しいわ」
茶化すように、胡散臭い事を言い出した。
「………って事よ」
「成る程ね……分かった。
昨日は悪かったな」
「良いわよ別に」
その次の日。
町谷に昨日のことについて聞かれた私は、簡単に説明をしていた。
そして、それを聞いた町谷はメモを取り終えたのか、メモ帳をポケットにしまい。
「後で親父さんへ上申してみるわ。
……ちょうど、この模試の話をしてたしな」
と、話をしていた廊下から教室に戻ろうとするが……パパの事を口に出したのを聞いて、昨日の五月の言葉が頭をよぎる。
そして。
「………ねえ」
「ん?」
信じたいと言う思いと、信じるなと思い浮かぶ過去の出来事がせめぎ合い。
「あの人は……私たちのこと、心配してるのかしらね」
今こうして、パパとの話題を口にする町谷に、その答えを求めてしまった。
side奏二
二乃が、親父さんに対して不信感を抱いているのは前々から感じていた。
「ずっとほったらかしにしてきた癖に、今になって…」
3年になって初っ端のころ、武田が襲来してきた時に言いかけたこの言葉は、その現れにすぎない。
確かに、家庭教師補佐の仕事を始めてから今まで、一度もあの高層マンションで親父さんがいることはなかった。
期末前に起こった二乃と五月の家出の時も、風太郎から聞いて初めてその事実を知るレベルで、家の中で起こっていることにも関心を見せなかった。
その時は「飼い主」と「親」をごっちゃにしてるんじゃないかと思い、口を挟みはしたが………。
今思えば、一杯一杯だったんだと思う。
恩師であり妻であり……兎に角大事な人がいなくなり、悲しくないはずはないだろうし、痛みを吐き出したかっただろう。
だが……取り残され、悲しみに打ち据えられた5人の形見を前にそれを曝け出すわけにも行かず。
その死と向き合い……受け入れる時間もないまま、接するしかなかったのではないだろうか。
……幸か不幸か、あの5人は母親にある程度似ているのも、いなくなった事が嘘なんじゃないかと言う希望を持たせてしまいかねない。
要は、思いが現実に追いついていないのが今の親父さんってわけだ。
だからこそ、あのスタンスもせめて好きな事をさせてやろうと言う思いからのものだったと、なんとなく思えるようになった。
まあ……それを伝えたところで、二乃はすでに不信感を抱いてしまっていて、他人の俺がそれを払拭するのは簡単なことじゃない。
自分の中で折り合いをつけるしかないのだ。
「見えるけど見えないもの……大事なのは表面上のものだけじゃないさ」
「……あ、ちょっと!」
俺は、それだけ告げて教室に戻っていった。
side二乃
「二乃ー、上杉さんどこ?」
「さっき町谷と出てったわよ。案内いる?」
「うん、お願いー」
学園祭がもうすぐだというのに、まだどの店をやるか決まってない中、四葉にフー君はどこかと聞かれたので、案内ついでに廊下へと連れ出した。
「そうだ、この前言われた招待状用意してるけど……」
「………やっぱやめとくわ」
四葉に頼んでおいた招待状。
渡す相手は………
「え、いいの?」
「パパを呼ぼうだなんて、一時の気の迷いだわ」
「………私は良いと思ったんだけどね」
パパに来てもらおうと一瞬思って、その時に勢いで四葉に頼んでみたけど……冷静になって考えれば。
「どうせ来るはずないわ。
家に立ってほとんど姿を見せずに………いっつも陰でコソコソしてるんだわ」
「ははは……手厳しい……」
いっつも忙しいと言って、家にだって帰ってこない。
どうせ、後ろめたいことでもあるから、顔を合わせられないのだろう。
「でも…」
「あ、ちょっと待って」
何か言いかけた四葉を遮って、私は回れ右させる。
向かっていた先にいたのは……
「私を睨んでた女子だわ。面倒なことになる前に回避しておきましょう」
屋台決めの時から、チラチラと睨んでくるあの3人組だ。
正直、今私にはこの問題があるのであの3人はどうでも良いんだけど……四葉を巻き込むわけには行かない。
フー君を探すのは諦めようと促そうとした時。
「お前らの意見はよく分かった」
探していたフー君の声が、なぜか下から聞こえてきた。
「この声……上杉さん?」
思わず下に目を向けると、そこにはあの3人と対峙しているフー君と町谷が。
「女子なのに男子組にいるのはおかしい。
あんな媚を売って、男子の誰かを狙ってるのに違いない………か」
「まあ、こいつらの話をまとめるとそうだな……」
フー君が纏め、そこに町谷が呆れたようなため息と共に首肯する。
……正直、私もそんなところだろうと思っていたし、町谷のため息には激しく同感だ。
「そ、そうだよ。もし、その相手が祐輔だったら………
二乃ちゃんが相手なんて……私に勝ち目ないよ……」
その女子達の1人が、自信なさげに言う。
気持ちはわからないわけでもないが、そのためにチラチラ睨んでくるのは鬱陶しい。
今から乱入して直接対決に持ち込んでやろうと思いかけていると。
「安心しなよ。二の足踏んでる時点で負け確だぜ」
町谷がバッサリと切り捨てていた。
「……ッ」
「ねえ、ちょっと酷くない?」
「あんた何様のつもりよ!」
あまりの遠慮ない一言に、真ん中の子は涙ぐみ、その傍に控えていた2人が詰め寄る。
だが、町谷は全く調子を崩さず、飄々とした様子で。
「二乃っていう強敵がいても、諦めきれてないんだろ?
……なら、わざわざ日和る必要なんかあるもんか」
と、焚き付けるようなことを言い出す。
「で、でも……振られたら立ち直れるかどうか…」
「クドい。
OK貰えるか振られるか……要は50:50だ。
なら、上手く行く方に張るもんだぜ?」
コイツの言葉は一見すると棘だらけだが……その中には確かな思いやりがある。
「見えるけど見えないもの………」
「二乃…?」
もしかしたらパパの行動の裏にも……
そう思いかけた時に、フー君が前に出て。
「……安心してくれ。学級長と奏二、加藤に安芸は中立の立場を取るために投票してないし……二乃の意中の相手はあの中にはいない」
私の身の潔白を話してくれたが、当然と言えば当然か。
「………意味わかんない!」
「なんで上杉君にそんなこと言えるの?」
「関係ないじゃん!」
あの女子達は困惑のまま食ってかかる。
すると、フー君は意を決したように。
「二乃は俺を……すっ、好きだからな。
だから仲良くしてやってくれ」
さらっととんでもないことを言い出し、私達は言葉を失った。
確かに、私はフー君が好きだしそれを彼に対して宣言したけど、他の人にこんな形で露見するなんて………!
と、そんな思考が頭の中で巡り回っていると。
「う、上杉君………妄想はやめよう?
その設定は二乃ちゃんがかわいそうだし………
ほら、良い子紹介してあげるからさ?」
「それか、町谷君に紹介してもらうのは……」
「お断りだぜ……」
あの3人が引いた顔で失礼なことを言い出し、あの町谷も難しい顔をしている中で、フー君は必死の弁解をするが……誰の耳にも本気で入ってくることはなかった。
でも………わかることがある。
彼は私があの3人に睨まれていることを知り、自分を犠牲にして助けようとしてくれたんだ。
「二乃。
陰でコソコソも悪くないと思うけどな。
………きっと、何か理由があるんだよ」
「………ッ」
その行動に、私はある時のことを思い出す。
スフレパンケーキが食べたいとパパに頼み、断られてから数日。
机の上にあったのは………パンケーキの材料やレシピに調理器具。
………そこから、私はあの人に対して心を開き始めたんだ。
「ねえ、四葉。
……招待状の文面、一緒に考えてくれない?」
「二乃………うん、いいよ!」
正直、あの人に対してはまだ不信感は拭いきれてない。
でも………今よりもう少しだけ、信じてみようと思えた。
side三玖
「お待たせ、フータロー…」
「お、ようやく来たな」
ある日の昼下がり。
私はフータローと水族館にやってきていた。
いわゆるデートと言うものだが………それだけじゃない。
今日、私はフータローに伝えたいことがあるのだ。
フータローが、私の決断にどんな反応をするのかはわからない。
分からないけど……私は自分の夢に向かって走りたい。
「うん……大丈夫。告白までしたんだもん」
「ん?どうした」
「な、なんでもない!」
そうして、私はフータローを連れて水族館に入って行った。
やや薄暗い部屋の中、ガラス越しに広がる魚達の世界を眺めている私達の会話は、水族館の感想ではなく……学園祭のこと。
「来週はもう学祭……三日間楽しみだね」
「素直に喜べなくなってきたがな。
まさか、他のクラスよりも少ない人数で、屋台を二つもやることになるとは………正直どっちでも良いだろ」
「それだけみんな真剣なんだよ……忙しいだろうけど、フータローも食べにきてね」
ため息をつく風太郎を宥めていると、少し疲れたような顔で。
「……学級長の負担が、想像以上に重くてな。
ここ最近は四葉と東奔西走してる」
たまにフータローは難しい言葉を使ってくるが、この言葉の意味は分かる。
「とーほんせーそー……なんか四葉も言ってた。とにかく忙しいって。
演劇部の舞台にも参加するからって」
どうやら四葉は、既に色々な頼み事を引き受けているのに、そこに加えて演劇部の舞台にも参加するらしいが、フータローに伝えてなかったようで。
「アイツが演技だと……?
お遊戯会でもあるまいし、どんなのになっても知らねーぞ…」
深刻な顔を見せていた。
言いたいことがわからないわけじゃないけど、流石に失礼である。
「そうかな?
……まぁでも、わからなくもないかも…」
あの出鱈目な体力が、私たちの血のどこにあったのだろうと改めて不思議に思っていると、フータローが。
「とまあ、クラスにまだ気を回しきれなかったのもそれが原因だ。
もしかしたら、当日も顔を出せないかもしれない。
……その時は三玖、お前に任せたぞ」
私にまた大きな任務を言い渡してきた。
正直言って、荷が重いけど………
「う、うん。頑張ってみる」
他ならぬフータローからの頼みを、断ると言う選択肢はなかった。
「………」
大前提として、フータローは体力が私並みになく、ここ最近の学級長としての負担が相当なものであることは想像に難くない。
その為……。
「お疲れの中、呼び出しちゃってごめんね…?」
「き、気にすんな……」
フータローは、疲労を顔に滲ませながら座り込んでしまった。
思わず謝罪の声をかけるが……それでも譲れないことがある。
「でも私、学園祭前にフータローに言っておきたいことがあって……」
私は……
「そうか。
……俺もお前に言いたいことがあるんだ」
「それ、先に聞いて良い?」
まず、フータローの話を聞くことから始めよう。
数分後。
「大学の入試判定の結果……A判定だったって聞いたぞ。
やったじゃねーか」
まあ、予想はしてたけど本当にその通りになるとは。
私は、苦い表情を悟られないようにしつつも、その話を中断しようとタイミングを探していた。
「初テスト32点のお前がついにここまで来たな」
「そ、そのことなんだけど……」
このままでは、私がしたい話とは逆の状況へと進んでしまう。
「思えば、長い道のりだった。
家庭教師として力不足だったと不安になったりもしたが………」
「私、大学は……」
そう。だって私は………。
「しかし、すべてはお前らが大学に入学してくれたら報われる………俺も授業した甲斐があったってもんだな!」
………でも、この選択ができるようになったのはフータローの授業のお陰なのは間違いない。
「そう……だね。フータローのおかげ……」
とりあえず、それにはお礼を言いつつも……言いたいことは、結局言い出せずじまいとなってしまった。
「あ、見て。ペンギンいるよ…」
「おい、お前はなんの話をしようとしてたんだ?」
この水族館における1番のお目当て………それはこのペンギン水槽だった。
なにせ、私はハリネズミほどじゃないにせよペンギンも好きだから。
さらに、ここのペンギン達の中には………
「こちらがアンちゃんで、あちらがサンちゃんで……なんと、この子達は五つ子の姉妹ペンギンなんですよー!」
私たちと同じように、五姉妹のペンギンがいるらしい。
「……なあ、三玖?そんなに張りつくのもどうかと思うぞ」
「当ててあげたい」
「とは言ってもだな…」
私とフータローがやりとりをしている後ろでは、数人の集団が。
「みんな同じ顔だよねー」
「違いわかんない」
こんなことを言い出すから、余計に当ててあげたくなったのだ。
……もしかしたら、普段の私達に重ね合わせたのかもしれない。
そうして深く観察していると、ぱっと見では同じ顔だとしても、ちょっとずつ違いが………
「……あれはお前にそっくりだな」
「フータロー……」
……運動音痴のペンギンを私と重ね合わせる失礼なフータローに、抗議の視線を送る。
でも、姉妹の中ではダントツに運動音痴なのは認めざるを得ないからか、その子に対してなぜだか強い愛着が湧いた。
その子は、他のペンギン達と同じように水の中に飛び込めずにいる………まるで、調理学校に行きたいと言い出せずにいる私のように。
……ひとまず、大学に行ってからでも遅くはないのかもしれない。
かつて二乃が「フー君と同じ大学に通えるかも」と夢見がちなことを言い出した時、私も実は考えてしまったのだ。
そう、フータローとのキャンパスライフを。
………でも。
………だけど。
………それでも。
「私、料理の勉強がしたい。
……だから、ごめんフータロー。
私は大学には行けない」
私は、自分の夢に向けて飛び立つんだ。
前に飛び立つことを決意した、もう1人の私のように。
side風太郎
「………そうか。
お前が選んだのなら応援するさ」
なんとか応援を口にはできたものの、その胸中は自分でも分かるくらい顔に出るほどに複雑だった。
三玖の進む道を応援したいのは間違いない。
でも、ここまで教えてきた身としては、大学への道を進んでもらいたかったと言うのもある。
なんと言うか、ここまで教えてきたのが無駄になりそうなことに抵抗があるのかもしれない。
「そうだよな……専門学校、それもありだよな……」
正直、専門学校で燻らせて良い成績じゃないんだが……。
そんな葛藤を頭の中で絶えず繰り返している俺だが。
「大学に行くのも間違いじゃないと思う。
………でも、もうね。
私は自分の夢に進みたくてしょうがない」
続けて三玖が放った言葉に、俺はハッとさせられた。
俺は全国模試の時に言ってたじゃないか。
コイツらの卒業後の夢を見つけてやりたいと。
それなのに、自分のプライドと功名心との秤にかけてしまっていたのだ。
初めて、最強の武器としてきた勉強で負けた時。
初めて、人間関係で心が折れた時。
初めて、向き合うと決めた時。
俺に道を示してくれたのはコイツだった。
そして今も………夢に対しての新たな考え方を突きつけてくる。
「それを伝えたかった。
フータローは私にとって特別な人だから」
そんな、いつだって俺の前に立ち……俺の背中を押してくれたこの少女に。
「私は伝えたよ。
じゃあ次は………フータローの番だね」
俺は、応えたいと思った。
「………ああ。分かってるさ」
side奏二
自動車学校の教習から帰ってきた俺は、家の前に珍しい客がいるのを
目にしていた。
それは………
「あれ?風太郎の親父さんじゃないっすか」
「ガハハ!覚えてくれてたとは光栄だな!」
金髪にアロハシャツ、サングラスとチンピラみたいな風貌をしたその人は風太郎の親父さんである。
「ここに来るなんて思ってませんでしたよ……どうしたんです?」
この時間帯にここにいるのが珍しい人なので、何かあったのか聞いてみると。
「マルオから、これを渡してくれって言われてな……」
あっけからんと笑っていたのが嘘のようにその表情を顰め。
「……下田のやつから奏二君が無堂を追っていることを聞いてね。
で、そう言う時が来た時に備えて奏一が用意していたものを、マルオが保管していたんだ」
俺に向けて手紙のようなものを差し出してきた。
……まさか、奏一さんがそこまで予想をつけていたとは、やっぱり敵わねえもんだ。
しみじみとそう思っていると、風太郎の親父さんは俺に背を向けて。
「……んじゃ、俺はこれで失礼するよ。家でらいはの飯が待ってるからな!ガハハハハハ!」
そんな笑い声と共に、立ち去った親父さんが残した手紙だが。
その内容はあまりに衝撃的すぎるものだった。
「おいおい、冗談じゃないぜ………⁉︎」
その内容を頭が理解した時、手紙を握る手に力がこもる。
何故ならそれは………。
「………アイツらが無堂の娘……?」
あの5人が無堂と零奈さんとの間に生まれた娘であるという、いくつかの資料も添えたものだったからだ。
いかがでしたか?
今回は二乃、三玖、風太郎に視点を当ててみました。
次回は奏二メインでお話が進んでいくかと思われますので、楽しみにしていただくと幸いです。