五等分の花嫁 家庭教師の二重奏   作:暇人の鑑

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お久しぶりです。

主人公の動きや、その他諸々を考えていたら間が空いてしまいました。


なんとか完結まで頑張って、なんでもありのお話ではっちゃけたいなと思います。

それではどうぞ。


奏ニの秘密

漫画は紙派。


第44話 真逆の告白

「……一花?」

「お、ソージ君じゃん。久しぶりだね…」

 学食から教室に向かっていた俺は、一花と遭遇した。

 

 

 一花と最後に会ったのは、あの退学騒動以来なので結構間が空いての再会である。

 

「風太郎が呼んだのか?」

「うん、それにしても………」

 

 例のメールが頭に浮かんで聞いてみると、ひとつ頷き。

 

 

「最近、二乃がなんかしたの?

 

 道行く人に声かけられて大変だったんだよ」

 

 

 脈絡もない事を言い出した。

 

 

 

 

 

 詳しく聞くと、ここに来た時に二乃の変装をしていたらしく、それを本物と勘違いされたようだった。

 

 どうやらオープニングステージのことを知らない様だし、正直に教えても良いんだが……あいつも疲れてるよな。

 

 

「遅まきながら高校デビューしたのさ……」

「……本当にどういうことなの?」

 

 適当にはぐらかしつつ、指定された教室への道すがら、世間話をしていると……さっきの事が頭をよぎる。

 

 

 無堂がここに来ている事……そして、五月に接触した事。

 

 

 

 一応、コイツには話しておいた方がいいんだろうか?

 

 

 コイツに話しておけば、五月を守ろうとしてくれるだろうが……奴の狙いが五月だけとは限らない。

 

 でも精神面でキツくなりそうな五月にとって、姉妹がそばにいるというのは悪い事じゃないだろうし………ん?

 

 

「ソージ君、どうしたの?難しい顔しちゃって……」

 

 しまった。顔に出てたか。

「いやあ、ちょっと考え事を」

「ふーん……お姉さんが話聞いてあげよっか?」

 

 

 そう言って、心配そうな顔を向ける一花に、その厚意に甘えてしまおうかと一瞬考えた時。

 

 

「お、来たかお前ら」

「一花?」

「来ていたんですね……町谷君と一緒なのは驚きですが」

 

 

 いつの間にか到着していた教室の扉から、他の姉妹達と風太郎が手招きをしていた。

 

 

 

 

 

 

side風太郎

 

 

「これで、本当に全員集合だ」

「…‥よくわかりませんが、何故呼び出したのですか?」

「そうね。わざわざ学園祭中じゃなくても良いのに」

「でも、やっぱこの感じが落ち着くよね」

 

 

 ついにその時が来たと、軽く深呼吸する俺の前では。

 

 

「確かにそうだね」

「せっかくだし食べよっか」

 

 

「やべ!そう言えば差し入れ忘れてたぜ……」

「大丈夫です!屋台でたくさん買ってきましたからね」

「私、ずっと我慢してました!」

 

 奏二と五つ子達がたくさんの屋台の食い物を囲んでいる。

 

 

 そこに俺が入れば、いつも通りの7人組の完成だ。

 

 

 そう、俺の生き方を変えた、とても大切な関係性。

 

 

 

 このままでいられたなら、どれだけよかったのだろうか。

 

 

 だが………温泉旅館や修学旅行の時の様に、俺を巡る争いが起こったり。

 

 一花の退学騒動やこれから先の未来があって……ずっとは続かないんだ。

 

 

 だから。

 

 

 

 

 

 

「俺はお前達が好きだ」

 

 

 答えを出さなくちゃいけないと思った。

 

 

 

「………俺も?」

「お前はこっちだ」

 

………コイツを外すの忘れてたわ。

 

 

 

 奏二をこちらに引っ張り、対象から外させた俺は姉妹達に視線を戻すと、十人十色な反応を見せていた。

 

 二乃はジュースを吹き出し。

 

 

 三玖は思わず顔を背け。

 

 

 四葉は驚きからか固まり。

 

 

「え………どういう意味ですか?」

 

 五月は、アメリカンドッグを食べようとした手を止め、なんとか言葉を搾り出していた。

 

 

「……いきなり来たね」

 一花は、先ほど会った時にある程度予想していたのか、他の姉妹達よりは冷静だ。

 

 

「……とりあえずこのままじゃ収拾がつかないから、説明を頼むぜ」

 

 そんな中、奏二が何かを探る様な目を向けながら降ってきたので。

 

 

 

「この7人でずっと……このままの関係でいられたらって願っていた。

 

 

 だが……今までいろんなことがあったろ?

 

 

 だから……答えを出さなければいけないと思ったんだ」

 

 

 ついさっきまで考えていた事を、つまらない様に言葉にする。

 

 

 

 

 すると、三玖は穏やかな笑みを浮かべて。

 

 

「うん、いいよ。

 

 

 その答えを……私たちに教えてほしい」

 

 

 そう促してくれたが。

 

 

 

 

「………とは言っても、俺も俺で答えを出し切れてるわけじゃない。

 

 

 こんな祭の最中で言うことでもないだろうし………

 

 

 その、最終日まで待ってくれねえか?」

 

 

 

 情けなくも、まだその答えは出てない事を白状した。

 

 

 

 

 

「もー!何よそれ、拍子抜けじゃない!」

 

 悪いな。こっちもこっちで一杯一杯なんだ。

 

 

………誰かに想いを伝えるのは、生まれて初めてなんだから。

 

 

 

 

side奏二

 

 

 風太郎の衝撃的な宣言で、頭から飛びそうになったが今の俺の最優先事項は……

 

 

「あれ?ここにあった唐揚げは………」

「はむっ………す、すいません!断食の反動でつい………」

 

 

 10個あったはずの唐揚げを、告白の衝撃が冷めやらぬ中。

 

 ものの数分で平らげてしまった五月のことだ。

 

 

 コイツなら、本当に反動でドカ食いに走ってもおかしくないが………

 

 

 

 先程の無堂とのやりとりがストレスになり、そこから暴食に走ってしまっていないかと邪推してしまうのである。

 

 

……ダメだ。今の俺はコイツらの和気藹々とした雰囲気の邪魔になっちまう。

 

 

 

「………わり、ちょい加藤達が心配なもんで、俺は店の様子を見てくるぜ」

 そう言って、俺は教室を後にした。

 

 

 

 

 教室から出た俺は、外へと向かいながら考えに耽る。

 

 

「さて、どうしたもんか………」

 

 

 五月の反応的に、恐らく無堂との血縁関係については知らないと見ていいし、あの対面の時に無堂も口にしていなかった。

 

 だが……奴の目的が自分の保身であり、五月の素直なところにつけ込もうとするなら、手段を選ばず。

 

 その血縁関係もカードの一つにしてくるだろう。

 

 

 それを無効にするためには、俺が先にあいつにその事実を伝えるのが手だろうが………

 

 

 それは親父さんも恐れてか、そうしなかった様に。

 

 五月に対してどれほどの衝撃になるかがわからない。

 

 

 ただでさえ、先程の会話でも動揺を見せていた五月がそれを知って仕舞えばどうなるか。

 

 

 

 なんとか奴がボロでも出してくれれば、そこから尻尾を掴めるかもしれないのに……俺が奏一さんの子供だと知ったなら、そう簡単に隙は見せないはず。

 

 

 それなら、無堂が手を出しにくい様に他の奴らにこの事を話して。

 

 五月や他の姉妹達を単独にしない様、協力を仰ぐくらいしか出来ることは…………

 

 

 

 と、そこまで考えていた俺は。

 

 

 

 

「何の用だ……野郎のストーカーなんざ、趣味悪すぎるぜ?」

 

 

 学食でも感じたあの殺気に、出て来いと呼びかける。

 

 

「………」

 

 

 すると、少しの間が空いたかと思えば一人の少女がこちらを睨みつけながら姿を見せた。

 

 

 

 

 

 祭りの喧騒から切り取られたような、張り詰めた空気の中。

 

「………うちの学校のやつじゃねえな」

 

 

 この辺りにある公立高校の制服を着たその子は、セミロングの黒髪で……どこか幸薄そうな雰囲気を出している。

 

 

 だが……その顔には明らかな嫌悪と憎悪。

 

 

 

 そして………やりきれなさが見えた。

 

 

「恨まれる商売してる自覚はあるが……アンタは初対面のはずだ」

 

 

その表情に不穏なものを感じながら問いかける。

 

 

 

 

「誰に何を吹き込まれた?」

 

 相手の動きに対処できるように腰を落とし、目を離さないように警戒する俺に。

 

 

 

「………あの子があんな苦しい思いをしてるのに、何で………」

 

 一瞬苦々しい顔をしたかと思えば、目尻をキッと上げ。

 

 

 

「私はあなたを許さない!

 

 13人も人を殺しておいて、ヘラヘラしてるなんて………あの子のためにも死んでもらうわ!」

「⁉︎」

 

 

 覚えのある言葉と、ない言葉のミックスを投げつけてきたと同時に何処かへ走り去ってしまう。

 

 

 

 

 そして、その場に残ったのは霧散していく張り詰めた空気と、言葉が残した大きな謎。

 

 

 

 

「何だったんだ………?今の」

 

 

 そして、それに対する困惑だった。

 

 

 

 

 

 

 外に出ると、四郎、唯、三ツ矢が待っていたので先程までの出来事を共有し。

 

 

「………上手く利用されたな」

 

 

 唯がバッサリと切る隣で、俺はさっきのことを改めて思い出していた。

 

 

 俺のことを憎んでいるようだったが………俺はアイツと面識がない。

 

 もしかして、アイツが無堂が差し向けてきた刺客なのか?

 

 

 

 

 だが……その顔には焦りが滲んでいた。

 

 まるで、何とかしないといけないと言う強迫観念に囚われているような……。

 

 

 その真意を探ろうとしている俺の前で、三ツ矢があまり開かない口を開けて。

「……何かを人質に取られてるのかもしれない」

「確かに、それを助けて欲しければ奏ニを殺せ……と脅すことができますね」

 

 四郎もそれに頷いていた。

 確かに、それならさっきのアイツの発言も納得がいく。

 

「それが「あの子」ってやつか………」

 

 恐らく「あの子」を何らかの形で人質にされていて。

「フン、そのために使い捨ての手駒にもなるか…危ない女だ。冷静に考えれば吹き込まれたことがおかしいとわかるだろうに…」

「そうしなきゃ行けない状況にまで追い込まれてる……って事じゃねえか?多分」

 

 竜伍の言う「使い捨ての手駒」になることも辞さないほどに、向こうからすれば切羽詰まっている訳だ。

 

 

 だが……

「その状況を調べようにも時間がない……次に出てきたタイミングで取り押さえ、情報を吐かせるしかないな」

 

 

 楽しい学園祭のはずが、何故にこんなことになったのやら………いや、もう考えるのはよそう。

 

 そうして、これからどうするかを簡潔に話し合おうとなった時。

 

 

 

 

 

 

 

「………待ってください!アレ!」

 

 

 突然、会話の流れを断ち切った四郎が指さした先では………

 

 

 

 

「おい、アレ火事じゃねえか⁉︎」

 

 

 灰色の煙が、一点から立ちのぼっており。

 

 

 

 

 

 

 消火器を持って向かったその場所は………

 

「おいおい……冗談だろ?」

 

 

 

 うちのクラスの出し物の一つ、たこ焼き屋だった。

 

 

 

 

side一花

 

「おい、タクシー来たぞ」

「うん、わかった」

 

 

 あのフータロー君の告白から数十分後。

 

 

 できればもうちょっとみんなといたかったけど、仕事がある以上そうはいかず。

 

 

 私は、フータロー君が呼んでくれたタクシーで仕事場に戻ることになった。

 

「明日は撮影があるんだろ?大変だな」

「バタバタしてるとこごめんね。

 

 でも、今日は久々に7人で過ごせてよかったよ。

……フータロー君の意外な告白が聞けたしね」

「…あんま揶揄わないでくれ」

 

 先程の衝撃的な告白を話題に出すと、照れ隠しなのか、彼は前髪をいじる。

 

 

……でも、あの告白の仕方って。

 

「みんな好きなんて……まるで、浮気男のセリフだよ」

「……そんなにひどいか?でも、確かにアレだと五月まで入っちまうか…」

 

 真意はわからないけど、文脈だけ取ったら浮気男と略奪愛宣言だ。

 

「あはは…まあ、私はいいと思うよ?

 

 それに、五月ちゃんとソージ君がまだどうにかなってるわけじゃないしね」

 

 

 そんな、たわいもないやりとりもそこそこに、私はタクシーに乗り込もうとしたが………そうだ。

 

 

 

「なんなら………今、君の答えを聞いちゃダメかな。

 

 ほら、私はもう来られないかもしれないじゃん?

 

 べ、別にまだ迷ってるなら……」

 

 

 ちょっとした興味心と希望。

 

 或いは、私じゃなくて…二乃でも、三玖でも。

 

 

 姉妹の誰であっても。

 

 

「わかった。

 

 

俺は…………」

 

 気持ちの区切りをつけることが出来ると聞いてみた私に、フータロー君は。

 

 

「………俺は、誰も選ばない。

 

 

 

 それが俺の答えだ」

 

 

 

 予想外であり……最低な答えを突きつけてきた。

 

 

 

side三玖

 

 

 

高校生活最後の学園祭。

 

 

黒薔薇の時は参加しなかったし、2年の時はぼんやりと回るだけだった。

 

 

 

 だから……私にとっては最初で最後の、主導的な立場になっての学園祭で。

 

 みんなにとっても、高校生活における最後の思い出づくりの場だ。

 

 

 

 でも、蓋を開けてみればたこ焼きとパンケーキでの争いの末、男女間の戦争みたいな形になってしまった。

 

 

 

 折角の学園祭を、こんないがみあいの場にしたくないし……男の子も、女の子も仲良くして欲しい。

 

 

 

 だから、フータローと一緒にたこ焼きの方に視察に行って……

 

 

「全部終わって、卒業した後も……いい学園祭だったって、みんなで喜べるものにしよう」

 

 

 勇気を出してそう呼びかけたら、男の子達も根っこの思いは一緒みたいで、みんなを動かすことができた。

 

 

 

「強くなったな……三玖」

 

 

 フータローにも、そう言ってもらえた。

 

 

 勇気を出せば、どんな不可能も変えられる。

 

 

 もしかしたら、成就は不可能なこの想いも……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 って、思っていたのに。

「みなさん、離れて下さい!」

「おい、風下にいるやつも逃げろ!煙をモロに喰らうぜ!」

 

 

 

 今、目の前では………たこ焼きの屋台が、燃え盛る炎に包まれていた。

 

 

「四郎と奏ニはそのまま野次馬が入ってこないようにしておいてくれ。

 

 

 唯、竜伍。俺達はこのまま消火作業だ」

「任務了解…」

「言われるまでもない!」

 

 ソージと、見たことのない4人の男の子が必死に沈静化に取り組んでいる前で立ち尽くす私に、周りにいた女の子達の声が聞こえてくる。

 

 

 

「最悪……ねえ、この屋台って」

「……うん、たこ焼きだよね」

 

 

 その声には呆れと失望がまじまじと現れている。

 

 

 折角、男の子達の意識をまとめることができたと思ったのに。

 

 

 

 クラスの皆んなで、仲良くできると思ったのに。

 

 

 

 

 

 なんで、こうなるの………?

 

 

 

「……三玖?三玖、大丈夫⁉︎」

 

 

 

 隣にいる二乃の声が遠くなっていくのを感じながら、私は目の前が真っ暗になっていった。

 

 

 

 

 フータロー………私はどうしたらいいの?

 

 

 

 

 

side風太郎

「お前らが対応してなきゃ危なかった……迷惑かけたな」

「いえいえ……怪我人はいなかったんですし、どうってことないですよ」

「そうそう。それにそこまで大きなボヤじゃなかったしな。

 

 それより、その頬の傷はどうしたんだよ」

 

 

 ウチのクラスのたこ焼きの屋台で火事があり、その対応にあたった奏ニとその連れに頭を下げると、ブロンドの髪の奴が気にするなと気遣ってくれた。

 

 奏ニに勘付かれそうなので、視線を別の方向に向ける。

 

「焼け跡から調べてみたが……どうやら通常よりも高い熱量で調理をしていたらしいな」

「素人が下手な改造をした代償だな」

 

 すると、前髪の量がおかしい奴が渡してきた紙には、色々な情報がまとめてあった。

 

………たしかに、チェック項目にはなかったが、褒められた事じゃないよな。

 

 

 黒い髪をオールバックにしている奴が咎めるように吐き捨てているのを受け止めていると、先生がやってきて。

 

 

「みんな、ご苦労だった。

 

 君たちの素早い対応のお陰で、小さなボヤで済んだが……当然、それで終わりというわけにはいかない」

 

 

 と、仕方ないと言わんばかりの顔で。

 

 

 

 

「よって………

 

 

3年1組のたこ焼き屋屋台を出店停止とします。

 

 

異論はないね?」

 

 

 たこ焼き屋の出店停止を宣告した。

 

 

 

「……はい」

 




いかがでしたか?

次回からは学園祭2日目のお話に入ります。

お楽しみに!
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