五等分の花嫁 家庭教師の二重奏   作:暇人の鑑

45 / 64
お久しぶりです。

仕事が忙しくなり、かなり投稿が遅れてしまいました。


生存報告も兼ねて45話、読んでいってください。


第45話 決戦の予感

「……やはり現れたか」

「……五月だけを狙ってるのか、はたまた5人を狙ってるのかはまだわからねえが」

 

 

 一日目の夜、俺は親父さんの病院にいた。

……無論、無堂が動きを見せたことを報告するためだ。

 

 

「…‥これがその一部始終だ」

 

 

 食堂でのやりとりの一部を録音しておいたので、それを再生すると親父さんは若干顔を顰めたように見えた。

 

「明日も来るそうだが……さて、どうします?」

 

 一応、机にある招待状を見ながら確認してみると。

 

「………行こう。折角の招待状を無駄にしてしまうからね」

 

 

 と、行くことを選択した後は適当に世間話をして、そろそろ帰ろうとしたところで。

 

 

「……町谷君。くれぐれも無茶はしないでおくれよ」

 

 どこまでわかってるのかは知らないが、わかってるかのような念押しをしてきた。

 

 

「奴らの出方次第さ……どうとも言えないね」

「それでも……頼む」

 

 

 

 院長室を出た俺が、帰ろうと下の階に降りていると。

 

 

 

「………アイツ、昼間の」

 

 向こうはこちらに気づいてないようだが……昼間に、俺に殺害予告をして来たあの少女が、こちらに歩いていた。

 

 

咄嗟に身を隠して、様子を窺っていると……一つの病室に入っていく。

 

 

 扉を閉じたのを確認したので病室の近くに向かうと、その扉には「里中」と書かれたネームプレートが。

 

 

 

 

「アイツの苗字は里中って言うんだな………ウチに依頼した客の中にそんな苗字はなかった」

 

 

 これで怨恨という線は消えたから、誰かに何か吹き込まれてると見て、間違いなさそうだ。

 

 

 とは言っても、病人の前でするもんじゃないし……よし。

 

 

 

「乗っかってくれるといいが…」

 

 

 俺は、メモ書きをドアの下の隙間から投げ入れ、帰路に着いた。

 

 

 

「………何から伝えれば良いのかねぇ?」

 

 

 

 

 

side風太郎

 

「アイツらの本当の父親……?あのおっさんが?」

 

 夕飯の最中に親父がした話に、俺は困惑していた。

 

 

「あのおっさん」と言うのは、今日の昼頃に食堂へ案内した、上下逆さにしても顔になりそうな髭のおっさんの事だ。

 

「ああ……俺の高校の時の担任だったんだ」

「いや、その情報はいらないが……。

 

 どう言うことだ?」

 

 

 少し前に、5人を同じ日に出産するなんてあり得ず、実は腹違いの姉妹なんじゃないかと考えたことがあったが……

 

 

 よく考えれば、共通の遺伝子がなけりゃ、あそこまで似たような顔立ちにはならねえか。

 

 

 在りし日に思いを馳せていると、親父は語り出す。

 

「あの5人は、再婚相手……要はあの子らの母親の連れ子なんだ。

 

 6年前に亡くなっちまったからマルオが引き取ったわけさ」

 

「………で、なんでそのおっさんの話が出てくるんだ?」

 

 

 アイツらの家庭環境が少し複雑なのはわかったが、そこであのおっさんが出てくる理由や、話してる親父の顔が苦々しいのが分からないので続きを促す。

 

 

 

「アイツは……あの子らが先生のお腹にいるとわかった途端、どこかに消えやがったんだ。

 

 

 そして……」

 

親父はどこからか封筒を取り出して俺に渡して来る。

 

「お父さん、それ何?」

 

 らいはが首を傾げるが、親父は首を横に振る。

「らいはは見ないでくれ…教育に悪すぎるからな」

「う、うん」

 

 ガサツな親父がそこまで言うとは、一体何があるんだと不安を覚えながら中身を改めると………。

 

 

 

「………な、なんだよこれ」

 そこには言葉にするのも憚られるような話が書き連ねられていた。

 

 

 

 

「………こんなヤツが、今更アイツらに何の用があるのか?」

 

 本当に、らいはに見せるべきものじゃないと実感しながら、親父に聞くが。

 

 

「それは分からねえ。奏ニ君が今調べてはいるが………」

 

 

 

 返ってきたのは、さらに予想外の情報だった。

 

 

 

「待ってくれ、何で奏ニが出てくる?」

 

 

 

 

side奏ニ

「え?パンケーキ屋さんの方に行くんですか?」

「恐らく、今日は昨日以上に盛況になるだろうからな。

 

 一人でも多い方がいい」

 

 

 二日目の朝。

 

 俺は、五月にパンケーキ屋の方へ行くように頼んでいた。

 

 

「盛況になるのはこちらも同じですよね?大丈夫なんですか?」

「言われたジュースとクーポン渡して金もらうだけなら、俺ら4人でなんとかなるからな。

 

 だが、あのままじゃ女子どもが全員ダウンしかねない」

「確かに……三玖も大変だったと言ってましたよ」

 

 

 パンケーキ屋の店員数は、他のクラスの屋台の半分以下であり。

 

 そんな中で役割分担をするとしたら、他のクラスの奴らに比べたら一人へかかる負担はかなりのものになる。

 

 それで今日と明日を乗り切れるとは考えにくい。

 余ってる野郎どもも戦力に出来ればいいが……男女の溝は相当深く、今から協力を取り付けるのは難しいだろう。

 

「ですが……私、スフレパンケーキなんて作れませんよ?」

「そこは二乃に話を通してあるから心配ないぜ」

 

 

 

………あと、五月を一人にする機会を減らせば、無堂も手出しできにくくなるのでは?という淡い期待もある。

 

 

 

「それなら、パンケーキ屋さんの方に行きますが……何かあったらすぐに呼んでくださいね?」

「ああ。そうさせてもらうよ」

 

 そうして、パンケーキの屋台がある方向へ歩き出した五月だったが……チラチラと向けてくる心配そうな視線に、俺は。

 

 

 

 

「………すまない」

 

 これまでとこれからに、詫びることしかできなかった。

 

 

 

 

 

side二乃

 

 

「五月をこっちに助っ人にくれる?

 

 ありがたいけど……どうしたのよ急に」

 

 二日目の朝、私は町谷からある話を持ちかけられた。

 

「いや、流石に今いる女子だけで回すのは厳しいだろうし、救援をやろうと思ってね」

 

 なんと、屋台を6人で回しているのにも拘らず、私達に五月を助っ人に向かわせてくれるらしいのだ。

 

 

 ありがたい話ではあるし、二つ返事で受けたいのは山々なんだけど………

 

 

 

 ここ最近の町谷は変だ。

「………ねえ、五月になんかあったの?

 

アンタ、昨日も私と別れる時に慌ただしくしてたわよ」

 

 

 昼に話した時も……フー君からの話があった後も。

 

 

「俺の仕事内容は知ってるだろ?

 

 そりゃあ、やばい情報が入れば……」

「そのやばい情報に、五月が関係してるのかどうか答えてくれないと、アンタの申し出は受けないわ。

 

 調理できないんじゃ、戦力としては微妙だもの」

 

 誤魔化そうとしている町谷に、逃がさないと畳み掛けると、少しの間を置いて。

 

 

「………分かった。だが、この事は出来るだけオフレコで頼むぜ」

 

 

 

 町谷は、現在五月……いや、私達全員を揺るがしかねない非常事態について、嘆息と共に話し始め…………

 

 

 

 

 

 

「二乃………二乃!」

 

 

 追憶に耽っていた私を、五月の声が現実に戻す。

 

 

「……ど、どうしたのよ?」

「それはこちらのセリフです!さっきからぼーっとしていて……」

 

 

 いけない。

 町谷から聞かされた話が衝撃的すぎて、他のことに頭が回ってなかった。

 

 

曰く、私達の本当のお父さんがここにやってきていて、五月に夢を諦めろと働きかけているらしく……町谷はそれを阻止する為に動き回っていたんだとか。

 

 で、今こうして私や他のみんなといさせる事で、接触しにくくする……と言うことらしい。

 

 冗談だと笑い飛ばしたかったけど、話す町谷の顔や聞かされた音声からして、とても冗談だとは思えないし……

 

「………ごめん、色々あって疲れてるのよ」

「そうですよね……

 

たこ焼き屋さんの方は大丈夫ですか?」

 

 

 五月も、何か引っかかっている様な表情を見せていた。

 

 表向きはこう言う話をしているけど……きっと、その時にした話について悩んでいるのだろう。

 

 

「………さあね。どうなるのかしら」

 

 軽い気持ちで、とんでもないことを聞いてしまったと後悔しているが、内容が内容なだけに無視するわけにはいかず………

 

 

 今まで起こったことも相まって、思考に言葉を奪われた沈黙の後。

 

 

「‥‥上杉君、誰を選ぶんでしょうね」

 

 

 五月が零した言葉に、先ほどまで頭の中を占めていた話題がまた再燃した。

 

 

 そう。昨日フー君から発せられた、「学園祭最終日に気持ちをはっきりさせる」と言うものだ。

 

 

 つまり、私達の争いはここで一旦区切りがつくことになる。

 

 

「えらく他人事じゃない………まあ、アンタの心はもう決まってるかもしれないけど、アンタの可能性だってあるのよ」

 

 他人事の様に話す五月にカマをかけてみると、五月はアタフタして。

 

「そ、そんな……!

 

 恐れ多いです‥‥困ります…」

 

 と、頬を染めて困惑していた。

 

 

 町谷とのやりとりがあるとは言え、やはり色恋沙汰に関してはウブな妹である。

 

 

「……そうね。さながら板挟みってやつかしら?」

「も、もう!」

 

 五月の反応を楽しんではいるが……恥ずかしながら、私も困惑してるわけで。

 

 

「フーくんの中には、もう特別な誰かがいるって事よ」

 

 

 その誰かを決めるのを待ち望んでおり、その日のためにアプローチを仕掛けていたとは言え……その時が来るとなると尻込みしてしまう。

 

 

「なんて声をかけたらいいか、分からないわ……」

 

 

 昨日と今日で詰め込まれた事態の数々を前に、私は頭を抱えることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

side五月

 

 

「なんで声をかけたらいいのか分からない」

 

 

 二乃から出てきた言葉は、まさに今の私に突き刺さるものだった。

 

 

 無堂先生から突きつけられた現実……在りし日の母との記憶が導き出した言葉。

 

 

 上杉君からの告白。

 

 

 それらが私の前に突きつけられた時……どうすればいいのか分からなかった私は、町谷君を求めた。

 

 

 だが……ここ最近、彼は文化祭の準備だけとは言い難いほど、色々と忙しそうで。

 

 

「……突然で悪いが、パンケーキ屋の助っ人に行ってくれ」

 

 

 どこか、私を遠ざけようとしているように思えた。

 

 

 三年の初めの頃、わたしたちが交際していると言う噂が立った時……彼は私を好きだといってくれた。

 

 その言葉が嘘だとは思わないし、私も今でも彼が好きだ。

 

 

 でも、それがあるからこそ………今日のあの行動に謎が深まる。

 

 もしかして、私以外に気になる人ができたのか。

 

 

 

 

………それとも。

 

「………あなたは、何をしようとしているんですか?」

 

 

 

 何か、胸騒ぎみたいなものを感じていると、何故か二乃は私の前で目をぱちくりさせていた。

 

 

 その方向を私も振り向くと……そこには、上杉君と町谷君。

 

 

 そして、知らない女の人がいた。

 

 

「えーと、どちら様ですか?」

 

 

 

side奏二

 

 

「………お前さんも聞いたのかい」

「嘘じゃないんだな、やっぱり…」

 

 

 昨日よりも忙しく屋台の仕事をこなしていた俺は、貴重な休み時間に風太郎に呼び止められていた。

 

 

 この後のことも考えて、しっかり休んでおきたかったが……無堂の事と言われては仕方ない。

 

「……何をする気だ?」

「刺し違えてでも無堂を止めるさ。

 

 アイツの被害者を、これ以上増やすわけにはいかないんでね」

 

 

 俺の答えに、風太郎は少し強張った顔をして。

 

「………そんな事をして、五月はどうするんだよ。

 

 アイツがお前のことを好きなのは、流石の俺でもわかるぞ」

「お、朴念仁が言うようになったじゃねえか」

「茶化すなよ……これでも恥ずかしいんだから」

 

 「人の心があったのか」と驚かれた程の風太郎が、随分と変わったものだ。

 

 嬉しさと寂しさの両方を覚えつつも、俺は努めて明るく振る舞う。

 

「ま、簡単にくたばるつもりはねえよ。

 

……だが、もしもの時は頼むわ」

 

 

 

 振る舞おうとしたが………なぜかうまくいかなかった。

 

 

 

side風太郎

 

 刺し違えてでも……と、奏二は言った。

 

 普段からジョークを交えて話をするコイツだが……その言葉に嘘はないように思える。

 

 

「……もしもの時は頼むわ」

 

 コイツのいうその時はなんなのだろうか。

………いや、なんなのかなんとなく想像がついてしまい、咄嗟に止めようとしたところで。

 

 

「お、まさか二人揃ってるなんて。

 

 ラッキーなこともあるね」

 

 

 懐かしく感じつつも、あまり覚えのない声がかかってきた。




いかがでしたか?

後半から、奏二は割と二乃と協力関係になることが多いなと書いていて感じました。

と、言うのも二乃と五月で奏二を取り合うと言うのも考えていたのですが、そうなると原作の流れを壊しかねないと思い、五月一本に絞ったのです。

書き終わった後、なんでもありの短編集みたいなものを書こうと思っている為、そちらで二乃ルートも書けたらなと思います。

それでは、次回でまた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。