五等分の花嫁 家庭教師の二重奏   作:暇人の鑑

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 46話です。

 50話で終われればいいなとか思っていたのですが、このペースだと多分それは叶いませんな。

 結末は何通りか浮かぶのに、そこまでの過程を描くのが難しいです。


 それではどうぞ。

奏二の秘密
 もしもの時の財産やら家財道具は、村山さんの孤児院に渡すと約束してある。
 尚、それを話した時に村山さんに怒られた模様。



第46話 大きくなった2人へ 

 私が声をかけると、深刻そうな顔をした二人は不意を突かれたようにこちらを見上げてきた。

 

 そしてその顔で、2人が間違いなく私が探していた子達だと判明する。

 

 片方は、小学生時代によくいがみ合っていた「上杉風太郎」。

………オールバックの金髪にピアス、そして粗暴。

 どこに出しても恥ずかしくない、立派な悪ガキだった頃と比べるとかなり姿は変わっていたけど、顔つきはあまり変わってない。

 

 

 そして、もう片方は中学生の時の同級生だった「町谷奏二」。

 

 こちらは背丈以外は、当時とほぼ同じだけど……あの頃と比べると、かなり穏やかな顔つきになった気がする。

 

 

 

 2人とも、本当に………

 

「大きくなったね……風太郎、奏二」

 

「そんな月日経ってねえだろ、おい」

 奏二は流石に私の正体に気づいたようだけど、風太郎は呆けた顔をして。

「竹林…………どちら様?」

 

 

 身に覚えがないと言わんばかりの反応だった。

 

 

 

………おいおい。

「酷いなー、冗談きついよ?

 

 

 生き別れの姉を覚えてないなんて、お姉ちゃん悲しいなあ」

 

 あれだけ勉強を教えてあげたのに、酷い話である。

 

 

 

 恩知らずな風太郎に文句をつけるも、その反応に変化はない。

 

………ちょっと?

「本当に覚えてない?

 

 

 私だよ?私。

 

 

 小学生の頃、勉強教えてあげた恩師さんだよ?」

 

 

 そこまで言うと、風太郎はようやくピンときたのか。

 

 

 

 

「お前………あの竹林か?」

 あっけに取られたように、私のことを口にした。

 

 

 

 

side奏二

 

 親父さんから聞いたのか、無堂のことについて聞いてきた風太郎に、ついつい口が滑ってしまった俺は。

 

「風太郎とも面識があったなんてな。案外世間は狭いもんだぜ」

「そう?2人が同じ高校にいるって知ってから、私は知り合っていても不思議じゃないと思ってたけど……」

「おい?中学の時、奏二に余計なこと吹き込んでねえだろうな?」

 話題を断ち切ってくれた竹林に、チュロスでお礼をしていた。

 

 

 コイツと、その彼氏である真田とは中学時代に付き合いがあったのだ。

「似てるとは思ってたけど、口にはしなかったかな。……で、風太郎。学校で昔みたいに馬鹿なことしてない?」

 竹林は、昔を思い出しながら過保護な姉みたいなことを聞いてくる。

 

「してねえよ。精々学年主席をキープしてるくらいか……」

「「焼き肉定食焼き肉抜きの上杉」って通り名がついてるぞ」

「ぶっは!」

「待て、それ初耳なんだが⁉︎」

 

 

 そこに風太郎が慌てて食いついてきて、俺たちは先程のシリアスムードから一転して和やかなムードの中、昔話と近況報告に花を咲かせていた。

 

……因みにこの話はノンフィクションである。

 

「そりゃ、側から見たら変なやつだよ。焼肉定食から焼肉を抜くなんて……あ!」

 

 ここ最近、シリアスな事ばかりだった事もあってか、こんなアホみたいな会話が妙に心休まるものだ。

 

「ねえ、射的あるから3人で勝負しようよ!」

 

 そんなこんなで束の間の休息に身を委ねるのであった。

 

 

 

 

side三玖

 

 

「はーい、ありがとうございまーす。

 

 じゃあ三玖ちゃん、頑張ってね」

「うん。ありがとう」

 

 校内テレビにて、パンケーキ屋の宣伝を行った私は、ある人を探していた。

 

 その探し人とはもちろん………

 

 

 

 

「四葉、フータロー見なかった?」

 

 昨日、私たちに衝撃的な告白をして、学級長の1人として今日も色々忙しいであろうフータローだ。

 

 

 せっかくの学園祭なんだし、少しでもいいから一緒に回りたくて、場所を知ってそうな四葉に聞いてみたんだけど………

 

 

「ごめん、ずっと学園祭の仕事しててわかんないや。

 

 どうかしたの?」

 

 四葉も知らないらしく、逆に質問されてしまった。

 

 

 いや、用事があるにはあるけど、今こうして頑張ってる四葉を引き留めてまで果たしたい用事かと言われればそうでもない気が………

 

 

「………三玖?」

「ごめん、大した用事じゃなくて、ただフータローと一緒に回りたかっただけ……」

 

 そう考えていたら、四葉が心配そうな顔をしてしまったので白状すると、四葉は何かを迷っている様子で。

 

「……そうだよね。

 

 昨日のこともあって、会っちゃいけないような気がしてたけど………

 

 

 「最後」に「思い出作り」。

 

……私もした方がいいかもね」

「………四葉?」

 

 よく分からないけど、放っておけないような事を言い出し、私が困惑していると。

 

 

「あ!上杉さんと町谷さんの声だよ、近くにいるかも!」

 

 

 お目当ての声に四葉が反応し、私も声の元を辿ってみると。

 

 

 

 

 

 

「もー、風太郎ってば射的下手すぎ!もっと左だって!」

「うるせーな……全く、仕切りたがりなところは相変わらずだ。

 

 てか、奏二に取って貰えばいいだろ」

「俺を巻き込むなって……てか、俺はもうちょいしたら戻るぜ」

 

 

 

 

 そこにはフータローとソージ、さらには黒い髪の毛をした女の子が仲良さそうにやりとりをしていた。

 

 

 

 

「へぇ………昨日私達にあんなこと言っておいて、今日は別の子とデートですか………」

「あはは……上杉さんも町谷さんも隅に置けないね……」

 

 

 

 

 side四葉

 

 風太郎君と町谷さん、そして長い髪の女の子が射的を楽しんでいるのを、私と三玖が発見してから。

 

「………昨日、私達にあんなこと言っておいて、今日は別の子とデートですか…」

「あはは……上杉さんも隅に置けないね」

 

 どんよりとしたオーラみたいなものを纏わせたような三玖に、頬のひきつりを覚えながら反応していた。

 

 

 まあ、私としてもモヤモヤしないかと聞かれれば嘘になるけど。

 

 

 

「……でも、フータローは私達5人から選ぶなんて一言も言ってない。

 

 

 

「俺、彼女ができたから」とか言ってあの子を……」

「三玖のネガティブが炸裂してる⁉︎

 

 

……大丈夫だよ!これは何かの間違いだって!

 

 贔屓目に見ても、町谷さんなら兎も角上杉さんがそんなモテるとは思えないもん」

「そ、そうだよね。

 

 フータローはみょうが……良さがわかるまでは少しかかるはず」

 

 三玖のネガティブに必死にフォローを入れると、少し落ち着きを取り戻したようだ。

 

……いや、町谷さんの彼女だったとしても、五月にとっては面白くない話だろう。

 

 そもそも、まだあの3人がどう言う関係か分かってないのに、文句をつけるわけにはいかない。

 

 

「あんな知り合ったばかりの人とは……」

 

とは言え、風太郎君をあんな気安く呼び捨てできるなら、赤の他人じゃないんだろうな……

 

 

 なんだか自分までモヤモヤしてきたのを感じていると、そのモヤモヤを加速づけるように。

 

「風太郎、奏二もこっち来て」

 

 

 その女の子が、2人の手を引き。

 

 

「……!」

「あ、あの方向って……」

 

 

 その方向には、パンケーキ屋があることを思い出した。

 

 

 ど、どうなっちゃうの……?

 

 

 

 

 side奏二

 

「いらっしゃいませー、パンケーキいかがです……か……」

 

 

 俺と風太郎が、竹林に手を引かれてやってきたのはパンケーキ屋だった。

 

 

 そこにいたのは、売り子をしている二乃と五月。

 

「パンケーキだって風太郎。食べようよ」

「ああ……ここは、俺達のクラスの屋台だ」

 

 

「フー君……?」

「町谷君?こ、これは一体……」

 

 目を丸くした2人の問いかけに、竹林は何故かフフンと笑って。

 

 

「ああ、コイツは…「いつもウチの風太郎と奏二がお世話になってます」……」

 

 

 俺と風太郎の保護者みたいなことを言い出した。

 

 

「ウチの……?」

「どちら様ですかー?」

 

 

 痴話喧嘩になったら面倒な為、先手を打とうとしたが……それを遮った台詞は、今の状況では宣戦布告でしかなく。

 

 二乃が笑顔で臨戦態勢を取るが、竹林は余裕の笑みを浮かべていた。

 

 

「……町谷君?」

「俺にとっては同中。風太郎にとっては……」

 

「初めまして、竹林と申します。

 

 風太郎とは、小学生からの同級生です」

 

「……ってことだ」

「そう言うことでしたか。しかし……」

 

 

 俺の説明に冷や汗をかく五月に、内心同意する。

 

 

「あらそう?

 

 私たちも同級生だけど、教師と生徒。

 

 

 いわば同級生以上の関係と言っても過言じゃないわ」

 

 

 二乃の余裕ぶった迎撃に、竹林はぱあっと顔を輝かせ。

 

「そうなんだ、奇遇ですね!

 

 

 私も風太郎に勉強教えたんです」

 

 

 

「……そう言うつながりなのね」

「………「も?」」

 

 

 納得する俺と首を傾げる五月を他所に、3人のやり取りは続く。

 

 

「ずっと言うことを聞かなかった問題児に、頼まれた時は驚いたなー」

「いや、こいつらが俺の生徒」

「あ、そうなんだ……」

 

 

 と、ここで訂正を受けた竹林は成る程と頷き。

 

 

「……じゃあ、これではっきりしたね。

 

 

 私とあなた達……どちらがより親密なのかを」

 

 

 なぜか変な方向にまで目をやりながら、挑戦状を叩きつけた。

 

 

 

 竹林の見た方をチラリとみると、そこには三玖と四葉が隠れていたようだが……四葉が何かを言おうとしている。

 

 

………していたが、それより早く。

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

 五月がいきなり竹林にお礼を言い出した。

 

 

 

side竹林

 

「……五月?」

 

 呆気に取られたように呟く奏二を無視して、「五月」と呼ばれた女の子が私に真正面から向き合い。

 

「もし……それが本当ならば、私達は間接的にあなたのお世話になったと言えます。

 

 上杉君や町谷君と過ごした時間は、あなたに負けてしまいそうです」

 

 

 と、少しだけ残念そうにした後。

 

「しかし……その深さでは、負けるつもりはありません」

 

 

 と、はっきりと口にした。

 

 

 

「お前ら……こっぱずかしいからやめてくれ……」

 

 そこに、照れ臭そうにしながらも風太郎は。

 

 

 

「……コイツらは俺の数少ない友人だ。

 

 全員が特別に決まってる」

 

 

 と、この子達の前でしっかりと口にするのを見て、私は安堵した。

 

 

「………俺は風太郎の過去がどうだったかは分からねえが。

 

 

 一つだけ、確かなことがある。

 

 

 俺は兎も角、今のコイツは………お前が知ってる時よりも強く、大きくなってるんだぜ?」

 

 

 自分を無価値だと、必要ない存在だと言った風太郎。

 

 

 常に何かに囚われ………それ以外を諦めていた奏二。

 

 

 

 その2人が……こうして友達になって。

 

 

 2人を大切に思ってくれる5人に会って……前に進んでいる。

 

 

 そう。本当に奏二の言った通り………

 

 

 

「大きくなったね。」

 

 

 私は、思わずそう呟いた。

 

 

 

 

「……ごめんね2人とも。パンケーキ、一つくださいな」

「は、はい!」

 

 

 ありがとう。2人をここまで大きくしてくれて。

 

 

 

side二乃

 

 

 五月の言葉は、私の気持ちを再度奮い立たせた。

 

 

 私とフー君の関係は、他のみんなと比べれば短いかもしれないし………フー君の想い人は私じゃないのかもしれない。

 

 

 

 だけど……それがどうした。

 

「フー君!」

 

 

 どんな逆境であれど………私のこの気持ちに嘘はないし……どんな結果であれ、揺らぐことはない。

 

 

 

「私の気持ちは、ずっと変わらないから!」

 

 私はそれだけを伝えたいと、精一杯に叫んだ。

 

 

 だから……次はフーくんの番よ。

 

 

 

side五月

 

 

 久しぶりに町谷君と話して………彼の様子を見て、やっぱり何か嫌な予感が私の中で燻っていた。

 

 

 

 何かを必死に押し込めているような表情で。

 

 

 一つでも多くのことを伝えたいと言うような口振りで。

 

 

 

 その姿は………亡くなる前のお母さんを彷彿とさせる。

 

 

 町谷君は、そんな雰囲気を纏わせて何をしようとしているのか…何を考えているのか。

 

 

……まさか、近いうちに町谷君も……?

 

 兎に角彼に直接聞こうと、焦燥と共に彼がいるであろうジュース屋へ向かおうとした細道で。

 

 

 

 

 

「やあ……また会ったね。五月ちゃん」

 

 

 無堂先生が、飴を片手に私の前に現れた。

 




今回は竹林さん登場回でしたね。

あの作品の中で一番末恐ろしいのは彼女なのかもしれません。

いや、どこまで知ってんねん!みたいな感じで。


 次回は五月と無堂の対峙、四葉の気絶、二乃とマルオさんの確執の解消、奏二の身辺整理辺りを書けたらなと思います。

 学園祭編は同じくらいの時間でいろんなことが併発してる為、取捨選択が難しいですが、なんとか書いていくのでお楽しみに!
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