最近、仮面ライダー龍騎を見てます……鬱展開の前振りじゃありませんのでご安心を。
今回は意外な人の視点が多めですので、楽しんでいただければ幸いです。
奏二の秘密
家族写真が一枚もない。
「行かないわよ」
「え?」
迎えにきたフー君は、おそらくパパのところへ行くのだろうが、私はNOを突きつけた。
何故かって?
もう、裏切られるだけの希望なんて持ちたくないから。
「パパは来なかった。
招待状は読んだのに……どうせ、私たちのことなんか微塵も考えてないのよ!」
こんな事を、フー君にぶつけるのはお門違いなことはわかっているけど……でも、彼にはわからない。
いつもそばにいてくれて、こうしてイベントにもきてくれるパパや妹ちゃんがいるんだから。
「学園祭は明日もあるけど、もう嫌。
……どうせ叶わないのなら、望んだ事すら後悔しそうだわ!」
それに、今五月に迫っている魔の手についてすら、私たちに教えてくれなかったのも納得がいかない。
考えれば考えるほど、あの人への怒りが込み上げてきそうな時、フー君はひとつ息をついた。
「……俺は、お前達家族のことはよく知らない。
わかるのは、普通の親子関係とは違うってことだけだ」
そして、少し顔色を悪くして。
「だが、逆にお前は知ってるか…?
俺に対する警戒心、メチャクチャ怖ぇーぞ…」
その情報に虚を突かれる私に、更に。
「あれが父親の目なんだろう。
あんなの、お前らへの愛情ゆえでしかねーだろ。
だから、「お前らめんどくせえ」って、文句を言ってやるんだ」
その言葉に、押し込めたはずの希望がまた湧き出てしまう。
父親が、娘に近寄る男を警戒するのはよくある話。
でも、その当たり前に近い事をやっていた事に、親としての思いを見出してしまう。
もう、裏切られたくないのに……フー君の青ざめっぷりを見るに、嘘じゃないのだろう。
でも……!
そうやって葛藤する私の意識は、近寄ってくる誰かの足音で、思考の海から現実に引き戻される。
「おーい、上杉君!
例の人、見つけたよ。
テープ見直してたら、君が探してた人と特徴が一致する人がいてさ。
もしかしたらと思ってきたんだけど……どうかな?」
クラスメイトの子とフー君の会話に、意味がわからず首を傾げていると、フー君に動画を見るように促される。
言われるがままに見ると………。
「パパ……?うそ……」
そこには、インタビューに答えているパパの姿が。
「どう?これだけなんだけど……」
「サンキュー。どうやら来てたみたいだな。
親父の言ってた通りか」
フー君がその子にお礼を言った後。
「………どうする?二乃」
「……フー君…」
答えがわかっているであろう質問を投げかけてきた。
それは勿論……!
「パパのところに連れてって!」
ここは当然私らしく行かせてもらう。
押しても引いても、手応えがなくても………
「更に攻めるのが私だわ」
ウジウジして弱気になるなんて、私らしくもないから。
side奏二
旅立つ事を終着点にしていたのに、いざそうなるかもしれないとなると、意外と何をすべきか迷うもので。
里中と対峙する時が来るまでの間に、俺は考えつく限りの準備をしていた。
加藤や安芸、山田達には、明日いないかもしれないって先手を打った。
これで、俺がいなくて店が回らない……なんて事にはならないだろう。
何でも屋そのものや施設、設備、バイクなどの後始末は唯達に任せる約束は昔からしてあるし……稼ぎは、村山さんの孤児院に寄付する約束をした。
取り付けに行った時、すっげえ怒られたが……我ながら村山さんにはいつも迷惑ばっか掛けていたと思うし、いっつも心配してもらっていた。
それなのに、更にまた勝手な事をするのは申し訳ないが………こっちも後には引けない。
慰霊碑は、市が管理を引き継ぐ事になっており、心配は残るが……どうなるかなんて考えても意味はない。
唯達には、何でも屋に書き置きを残してあって…………風太郎達に宛てた手紙は、後で郵便受けにでも入れればいいな。
だから、最後に俺は………。
「できれば、明日に来れれば良かったんだけどな。奏一さん……」
身辺整理の締めとして、奏一さんの墓に手を合わせていた。
これまで何回もきた場所だが、これが最後かもと思うと色々違って見える。
………多分、最後になるであろう場所を、この目に焼き付けておきたいのかもしれない。
「まだ、そっちにいった時の土産話がそんなにねえのによ……」
俺は、墓の前で1人懺悔する。
……いや。
懺悔というよりも、思い残しを吐き出したかったんだな。
それにしても、不思議なもんだ。
使命だなんだと言いながら、心のどこかでは「いつ死んでもいい」と思っていて……だからこそ、諦めが良くいられたのに。
今になっては、「生きなければ」じゃなくて「生きたい」と思ってしまう。
……多分、それはアイツらのせいだ。
「俺は………アイツらと一緒に生きたかった」
風太郎や中野家の面々、その他いろんな奴らといる今の日常で、すごく満たされていたからだ。
そして、それ以上に。
「アイツが、夢を叶えた姿を見たかった」
不器用ながら真っ直ぐで。
ひたむきな彼女と一緒にいたかった。
俺の過去から目を背けずにいてくれて……俺を受け入れてくれたあの人の隣で、これからもバカみたいなジョークをかましていたかった。
だが……もう、それができなくなるかもしれない。
俺は嘘をつく事になるからだ。
「告白の返事……結局直接してやれない」
数ヶ月前にした約束すら、嘘にしてしまった。
……だから、その嘘に対するけじめをつけなければならない。
そのけじめこそ………
「里中を救って、無堂を警察に突き出す……五月の夢の邪魔はさせない」
俺がやろうとしてる事なんだ。
きっと、みんな怒って……俺をバカだと言うし、呆れるのだろう。
だが……結局今の俺にはこの方法しか与えられなかった。
自分の新たな道を探し出そうともしたが………人殺しの死神にそんな希望はなかったのかもしれない。
満月が照らす夜空をどこか恨めしく思いながら、俺は墓地を後にして………待ち合わせの場所に向かった。
こうして行動しないと、未練ができてしまいそうで。
side里中
「俺を殺すつもりなら、しっかり準備してからにするんだな」
そんな挑発を添えた手紙に指定された場所は、ある廃工場だった。
差出人は、今から私が殺そうとしている男である「町谷奏二」。
私が妹の「沙奈」のお見舞いに来ていた時に、ドアの隙間から投げ入れられていたのだ。
あれだけのことをしておいて、沙奈にまで何か良からぬ事をしようと企んでいたのか。
なんて卑劣な……!
「………どうだ?」
「今つきました」
「そうか………相手は何をしてくるか分からないんだ。油断するんじゃないぞ」
近くに待機してもらっている相談員の人からの通信に答え、私は自分を鼓舞しながらその廃工場へと足を踏み入れた。
「待っててね、沙奈……絶対、治してみせるから」
そして、親子3人で仲良く……!
side奏二
「来たか……」
誰もいない廃工場の中。
1人で時が来るのを待っていた俺の耳に、1人の足音が響く。
誰が来るかはわからないので、物陰に隠れて様子を伺い……
その足音が、待ち人のものであると視認した。
「隠れてないで出てきなさいよ、卑怯者!」
やたらと殺気立って叫んでいる辺り、どうやら完全に無堂達の手駒と化しているみたいだな。
とは言え、この状況を作ったのは俺だし、無視するわけにもいかないので。
「………あんまりはしゃぐもんじゃないぜ?お嬢さん」
やれやれと言った感じを出しつつ、俺は里中の前に姿を現した。
「やっと現れたわね………さあ、覚悟はいいかしら?」
ナイフを構えたので、改造エアガンを構えて動きに備える。
「アンタを殺せば、無堂先生が沙奈を助けてくれる……これ以上辛い思いをしなくて済む!」
アイツの妹さんの病気については、簡単にだが看護婦から聞いた。
治せないものではないらしいが、治療に莫大な金がかかるらしく……母子家庭で生活が苦しい一家では、なかなか支払えない金額なんだとか。
で、今は治すと言うよりも少しでも進行を抑えるための治療を行なっているらしい。
だが、その治療費だって決して安くはなく。
治療費の嵩みによって、母親は疲労困憊の体に鞭打って働き。
アイツもアルバイトなどをして稼いでいるらしいが……それでも、時が経つにつれて病状は進行していき、それだけ食い止めるための金も高くなってしまっている……とのことだった。
そんな彼女たちからすれば、まさに藁をも掴むような思いだったのだろうが。
だが、その藁に染み込んだ毒を掴んでしまえば、それは全てを壊すことになってしまう。
「頓珍漢なこと言ってんじゃねえよ。
そんな胸糞悪い治され方をして、妹さんがどう思うかもわかんねえのか」
少し考えたら分かりそうなことも、わからないでいるコイツに一言申してみる。
しかし、向こうにとって俺の言葉はスタートの合図だったのか。
「アンタがいえたセリフじゃないでしょ⁉︎」
ダッシュと共に切り掛かってきた。
「逃げるなぁ‼︎」
「クソッ、撃つにも距離が足りねえ!」
銃を使う時間を与えないように詰め寄ってくるので、避けるのに専念する。
正直、竜伍との組み手に比べれば大したことないが……勢いがすごい為、迂闊に出たら不味そうだ。
「わたしには、もう時間がないの!ここで諦めたら……!」
今のコイツが、俺について誤った情報を聞かされているのは間違いない。
その誤解を解くためにも、まずは無力化して話ができるようにする必要がある。
しかし、無力化と言っても意識を刈り取ったら話ができないから……攻撃はできないな。
「だから……絶対に殺す!」
「お断りだ!
死神が死んでちゃあ、格好つかねえからな!」
そんな訳で、俺は向こうのスタミナ切れを待つことにした。
sideマルオ
「すみません、せっかくお休みのところを……」
「構わないさ。医者として当然のことをしたまでだ」
入院している患者の診察を終えた僕は、院長室に向かっていた。
今日は休暇をとっていたので、事前にある程度仕事は終わらせていたのだが……こうなってしまっては仕方ない。
それに……
「四葉は大丈夫だろうか…命に別状はないらしいが」
学園祭の最中に、四葉が倒れたらしくここに運ばれている。
見たところ過労によるもので、病気ではなさそうだが……後で様子を見に行こう。
……後は、招待状を書いてくれた二乃に謝らなくてはならない。
「………これでは休暇どころではないな」
自嘲気味に息を吐きながら、目的の部屋に入ると。
「……どーも。
借りた娘さんを返しにきました」
上杉君が、二乃と共にやって来ていた。
「なんで、今日は……」
「暗くなる前に早く帰りたまえ」
何かを言いかけた上杉君に、帰る様に促しつつ部屋に入るが、何故か甘い匂いが漂っている。
「もう少しでできるから、ちょっと待ってて」
「食べてやってください。学校に来てたのは知ってます」
どう言うことかと周りを見渡すと、二乃が応接間の机の上でパンケーキを焼いていた。
その匂いに、僕の意識は数年前を遡る………
零奈さんの病室にて。
「パンケーキ……ですか?」
「えっと、意外と安く作れて……娘達も喜んでくれてたんですよ」
零奈さんが遠い目をしていたので、何事かと聞いてみたところ、パンケーキについて話してくれた。
確かに、卵と牛乳とミックスがあればそれなりの数を作れるから、納得がいく話だ。
しかし……
「最後に、作ってあげたかった……」
「最後だなんて、そんなことありませんよ」
少し悲しそうにそうぼやいたので、元気づけようと否定する。
しかし、彼女の命はもう長くは持たないことが分かってしまっているからか、その励ましがどこか薄っぺらく感じてしまった。
そんな内心を見透かした様に。
「中野君……あなたには、感謝してもしきれないわ。
でも……だからこそ。
あなたの貴重な時間を、余命僅かな私に注ぐ様なことはしないで」
零奈さんはその顔に諦めを滲ませていた。
「余命だなんて……そんなこと言わないでください。」
その言葉に、たまらず待ったをかける。
「零奈先生は、僕の恩師ですから」
「先生だなんて……もう、何年前のことでしょう」
自分が憧れた恩師に……自分が救うべき患者に、そんな事を言ってほしくなかった。
そして何よりも……
「君は生徒会長で、そして私のファンクラブ会長を見事勤め上げていましたね」
「そ、そのことは忘れてください……」
気恥ずかしさから目を逸らしたのを見て、可笑しそうに微笑むこの人に。
「一分一秒でも長く生きて頂きたい。
僕がしたくてしてる事ですし……あなたがいなくなったら、娘さん達も悲しみます」
少しでも長く生きて欲しかった。
「そうですね。
あの子たちだけが心残りです……
まだ小さなあの子たちの成長を見届ける事が、私の使命……」
だけど。
「ありがとう中野君。
もう少しだけ甘えさせていただきます。
だから……退院した際は是非ご馳走させてください。
パンケーキ、きっと君にも気に入ってもらえると思いますよ」
その約束は、ついぞ叶うことないまま………
「……あの、何かありました?」
「……すまない。少し考え事をしていた」
上杉君の声で思考は現在へ呼び戻され、思考する前とのズレを埋めるべく、周りに目を向けるとそこにはパンケーキが。
正直、僕はパンケーキにいい思い出がない。
パンケーキを見ると、救えなかった零奈さんや守れなかった約束を思い出してしまうのだ。
だが。
「この生地、三玖が作ったのよ。
あんなに料理が下手っぴだったあの子が、目指すものを見つけて頑張っているわ」
手を拭っている二乃が、真っ直ぐに見据えて。
「………それだけじゃない。
私達5人全員、あの頃よりもずっと大きくなったわ。
だからお願い。
その成長を……側で見ていてほしいの」
「"お父さん"」
そう訴えかけるのを見て、ここで目を背けてはいけないことを悟る。
僕は……君達から距離を置くことで、受け入れ難いあの人の死から逃げていたのかもしれない。
だが、君達はそれを乗り越えた。
そして、前を向いて歩いて行った。
そんな、君達の親になると決めた僕がやらなければいけない事は。
この目の前のパンケーキを口にする事なんだ。
そうして食べたパンケーキの味は、あの人を感じる様な味で。
「この味……君達は逃げずに向き合って来たんだね」
そして。
「え?どういう……」
「しかし、量が多くて僕1人では食べられそうもないな。
次は、みんなで食べよう」
この子達と向き合う覚悟が、初めてきちんとできた様な気がした。
零奈さん……あなたとの約束、ようやく果たせましたよ。
side風太郎
「これは君の計画かい?」
「それは……どうだろう。
家庭教師の範疇を超えていると思うのだが?」
「だが、それが私に出来なかったことだ」
「不出来だが親として……。
君が娘達との関係を真剣に考えてくれることを祈ろう」
親父さんからの親バカフルコースを堪能した俺は、二乃と共に院長室を出る。
「ふん、今までほったらかしにしてた癖によく言うわ。
フー君はお父さんが思ってるより、ずっとしっかりしてるんだから……
ね?」
「あ、ああ…」
心なしかテンションの高い二乃に、素直に返事をすることができない。
「真剣に……か」
俺は、出来ているんだろうか……?
あんな大見得を切った癖に、こうして迷っている有様で………。
「それに、今までも……どうしたの?」
「いや、なんでもない…」
「そう?
そ、それでね。明日のことなんだけど………」
何か言いかけようとした二乃だったが。
「キャッ⁉︎」
「おい、危なっ⁉︎」
足を滑らせたのを受け止める。
しかし、俺の勢いが強すぎたのか、このままではキスができてしまうレベルで顔が……!
「忘れ物だ」
「危ねーっ‼︎」
近づいていたが、突然聞こえた親父さんの声に、なんとか持ち堪えるのであった。
「何をしているんだい?」
「ちょっと滑ってしまいまして!もう帰りますから!」
「ああ……そうするといい」
side二乃
「チッ、惜しかったわね」
もう少しでキスできると思ったのに、お父さんに邪魔された私は舌打ちする。
今までの放任主義が改まったのはいいけど、横槍を入れるのだけはやめてほしいのだが………まあ、いいや。
「ギリギリセーフ………二乃、大丈夫か?」
こんなロマンチックもクソもないキスじゃあ、今の私は満足できない。
だから……
「えっ、えっ?」
「やっぱ、恋は攻めてこそよね」
私は、何か言いかけた彼に口づけをした。
「ん?今なんて……」
そして、耳聡く聞いていたお父さんに。
「フー君を、家庭教師に選んでくれてありがと!」
初めて、笑顔で感謝を伝えることができた。
この先、私たちの関係がどう変わろうとも………私のこの気持ちは変わらないから。
いかがでしたか?
マルオ視点は、奏二と似た様な感じで書けるから感情移入しやすいですな。
次回は奏二vs里中の決着と、一花、四葉、三玖の2日目夜でのお話を取り上げていければなと思います。