五等分の花嫁 家庭教師の二重奏   作:暇人の鑑

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 どうも、5話ですよ5話。

今回から、単行本のキャラ紹介にあるような一言プロフィールみたいな感じのもので奏ニの事を追加で紹介しようと思います。

 
 奏ニの秘密①
 猫に後ろの三つ編みをおもちゃと勘違いされ、よく飛び乗られる。



第5話 真夜中の救出

「………来たか。まあ、期間的に期末の範囲と被ってる所もあるよな」

 

 この学校では、十月上旬に二学期の中間テストがある。

 

 国数英理社の五科目のテストを50分ずつ行い……30点未満を取ると赤点となる。

 

 いわゆる普通のテストなのだが……俺と風太郎にとっては、別の意味を持つものであった。

 

「アイツら……勉強してるんだろうな?」

 

 そう。家庭教師として初めて臨むテストであった。

 

 花火大会から数日後。

 

 放課後の図書室にて、場所に似つかわしくないやりとりが起こる。

「上杉さん見てくださいよ、このリボン!最近チェック柄がトレンドだって教えてもらっちゃいました!」

「奇遇だな、お前の答案もチェックが流行中だ。良かったな」

「わ、わ〜最先端〜〜」

「アハハハハ」

「お前も笑ってる場合じゃないぞ一花!」

 

 で、そんな光景を背に。

「これでいいの?」

「そうだ………しっかしまあ、これで中間乗り切れるのか?」

「乗り切れる訳ないだろ!見ろ、この惨状を……」

 三玖に英語を教えていた俺が、キャイキャイ騒いでいる風太郎達を見ながら呟いた疑問に、風太郎がペケだらけの答案用紙を見せながら突っ込んできた。

 

 

 その、流行の最先端を見せてもらうと……おい。

「なんで英訳答える問題でローマ字が出てくるんだ……点取問題なのに勿体ない」

 他の問題も珍回答の嵐で、合ってるのはかっこの中の単語を並べ替えて、英文を作る問題くらいだが、恐らくヤマカンを張っただけだろう。

 

 四葉の答案に痛む頭を押さえていると、風太郎が意を決したように。

「俺が知りたいが……兎も角。

 今のままじゃとてもじゃないけど乗り切れない!

 

 その先の林間学校なんて夢のまた夢だ。

 

 中間試験は国数英理社の五科目……これから1週間、徹底的に対策していくぞ」

「「えー……」」

 四葉と一花からブーイングみたいな反応がくるが……それでもやばいことを自覚してほしいぜ。

 

「だから三玖も日本史以外を…」

 

 三玖に詰め寄ったところで、ようやく俺たちがやってることに気づいたようで。

 

「奏ニがやらせてるのか?」

「いや、教えてくれって頼まれた」

「……あの三玖が自ら英語を⁉︎

 

 熱でもあるのか?勉強なんていいから休め?」

「失礼な上に自己矛盾してるぞ」

 意外なのはわかるが混乱しすぎだ。

 

 

 過保護気味に心配する風太郎に、三玖は照れ臭そうにしながらも。

「平気。少し頑張ろうと思っただけ」

 

 意識の変化を目の当たりにして、どこか嬉しそうな風太郎に、「よーし、がんばろー!」と、乗っかる四葉。

 

……成績こそまだまだだが、いい傾向の片鱗を見せつつ図書館での時間が過ぎていった。

 

 

 数時間後。

 

「じゃあな……ちゃんと勉強しとけよ?」

「うん……ごちそうさま」

「頑張ります!」

「わかってるって……じゃあ、また明日ね」

 

 一花、三玖、四葉と分かれた俺は、痩せた財布の中身を見る。

 

「パフェが3つにコーヒー一杯で3000円……喫茶店ってやたらと高いんだよな」

 

 勉強を頑張ったご褒美が欲しい……と言うことで、駅前の喫茶店で3人にパフェを奢ったのだ。

 

 あの程度でご褒美とは、ちょっと甘やかし過ぎな気もするが……元は勉強嫌いな奴らがやる気になったのは大きな進歩だ。

 

 それに、心と脳への栄養補給も大事だし………まあ兎も角。

 

 犠牲になった3人の英世さんのためにも頑張って欲しいものだ。

 

 

 とりあえず、帰り際にスーパーで割引品を探しに行こうと自転車を漕ぎ出すと、俺の携帯に着信が。

 相手は………中野五姉妹の父親だ。

 

 

 報告の催促だろうか……?

「はい、町谷ですが」

 

 とりあえず出てみることにした。

「やあ。娘達が世話になっているね……」

「いえいえ。……それで、何か御用で?」

 早くしないといい割引品がなくなってしまうので、要件を促すと。

 

「なかなか顔を出せなくてすまないが……家庭教師はうまくやっているかい?」

「こう言う仕事は初めてだから、まだ手探りだけど……なんとかやれてはいますよ」

「……上杉君から聞いた話と少し違うが……まあ、解釈は人それぞれだね」

「風太郎にも電話したんですか?」

「……その様子だと、君にはまだ話がいってないようだ。

 

 なら、僕の口から言わせてもらおう。

 

 

 近々中間テストがあるそうだが……ここで君たちの成果を見せてもらうことにした」

「………それは?」

 仕事をする以上は成果を見せないといけないが、それは一体……?

 

 俺が言葉の続きを待っていると中野父は。

 

「1週間後の中間試験。

 

 5人のうち1人でも赤点を取ったら……君達には家庭教師を辞めてもらう」

 

 

 と、何気にとんでもないことを言い出した。

 

「ちょっと待ってくれ。こう言っちゃあ何だが、自分の娘達のテスト結果を見たことあるのか?……それでたった1ヶ月で全員赤点回避は流石に無茶だぞ」

 いくら何でもこれは無茶だと俺は抗議するが、中野父は声音を変えることなく。

「僕は、君達の能力を見てこれならいけるだろうと期待している。

 

……となれば、求めるハードルも高くなるものさ。

 

 それでは、健闘を祈る」

 

 そこまで言って電話を切ってしまった。

 

 いきなりまずいことになったが……とりあえず一言。

 

「出資者は無理難題を仰る……」

 

 感想はこれに尽きた。

 

 

 翌日。

 いきなり設けられたハードルについて、家庭教師の日ということもあり風太郎とどうやって乗り越えるかを話そうとした俺だったが……。

 

 

「何で人生ゲームなんてやってんだ……」

「まあまあ、このあとちゃんと勉強するからさ。息抜きも大事だよ」

 

 俺は、札束を片手にルーレットを回していた。

 

「それは認めるが……なんでこんな時間のかかるやつを」

 勉強の休憩という事で、近くに置いてあったからやることになったのだが……これではゲーム大会である。

 

 大体、風太郎が止まったマスの通り、家庭教師を解雇されてプー太郎になったらアイツは生活費を稼げなくなることをわかっているのだろうか。

 

 しかし……その表情はなぜか「やらかした……」と言わんばかりのものだ。

 

 一体何があったかは知らないが、これ以上の厄介ごとは………ん?

 

「町谷さん!私結婚したのでご祝儀ください!」

「あ、ああ……おめでとさん」

 四葉がどうやら結婚マスに止まったようなので、一万を渡す。

 

「じゃあ、次は私の番……スカウトされて女優になるだって」

「もー‼︎それ、私が狙ってたのに!」

 

 次に三玖が女優になり、一花が取り逃したと嘆いていた。

 

 そして、俺がルーレットを回して駒を進めて…

 

「って、エンジョイしてる場合か‼︎自分の人生どうにかしろ‼︎」

 

 と、ここで風太郎が手詰まりと言わんばかりに叫びを上げた。

 

「でも、今日はたくさん勉強したし休憩しようよ」

「もう、頭がパンクしそうです…」

「そうだが……」

 

 たしかに、今日は正午辺りから夕方近くまで勉強をしたし、これ以上は詰め込んでも頭に入らないと言う意見はわかるのだが……あと1週間もないのに今のペースでは、間違いなく赤点コースである。

 

 俺はこの仕事がなくなっても他の依頼でカバーできるからいいが、風太郎はマジでやばい。

 

 こいつの家の窮状は知っているから、なんとか続けさせたいのだが……。

 これはどうしたものかと内心焦りを覚えていると、三玖が。

「フータロー……ソージも、なんかいつもより焦ってる………。

 

 私たち、そんなに危ない?」

 と、風太郎の様子を見て顔を曇らせた。

 

「………実は」

 恐らく、風太郎も考えていることは俺と大体同じだ。

………このままでは間違いなく危ない。

 

 危ないのだが、この3人にそれを打ち明けたらプレッシャーに感じてしまわないだろうか。

 

 一花はわからないが、四葉と三玖は風太郎の悩みを聞いたらなんとかしようと頑張るだろう。

………だが、それで無理をさせて体調を崩させては元も子もない。

 

 望まぬ沈黙が流れる中で、何かを察したのか。

「……それなら、私から提案が「あー!なんだ、勉強サボって遊んでるじゃない」

 

 挙手して提案しようとしたところで、ニ乃がログインしてきた。

 

「私もやる。あんた代わりなさいよ……お金少なっ⁉︎」

「実は?」

「いや、何でもない!」

 

 今の状況で一番入ってほしくない奴に俺は内心舌打ちする。

 

 コイツはこの家庭教師の仕事に対していい感情を持ってない。

 

 その状況で今俺たちに課せられたハードルを知られたら、嬉々として妨害してくるだろう。

 

 とは言え、下手に遠ざけようとして怪しまれるのは避けたいし……

 

 そんな俺の葛藤の前で、ニ乃は。

 

「あんたも交ざる?」

 

 いつの間にか後ろにいた五月に声を掛け……風太郎の表情が強張った。

 

 そして、五月も……いつもと何か違う。

 

「五月……昨日は「私はこれから自習があるので失礼します」

 

 人の目を見て物事を話すコイツが、風太郎に一切視線を合わせなかったのだ。

 

「お、おい!」

 

 さっきのやらかしたと言わんばかりの顔はもしかして……

 

 俺の知らないところでやらかしていたらしい風太郎に、後で問い詰めようと声をかけようとすると、ニ乃が風太郎の背中を押して玄関へと追いやっていた。

 

「ほら、アンタも今日のカテキョーは終わったんでしょ!

 

 帰った帰った!」

「あ、ああ……奏ニは?」

「俺も帰らせてもらうぜ…屋台の報酬貰いに行かないとだし」

 と、俺達が帰り支度を始めていた時。

 

 

「待って、ニ乃……ソージ君は兎も角フータロー君は何言ってるの?

 

 

 今日は泊まり込みで勉強教えてくれるって話でしょ」

「「「え⁉︎」」」

 

 一花から出た初耳な話に、俺に風太郎、ニ乃の反応が被った。

 

 

 自宅のオフィスにて。

「これだけやりゃあ十分だろ……これなら70点は堅いしアイツらに教えることもできる」

 帰った後屋台のおっちゃんから給料と夕飯をもらった俺は、苦しくなった腹をさすりながらテスト勉強を行なっていた……家庭教師をやってる時は自分の勉強ができないからな。

 

 アイツらに教えるためというのもあるが……客からの信頼を得る為には俺自身の学力もある程度必要なのだ。

 

 それよりも、風太郎だが……予想通りアイツはやらかしていた。

「アイツらまた喧嘩かよ……本当、2人揃って意地っ張りだもんな」

 

 俺は、新たな懸念事項に溜息をついてしまう。

 

 理由は、さっきのハードルが設けられたことだったが……五月が今までの発言から勉強を教わることを拒み、それに腹を立てた風太郎が口を滑らせ。

 

 あとは、売り言葉に買い言葉……となったんだとか。

 

 あのマンションで感じた違和感はそれによるわだかまりで間違いないだろう。

 そして……そうなると心配なのは五月だな。

「風太郎にデリカシーがないのも問題だが……五月は1人で自習できてるのか?」

 

 アイツは真面目な割に要領が悪い……要は頭が固い。

 

 そして学力も高一の最初くらいのレベルで、今回の試験範囲の問題を1人で理解するのは難しいはずだ。

 

 きっと助けて欲しい筈なのに……風太郎に教わるのはプライドが許さず、1人で勉強を続けているのだろう。

 

「素直じゃねえな……全く」

 

 俺は、勉強道具をバッグに仕舞い……スマホの通話機能を起動した。

 

 

「………何か?」

「いや、しっかり勉強してるかなーって」

「みんなと一緒に遊んでいたあなたがいうセリフじゃないと思いますが」

「アレはレクリエーションって奴だ」

 

 電話相手は、俺の返しに幾らか棘がある口調で。

「苦しい言い訳を……それだけ聞きに来たのならもう切りますよ」

「釣れないなぁ……もう少し話そうぜ」

 そうして電話を切ろうとしたので慌てて止める。

 

「いったい何なのですか?」

 そんな俺に苛立ったのか、五月が声を荒げるが……その声はやはり苦しげだった。

 

 なら俺も本題に入るとしよう。

「テスト勉強……どこまですすんだ?」

「………‼︎」

 

 質問を少し変えると、五月は少しの間を置いて。

 

「……1人でできます」

「……まだ意地を張ろうってのかよ」

 

 予想通りの結果となったことを表す返事に、俺はため息をついた。

 

「意地なんて張ってません!」

「その返事ですでに張ってるんだよ……1人でベソかくくらいには」

 

 その涙声が全てを物語っているのに、無理して背伸びしてるのが丸わかりだ。

「今からそっちに行くから、ちょっと待ってな」

 

 俺の指摘に何も言えなくなっていた五月は絞り出すように。

「……私は、あなた達のお金儲けの道具じゃありません」

「……知ってるよ。お前は中野五月って人間だ」

 五月はまだ、湧いた不信感に駆られるように捲し立てた。

「あなただって、お金のために私たちの家庭教師をやっているのでしょう?

 

少しでも多くのお金が欲しいから、私に教えようとしているんじゃないですか?

 

 こんな、催促みたいな電話までして……」

 

 どうやら、風太郎がしたと見られる発言がよほどショックかつ頭にきているようで、それで、俺相手にもそうなんじゃないかと疑っているようだ。

 

 ここでそうじゃない、って言うのは簡単だけど……賃金のある仕事として引き受けている以上は嘘っぽくなってしまう。

 

 そうなれば、五月はもっと頑なになるかもしれない。

 

……だが、そんなのを俺達は望んでないし、五月のためにもならないだろう。

 

 だから……俺は素直に言うことにした。

 

「お金のためってのは否定しない……」

「やっぱり……なら、もう「でも、お前に教えようとしてるのは……それだけが理由じゃない」

「……じゃあ、その理由は何です?」

 

 なんか、これを言うのは恥ずかしいが……言う。

 

「苦しんでそうなお前を放っておけなかったからだ。

 

 俺は隣の席にいるんだぜ?

 

 あの4人ほどじゃないにせよ、お前のことは少しはわかってるつもりさ」

 

「………………」

 

 息を呑むような音の後、妙な沈黙が流れて。

「……おいおい、せっかく苦手なしんみりを口にしたんだから、なんか反応くれよ。恥ずかしいじゃんか」

 

 適当に話題を振ると、帰ってきたのは少しキレ気味の言葉だった。

「知りませんよ!そもそも、そんな恥ずかしいことを言わなければ……!」

「お、照れてる?」

「うるさい!……もう、勉強に集中できないじゃないですか‼︎」

「なら、俺がそっちに行くまでは休憩だ。……いつも通りに行くぜ」

「わ、私はきて欲しいとは一言も……!」

「意地張った罰だ。今夜はあんまり寝かさないからな!」

「だから……ああ、もう!

 

 分かりましたよ、分かりましたから……せめて早めにきてください!わからないところ結構あるんですから!」

 

 根負けして、吹っ切れたように頼んできた五月は……スッキリした様子だった。

 

……あ、そうだ。

「………夜食はいるか?」

「………やっぱり、少し遅くてもいいですよ」

「食が優先か…」

 

 

30分後。

「へー……美味しそうだね。ソージ君の手作り?」

「悪いな……五月のことを任せっぱなしで」

「そう思うならもう少し言葉を選んでくれよ…?」

 マンションに着いた俺は、先に事情を話した風太郎に中に入れてもらい……リビングにいた一花にも先程のことを話していた。

 

「五月ちゃんは幸せ者ですなあ……こんないい子な友達が出来て、お姉さん安心したよ」

「……やっぱ、アイツ前から友達できてなかったのか?」

「……まあね。どこかのフータロー君もそうでしょ?」

「そうそう。どこかのフータロー君もそうなんだよ」

「お前ら……ほら、とっとと五月のところに行ってこい!時間なくなっちまう」

 

 一花と俺に揶揄われ、恥ずかしそうにする風太郎に追いやられた俺は、言われた通りに向かうとするが……これだけは言っとかないとな。

 

「お前も、ちゃんと話をしろよ……?メインの家庭教師はお前なんだからな」

「……努力する」

 

 

 数時間後、日付が変わって少しした頃に五月の部屋にて。

 

 

「………美味しかったです」

「お嬢様のお口にあって、何よりでございます」

「……今は、何も言わないであげますよ」

 

 俺が夜食に作ってきたサンドイッチとミルクティーを綺麗に平らげた五月が、満足げに息を吐いているのを横目に、俺は教科書を見て。

「しっかし、ほぼ全てわかんないと来たか……」

「全部じゃありません……理科は何とかわかったんですよ?」

「生憎、テストは5教科だ」

「……そうですよね」

 

 現状の五月は理科は得意科目らしくそれなりにわかるのだが、後がヤバい。

 

 これで赤点ラインを突破するのも一苦労だろう。

 

 まあ……全く勉強らしいことをやってなさそうな奴が1人いるので、五月をどれだけ強化してもクビは決まったようなものだけどな。

 

 普通ならこの負け戦から手を引いて、自分のテスト勉強を行なった方が賢いが……風太郎は足掻いている。

 

 ならば、俺も諦めるわけにはいかない。

 

 

「……では、続きをお願いします」

 それに、お腹が満たされたおかげで元気になってる奴もいるしな。

 

 

 そんな訳で、この日は翌日も休みという事もあり徹夜……とはいかず、丑三つ時には船をこぎはじめた五月に掛け布団をかけ、俺はリビングに敷いた寝袋へと入り込むのであった。

 

 

 

 翌朝。

 

「なんでコイツがいるのよ……しかも、寝袋なんて」

「町谷君、部屋から消えたと思ったらこんな所に……」

「なんだか、こうしてみると町谷さんって女の子にも見えますよね」

 

 ハッとして目を覚ました私には何故か布団がかけられていて、隣で教えてくれていたはずの彼はいなかった。

 

 時間的に今から寝てもアレだったので、みんなが起き出すまで1人で勉強をしてる中でお手洗いのためにリビングへと向かったのだが……そこには黒い物体が。

 

 まさか、こんな朝にお化けが……と、少し怯えながら覗き込もうとすると、先に起きて朝食を並べていたニ乃が困惑顔で出てきていまに至る。

 

 

 四葉がそんな事を言いだしたので改めて見てみると……確かに、いつもの三つ編みをほどき、どこか生意気そうな笑みもなく穏やかに眠っている彼は……どこか可愛げがあった。

 

 

 すると、この時間帯には珍しい人物がやって来る。

「おふぁよ……あれ、ソージ君こんなところで寝てたんだ」

 

 あくびをしながらやってきた一花だが……どうやら一花は彼がここにきていた事を知っているようだ。

 

 

「アンタ、コイツがここに来たの知ってたの?」

「まあね………でも差し入れ持ってきたり寝袋用意してたりで、本当にこの子はいろんなところで気がきくよね。

 

 あのフータロー君のお友達とは思えないよ」

 

 感心したように言う一花の視線は私に向けられているような気がする………恐らく、私のところに来る前にあった時に理由でも聞いたのだ。

 

 なんだか恥ずかしくなって来ると、ニ乃が嫌そうな顔をした。

「そうかしら……?許可もなく勝手にリビングで寝てるあたりは、アイツのお友達って感じがするけど」

 

 確かに、事情を知らなければただの変質者だが……きっと、私と同じ部屋で寝る事を避けての行動だと思う。

 

 

「五月。コイツと仲良くしてるみたいだけど、絆されるんじゃないわよ?………そう言えば、三玖が起きてこないわね」

「あれ?起きた時隣にいなかったからここにいると思ったのに……」

「じゃあ私、探してきますよ!」

 

 朝から元気な四葉が三玖を探しに行き、ニ乃が調理に戻ったので座っているのは私と一花のみ。

 

そして、一花は私にしか聞こえないような声で。

 

「五月ちゃん……いい友達を持てて良かったね」

 

 いまだに眠る町谷君を見ながら囁いてきた。

 

 

「友達じゃありません!彼は………」

 

 私はそこまで言って改めて彼について考える。

 

 

 いつもヘラヘラしているかと思えば、私や上杉君が困っていると全てわかっているかのような鋭さで、色々と手を貸してくれる。

 

 気遣いができる人かと思えば、いつも余計な茶々やからかいで上がった評価を下げにくるようなことばかりする。

 

 言動もどこか胡散臭いのに妙な実感がこもっていたり、髪型も男なのに女の子でもあんまりやらない三つ編み。

 

 更には着ている私服も、改造こそされているが教会で神父さんが来ている牧師服だ。

 

 

 本当によく分からないこの人は、私にとってなんなのかを考えるが……私が思いつくどの言葉とも照合しない。

 

 かと言って、人付き合いの上手い一花が出した「友達」と言う言葉も何か違う。

 

……そうなると、当たり障りのないこの言葉しかない。

「ただのクラスメイトで……知り合いです」

 

 

 彼は私の性格をある程度わかってくれているし、私も彼が様々な要素を持つよくわからない性格の人だと知っている。

 

 お互いの事をある程度知っている……そんな知り合いだ。

 

 そして、そんな彼が友達だと言う上杉君の事も………昨日よりは、信じてみようと思った。

 

 

 その後、ヘッドホンをつけて勉強中にうたた寝をしていた私を三玖という事にした上杉君に勉強を教えてもらっていた時に、いつのまにか起きていた町谷君がニヤニヤしていたのを蹴り出したのは、また別のお話で。




はい。いかがでしたか?

今回は中間テスト回の前半ですので、当然後半もあります。


そんな次回を楽しみにしていただければ幸いです。


あと、感想や評価ももらえると尚励みになったり参考になったりします。

 ただし、場合によっては凹むのであんまりきついのは勘弁してください。

 それではまた。
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