五等分の花嫁 家庭教師の二重奏   作:暇人の鑑

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どうも、第6話です。

今回は中間テスト編の後半です。少し短くなりますがご容赦ください。


 奏ニの秘密②
 ゲームやSNSアカウントの名前は自分の名前を英訳した「デュオ」にしている。


第6話 逆転の蝶

 あの深夜の勉強会から数日。

 

 俺達を取り巻く関係性は少しだけ変わっていた。

 

 風太郎と五月の間にあった確執は沈静化したのか、五月が自習と言うスタンスは崩さないもののちょこちょこ風太郎にも分からないところを聞くようになり。

 

 なんと、あのニ乃もこちらで勉強するようになった。

 どう言う心境の変化かはわからないが、勉強をしてくれるなら良しとしよう。

 

  

 で、そんな変化と共に知識を溜め込むような日々を繰り返して……今日。

 

 

 ついに、中間テストの日がやってきた。

 

 

 

 やって来たのだが……。

「アイツら、徹夜でテスト勉強してテストの日に遅刻するって……一体なんのギャグだよ」

 

 ホームルームが終わったので、テストの支度をしていた俺は………隣の空席を横目にため息をついていた。

 

 

 確か昨日は「詰め込めるだけ詰め込む」と言う事で、仕事の打ち合わせがあったので参加しなかった俺を除く6人……風太郎と5つ子達は徹夜で勉強会。

……言ってしまえば一夜漬けをしていたのだが、結果としてはこのザマである。

 いくら詰め込んでも、それを出す機会を逃しては意味がないもんだ。

 

 

「これなら、早く寝させて万全な体調で臨ませた方が良かったぜ…?」

 と、一応今どうなっているのかを電話で聞こうとした時。

 

 

「………おはようございます」

「……」

 やってしまったと言わんばかりの表情で五月が入ってきた。

 

 

 悲壮感を感じさせるその雰囲気に、俺含め周りの席の連中が重苦しさを感じていた。

 

 

 これではテストの支度どころではないので、ちょっと離れた所に集まる。

 

 俺以外に集まったのはアイツの席を囲む位置に座っている女子2人と男2人だ。

 

女子A「ちょっと、何なのよあれ!」

 

女子B「なんか怖いんだけど……たかが遅刻しただけじゃないの」

 

俺「他のことかもしれないぜ……お前ら、なんかやったなら正直に手を上げろ?突き出してやるから」

 

男A「それで挙げる奴はいないわ!……てか、中野さんは町谷以外とはあんま話さないじゃんか。むしろお前がなんかやったろ」

 

俺「……記憶にございません」

 やったと言えば、風太郎に教えてもらってるのを生暖かい目で見守ったくらいだ。

 

男B「なんか怪しいな……町谷、お前聞いてこいよ」

 

女子A「そうだよ、中野さんと一番仲がいいのは町谷君なんだから」

 

男A「そうだな。……では、解散!」

 

俺「ちょっと待て、お前ら……いっちまいやがった」

 

 なんて薄情なクラスメイトだ、こんな事で一致団結しやがって。

 

 しかし……こんな重苦しい雰囲気でテストを受けたくないのは間違いないのでとりあえず聞いてみようか。

 

 

 

「五月さんよ、テストの前から0点ムード出してどうしたんだよ?」

「町谷君………私はとんでもない無礼をやってしまいました」

「無礼……?てか、お前がいるなら風太郎もいるだろ?アイツはどうした」

「彼だけは、作戦に失敗したのです……でも、いっそのこと正直に話して怒られていればこんな気持ちにならないで済んだのかもしれません」

「その作戦の内容は?」

 

 五月が口にした作戦について聞くと……なんともシュールなものだった。

 

 経緯としてはこんな感じだ。

 

 風太郎達は寝坊して、急いで学校に行こうとしたが運悪く迷子に出くわした。

 

 なんとか解決したものの、時間切れになってしまったのだが……先に行っていた四葉は学校にいたので無事だった。

 

 そこで風太郎は全員で四葉に変装して、生活指導担当を欺くという「ドッペルゲンガー作戦」を行ったのだが……風太郎は流石に無理があったのか捕まり。

 

 成功した五月も、遅刻した上にそれを隠すために教師を騙した事について罪悪感に駆られていたと言うのが、あの悲壮感の原因だった。

 

 

 真面目な五月からしたら大事件だろうが、俺達からしたら何ともくだらない話である。

「そんな事で落ち込んでたのかよ!真剣に聞いて損したぜ……」

「そんな事とは何ですか⁉︎」

「お前は頭が固いんだよ。変装に関しては見抜けなかったあのゴリラが悪いし、遅刻は学生の通過儀礼みたいなもんさ」

「でも、人を騙したんですよ?……それを肯定するなんて、あなたは嘘をつかないのではなかったのですか?」

「俺は嘘はつかないが、逃げや隠れはするんでね…てか、やったの俺じゃないし。俺は正直に思った事を伝えたのさ」

「ウグ……でも、でも………」

 

 と、五月が葛藤している所へ監督の教師が入って来た事により、この話はお流れとなったのだが………風太郎が未だ来ないまま、中間テストが始まった。

 

 

「町谷君に上杉君……あなた達を辞めさせはしません」

 その言葉に俺はどう言うことだと聞こうとしたが……カンニングを疑われても嫌なので今は気にしないことにした。

 

 

 

 その日の夕方。

「いやー、終わった終わった!今回のテストやたらと社会難しかったな。お前対策でもしてんじゃねえの?」

「違和感の正体はそう言うことか………まあ、全問正解だろうけどな」

「次の期末の社会、思いやられるな……」

 

 

 5教科全てのテストが終わり、生徒の誰もが解放感を享受しながら帰路につく中で、俺と風太郎も帰路についていた。

 

 

 ちなみに風太郎は1時間目の社会のテストは10分遅れ……つまり40分間でテストを受けていたのにこの余裕である。

 きっと、社会の担当(通称 ねずみ男)が歯噛みする事は間違いないな。

……まあ、そんなことはどうでもよくて。

 

 

「アイツら……大丈夫かな」

 俺が呟くと、風太郎は。

「やれるだけのことはやった……後は、アイツらを信じることしかできないだろ」

 同じ5人のことを案じるような発言をした。

 

 そして……風太郎の言葉の通り、今の俺にはそれしかできなかった。

 

「……そうだな」

 

 

 

 数日後。

 

 テストをやったと言うことは、当然その結果発表があるわけで。

 

 俺たちの下に全ての教科のテスト結果が返ってきた。

 

 俺の点数は……

 

 合計390点

 国語 81点 数学 79点 英語 80点 社会 72点 理科 78点

 

「平均78点か……アイツらに教えてる中で復習がいつもよりできてたのかもな」

 

 社会はミスったが、それ以外はいつもよりも少しだけ得点が高い。

 

 心なしか軽くなった足取りで席に着くと……隣から申し訳なさそうな視線が来た。

 

 点数を聞かなくても大体わかる。

 これは……どうやらこの仕事はこれで終わりみたいだ。

 そして、五月はもうそれを知っている……あの時の発言は恐らくそう言うことなのだろう。

 

「……大丈夫さ。仕事関係なく教えられる時は教えてやるから」

「……ごめんなさい」

 

 とりあえずかけておいた言葉に、絞り出したような声での謝罪が返ってきた。

 

 

 

 

 その日の放課後、図書室にて……風太郎主導の元、俺たちは集まっていた。

 

 クビは決まったようなものだが……俺達は結果を見届けなくてはならないからだ。

 

「よお、集まってもらって悪いな」

「どうしたの?改まっちゃって」

 風太郎の一言に、一花が答えが分かりきったような質問をする。

 

 そして、その答えは他の姉妹達も分かっていた。

「水臭いですよ?」

「中間試験の報告……間違えたところ、また教えてね」

 

 恐らく俺たちに課せられていたハードルを知らない三玖がそう言うと、風太郎は申し訳なさを隠すように頷いた。

 

「兎も角まずは……答案用紙を見せてもらうぜ」

 

 俺が本題を振ると、一花が見せようとしてきたが……それに待ったをかける声が。

 

「見せたくありません。

 

 テストの点数なんて他人に教えるものではありません……個人情報です。

 

 

 断固拒否します」

「……五月ちゃん?」

 その声は五月のものであり、一花が怪訝な顔をする。

 

 恐らく、俺たちのクビを回避させることができないような点数を取った事を、教えたくないのだろう。

 

 不器用な気遣いには感謝するが……どうせ終わるなら、スッキリしてから終わりたい。

 そして。風太郎も、似たような事を考えていたようで。

「ありがとな。

 

………だが、覚悟はしてるから教えてくれ」

 

 5つ子のテスト結果が明らかになった。

 

四葉 合計 95点

国語30点 数学9点 理科18点 社会22点 英語16点

本人のコメント「他の四科目はダメでしたが、国語はヤマカンが当たって30点を超えてました。こんな点数は初めてです!」

俺の感想「ヤマカンを公表とはいい根性してやがるな」

 

 

三玖 合計162点

国語25点 数学29点 理科27点 社会68点 英語13点

本人のコメント「社会は68点だけど、その他はギリギリ赤点。悔しい」

俺の感想「英語の赤点ラインは15点じゃないぞ」

 

 

一花 合計127点

国語19点 数学39点 理科26点 社会15点 英語28点

本人のコメント「今の私じゃこんなもんかな」

俺の感想「英語ができそうなイメージだったんだが意外だ」

 

 

ニ乃 合計119点

国語13点 数学19点 理科28点 社会14点 英語43点

本人のコメント「言っとくけど手は抜いていないから」

俺の感想「手を抜いてなくてこれか……」

 

 

五月 合計158点

国語27点 数学26点 理科 56点 社会24点 英語25点

本人のコメント「合格ラインを突破したのは理科だけでした……」

俺の感想「絶妙に惜しいのばっかじゃねえか、勿体ない…」

 

 

 5人のテスト結果を見て唸る俺の隣で、風太郎は意気消沈したかのように肩を落とした。

「短期間とはいえ、あれほど勉強して30点も取ってくれないとは…….

 改めてお前らの頭の悪さを実感して落ち込むぞ……」

「うるさいわね……まあ、合格した教科が全員違うなんて、アタシたちらしいけど」

「あ、そうかも」

「それに、最初の5人で100点に比べたら……」

  

 二乃、四葉、三玖の会話に、俺も首肯して。

「ああ。間違いなく伸びてる……これなら」

 

 「俺たちがいなくても大丈夫」とは、ムード的にも現実問題的にも、言えなかったが……俺達はここでさよならしなければならないのが現実だ。

 

「奏ニ…ここは俺から言わせてくれ」

「それが道理だ……好きに言うといいぜ」

 

 話しかけてきた風太郎に頷くと、風太郎は……まずは三玖に向けて話を始めた。

 

 

「三玖。

 

 今回の難易度で68点は大したもんだ……偏りはあるがな。

 

 今後は姉妹に教えられる箇所は自信を持って教えてやってくれ」

「え?」

 

 まずは三玖で、次は四葉。

 

「四葉。

 

 イージーミスが目立つぞ、もったいない。

 

 焦らず慎重にな」

「了解です!」

 

 そのまた次は一花で。

「一花。

 

 お前は一つの問題に拘らなさすぎだ。

 

 最後まで諦めんなよ」

「はーい」

 

 4番目はニ乃だ。

「ニ乃。

 

 結局最後まで言う事を聞かなかったな。

 

 きっと俺達は他のバイトや仕事で、今までのように来られなくなる。

 

 俺達が居なくても油断すんなよ」

「……ふん」

 

 と、残すは五月のみとなったところで三玖が待ったをかけた。

 

「フータロー……他のバイトってどう言う事?

 

 来られないって………なんでそんな事言うの?

 

 私……」

「三玖。今は聞きましょう」

 

 五月が三玖を諌めているが、これはもうベタ惚れですね。

 

 

 この場ではあんまりそぐわない事を考えている隣で、風太郎が五月に。

 

「五月。

 

 お前は本当にバカ不器用だな!

 

 一問に時間かけすぎて最後まで解けてねえじゃねえか」

「なっ⁉︎」

 

 まさかの路線変更な内容で、五月が変な反応を返していた。

 

 だが……。

「最後あたりにお前でも解けそうなやつあったぞ。わかんない時は諦めることも手だぜ」

 

 俺も頷きながら助言をすると、ウッとした顔で。

 

「……反省点ではあります」

「自分で理解してるなら良いよ。次からは気をつけな」

「はい……でも、あなたや上杉君は…」

 

 五月が何かを言いかけた時、携帯の着信音が鳴った。

 

 そして、その携帯の持ち主が画面を見て……風太郎に差し出した。

 

「……父です」

「……上杉です」

 

 恐らく5つ子の父親がテストの結果を聞きにきたのだろう。

 

 スピーカー機能がONになったスマホから、俺たちの雇い主の声が聞こえてきた。

 

 

「ああ。五月と一緒にいたのか。

 

 ここに結果を聞いていこうと思ったが、君の口から結果を聞こうか。

 

 嘘はわかるからね」

 と、5人や風太郎の誰に対しても念を押すような口調に、風太郎はそんなこと分かっていると言わんばかりに。

 

「つきませんよ。

 

 ただ………次からコイツらには、もっといい家庭教師を付けてやってください」

「と、言うことは?」

「………試験の結果は」

 

 と、結果を伝えようとしたところで、なぜかニ乃が風太郎からスマホを引ったくった。

 

「え?」

「……パパ?ニ乃だけど」

 

 突然の行動に俺と風太郎が互いに顔を見合わている間にも、ニ乃は続けた。

 

「一つ聞いていい?

 

 なんでこんな条件出したの?」

「僕にも娘を預ける親としての責任がある。

 

 高校生の上杉君や町谷君が、それに見合うか計らせてもらっただけだよ……彼等が君たちに相応しいのか」

 

 その言葉に驚く一花、三玖、四葉。

 

……そう言えばこの3人は知らないんだったな。

 

「私たちのためって事ね。

 ありがとう、パパ………でも、相応しいかなんて数字じゃわからないわ」

「それが一番の判断基準だ」

 

 本やドラマでのステレオタイプでしか、親の情を知らない俺だが。

……なんというか、この親父さんが娘達にやってる事は、ペットの飼育環境を揃えて「愛情」と言っているように思えた。

 人の家庭や、親としての教育方針に口出しする権限はないが……何かが足りないような気がする。

 

 

 その何かを考えていると、ニ乃がため息をつき。

 

「あっそ………じゃあ教えてあげる。

 

 

 

 私たち5人で、5科目全ての赤点を回避したわ」

 

 と、とんでもない事を言い出した。

 

 

「「⁉︎」」

 そのあまりの衝撃に先ほどまで考えていた事は頭から飛び、風太郎と2人で顔を見合わせる。

 

「………本当かい?」

「嘘じゃないわ」

「………そうかい。ニ乃が言うのなら間違いはないんだろうね。これからも上杉君と励むといい」

 

 そうして電話が切られ、なんとかフリーズから再起動した俺は。

 

「おいニ乃、今の嘘は一体…」

「アンタは頭がキレると思ったけど、意外と普通なのね……いい?

 

私は英語、一花は数学で四葉が国語……三玖の社会に五月の理科。

 

5人で5科目クリア……嘘はついてないわよ」

「……「で」に拘ったのはそう言う理由か…」

 思いっきり屁理屈だが………まあ、この5つ子らしいっちゃらしいか。

 

 

 そして、頭を抱えている風太郎に。

 

「結果的にパパを騙す事になった……多分、2度と通用しない。

 

 

………次は実現させなさい」

「………やってやるよ」

 

 最後の最後で特大のツンデレを発動させるのであった。

 

 

 

 

「………まさか、アイツが最後に助けてくれるとは思わなかったぜ」

「私も予想外でしたよ…」

 

 駅前のファミレスに7人で向かう道中で、先を歩く5人の後をついていく形で俺と五月は話していた。

 

「まあ、今の状況も予想外なんだがな……まさか、アイツの口からご褒美のパフェだなんて」

「5人で一人前とか言う限りは彼らしいですがね」

 

 普段なら即復習ってなりそうな風太郎が、すぐにじゃなくていいといった挙句にご褒美にパフェをと言い出したのだ。

 

「まあでも、お前ご希望の特盛じゃないか」

「5等分しちゃうとだいぶ少ないですよ?………でも、私たちらしいと言えば私たちらしいのかもしれませんね」

 

 温かい目をしつつも、物足りなさそうな顔をしている五月に。

 

「………ちゃんと連れてくから、今日はそれで我慢してくれ」

「……そうでしたね。まだあなたへのお仕置きが完了してませんでした。私、行ってみたい場所が………」

 と、スマホで見せられた場所は……かなり高かった。

 

「あの、五月さん?俺が連れてこうと思った場所よりもずいぶん高いんですが……」

「安くちゃ、お仕置きにならないじゃないですか……それに、美味しい方がいいです」

「……もう少し遠慮を」

「アンタ達!イチャイチャしてないで早く来なさいよー!」

「ニ乃⁉︎私は別にイチャイチャなんて……!」

「待て、話は終わって……!」

 

 

 顔を赤くして離れていく五月を、このまま高値の奢りにさせるかと追いかける俺。

 

 

 そんなこんなで、俺達は夕焼けの中で馬鹿騒ぎしていたのであった。

 




いかがでしたか?

次回からは林間学校編に突入する予定ですのでお楽しみに!
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