五等分の花嫁 家庭教師の二重奏   作:暇人の鑑

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 はい、奏二のプロポーズ回です。

 本当は風太郎のものも書きたかったのですが、それを考えたら投稿が遅くなりそうだったので、今回は奏二のものだけにしました。


 こう言ったものは書くのが初めてなので、変なところだらけかもしれませんが、楽しんでいただければ幸いです。


第60話 始まる、新たな二重奏

 珍しく弱気な彼に、発破をかけるが……正直、私は困惑の中にいた。

 

 

「………やっぱ、まだ大学に入学してすらないのに、気が早えかな?」

「何言ってんの。

 あんないい子、うかうかしてたらすぐ取られちゃうわよ?」

 

 奏二君が今まで、辛い目に遭い続けてきたのはわかっている。

 

 

 だからこそ、幸せになってほしいとも常に思ってきた。

 

 

 でも……まさか、私より先に結婚するかもしれないとは、誰が想像できたろうか。

 

 いつも彼が相談に来る度に、私は度肝を抜かれていたものだが……今回は、一味も二味も違った意味で度肝を抜いてきたのであった。

 

 

side奏二

 

 つい先日まで、俺が結婚なんて絶対にあり得ないと思っていた。

 

 大切な人に先立たれるのは、もうこれ以上経験したくないし、不倫だ価値観の違いだとかで、裏切られたくも裏切りたくもない。

 

 そもそも俺は自由気ままに生きてきたタチで、誰かとの結婚生活なんて想像できねえ。

 

 

 だから、異性付き合いなんざ……やりたくなったら、水商売の女と適当にやればいい。

 

 お互い商売だと割り切れているのなら、そっちの方が気が楽だ……と、割と投げやりに思っていたのだが。

 

 そんなクズの思考回路は五月の言葉で、かき乱されまくり……いまや、青春ときめく普通の男の子だ。

 

 てっきり、あのキスは脱走防止策みたいなもんだと思っていたが……どうやら、向こうは俺との付き合いを継続する気満々のようだ。

 

 

 まあ、俺も関係が続けばいいのにとかは思ったし、そう思えてしまうほどにアイツのことは好きなんだが。

 

 

 それにしても……バカだなぁ。

 

 真面目なくせして、なんでそこまで俺にお熱なんだか。

 

……とか嘯いてはいるが、その熱に見事に浮かされているのが、今の俺なので、なんとももどかしい話であって…………

 

 

 

 と、そんなふうに考えていると、やがて俺の頭はある結論を出した。

「………いや、もうウダウダ考えるのはやめだ!」

 

 

 箱に収めた婚約指輪が、お前が出した答えじゃないか……と。

 

「この際だ、どこまでも浮かれてやるぜ……!」

 

 

side五月

 

 まだ、夢の中にいるような気分で家に帰った私が、リビングへの扉を開けると。

 

 

「「「「五月(ちゃん)、大学合格おめでとー‼︎」」」」

 

 クラッカーを持った姉達が、夢のような現実を私に改めて見せてきた。

 

 

「五月ちゃん、本当によかったよー!」

「うんうん!ホントホント!」

「ありがとうございます、みんなのおかげです……!」

 

 一花と四葉が、感極まったように駆け寄ってくるのに、私も言葉が上擦らないように返事をする。

 

 

 そう、合格した事が信じられないほど嬉しくて、どこか夢見心地な気分なのだ。

 

 

「合格おめでとう五月。

 

 二乃がご馳走いっぱい作ってるから、ここにすわっててね」

 私の手を引いた三玖に導かれるようにソファーに体を沈めると、やがてテーブルには色とりどりのご馳走が並べられていき、最後にそれを作ってくれたのか、今までエプロンをしていた二乃が。

 

 

「本当、よくやったわ五月……今日だけは、好きなだけ食べてもいいわよ」

 

 若干涙ぐみながらも、満面の笑みを浮かべていた。

 

「うん………ありがとね、みんな!」

 

 

 決して、ここがゴールなんかじゃない。

 

 むしろ、ここから大学に行って……教員採用試験を受けてと、色々ある中で、やっとスタートラインに立てただけだが。

 

 それでも、そのスタートラインに立つまで必死に足掻いた自分の為にも、今は祝福の風に身を任せていた。

 

side風太郎

「ここに来るのも久しぶりだな…」

「奇遇だな、俺もさ…」

 

 五月からの合格報告を聞いた俺と奏二は、なぜか親父さんのいる病院に呼び出されていた。

 

「三玖達から早く来いって催促されそうだが」

「まあ、そん時は親父さんに謝ってもらおうぜ」

「免罪符にしてやるなよ…」

 祝賀会をするから来いと、三玖や二乃から言われているし、俺自身の勉強も佳境に入っているのだ。

 

 奏二みたいなことをする気はないとしても、早くそっちに行きたいのをなんとか堪えていると。

 

 

「待たせたね、2人とも……」

 

 白衣姿の親父さんが、俺たちの前にやってきた。

 

 

sideマルオ

 

 零奈さんの死後、彼女達を引き取ってからすぐ、僕が真っ先に不安になったのは……彼女達の将来だった。

 

 無論、引き取ると決めた以上見捨てるつもりはなかったが………成績はあまり良い方ではなく。

 

 その上、それに対する危機感もあまり持ち合わせていなかった。

 

 どんどんと成績を落としていき、特例で入れてもらった黒薔薇から、旭高校に転入させる際も結構苦労しており………正直に言わせて貰えば、これからこんな事がずっと続いて大丈夫かと言う気持ちはやはりあったものだ。

 

 

 そこで、理事長の息子である武田君を上回るレベルで成績優秀であり……なんやかんやで腐れ縁となった勇也の息子の「上杉風太郎」と。

 

 偶然……いや、幸運にも旭高校に入学していた、「町谷奏二」の2人を、娘達の家庭教師に採用して。

 

 

 

「色々あったが……君たちのおかげで、無事娘達は高校を卒業して……それぞれの進路を見つける事ができた。

 

 本当に感謝しているよ」

 

 

 まさか、1年以上の付き合いになるとは思わなかったし……わずか1年で、僕達家族の関係がこうも進展していくとは、夢にも思わなかった。

 

 正直、この選択は正気の沙汰ではなかった。

 

 いくら成績優秀とは言っても……彼らはまだ同年代の高校生。

 

 すぐになんらかの問題を起こして……やっぱりと思いながら、彼等にクビを言い渡し、プロの家庭教師を雇う。

 

 

 そうなるかと思えば……蓋を開けてみれば、この選択が結果としては最善の選択だったとは、小説よりも奇怪なものである。

 

 

 一花は今をときめく女優。

 

 二乃と三玖は料理の専門学校。

 

 四葉は体育大学の推薦合格。

 

 五月は教育系の大学に合格。

 

 

 まだ、ここからどうなるかはわからないが………それでも、1年前では考えられないほど明るいであろう未来であり。

 

 それを導いてくれたのは、紛れもなくこの2人だったのだ。

 

 しみじみと数奇な運命だと感じつつ、親として最大限の感謝を表していると、2人は驚いたような顔をしていたが、やがて。

 

「いえ、これは娘さん達の努力の結果です。俺たちは、ただそれを手助けしただけですから」

「そうそう……てか、むしろ感謝したいのはこっちの方だぜ。

 

 お陰で、無堂に一泡吹かせられたからな」

 

 頼んだ時よりも、他人ながら大きくなったと感じられる表情を見せていた。

 

 

 これで、彼らは僕から出された依頼を完遂させたことになり……自動的に、今の関係性はなくなる。

 

 

 だが……。

 

「そして、もう一つ」

 

 かつて上杉君が家庭教師を辞めた時、娘達が僕に反抗してでも囲ったように。

 

 

 きっと……僕たち家族と彼らの付き合いは、もう切っても切れなくなるのだろう。

 

 

 今日彼らをここに呼んだのは、お礼もあるのだが……本音を言うとこちらがメインだ。

 

 

 彼らは側から見ても、良い友人関係だが………それでも、僕は年頃の娘を持つ父親なのだ。

 

 そばにいる彼らに……改めて、釘を刺さなくてはならない。

 

 

 

「不出来な親だが………娘達との関係を、真剣かつ紳士的に考えてくれる事を願わせてもらうよ」

 

 そして、それを受けて2人は……前にも似たようなことを言った時と同じように。

 

 

「ええ、もちろ「なら、真剣に考えてたことを言わせてもらうぜ。

 

 

 

 五月さんと、結婚させてください」

 

 

 

………え?

 

 

「「え?」」

 

 町谷君のまさかの発言に、僕と上杉君の反応が被った。

 

 

 

side奏二

 

「え……そ、奏二?お前何言って」

「町谷君……そう言う冗談は流石に笑えないんだが」

 

 風太郎が目を丸くするのを尻目に、困惑を交えたような顔の親父さんに。

 

「本気さ………本気じゃなきゃ言えねえよ。

 

 取らなかった冷たい手を前に、後悔するのはもうたくさんだ」

 

 冗談じゃないと、きっぱり否定した。

 

 この決意を……冗談なんかで済まされてたまるか。

 

 

 さっきまでは、俺達は客と何でも屋だったから言えなかった。

 

 客に手を出すなんて、俺のポリシーが断じて許さないからだ。

 

 でも、今はもう違う………俺にとってこの人は、想い人の父親でしかない。

 

 だから、言って……乗り越えなければならない。

 

「嘘じゃないし……この気持ちからは、逃げも隠れもできないし、したくない」

 

 

 出来るだけ目を合わせ、本気である事が少しでも伝わるようにとしている俺に、親父さんは少しばかり鋭くなった目で。

 

「……ちょっと待ってくれ、そもそも君と五月君は」

 

 聞いてきたので、正直に頷く。

「ああ、まだ付き合ってない。

 

 だから、今から告白しに行く。

 

 断られればそれまでだが……それでOKを貰えたら、俺はもうそこまでぶっちぎる」

 

 そして、懐から指輪の入った箱を出して、中身を見せてやった。

 

 

「お前……なんか吹っ切れたな」

「踏み続けてたブレーキ、もう壊れちまったからな」

 風太郎の、若干尊敬を込められたような視線を感じつつ、親父さんの呆気に取られたような目線に正面から対峙する。

 

 

 そして……それによって生まれた緊張は、親父さんの口元が崩した。

 

 

sideマルオ

 

「君にはいつも、驚かされてばかりだが……今回の件は、その中でも最大級だ」

 

 諦めの境地に達していたような彼が、ここまでの願いを持てるようになったのは、ものすごく嬉しいものがある。

 

 そして、それを持たせてくれたのが誰かも大体想像が付く。

 

 とは言え、この場で宣言したことに……僕は呆れと称賛が混ざったような思いを思わずぼやいていた。

 

 だが……心のどこかでは、こうなるかもと思っていたのかもしれないと、どこかスッとする感覚が教えてくる。

 

 2年の学期末試験の前。

 五月は僕と町谷君の関係について聞いたりして……なにかと、彼を気にかけていた。

 

……いや、それよりも前か。

 

 最初からずっと、繋がってたんだ。

 

 零奈さんの葬式でのやり取りの時から、2人の道は………。

 

 

「……でも、やっとなのかもしれないね」

「なんか、もっとギスギスするかもとか思ったけど……まさか、あの手紙を読んでたりします?」

「さあね……でも、五月が無茶をする君に胸を痛めていたのは知ってるよ」

 

 

 まあ、だからと言って無茶や予想外の行動ばかりする彼に、零奈さんから託された娘を引き継がせていいのかは……多少の不安が残る。

 

 だから……僕の答えはこれしかない。

 

「娘を悲しませるような真似をしたら、その時は承知しない。

 

 肝に銘じておきたまえ」

「ああ、俺には立派な反面教師がいるからな」

 

 

 そうして僕は、娘を嫁にやる父親になった。

 

 

 

 

side風太郎

 

「あ、遅いじゃないフー君!」

「ソージと一緒にお父さんに呼ばれたって聞いたけど………何かあったの?」

 

 中野家に入った俺は、二乃と三玖から早速聞かれたので。

 

「お前らの進路が無事決まった事に、お礼を言われてな……で、奏二は今親父さんからの用命で、この祝賀会への差し入れを選別中だ」

 

 あの大胆すぎる宣言を思い浮かべつつも、簡潔に説明した。

 

……まあ、俺の貧乏舌とセンスよりもアイツの方が適任だしな。

 

 

「お父さんが……それなら、直接ここにくればいいのに」

「なんか、これからやることがあるから無理だってよ」

 

 一花に返しつつも、なぜかワインセラーからボトルを見繕っていた後ろ姿を思い出す。

 

……たしか、あの人は祝い事の時にしか酒は飲まないはず。

 

 

「……なんだかんだで、嬉しいのかもな」

「………どうしたんですか、なんか気持ち悪いですよ?」

 

 分かんないと思っていたあの人のことを、少し理解できたような気になっていると、五月が失礼なことを言ってきやがった。

 

 

「お前こそ、なんだその空っぽの皿の山は……おまえ、受験勉強で運動もしてないだろうに、流石にその量は確実に太るぞ」

「な!祝いの席だと言うのに失礼な方ですね⁉︎

 

 それに、私はきちんと運動しますから!」

「さすが上杉さん、こんな時でもノンデリカシー…」

 違うぞ四葉。むしろこれは俺からの気遣いだ。

 

………せっかくのプロポーズ中にゲップなんてしようものなら、流石に台無しになっちまうからな。

 

 

 俺は、この場にいない親友の為のお膳立てに勤しむと同時に。

 

 

「………いつか俺も、プロポーズしないとだな」

「ふ、フータロー⁉︎」

 

 俺にも、その時が迫っていると感じていた。

 

 

「それってもしかして…」

「……どうかしたのか?三玖」

「……フータローの意地悪」

 

……あ、口を滑らせちまった。

 

 

 

side五月

 

「……主役を差し置いて何やってんだ、コイツら」

「いつもの流れですよ」

 

 レジ袋を片手にした町谷君が、説明できない状況の説明を求めてきたので、いつもの凌ぎ文句で応じる。

 

 

 

 そこでは、テディベアのように上杉君の腕の中に、三玖が収まっていた。

 

「……なあ三玖、ちょっと足が痺れてきたんだが」

「重いって言いたいのなら、切腹」

 

 曰く、「お仕置き」らしいが……何を言ったのかは上杉君が教えてくれないので、私たちはどう言う事なのかがわからないのである。

 

 そして、そんな状況に歯軋りしていた二乃が、我慢できないと言わんばかりに。

「三玖、そろそろ私に代わりなさいよ。急にお仕置きだなんて言い出して、フー君困ってるじゃない!」

「それじゃ状況変わんねえだろ!」

 

 欲望丸出しの注意喚起を飛ばし、上杉君に突っ込まれていて。

「二乃がここに来たら、フータローに香水臭いのがうつっちゃう。ここは私の場所なんだから」

 

「アハハ……むしろ、それが目的かもしれないね。犬が電柱にマーキングするのと同じ感じで」

「おしっこでやるやつだよね!」

 

「そこまで濃くやってないわよ!………あと、そこ2人は失礼な表現しないで頂戴」

 

 苦笑いする一花と、屈託ない笑顔の四葉に二乃が噛み付いていた。

 

………たしかに、あんな明るい顔で「おしっこ」だなんて言わないでほしいのはわかる。

 

 

「……まあ、いつものキャットファイトか。てか、週一間隔でやっててネタがつきねえのかよ」

「まあ、縁が深いのはきっと悪いことじゃないですし、いいんじゃないですか?」

 

 いつもの文句で、追求を逃れられてしまうほど見てきたこの流れ。

 

 

 感覚が麻痺してるのかもしれないが、これが普段の私にとっての平和な証であり………今の私にとっては、絶好の機会。

 

 

「……それに、町谷君に伝えたい事があったので、ちょうどよかったです。

 

 

 

 ちょっと外に抜け出しませんか?」

 

 ここから先の話は、2人でゆっくりと進めていきたいから。

    

 

side一花

 

 

「………さて、行ったわね」

「うん、何とかここは守り切った」

 

 こっそりと抜け出すように、この場からいなくなったソージ君と五月ちゃん。

 

 きっとこの2人は、知る由もないだろう。

 

 

「全く、家族よりもソージ君を優先するだなんて、お姉さんは悲しいなー」

「でも、そうなるのも無理ないよ。2人ともすごく頑張ってたもん。私は良いと思うよ」

 

 

 ここまでが、あの2人へのアシストだったなんて。

 

「お前ら、意外と良い姉貴やってんだな………」

 

 フータロー君は失礼な褒め方をしてくるが……いや、さっきまでのことがあるならその感想でも無理はないか。

 

 

 でも、五月ちゃんが途中からご飯があっても物足りない顔をしていたし。

………雰囲気から、何かを企てているんだろう。

 

 

 そして、その物足りなさを解消し。

 

 企てに関わるような人物となれば……もう、ソージ君しかいない。

 

 

 何をする気なのかは教えてくれなかったけど………まあ、頑張った末っ子にたいしての、姉達からのプレゼントだ。

 

 

「どうする?主役不在だが……」

「同級生美少女のお姉さん達が、まだまだ君を楽しませちゃうから安心してね。

じゃ、五月ちゃんの幸せを祝して乾杯しよっか!」

「そうね。町谷の差し入れもあるし……ここからは私のアピールタイムだわ」

「え、勝手に開けちゃって良いのかな……?」

「大丈夫、ソージがきっと五月にとっての最高のメインディッシュ。

 

……あと二乃、アレだけ言ったそばからのつまみ食いは許さないよ」

 

 

 

side奏二

 

「………なんか、あっという間だったね」

「……昨日まで、落ちてたらどうしようとかってビクビクしてたのに、随分なセリフだな」

「それは……アレだよ。喉元過ぎれば熱さを忘れるってやつ」

 

 月あかりに照らされながら、俺は五月についていく形で夜道を散歩していた。

 

 

「学園祭最終日から、数ヶ月は経ってるはずなのに……全然そんな感じしねえよな」

 

 思えば、いつぞやの冬にもこんなことをしていだ記憶があるが……あの時はこんな余韻に浸るような会話をするなんて、誰が予想できただろうか………

 

 

「………で、何か用か?わざわざ抜け出して、世間話をしたいだけじゃないんだろ?」

「もちろん用事はあるよ。

 

……でも、なんかこんなゆったりとした会話も久しぶりだもん。

 

 何だか落ち着くんだ」

 

 

 そんな、どこか実感のこもった返事に、しんみりとした空気が流れるが……まあ、今までバタバタしてたんだし、今日くらいはいいか………

 

 

「でも、そんなに町谷君がしてほしいなら…」

「……今度でいいわ。じゃあな」

「わー、待って待って!話すから帰ろうとしないで!」

 

 と、おもったが五月が調子に乗り始めたので回れ右をすると、慌てて食い下がってきた。

 

 

「冗談だ。ったく、一花じゃねえんだからよ…」

「もう、今日くらいは浮かれさせてよ」

 

 適当なベンチに座った俺の隣に、ジト目を浮かべながら五月が座り。

 

「………でも、今そうしてられるのも町谷君のおかげ。

 

 本当にありがとね」

 

 その表情を穏やかな微笑みへと変えた。

「……いや、俺は大したことはしちゃいないよ」

 

 その微笑みに数瞬引き込まれたが、それで終わっては俺の決意の出しどころが遠のいてしまうので、なんとか持ち直す。

 

 

「むしろ、凄いのはこれからだからな」

「……何をする気なの?」

 

 ベンチから立ち、五月の正面に移りながらの俺の前振りに、少し警戒するように身構えた五月に。

 

 

 

「中野五月さん。

 

 

 俺と、結婚を前提に付き合ってください」

 

 懐から、指輪の入った箱を取り出した。

 

 

 

side五月

 

「…………え⁉︎」

 

 

 町谷君からの、あまりに唐突な言葉に私の頭は真っ白になった。

 

「………冗談とかじゃないよね?」

「こんなところで冗談言うほど、馬鹿だった覚えはないぜ」

 

 夢なんじゃないかって思い、咄嗟に聞くが……帰ってきた恨めしげな視線に、その言葉は現実のもので……嘘や揶揄いじゃない事がはっきりした。

 

 

 いや、付き合うことが嫌なわけじゃない……むしろ、諸手を挙げて歓迎する。

 

 だが……大学合格まで一緒にいてくれたことのお礼も兼ねて、私から交際を申し出ようとしていたのに、まさか先を越されるとは。

 

 

「…‥夢みたい」

 

 でも、私だって女の子だ。

 

 そして、私を「お母さんの代役」じゃない、1人の女の子でいさせてくれた町谷君………好きな人からの告白が、欲しくないわけがなかったし、今こうして彼から差し出された手が………嬉しくないわけが無い。

 

 

「夢じゃない………俺はもう逃げないし、諦めない」

 

 私のことを真剣に考えて……悩んで。

 

 そして……私と一緒にいる決意を、その眼に宿しているのだ。

 

「だから、お前と一緒の未来を歩かせてほしい」

 

 なら、私の答えは………いや、私の答えなんて初めから決まってる。

 

 

 

「………こちらこそ、末永くよろしくね」

 

 頭に思い浮かべるこれから先は、いつもあなたとの二重奏だから。

 




いかがでしたか?

次回は、風太郎のプロポーズ回を書こうかと思います。

他の二次創作にて、素晴らしいプロポーズが飛び交う中で、皆様に満足していただけるがわかりませんが、頑張って書いていくので待っていていただけるとありがたいです。


 それでは、次回もお楽しみに!
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