五等分の花嫁 家庭教師の二重奏   作:暇人の鑑

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第61話にして、5年前の話としてはこの回が最後となります。

とはいえ、あとは書くことといえば風太郎の告白くらいなので、少し短くなっております。


それでは、本編の方にどうぞ。


第61話 風の終着点

 とある昼下がり、3月も残りわずかとなったある日のこと。

 

「1人で行くのは抵抗あったけど、実は行ってみたかったんだよね、本家の二郎らーめん。

 付き合ってくれてありがとう、奏二」

「まあ、女子1人で入るイメージはつかねえわな。

 

……ブレスケアいるか?」

「うん、一粒あるとうれしいかな」

 

 俺と五月は、東京のラーメン屋にいた。

 

 俺があの日に告白して、五月にOKを貰い。

 

「ようやくか」「やっとかい?」「むしろ今まで違かったの?」

 

 このような反応の下で、俺達は晴れて恋人同士になった。

 

 

 ぶっちゃけ、やってる事は今までとあまり変わらないが……それでも、お互いが呼び捨てにしあえるなど、距離の縮まりは確かに生まれている。

 

 で、なんやかんやしているうちに、風太郎は大学受験に余裕で合格し。

 

 卒業式を迎え、進学に向けた準備を進めていく中で……俺達は東京に行く用事ができて、今に至るってわけだな。

 

 その当時はすごく慌ただしかったのに、それをすぎてしまえばどうってことはないものだ。

 

 

……って、誰に向けてかもわからないダイジェストはここまでにしよう。

 

「荷物は既にマンションに運び込まれていて、三玖が先にいるはずだが……なんせ、体力なしコンビだからな。下手したら2人でバタンキューだ」

「んー……四葉も連れてきたほうがよかったかもね」

 

 アパートへの地図を確認する俺に、五月は黒烏龍茶を飲みながら苦笑する。

 

 

 そう、俺たちが頼まれたのは風太郎の引っ越しの手伝い。

 

 この場にいない三玖を含めた3人で、東京にやってきたのだ。

 

 

 因みに、他の姉妹達はいない。

 

「大学の事前ガイダンスだろ?なら無理だぜ……二乃共々来たがってたけどさ」

 

 四葉はこの通りで、二乃は友達との卒業旅行。一花は仕事に行っているのだ。

 

 そこで、三玖の提案の下、風太郎の引っ越しの手伝いに俺たちが駆り出されたわけだな。

 

 と、戦の前の腹拵えにしては若干多すぎた量に、少し苦しさを感じている隣で、全くそんな事なさそうな五月は、軽く伸びをした後。

「……なら、みんなの為にも早く行ってあげないとね」

「そうだな……あいつらだけじゃ、三日くらいかかりそうだ」

 と、なんとものんびりとした会話と共に俺達は風太郎の新たなマンションへの道のりを歩いていくのであった。

 

 

side三玖

 

「……つ、疲れた……もう無理…」

「バテるの早すぎだろ……」

「そう言うフータローこそ……」

 

 フータローと早く会いたくて。

 

 そして、少しでも長く一緒にいたい一心で、ソージや五月よりも先にフータローのマンションにやってきたものの。

 

 

 朝から動きっぱなしな私達の身体は、体力の限界を迎えていた。

 

 

「おかしい……パンケーキ屋さんの時はあんなに頑張れたのに」

「俺だって、実行委員でかなり鍛えられたと思ったのによ………」

 

 

 2人とも、以前よりは格段に体力がついたとは言えど……流石に現実はそう甘くなかったらしい。

 

 

「やっぱ、四葉も連れてくればよかったかも……」

「でも、この後奏二と五月が来るんだろ………」

 荒い息を吐きながら、この後やってくる助っ人達に想いを馳せる。

 

 

 五月もソージも、この現状においてはすごくありがたいけど………

 

 

「ソージに揶揄われるのは間違いないよね…」

「容易に想像つくのが腹立つな……」

 この、あんまり進んでない状況を見て、イキイキと揶揄ってくるんだろう。

 

 そして、五月にたしなめられて、私達の手伝いを………ん?

 

 

「もう動いて平気なの?フータロー」

「………三玖、本気出して奏二達がくる前にほとんど終わらせるぞ。

 

 なんか、このままじゃ負けた気分だ」

 

 

 どうやら、負けず嫌いに火がついてしまったようだが……こう言う、たまに大人気なくムキになるのが、可愛いところで………うん、我ながらベタ惚れである。

 それに、私もこれでも18歳のうら若き乙女。

 

 年寄り呼ばわりも、年寄り扱いもされたくないものだ。

 

 

「うん。頑張ろう、フータロー」

「おう」

 

 そうして、私たちは疲れた体に鞭を打つように、引っ越し作業に情熱を燃やしていった。

 

 

 

side風太郎

 

 奏二に馬鹿にされまいと、頑張って2人が来るまでに殆ど終わらせた俺たちたったが………思わぬ伏兵が潜んでいた。

 

 

「お前、俺達は引っ越しの手伝いに来たんであって、筋肉痛の介護に来たわけじゃねえんだぞ…?」

「あー……でも、俺たちでもやればできるんだぜ?」

「2人とも筋肉痛でダウンしておいて、よくそんなこと言えるよな」

 

 

 呆れ顔の奏二が言うように、無茶しすぎた俺たちは、筋肉痛を引き起こしていた。

 

 因みに今は、廊下に布団を敷いた状態で寝そべり、半ば野戦病院のようである。

 

「もう、2人とも負けず嫌いなんですから……あ、三玖の痛いところはここかな?」

「ああッ⁉︎い……五月!もうちょっと優しく……」

「本当にここだけかな……?」

「そ、それ以上痛くしたら切腹だからね……」

「わかってるよ…………ほら、これでいいでしょ?」

 

 そして、閉められた扉の向こうでは、五月が三玖のどこに湿布を貼ればいいのか、触診して確かめてるようだ。

 

「全く、俺だって自重するさ……お前はもやしの部類なんだから、無理するもんじゃないぜ」

「言ったそばから、できてねえじゃねえか」

 

 結局、コイツに揶揄われる運命が変わらなかったことへの敗北感を覚えながら、早速揶揄ってきやがったことに抗議することしか、今の負傷した俺にはできなかった。

 

 

 side三玖

 

 五月達からの看病の甲斐あって、私たちはなんとか動ける程度には回復したが……本来の予定であった、みんなでご飯を食べに行くのはキャンセルとなり。

 

 ファストフード店で買ってきた物を、4人で突きながら夜遅くまで喋っていたのだが。

 

 

「……どうした?三玖」

 いざ寝ようとした時、なんか寂しくなっちゃって………私はフータローと一緒にベランダにいた。

 

 そう、みんなで話したり、引っ越し作業に集中したりして、考えないようにしていたが………もう逃げ場はない。

 

 

 この夜を過ぎれば、私たちはしばらく直接会うことは叶わなくなってしまうのだ。

 

「明日には、離れ離れになっちゃうと思ったら、つい……フータローは、寂しくないの?」

 

 

 それがなんだかすごく寂しくて……悲しくて。

 

 少しでも一緒にいたいと……もしかしたら、このまま一緒にいられるようになるかもしれないと、形のない希望にすがるようだ。

 

 

「私は、やっぱり寂しい……」

 

 フータローの将来を邪魔したいわけじゃない。

 

 困らせたいわけじゃないし、今生の別れというわけでもない。

 

 

 それでも、この騒がしくも愛おしかった私達の物語のエンドロールを、後腐れなく受け入れるのは、できなかった。

 

 その後の「もしも」を想像してしまって……進むのが怖くなってしまった。

 

 押し込めていたものが溢れた今、その濁流が伝えた胸の痛みに耐えきれず、押さえていた涙が頬を伝ってしまう。

 そんな、子供のような駄々をこねる私に、フータローは少し迷うような素振りを見せて。

 

 

「……顔を上げてくれ、三玖」

 

 どこか、吹っ切れたような声と共に、私の背中に腕を回した。

 

 

side風太郎

 

「確かに、奏二に前田に武田………そしてお前らと過ごしていたあの一年半はすごく楽しかった。

 

 だから、それが終わって……明日には、もうそれを過去の思い出にしなきゃいけないのは、なんか嫌だったんだ」

 

 もうすぐ、俺達はそれぞれの道を歩き出す。

 

 それは当然のことだし、それを拒否することはできない。

 

 

……と、分かっていても。

 

 

 三玖が思い詰めていた事は、俺も思っていたように……やっぱり、あのままでいられたらとも思うことはある。

 

 だが…それでも。

 

「俺は、これからに向けて歩きたい。「このまま」じゃ嫌なんだ」

 

 ずっと「このまま」では、その先に進む事はできないし……俺はその先に行きたい。

 

 そして……三玖にはその隣にいて欲しい。

 

 

「三玖……ちょっと、目を閉じてくれ」

「え?うん……」

 

 とは言え、しばらくは物理的な距離が俺たちの邪魔をしてしまうのは間違いない。

 

 

 他のやつに取られてしまうかもしれないのは、俺より魅力のあるやつだと、三玖が選んだと言うことで、仕方ないかもしれないが……嫌なことには間違いない。

 

 少しでも「俺の彼女だ」と示したいし。

 

 

 何より今、目の前で涙を流す三玖の悲しみを………その不安を……少しでも拭ってやりたい。

 

 

 

 プロポーズするのなら、もっとそれらしい場所や……ふさわしい格好はあるだろうし、そう言うところを見繕ってはいた。

 

 

 だが、今以降に……今以上に、それが必要な場面はないと思う。

 

 

 そんな、どこか使命感に駆られたような俺は、取り出した箱から。

 

 

 

「………フータロー、これってもしかして」

「あの時はごめんな……そして、待たせたな。

 

 

 

 中野三玖さん。俺と、結婚してください」

 

 口を滑らせて、はぐらかしてしまった思いを、三玖の前に差し出した。

 

 

side三玖

 

 

 フータローが、指輪と共に差し出した言葉に、私は驚愕と喜びの感情でいっぱいになった。

 

 

 五月の合格祝いの時に、思わせぶりな事を言っていたのは……まさか、この時のためだったとは。

 

 でも……初めて会った時から、フータローは予想外の方向から、私の世界を広く。

 そして、鮮やかなものにしてくれたのをかんがえると、そこまで不思議なことでもないのかもしれない。

 

 

「フータロー……いいの?私、こんな夢見せたら、戻ってこれないよ」

 

 それでも、ついさっきまで、ネガティブな事しか考えられていなかった姿を見ても……こんな、素敵な物を渡してくれる彼は、実は夢の中の王子様なんじゃないかと疑ってしまう。

 

「夢じゃねえよ……これが証拠だ」

 

 だが、フータローはそんな私に少し不満そうな顔をした後、焦れたように私の唇を奪う………⁉︎

 

 

「ふ、フータロー⁉︎」

「今のお前には、頬をつねるよりもこっちの方がいい目覚ましか?」

「キスで起こしてくる目覚ましなんて前代未聞……!」

 まさか、あのフータローがこんな大胆な事をするとは……!

 

 

 

 でも、確かにこの無茶苦茶感は夢じゃない。

 

 私の過去と、想像では……フータローはこんなやり方で、私の唇は奪わなかった。

 

 

 つまり、これは……紛れもない現実で、私はフータローからプロポーズされたと言う事だ。

 

 

 その事実だけで、天にものぼるような嬉しさだけど……それでも、現実で起こった非現実的な出来事に、私の心はまだ不安を拭いきれず……確かさを欲してしまう。

 

 

 

「本当に、私なんかで「それ以上は言わせねえよ。

 

……前にも言ったろ、俺はお前がいいからこうしてるんだ。

 

 それに、俺相手に遠慮なんかすんな。不安ならしっかり口にしてくれ。

 

 俺はお前の支えでありたい……この先だって、お前と一緒であり続けたいんだ」

 

 

 だが…フータローは、そんな私にお構いなしに私が欲しい言葉を打ち込んでくる。

 

 

「………だから」

「分かった、ちゃんと答える。

 これ以上はなんかおかしくなっちゃうから……!」

 

 さっきまでの悲しみはもう陰もなく、今はもう嬉しすぎておかしくなっちゃいそうなので……ここで、かろうじて正常な私の頭が出した結論を、フータローに伝える事にした。

 

 

 

「決めたよ………これから先のフータローの幸せ、私が責任とってあげる。

 

 

 だから、私のこれからの幸せ………責任、とってよね」

 

 

 これが、みんなとのストーリーのエピローグであり。

 

 私達だけのストーリーのプロローグとなるのだから。

 

 

 




いかがでしたか?

 ちょっとグダってしまったかもしれませんが、私にはこれが限界でした。

 そして、次回は原作で言う121話「1/5の確率」あたりの話となります。

 まあ、各章の始まりでの奏二と五月のやりとりに肉付けしていく感じとなりますな。

 それでは、次回もまた。
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