しばらく職場環境の激変で、書くほどの気力が湧きませんでしたが、ようやく落ち着いたものでして……。
そんなこんなでお久しぶりですが、楽しんでいただければ幸いです。
ある時、私たち姉妹をバラに例えた人がいた。
それは、容姿を讃えてのことなんだろうが……内面的なコメントとしても、言い得て妙である。
一花は黄色、二乃はピンク……四葉は緑で、五月は赤。
それぞれの花言葉は……….
黄色……「献身」「友情」「嫉妬」
ピンク……「上品」「感銘」
緑……「穏やか」
赤……「愛情」「美」「情熱」
こんな感じで、大体みんなのイメージにピッタリだ。
……ちょっと疑わしいものもあるが、あくまで大体だ。
そして、みんなにそれぞれの色が振り分けられているように……私にもある。
それは青いバラで………花言葉は「不可能」。
それを調べて知った時、自嘲気味に笑うしかなかった。
これ以上なくピッタリな花言葉である。
私程度にできることは、他の四人もできるに決まってる。
5人の中じゃ、私が1番の落ちこぼれなんだから。
そんな、諦めの中で生きてきた私に、貴方は手を差し伸べてくれた。
「新郎上杉風太郎。
あなたはここにいる中野三玖を、
病める時も、健やかなる時も。
富める時も、貧しき時も。
妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「誓います」
そして、私に「奇跡」を見せてくれた。
少し前の話。
「ん……どうした?」
フータローとショッピングに出かけた私の目に、花屋の店先に並んだいくつものバラが映る。
その中にあった青いバラに、その例え話を思い出して。
「……ちょっと、昔を思い出して。なんか、今でもこうしてフータローと付き合ってるのが夢みたいだなって…」
半ば厄落としのようにその事を話した私に、フータローはため息をつき。
「夢にされてたまるかよ。
そもそも、青い薔薇の花言葉が「不可能」なのは間違いないが、それだけじゃない。
「夢が叶う」「奇跡」「神の祝福」って言葉もあるらしいぞ」
そう、一本を手に取りながら、教えてくれたことがあった。
「新婦中野三玖。
あなたはここにいる上杉風太郎を、
病める時も、健やかなる時も。
富める時も、貧しき時も。
夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
1本のバラの花言葉は、「あなたしかいない」。
私のドレスにあしらわれたバラは99本。
私は、"ずっとあなたが好きでした"。
これからの人生……死が二人を分かつまで、"永遠"に。
"ずっと、一緒にいてください"。
「はい、誓います」
"100%の愛"を込めて、私は誓うのであった。
今までも、これからも……私はフータローが大好きだから。
side五月
三玖と上杉君の挙式は、上杉君が指輪を忘れると言うとんでもないやらかしをした以外は、大体トラブルなく終わり。
私達は、返ってきた三玖と共に披露宴に向けて、ある準備を進めていた。
因みに私達はその準備のために挙式には出席しなかったので、挙式の様子は奏二が中継してくれたのものを見ていたのである。
「にしても、ソージ君ってあんな落ち着いた雰囲気出せるんだねー」
「そうね。普段は小生意気ばっかだもの」
「それは二乃も同じでしょ」
「一緒にすんじゃないわよ!」
「まあまあ二乃、落ち着いて?お化粧が乱れちゃうよ」
「まあ、仕事には真面目だからね奏二は……普段はおバカだけど」
そんなこんなで、挙式への感想を語り合いながら、三玖を除く4人はその身を三玖がきていたドレスと同じものに包んでいた。
それは……私たち姉妹からの上杉君への最後の試練のためである。
でも……いくら作戦とは言えど、自分の結婚式よりも前にこの姿を、知り合いとは言え奏二ではない人に見せるのは正直思うところはある。
でも……「愛があれば見分けられる」と育てられてきた私達にとっては、今からやる最後の五つ子ゲームこそが、上杉君が三玖に向けている愛が、言葉だけのものじゃないことの証明なのだ。
「上杉君……信じてますからね」
私は、ここにいない彼に静かに祈った。
side風太郎
「挙式はなんとかなったな……
あとは、新婦のお色直しが終わってから披露宴だ。
それまで休めるだけ休んどけよ」
「おう…もしまた寝てたら起こしてくれ」
「そこまでガッツリ休むんじゃねえよ⁉︎」
挙式が終わった俺は、新郎の控室に戻っていた。
とりあえず、これで前半戦は終わったと言う事だが……式前のハプニングもあってか、実際以上に疲れているような感じだ。
若干の本音混じりのジョークに、呆れたような顔を見せた奏二は、披露宴の為に着替えてくると残して、部屋を出ようとしたところで。
「そういや、式場に三玖以外の4人がいなかったよな。何か知らねえか?」
やけに数が少なかった新婦の家族席を思い出した。
そう、挙式の時になぜかあの4人がいなかったのである。
姉妹のおめでたい日なら、アイツらのことだし揃って参加すると思っていたので、不思議だったのだ。
そんな俺に対して、奏二は少し言いにくそうにした後。
「新婦の準備ができたら、すぐにわかるさ」
と、はぐらかすような言葉を残した。
「なんだそりゃ…?」
意味が分からず、掘り下げるためにさらに問いかけようとした時。
「新婦様のご親族がお見えになりました」
式場のスタッフが、アイツらがきた事を教えてくれた。
「おかしいな、まだあいつらの準備はできてないはずなんだが……」
「多分連絡し忘れたんだろ……」
それに怪訝な顔をする奏二に返しながら、その来訪者に………
「よかった!来てないかと思ったぞ……なんで式に参加してくれなかったんだ?」
「お、おい!ちょっと待て「すまないね。来るべきか否か、直前まで思案していたんだ」
声を掛けたところで帰ってきた返事に、不意打ち気味に背筋が凍った。
………この声はまさか。
俺は、慌てて後ろを振り向くと。
「お、おおお、お父さん⁉︎」
「君にお父さんと呼ばれる資格はない」
あいつらの親父さんが、なぜかこの場にいた。
sideマルオ
「お越しくださってありがとうございます!
てっきり僕とは会ってくれないものかと……」
先程の不躾とも言えるような言葉から一転、明らかな動揺を顔にしながら話す上杉君だが。
「昔は若さゆえの数々のご無礼を……」
僕の目的はそんなおべんちゃらを聞くことでも、彼をいびる事でも無いのだから、いい加減慣れてくれてもいいのにとは思う。
……半分自分のせいなのかもしれないが。
まあ、それは兎も角僕が本当に聞きたいのは……
「三玖は、心から喜んでいるかい?」
自分の娘が、幸せかどうかだ。
だが、どうやら……
「はい。僕も同じく」
その心配は徒労なようだった。
「………ワインを頂こう」
side風太郎
それは、もう10年以上の前の事だったが……今も鮮明に覚えている。
自分の店を開いて……涙ながらに喜んでた母さんが、事故で居なくなり、形見と言わんばかりにウチには多額の借金が残された。
正直、残った空き店舗を売ってしまえば……今も続く貧乏生活はもう過去のものになってただろうに、親父はそれをしなかった。
ガキの頃は、馬鹿だと思うこともあったが……心に決めた相手がいる今なら、親父の気持ちが少しは分かったような気がする。
二乃と三玖に、あの空き店舗を貸したのは……叶わなかった母さんの夢を、託したかったんだろう。
他人に託してまで、母さんの夢を叶えたかったのは………
「1人の女性を、一生かけて愛する……俺は、そんな男になりたいんです。
2人の父のように」
ひとえに母さんへの愛ゆえなんだと。
目の前にいる………アイツらの母親を愛しぬいたこの人と同じように。
sideマルオ
「よしてくれ」
正直、僕の風太郎くんへの印象は昔の頃から変わらない。
彼にはことごとく邪魔をされてばかりで。
彼と関わる度に、僕の予定は狂わされる。
まったく、困ったものだ。
「あっ、すみません…」
「慣れていないんだ。
父と呼ばれることにはね」
こうして、「娘を持つ父」と扱われるのには、慣れていないのだから。
そんな気恥ずかしいような感覚を、酒の酔いで誤魔化すようにしていると、どうやら三玖から呼ばれているようだ。
「あの……えっと……」
だと言うのに……何かを躊躇っている様子だ。
花嫁が呼んでいるのに、ここで僕と会話し続ける理由はないだろう。
だが、丁度いい。
「行きたまえ…」
義理とは言え、子供達の背中を押す機会が与えられたのだから……。
side奏二
親同士の会話の中、こんな言葉が聞こえてきた。
"一筋縄ではいかないことは確かだ"
義理とは言え子供の考える事には、何となく予想がつくのが親ってやつなのかは知らないが……その言葉は間違いなく当たってる。
普通なら、こんな試し行為みたいな真似はしない。
改めて、今から起こりうることに思いを馳せていると、後ろを歩く風太郎が不思議そうに。
「そう言えば、アイツら結婚式の時にいなかったよな。
何か知らねえか?」
「さあな。バカの発想は突飛なもんさ」
「どう言う意味だ」
「始まってからのお楽しみだ」
「……何が起こるんだ?」
適当にはぐらかしながら、しばらく歩いてると……花嫁の部屋の扉の前までやって来て。
その扉を開けた先には………いくつもの時代の節目があった。
「………は?」
「五つ子ゲームファイナルだよ。愛があれば、見分けられるよね」
いかがでしたかね?
次回からいよいよ最終回秒読みとなりますので、最後までお付き合いいただけると幸いです。