五等分の花嫁 家庭教師の二重奏   作:暇人の鑑

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第9話です。

今回と次回で林間学校編は終わりですので、最後までお楽しみください。

奏ニの秘密
泊まった旅館のゲーセンにあったレトロゲームができなかったことが心残り。


第9話 五月を探せ!

「おい、そりゃまずいぜ……確かあの近くには崖があった筈だ」

「脅かし役は私が引き受けますので、探してきてください!」

「ありがとな四葉……行くぞ、奏ニ」

「おうさ!」

 

 

 風太郎と俺は、四葉に後のことを任せてあの2人を探しに向かっていた。

 

 ちなみに格好はお面こそ外したが、ローブと鎌はそのままだ。

 

 ローブは脱ぐと少し寒いし、鎌はおもちゃといえども振り回せば立派な鈍器だ。

 

 もし獣と会った時に少しは役に立つだろう。

 

 

「オラオラ!死神サマのお通りだぁ!」

 

 俺はひょっとしたらこの声で気づくかもしれないと、そんな台詞を宣いながら森の中を進むのであった。

 

 

 

 

「わあああああ……ニ乃ぉ……どこいったんですかぁ……」

 

 ニ乃と逸れ、ここがどこかもわからず途方に暮れている私は、ニ乃が見つけてくれる事を頼りに泣きながら呼び続けていた。

 

 

……もし町谷君が今の私を見たら、ここぞと言わんばかりに揶揄ってくるんだろうが、怖いものは怖いんだから仕方がない。

 

 なんせこの森は本当に出たのだから。

 

 先に行っていた一花と三玖は大丈夫だろうか?

 

 ただの肝試しのはずがなんでこんな事に……

 参加するんじゃなかったと、今更ながらに後悔している。

 

 

「ニ乃ぉ……四葉ぁ……一花ぁ……三玖ぅ………」

 

 だめだ。怖すぎて心配してる人にまで助けを求めてしまう。

 

 もし今あのお化け達に出会ったら………と、考えてしまいさらに震え上がっていると。

 

 

「オラオラ!死神サマのお通りだぁ‼︎」

 悪い予感とは当たるもので、最初に会った方のお化けが、次の獲物を探しに来ていた!

 

 茂みに隠れてやり過ごそうと、しゃがみ込みながら様子を見ていると黒いローブ姿のお化けは、血が滴る鎌を両手に抱えて辺りを見渡し。

 

「この辺に誰かいるな……それに、何かの香水みたいな匂いがする」

 

 暗がりの中で足跡でも見つけたのか、なんとこちらに近づいてきていた。

 

 

 そして。私の方に視線を合わせ。

「……茂みの中にアホ毛が一本…見つけたぜ!」

 

 

 見つかった事を宣告された私は、もう遠くに逃げるしかないと、駆け出した。

 

「私なんて食べても美味しくないですよぉおお‼︎」

 

 

 

 

 

 

「私なんて食べても美味しくないですよぉおお‼︎」

「ちよ、アイツ!なんで逃げるんだよ⁉︎」

 

 

 茂みの中に特徴的なアホ毛が跳ねていたので、やっと見つけたと思ったら。

 五月のやつはなんと悲鳴と共に逃げてしまったので、俺はその後を追いかけていた。

 

 

 アイツはどうやら、俺のこの姿を本当のお化けと勘違いしてるようだ。

 

……確かに、絵面的には遭難者を追いかける亡霊だが。

 

 

 でもよく考えたら、危険な野生動物がいる場所で肝試しなんて教師陣が許さないだろうし、探してるのに目立たない色の格好をしても意味はないから、ローブと鎌はいらないよな。

 

 現に、それらがなければ俺だとわかるだろうし。

 

 自らのしくじりを軽く反省しながら足跡のする方へ向かうと、崖の方へと逃げていたらしく、五月は狼に追い詰められた仔羊といった感じで後ずさっていた。

 

「こ、殺さないで……!私はまだやることが……」

「だめだ、恐怖でパニックになってやがる……だから、俺だって」

  

 後ろが崖だと気づいてないのか、あるいは悪あがきのつもりなのか、少しずつ後ろに下がっていた五月に、ネタバラシをしようとした時だった。

 

 

「……え?」

「やべぇ…‼︎」

 

 下がりすぎたのかバランスを崩し、後ろ足を踏み外してそのまま崖の下に落ちそうになったので、俺はダッシュで前進。

 

「あーらよっと‼︎」

「きゃあ⁉︎」

 

 五月の腰に向かって横薙ぎに鎌を振るい、当たる直前に思いっきり前へと引く。

 要は鎌の内側に五月を引っ掛けて、こちらに引き寄せ……だめ押しで腕を掴んで俺の方へ引っ張った。

 

 

だが、そうなると引っ張られて加速づいた五月の体が俺に迫り。

 

「へぶぅ⁉︎」

「ま、町谷君⁉︎」

 俺は、五月にプレスされるように倒れ込んだ。

 

 

 

 

「………助かった、のですね」

 

 しばらく放心状態にあった私は、ようやく声を出すことができた。

 

 しかし……あのお化けが町谷君の仮装だったとは。

 

 助けてくれたことには感謝するが、普通の格好で来てくれればここまで怖い思いはしなかったのを考えると、少し恨めしく思う。

 

 

 だが、とりあえずお礼は言おうと思ったが……彼の顔が目の前になかった。

「あれ?町谷君は……」

 周りを見渡すと、彼らしき腕は動いているのでいることは間違いない………あれ、なんだか、胸の辺りがモゴモゴしている。

 

 そして、腕がこの位置にあると言うことは………⁉︎

 

 まさかと思った私はゆっくりと起き上がると。

 

「お前、殺す気かよ……!」

 丁度胸のあたりに、ようやく息が出来たと言わんばかりの表情の町谷君の顔がそこにあった。

 つまり、彼は私の胸に顔を埋めていたと言うことで………!

 

「へ、変態‼︎」

 恥ずかしさの頂点に達した私は、助けてもらったことも忘れて、彼の右頬に平手打ちをした。

 

 

 

「いってえ……本気でぶちやがって。親父にもぶたれたことないのによ」

「あんな怖い思いをさせた挙句、私の胸に顔を埋めたことをあれ一発で済ませてもらっただけ、感謝して欲しいものですがね……でも、助けてくれた事には感謝してますよ」

 

 打たれた頬をさすりながら、恨みごとをつぶやく俺に、怒りと恥ずかしさから頬をむくれさせた五月が、そっぽをむきながら答えていた。

 

 たしかに前者に関してはぐうの音も出ないが、後者に関しては事故のようなものだ。

 大体全ての原因は、五月とニ乃が恐怖のあまりコース外のところに行った事にあるのだが………まあ、これ以上言い訳をして機嫌を損ねられても面倒だし、いい思いができたのは間違い無いので、何も言わないでおこう。

 

 

「前にいた一花や三玖は、よくあんな怖いので驚きませんでしたね」

「まあ、あの二人にはマネキン置いておいただけだったしな。お前達にやったのは特別仕様さ………おい、脇腹をつねるな!お前ほど肉はないが服が!」

「この男、言うに事欠いて……!」

 

 平気なやつに挑むよりも、怖がりを脅かした方がこっちとしても楽なのでそれを行使したまでだが……どうやら五月にはご不満だったようだ。

 

「悪かったって……全く、暴力的なお嬢だぜ」

「あなたが立て続けにやらかすからでしょう⁉︎」

 

 気にしてるなら食事量を控えるなりして痩せればいいと思うのだが。

……まあ、こいつに食うなというのは死刑宣告みたいなもんか。

 

「で、それよりニ乃はどこ行ったんだ?」

「………さらっと流さないでほしいのですが」

「今はそっちが優先さ」

「……すみません、わかりません」

「なら、風太郎に任せるしかないか……それでもダメなら教師陣に話して協力を仰ぐか」

「それしかありませんね……って、上杉君も探してるのですか?」

「ああ。レシーバーに呼びかけても反応がないけどな……」

 流石にアイツは無茶しないと思うが、少し心配になっていると。

 

 

 

「五月!………何でアンタまでいるのよ。それに、その頬……」

「何も聞いてくれるな……てか、迷子だった割には機嫌良さそうじゃんか」

 ニ乃がこちらにやってきたので片手をあげるが……ニ乃がやけに機嫌が良さそうだった。

 

 不思議に思って聞いてみると。

「迷子じゃないわよ?私は……」

 と、後ろを向くがそこには誰もいない。

 

「に、ニ乃?まさかそこに幽霊が……」

「おい、今は冗談やってる時じゃ…」

 

 五月の顔が曇り、俺が呆れたように言うとニ乃は心外だと言わんばかりに。

「嘘じゃないわよ!さっきまでそこにいたのよ……金太郎君が!」

 

 まるで、恋する乙女のように変な事を言い出した。

「金太郎って……あの、まさかりかついだ?」

 

 俺と五月が顔を見合わせている間に、ニ乃は雄弁に語り出す。

「あんたと違って金髪のイケメンだったの。ちょっとワイルドな感じが……すごく好みだったわ。それで……その人と踊る約束もしちゃったの!」

「……そっちではなさそうですね」

「これはもう放っておこうぜ……それより風太郎は」

 

 どこにいるのかを聞こうとした時、レシーバーから風太郎の声で戻ったと連絡があったので、俺達は宿へと戻る事にした。

 

 

 

 宿に戻った俺は、五月やニ乃と別れて相部屋の野郎どもと寝るまでゲーム大会を行い。

 

 

 レシーバーを返してもらってない事を思い出したので翌日に風太郎の部屋を訪ねたのだが。

 

「おー…奏ニか」

「レシーバーを返してもらいにきたが……お前大丈夫か?なんか顔色悪いぜ」

 

 なんだが、風太郎の顔色が悪そうだった。

「昨日色々あってな……ちょっとダルいだけだ」

「お前、らいはちゃんから風邪貰ってるんじゃないのか?それなら無理しないで寝ろよ……担任には俺から言っておいてやるから」

 

 そうしてレシーバーも返してもらったので部屋から出ようとすると。

「おう……悪いな奏ニ。それならついでに一花の様子を見てきてくれないか?

 

 アイツもひょっとしたら体調崩してるかもしれないから…」

「人のことはいいから自分の体にも気を遣え……兎に角無理すんなよ」

 

妙な気遣いをする不調者に布団を被せ、俺は一花の元へ向かう事にした。

 

 

 

 一花の元へ向かおうとしたが、この林間学校においては異性の部屋に行くことは禁止されている。

 

 そうなると潜入しかないのだが……よく考えればアイツの電話番号を持っていた事に気づき、電話で様子を聞いてみる事にした。

 

 

「てな訳で、調子はどうだい?」

「うーん……あんまり良くないかな。今五月ちゃんに看病してもらってるところ」

 咳き込みながら一花が答え、五月が何かを言っているのが聞こえる。

「風太郎から聞いたけど、二人とも閉じ込められたんだって?……多分、風太郎に風邪移されたんじゃないか?」

 

 すると、一花は電話越しで苦笑いしながら。

「いや、寒い中で濡れちゃったから、そのせいで体冷えたのかも…」

「何やってるんだお前らは……まあ、アイツがいるなら大丈夫か」

「いい妹に恵まれて、お姉さん嬉しいよ……じゃあ、フータロー君によろしく」

「ああ。せいぜい大事にな」

 

 そうして電話が切れたので、俺はスキーをするための格好に着替えて風太郎へ報告しに行くが……。

 

 

「………上杉なら、ウサギの耳みたいなリボンをした子と外へ出て行ったぞ」

 

 四葉によって外に連れ出されたらしく、部屋はもぬけのからだった。

 

 

 

「町谷君はなんて?」

「フータロー君に頼まれて、調子はどうか聞きたかったみたいだね。

あと、私のことは五月ちゃんがいるなら大丈夫だってさ。

……信頼されてるんだね。五月ちゃん」

 

 体調を崩した一花を看病していたら、町谷君から一花に電話がかかってきたので、通話が終わった後に内容を聞いてみると、一花は安心したような目を向けてきた。

 

 確かに、姉妹以外の人に信頼される経験はあまりなかったが、姉妹とはいえ病人にそんな目を向けられるのもなんだか複雑な気分である。

 

「適材適所とでも言う気なんでしょうね」

「アハハ……確かに言いそう」

 確かに町谷君は頼りになるところがあるのは認めるし、そんな彼に頼りにされている事へ悪い気はしないのだが……それでも、信じ切ることはできない。

 

 

 どうしても、私達を身籠ったお母さんを見捨ていったあの人のことがちらついてしまうのだ。

 

「にしても、こんな時に体調崩すなんてついてないなー」

「事故とはいえ、不注意が招いた結果です。

 

 反省して、日中は大人しくしていてください」

「え〜〜」

 

 横になりながらぼやく姉に諭すように言うと、苦笑いしながら。

 

「あー……五月ちゃんは私に付き合わなくていいから、スキーしてきな?」

「ですが……それで体調が悪化したら町谷君を裏切る事に…」

「大丈夫。私も回復したら合流するし、ソージ君には私から言っておくから……それとも、フータロー君と顔合わせづらい?」

 

 その言葉に、私は昨日のことを思い出す。

 

 キャンプファイヤーの準備をしていた一花と上杉君は、薪を入れていた蔵の中に閉じ込められてしまい、私と三玖が鍵を開けた時に……濡れた状態で覆い被さっていたのだ。

 

 

 黙り込んだ私を見て何を思ったのか、一花が。

「あの旅館から、ずっと警戒してたもんね」

 色々ありすぎて忘れていた、旅館の事を話題に出した。

 

 私が振ったわけでもないのに、口に出すと言うことは……

「……あれは一花でしたか。

 

 あの日、食堂で勉強を教えてもらおうとした時には思いもしませんでした。

 

 まだ3ヶ月なのに、こんな事になるなんて……」

 

 考えてみれば、この3ヶ月は激動と呼んで差し支えないもので。

 

 2人の家庭教師がやってきて、私達の生活はガラリと変わっていったのだ。

「そんなに、フータロー君やソージ君は悪い奴に見えるかな?」

「そ、そう言うわけでは………」

 苦笑を崩さない一花の言葉を否定する。

 

 彼らは決して悪い人ではないことはわかった。

……片方はデリカシーがないし、もう片方は軽口ばかりだが。

 

ただ……

「でも、男女の仲となれば話は別です。

 

 私は、彼らのことを何も知らなすぎる…」

 

 私は、そんな表面的なものしか知らない。

 その奥にあるものが分からないと、本当の意味で彼らを信用することができないのだ。

 

 例えば……上杉君があそこまで勉強をする理由。

 

 「そんなに長生きするつもりもない」と、まだ夢や希望に溢れている筈である十代半ばの町谷君から出たあの言葉の意味。

 

 

 ある程度の関係が出来てきた今だからこそ、それを知らなればいけない。

「男の人は……もっと、見極めて選ばないといけません」

 

 お母さんも言っていたあの言葉を繰り返す私に、一花は少しの沈黙を経て。

 

「五月ちゃんは、まだ追ってるんだね」

 

 

「でも………大丈夫。

 

 フータロー君やソージ君は、お父さんとは違うよ」

 

 どこか、安心させるように呟いた。

 

 

 

 

「くっそ……四葉と風太郎は何処にいやがる?」

 

 スキー場に2人を探しにいった俺は、焦りを覚えながらもリフトから降りた。

 

 風邪の予兆がなかった一花がああなると言うことは、風太郎も同じようになる確率はそれよりも高く。

 

 また、らいはちゃんから風邪をうつされてたとしたら、もっとひどいものになるだろう。

 

 風邪はそれだけなら大した事はないが……肺炎やらインフルに発展させると洒落にならないし、人は案外そう言ったもので簡単に死ぬ。

 

 俺がいた孤児院でもそのケースで死んだガキがいたしな。

 そいつみたいに避けようがないもので死んだ命を悔やんでも意味はないが……。

 

 死神の俺でも、いま生きてる命が防げた原因で消えるかもしれないのを黙って見ているつもりはない。

 

 

 そんな訳で、上級コースに行った俺が下へ滑りながら探そうとすると。

 

「町谷、アンタも上級コースに来たの?」

 後ろから声をかけられた俺が振り返ると、ニ乃の声をしたニ乃らしき奴がいた。

 

「ああ。それじゃあ」

「待ちなさい」

 正直構っていられないのでそのまま進もうとすると、前に立ちはだかった。

 

「なんだよ。こちとら急いでるんだから手短に頼むぜ」

「滑りたくて仕方ないんでしょ?大丈夫、大した用件じゃないけど…」

 

 ニヤニヤとしてお門違いな事を言い出したが、それに口答えしたら話が長くなりそうなのでそのまま待つと、

 

「キンタロー君がいたら私が探している事を伝えて欲しいの……」

「フータロー君を探してくれるなら考えてもいいぜ!」

「あ、ちょっと⁉︎」

 

 また例のキンタロー君の話題だったので、俺は風太郎を探して欲しいことだけを告げて、ニ乃を避けながら発進した。

 

 

「上級コースにはいないか……リフトを見てもそれらしき奴はいなかったし」

 上級コースとビギナーコースの境目あたりまで滑り終えた俺は周りを見渡して探索を続けていた。

 

 四葉がいるなら上級コースにいてもおかしくないと思ったのだが、どうやらビギナーコースにいる様だ。

 

 それか、すぐ近くの食堂で休んでいるのかもしれない。

 

 または三玖あたりを見つけて協力を仰ぐのも案としてはアリだ。

 

 それならとスキー板を外し、食堂へと向かうと。

 

「町谷さんも見つけたー!」

 

 その声の方を見ると、四葉に三玖、そして風太郎が食堂の入り口のところに立っていた。

 

「風太郎、お前何やってるんだよ⁉︎病人は大人しくしてろ!」

「わ、悪い……押し切られた」

「やっぱり……顔色が悪いよ」

 俺が食ってかかると、いつもより覇気のない声で答えた風太郎に三玖が寄り添っていた。

 

「え、本当に具合が悪かったんですか……?」

 四葉に視線を向けると、なんとも頭が痛くなる様な反応を見せていた。

 恐らく、風太郎の様子を見ずに連れ出したんだろうな……。

 

 まあ、シュンとしてるあたり反省はしてる様だからこれ以上は言わないが。

 

 

 と、ここで風太郎が荒い息を吐きながら。

 

「奏ニ……お前、五月を見てないか?」

 突然そんな事を言い出した。

 

「え?五月は一花の看病をしてるんじゃ…」

「一花が送り出したらしいんだが……その様子だと知らないみたいだな」

 食堂にいないのかと聞くが、それでも首を振られたので俺は本格的にお手上げとなっていると。

 

「おーい、こっちこっち!」

「全く……私も人探ししてるのに…」

 

 四葉がいつの間にかニ乃を見つけていたらしく、こっちに戻ってきた。

 

 そして、その隣にいるのは……

 

「一花、休んでてって言ったのに」

「ごめーん、四葉に捕まっちゃって」

「全く……ほら、フータローと一緒にコテージに戻るよ」

 

 三玖曰く一花らしい。

 この病人どもはいったい何をやっているんだと説教してやりたい…ん?

 

「アンタ、さっきはよくも適当な返事してくれたわね……」

「げげっ、ニ乃……仕方ないだろ、こっちは急いでたんだから。あと、例のキンタロー君はいなかったぞ」

「……そう、探してくれてたならいいわ」

 えらくあっさりと引いたニ乃にちょっと薄気味悪さを覚えていると、風太郎が四葉に五月のことについて聞いたが、四葉も知らないらしい。

 

 そうなると……まさか。

「おい、これって……ヤバくね?」

「ああ……事態は、思ったよりも深刻かもしれない」

「………話、聞かせなさいよ」

 俺の振りに頷いた風太郎が、重々しい口調で4人に話し始めた。

 

 

「遭難?」

「ああ……広いゲレンデとは言え、6人がこれだけ動き回って会わないのは不自然だ」

「そうだね……五月はスキーに行くって言ってたんだよね」

「え……うん」

 三玖が一花に話を振ると、頷いてこそいるが……なんか妙に歯切れが悪い。

 いや、体調が悪くて呂律が回らないのかも……。

「もしかしたら上級コースにいるんじゃない?」

「そこは私も行ったけどいなかったわ……多分、町谷も見てないはずよ」

「ああ。……そもそも、俺は五月がコテージにいると思ってたから知るよしもないぜ」

 いや……しっかりと話をしている。

 風太郎もしっかり話せているから、呂律はあまり気にしなくていいか。

 

「ちょうど入れ違ったのかも。私、見てくるよ」

 

 そう言って離れようとする一花に四葉がまだ見てないと言うルートを指さした。

 

 

 そこは………

「たしか、整備されてないとかで立ち入り禁止のルートだろ?禁止線が貼ってあるはずだ」

 

 上級コースの初めで分かれ道から狭い方を進んでいくルートだが、そこは立ち入り禁止のテープが貼ってあるからいるとは思えないが……万が一ということがある。

 

「人探しで一応ドローン持ってきたが……まずは先公に話つけよう」

「なら、私が言ってくるよ!」

「それなら、私は本当にコテージにいないか見に行く」

 

 俺、四葉、三玖がそれぞれ案を出して行動しようとすると、何故か一花が待ったをかけた。

 

「どうしたのよ、一花」

「えっと……五月ちゃんもあんまり大事にしたくないんじゃないかなーって」

「……子供のかくれんぼとはスケールが違うぜ」

「そうよ!五月の命がかかってんのに、気楽になんていられないわ!」

 

 強まった違和感と共に口調を強めた俺と、ふざけるなと言わんばかりのニ乃に、一花……?は謝るだけだった。

 

「フータロー、もう休んだほうがいいよ……聞いてる?」

 いよいよ三玖の声に反応できないほどヤバくなってきている風太郎を前に、さっさと指示を出しちまおうと考えをまとめ始めていた時。

 

「……待ってくれ。俺に心当たりがある」

 

 と、風太郎が何かを思い出したかの様に呟いた。

 

 

 

「………流石に、立ち入り禁止のルートを滑るほどアイツはバカじゃないか」

 ドローンを操作して、立ち入り禁止のルートを上空から偵察してみたが、やはりそのルートには人の気配がなかった。

 

 

 しかし……やはりおかしい。あの一花は何処か違和感がある。

 

 普段なら、もっと必死になって五月を探そうとするはずなのに、なぜかアイツは五月の存在を隠そうとしていた。

 

 まるで、そこまで考えてなかったというように。

 

 

 だがもし、あれが……

 

 考えれば考えるほど感じる違和感が、疑念を確信に変えようとしていた時、三玖からメールが。

 

「一花がコテージにいた?そうなるとやっぱりアレは五月か」

 

 どうやら、俺の勘はあたりのようだ。

 

 自分の目の前で自分がいないと大騒ぎになるなんて、茶番もいいところだしな。

 

 でも、そうなると分からないことがまだ出てくる。

 

 何故五月は一花のフリを……ん?

 

「着信……五月か!」

 ケータイの着信を見ると、今度は件の五月様だ。

「全く、今回はアイツのせいで色々気を遣わされたからな……」

 文句の一つでも言ってやろうと電話に出ると。

「俺だ。お前一体「町谷君、何処にいますか⁉︎上杉君が……上杉君が……‼︎」

 

 ただごとじゃない事を知らせる、五月の涙声が響いてきた。

「……リフト降り場にいろ。すぐに行く‼︎」

 

 

 




今回は五月探索回でしたね。

五月は決してコミカルなキャラではないのに、結果的にコミカルになっているところが多いので面白いなと思います。

次回は林間学校編の終わりになります。
ここから原作では姉妹たちの風太郎への印象が結構変わっていきますが、果たして今作でそれをうまく書けるのか……

頑張りますのでお付き合いください。

 それでは、感想と評価の方をお待ちしています!
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