はい。短編書いて満足してたらですね。思ったより時間が経っていました。すみません。
今回は下水道といえばアイツを出しました。
一党で下水道に着き、依頼内容である巨大鼠と巨大蟲を探していると私は違和感を感じた。
「ふむ。貴公ら、ここまで来る間に何か違和感を感じなかったか?」
「ああ、確かにそうだな。なんていうか、変だよな。理由は分からんが。」
「そう、ですね。・・・あ!静かすぎると思います。」
その答えに私と騎士が納得する。この下水道に着いてから巨大鼠や巨大蟲の鳴き声どころか足音すら聞いていない。
これは異常だ。
「貴公ら、周りを警戒しろ。何か、妙だ。」
静かすぎるという女神官の指摘を聞いた時に私の経験から何が原因かを考える。
音が聞こえ無いという事はここから離れた?いや、違う。何か見落としているものがある筈だ。
考えろ。何故ここにいない?巨大鼠、巨大蟲がいない、理由。
ふと視線を床に落とした時に見落としていた事に気がついた。
床だ。床が綺麗なのだ。つまり奴らが食事も、排泄もしていない事になる。だが、それはありえない。奴らは生き物だ。ならば答えはこうなる。
巨大鼠と巨大蟲は消えた。
「騎士、正面の道を警戒してくれ。神官は私と騎士の間に入り詠唱を出来るように準備を。」
二人は私の指示に頷き行動を開始する。その間に私は気づいた事を話す。
「恐らくだが、巨大鼠と巨大蟲は消えている。この下水道に何か異常事態が起きていると見るべきだ。私は原因を探した方が良いと考える。」
「分かった。俺は賛成だ。」
「私も賛成です。」
「では、このまま隊列を維持しつつ原因を探すぞ。」
辺りを警戒しつつ原因を探す。
彼の地ではあまり無かった事だ。あそこでは兎に角殺す事が重要だった。どうすれば効果的にダメージを与え、殺せるか。どうやって目の前の敵を殺し、糧にするか。ほとんどの行動に殺しがついてくる。
だが、今は違う。こうしてお互いの身を案じ、協力し合い、目的を果たそうと励む。
どこか、懐かしい。
そう思いを馳せていると、不自然な音が聞こえる。
グチャグチャと、ズルズルと。何か、這いずる様な音。その音に、
覚えがあった。
「下がれ!」
私の声に驚きつつも即座に動いていた二人は確実に前と比べ成長しているのだろう。その動きはどこか体に染みついているかのように見えた。
そして、遅れて聞こえるべちゃりという音。
「やはり、貴様か。」
そこにいたのは動く腐肉。ここではスライムと言われるもの。確かに私の知っているヤツとは違う見た目をしている。旅路の中で見た腐肉の寄せ集めではなく、少し透明な粘性の塊。しかし同じ点はある。それは未だ消化しきっていない巨大鼠と思しき肉片。
やはりこういったモノ達はどこも同じ方法で来るらしい。死角から現れ取り込む。末路は言わずとも分かる。
「まずいな、俺の武器じゃ相性が悪いぞ。」
その騎士の言葉を聞き、懐からアイテムを渡す。
「これを使うといい。そう長くは持たないが火のエンチャントが出来る。神官は松明を頼む。」
「松明ですね。分かりました。」
「助かる。相変わらずアンタのポーチは何でも入ってるな。」
「流石に何でもは入っていないが、気をつけろ。まだ潜んでいるはずだ。出来る限り死角を無くせ。」
武器を持ち替える。炎派生のロスリックの直剣と栄誉の大楯、指輪を緑花の指輪に替える。
突きを主体に戦えるロスリックの直剣はこういった閉所でも使いやすい。そして栄誉の大楯はスタミナの回復が遅くなるが、デーモンやドラゴンの攻撃する耐えうるため仲間を守りながらの戦いに向いている。デメリットは指輪で補助し万全の状態になる。
私の準備をしている間に騎士も松脂を使ったようで武器に炎を纏わせていた。神官も周りを見渡し、警戒に力を入れている。
ジリジリと、いやズルズルとスライムが近づいて来る。距離が近いモノから攻撃する。切り、突く度に焼ける音が聞こえ、弱点も変わらない事が分かる。
騎士も私と同じように縦での振り下ろしや、突きを主体にしているようだ。状況判断がしっかりと出来ている。
「このまま数を減らしてから移動をするぞ。」
「おう!にしてもなんだって急にスライムが湧いてきたんだ?」
「それは分かりません。それでも私達で原因を探しましょう。」
スライムを相手にしながら少しづつではあるが移動する。
そして十字路に差し掛かった時、見えた。かなり遠いが冒険者がいる。装いから見るに魔女、いや、魔法使いだろうか。スライムから逃げようとしている。
「騎士!少しの間持たせられるか!」
「分かった!それで、何をするつもりなんだ。」
「遠方に冒険者だ。恐らく一党が襲われ、一人になっている。」
「良し。回収は頼んだ!」
「助かる。神官は奇跡の準備を頼む。怪我をしているかもしれん。」
「はい!任せて下さい。」
そうして私は走る。スライムを避けながら走る。足音が聞こえたのだろう。少女がこちらに振り向く。
「こちらに来い!逃げるぞ!」
叫ぶ。少女に聞こえるように。泣きそうになりつつも頷きながらこちらに走って来る。
「後ろは私が守る。このまま真っ直ぐ走れ!」
「わ、かった。」
息も絶え絶えだがまだ走れそうで安心した。少女の後ろから着いて来るスライムを火炎壺で燃やしながら後退する。
「来たな!」
「大丈夫ですか?すぐに治療を始めます。」
「頼む。足を少し焼かれているようだ。」
私の発言に魔法使いが目を丸くした。
「どうして、分かるの?」
「先程走る時に少し焼けたような匂いがした。それと貴公が走る時に左足を庇いながらだったからな。」
「ハハハ!流石だな。俺には分からなかった。」
「・・・はい。どうでしょうか?まだ痛みますか?」
「あ、うん。大丈夫。痛くない。」
「では、少し休んだら外に出るか。それと貴公、スライムの出所は分かるか?」
「分からない。私は巨大鼠が見つからなくて、もっと奥を探していたら、そう、戦士が、目の前、で、食べられて、それで、」
思い出してしまったのだろう。仲間の最期を。
「大丈夫だ。もう、大丈夫だ。貴公は必ず助ける。外に出るまでに全て吐き出してしまえ。」
「うぅ、ああぁ、ごめん。ごめんなさい。」
その光景を騎士は悲しそうに見つめ、神官は背中をさすっている。私は泣いている彼女を抱きしめ、背負う。
私は冒険者をしていて彼女のような者を何人も見ていたが、やはり、これは堪えるな。何も感じない自分がいるというのは。
私は慣れてしまったのだろうか?こんな事に。だとしたら、それは、
「とても悲しく、辛いことなのだろうな。」
「ん?何か言ったか?」
「いや、独り言だ。気にしないでくれ。ここからは、走ればすぐだ。速度を上げるぞ。」
「ああ、分かった。やっぱり、こういうのは慣れないな。」
その言葉に私が返す。
「言っておくが慣れる必要は無い。むしろ慣れては駄目だ。もし慣れてしまったらそれは四肢や、感情を失うのと同義だ。耐性が付くのはいい。だが、決して慣れてはいけない。」
「そう、ですよね。」
「涙は死者の為に、それ以上に生者の為に。私の地に伝わる言葉だ。」
目算にして後八十メートルといった所で異変が起きた。大量のスライムが壁のようになりながら迫って来た。
「おいおいどうすんだよアレ!」
「このままでは呑まれてしまいます!」
後ろの光景を見て魔法使いが顔を絶望に歪ませた。
私は先程彼女に何と言った?「大丈夫だ」と言った。
であれば彼女にこんな顔をさせていて良いのか?良い筈が無い。
「騎士!魔法使いを頼んだ!」
騎士に向かって魔法使いを投げる。
「おお!危ねえ!大丈夫か!?」
「う、うん。」
「何するつもりだ!万器使い!」
「守る。それだけだ。」
そして仕舞っていた栄誉の大楯を取り出して構える。
この道は狭い。スライムの群れは私の身長より少し高い所まである。であれば私が少し焼ける程度で済む筈だ。
「おお!」
気持ちを奮わせ、受け止める。
「むう、くっ、」
盾の上から受け止めきれなかったスライムが落ちてくる。焼ける音と匂いがする。
時間にして数十秒程度だろう。だが、これだけ稼げれば十分だ。盾を仕舞いながら後ろに跳ぶ。
「ふう、どうにか、なったな。」
一人呟いていると二人が駆け寄って来ていた。
「おい大丈夫か!」
「今すぐ治療を!」
「いや、大丈夫だ。大した怪我はしていない。少し、焦げた程度だ。」
そういうと神官が声を荒げた。
「こんな無茶しないで下さい!心配だったんですから!」
「俺も同じ意見だ。今回はどうにかなったけどよ、毎回上手くいく訳じゃないだろ。」
その二人の声に少々居心地が悪く感じるが、これも、懐かしく感じる。
「ハハハッ、すまないな。次から気をつけよう。」
そういって先に外に避難させられていた魔法使いをもう一度背負い、ギルドに帰った。
三千字超えが書ける!嬉しい!ということで万器使いの事がちょっとだけ垣間見えた今回でしたが如何でしたでしょうか?
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