俺は自分の寮の部屋に全員を集め、犯人の逃走範囲を割り出した。
「今で、逃走からおよそ30分とみられる。犯人は車ではなく、走っているか歩いていると考える」
「待ってくれ、どうして車はあり得ないんだ」
仲間の1人が言った。
「近くにタイヤ痕は無かったし、入口の反対側は崖。表にしか停められないんだよ」
「なるほど」
俺はコンピューターに、時速15kmとして円を拡大していくように入力した。
「半径約7500m。殺害現場から裏に逃げることは難しいから、東の方向に7500m。西以外の方角に半径7500mだから、結構広いぞ」
「絞れない?」
鈴が俺のことをじっと見つめた。これは、どうにかして絞らないといけないよな。
「……今俺たちがいる場所は殺害現場から東に150m。つまり、東には7350mほどでいい」
形的には、パックマンを少し潰した感じ。範囲はまだ広い。
「6人でまとまって行動する。1番居やすいのは円の端。そこを探そう」
「おーっ!」
みんなが手を上げて言った。
俺は6人まとまって、居る確率が高い場所に向かった。もちろん周辺にいなかったが、俺たちは別の方向へ歩いていた。
俺は鈴と一緒に後ろを歩いていた。少し話したかったし。
「ね、結婚、する気ある?」
「今はない」
「そーなんだ」
鈴はぶっきらぼうに返した。全く、結婚なんて考えたことすらないってのに。
俺がそんなことを思っていると、後ろの鈴が付いてきていないことに気付いた。鈴は俺の真後ろにぺったりくっついていたはず。それが急に居なくなった。
その鈴は、後ろに10mほどのところに倒れていた。
「鈴!」
俺は鈴のことを叫んで呼び、走って鈴に駆け寄った。その瞬間、遠くへ行く足音が聞こえた。北だ。
「如月さん!」
「北だ!北に追え!」
「はい!」
1チームが北へ犯人を追いかける。俺と残った1チームは鈴の意識を戻そうと奮闘していた。
「鈴……!」
「救急呼ぶ!」
違うチームの内1人が救急を呼んだ。それまでにある程度は……!
「鈴……お前馬鹿じゃねぇんだからよ、分かるだろ、今することは……」
俺は泣きながら言った。鈴は俺の言葉にピクリとも反応しない。もう……
10分後、救急が来て、鈴は病院へ搬送された。犯人は、追いかけたチームが捕獲したらしく、俺たちはその場所に向かった。
「如月さん、犯人です」
「あぁ……」
俺はナイフを取り出し、犯人の首に近づけた。
「おい、何したか分かってんだろうな」
「知らねぇよ!誤認だろ!」
「……ほざくんじゃねぇよ、殺人鬼が」
他のチームの1人が犯人の写真を見せる。
「どう考えても、お前だろうが」
「……」
「何だよ、なんか言ってみろよ」
犯人はしゃべることなく黙っていた。
「おい、言ってみろって」
俺は犯人の首にナイフを当てた。
「すいません……!」
「この世界よ、謝って済む世界じゃねぇんだよ。償えねぇんだよ。お前のしたことは」
連続殺傷。知っている範囲で3人死亡、1人意識不明だ。
「もういい。牢獄に飛ばせ」
「うん」
牢獄へ犯人は飛ばされた。ただ、それより鈴の状態が心配だ。もしかしたら、もう手遅れかもしれない。
「鈴……」
「如月さん、心配してるのか?」
「あぁ」
鈴は、俺が最もしっくりきた相手でもあった。いないと、俺の何かが欠けてしまいそうな。そんな人だった。
「ごめん、行ってもいいかな」
「うん。いってらっしゃい」
俺は鈴が運ばれた病院に向かった。