saoから”ログアウト”できたプレイヤー 作:土ラグーン
今日はやや遅めのペースです。まあ、糖分系ですねw
ではどうぞ!
俺はずっと暗闇をさまよい続けた。あの日突然、俺はFSOの中で苦しくなって、強制ログアウトされたが、未だに俺には光が見えない。そして何もかもがシャットアウトされた世界にいる。だが、その世界に風穴をあけたものがあった。
「・・君、翔悟君・・」
(ゆ・・うこ・・か・・?)
俺は、風穴から音楽が聞こえた。その風穴を俺は探す。そして見つけた。しかし見つけたことを俺は伝えられずにいた。必死にもがいて、穴を広げようとした。しかし、針であけた穴のような大きさが少し大きくなっただけで、俺が脱出できるほどじゃない。だが、その針のような小さい穴は、突然大きくなった。声がそれに比例して、大きくなっていく。やがて、暗く閉ざされた世界が光に覆われる。そして俺は、その世界に穿たれた穴から脱出した。
その瞬間、俺の右手に、何か暖かいものがふれていたことに気づいた。俺はそれが何かは見当がついていたが、それを見たかった。その思いは俺の目をこじ開けていった。すると、幾筋ものの光が俺の目を射す。俺は半分目を閉じるが、すぐになれて再び全開する。口には呼吸器が取り付けられていて、俺の右腕には点滴が刺さっている。ということはここは病院ということだ。そして俺は頭を右に向ける。すると、俺の寝ているベッドの脇で両腕を組んでぐっすり寝ているポニーテールの少女がいた。それだけですぐに察した。俺を助けて、看病してくれたということを。俺は彼女の頭をなでた。ありがとう、と。
すると彼女は、かすかに頭を揺り動かし、頭を持ち上げていた。そして目をゆっくりとこすり、よだれを吸い上げる。そして、上を向いた。眠たげな表情が一変し、嬉しさと、怒りが混合した顔になっていた。そして優子は俺をーーーー
パシンッ!
ーー叩いた。俺の左の頬を。俺はよけようとはしなかった。俺は彼女のビンタに救われているから。そして俺は彼女を抱きしめた。俺の、ぼさぼさになった髪の毛に彼女の涙が流れていく。俺も彼女の雪のように白い素肌に涙をこぼす。
「ごめんな・・心配かけて・・」
俺は、嗚咽を漏らしながら彼女が与えてくれる暖かさに体を埋めた。それを優子は優しく受け止める。
「・・バカァ!!心配したんだよぉ!!」
優子は俺に泣き叫ぶ。それを俺は震える腕で頭をなでる。俺は、自分の胸が引き裂かれる気分だった。彼女をこんなに悲しませてしまったことをしてしまったのだ。考えてみれば、俺がしでかした過ちの方がずっと多い。
「ごめんなぁ・・俺、バカだよ・・」
「そうだよ・・バカ。大好き・・!」
「俺もだよ・・バカだから、お前しか愛せない」
俺は彼女の唇に自分のそれを重ね合わせる。とても心地が良かった。すべてが満たされていく充実感、そして統一感。これがたまらなかった。俺は、愛している。目の前の少女を。そして感謝している。目の前の少女に。
「ありがとうな」
俺は、彼女の胸の中で、再び眠りに落ちていった。
その後、俺の部屋に、両親がきて優子が心配していたという旨を伝えてきた。なぜか優子が俺のお袋を見て結構俺の方に逃げていたが、理由はわからない。またおやじからは、俺は2日間目覚めていなかったと伝えられていた。優子は学校からここにしょっちゅうきて四六時中看病していたらしい。俺は本当に悪いことをしたと思いながら、どうやって倍返ししようか考えていた。
ただ、彼女としてはご満悦のようで、俺の腕にスリスリと寄りついてくるし、1人で学校に行って、そこで起こった出来事を俺ににこにこしながら話してくれたりする。俺はその様子をみて、少し安心した。
「あのね、翔悟がずる休みした日、とっても寂しかったの」
「・・悪かった。しかし、優子には友達がいないなんて、俺には信じられないけどな・・優しいし、可愛いし」
「かわいいは・・よけいだよぉ・・」
ボウッと顔が蒸発するのを心の中で笑いながら、俺は言葉を続ける。
「うーんどうにかしてやりたいなあ・・あ、そうだ。」
俺はある妙案を思いつく。
「どうしたの?」
「いや・・俺が退院してからじゃないと出来ないんだ。俺が手伝ってやるよ。友達作り」
「そ、そこまでしなくても・・」
優子は困った顔をして俺にいう。
「いや、いいんだよ。お前を喜ばせるためなら何でもするよ。命の恩人だしな」
俺は彼女に二度救われている。だから恩返しをしなくてはいけない。そう思って、この言葉を言ったのだ。
俺は優子を、俺のベッドの中に入れる。そしてその中で抱き合った。俺は髪の毛を優しくなで、においをかぐ。昨日使ったシャンプーのにおいと思われる香りが俺の鼻を刺激する。俺はその黒い輝きを持つ髪に顔を埋める。彼女も俺の、細い肉体に寄りついて、キスをした。
しかし俺たちのベッドタイムは、検査に来たナースによって中断させられた。そして患者のベッドに寝てはいけませんと、優子が怒られていたのを俺はにやにやしながら見ていた。その後俺が鉄拳制裁を食らったのは、泣けてくるのでしないでほしい。
「さて、どうしてこんなことになったのか、説明してもらおうじゃありませんか?石田翔悟殿」
優子の制裁が終わり、急に真剣な顔になった。
「あ・・まあ・・俺もなぜ毒薬を盛られたのか分からないんだよ」
医師から聞いた話だと、俺の家にはいつの間にか泥棒が入っていた。その泥棒が、ナーヴギアを被っていた無抵抗な俺に対して、サクシニルコリンという毒薬を盛ろうとしたのだった。たまたま俺の家にプリントを届けにいった優子のおかげで俺は助かったが、2日間俺の意識は戻らなかったことから、もし優子がいなければ俺は死んでいたということになる。本当に頭が上がらない。
優子はその後、警察の取り調べを受けて、犯人の顔の供述をしたが、サングラスを被っている上に、ニット帽など、いわゆる犯罪者っぽい服装をしていたので、詳細は不明である。しかし向こうは優子をねらっている可能性があるので、警戒するよういわれた。俺は学校に行くことが出来ないので、送迎は親が行くことになった。だがそれでも俺は心配だ。
「そういえば、ロックァ。」
急に俺のアバター名で呼ばれたのでびっくりした。
「な、何だよ突然?」
黒い宝石のような輝きを持つ瞳が俺を射抜く。
「ALOから、コンバートしたでしょ?」
「な・・」
図星だった。そう、俺は彼女にないしょでオンライン格闘ゲーム《FSO》にコンバートしていたのだ。
「なんで・・わかった?」
「気づいたのはね、翔悟が倒れた次の日なんだけど、フレンドリストから切れていたんだよ。」
確かにコンバートするということは元いたゲームデータをすべて消去されてしまうということだ。つまり俺はもうこのゲームには存在していないという扱いになる。だから優子のフレンドリストから俺が消えるのは当然だろう。
「それでさ・・翔悟が襲われた原因ってもしかしたら、そのゲームにあると思う。だってコンバートしてそうなったんでしょ?」
「・・」
俺もそう思っていた。このままFSOに居続けていいのか?という自問自答を繰り返している。
「だったらもうやめよ・・?こんな危険な目に遭ってまでやる必要なんてないよ」
ああ、そうだな。そう言いたい。いって楽になりたい。けれど、俺の頭の中では、何かが渦巻いていた。何かと向き合わなきゃいけないような、そんな気がした。そして俺が襲われた理由が、もしかしたら俺が今でも思い出したくない最悪な過去に関係しているのかもしれない。凄惨な殺し合いの記憶と・・
「ごめんな・・それは・・出来ない」
「なんで・・!どうして!?」
優子が声を荒げる。当たり前だろう。だが俺は胸が痛くなるのをこらえていった。
「・・何かがあると思っているんだ。いやな予感しかしないんだよ。これからさ。それに・・優子は今もねらわれている。だから俺がそれを断ち切ってやる。巻き込んだ俺の責任だ」
俺は、すまないと謝った。優子は黙って聞いていた。そしてようやく口を開く。
「なら、私も戦う。一緒にコンバートする。」
そのとき、俺は叫んでいた。
「だめだ!!もしお前に危険が及んだらどうするんだ!!」
「なら私は黙ってみてろっていうの!!」
優子も鋭く反駁した。
「・・ああ、優子まで巻き込みたくはない!」
俺もついに荒げてしまう。
「巻き込まれたとは思わないっ!!」
「!?」
優子が目をきつく閉じて俺に叫ぶ。かすかに声が濡れていた。
「わたしはね、あなたの彼女。だから問題は2人で解決したい。けどあなた一人で背負おうとしているのを黙ってみてられないの!」
「・・・・」
もはや俺は何も言い返せなかった。彼女は本気だ。本気で俺と共に戦おうとしている。人の、自分のための戦意をくじくだけの度胸や勇気は持ち合わせていない。
「《ファイティングソウル・オンライン》だ。そこに俺はいる。だから明日、俺の家からナーヴギアを持ってきてくれ。そして、俺の部屋からダイブするんだ。いいな?それが約束だ」
「・・うん!」
先ほどまで泣きそうだった顔が、太陽のように輝いていく。この笑顔を守るためなら、命だって惜しくない。
「よし、、今日はインしなくていいからな。俺も今日は寝る。疲れたからな‥」
「うん・・私もだな。じゃあ帰るね?」
「気をつけろよ?」
「うん!!」
彼女は俺に手を振り、病室を出ていった。静けさだけが部屋に残った。俺はそのまま眠りに落ちた。
その後、俺と優子にとって、現実世界において最大の戦いが始まろうとしていた。
次回は優子ちゃんもコンバートします。そしてそこからどうなるかはいえません。
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