saoから”ログアウト”できたプレイヤー 作:土ラグーン
今回で第3章が完結します!みなさま、つたない文章におつきあいいただきまして、ありがとうございました!といっても、まだ残っていますので、お楽しみにしてください。
ではどうぞ・・!
それと、お気に入り登録100人突破ああああああ!!本当にありがとうございます!これからもよろしくお願いします。
「あーー!やっと学校終わったーー!」
「冬休みだね!!」
俺と優子は、雪がかすかに降る、学校から駅までの道をゆっくりと歩いていた。ひんやりと、乾燥した空気が気にくわない。俺はジャンバーを、優子は、ピンクのセーターを着ている。
今日は、12月23日で、この日に第2学期が終了した。うちの学校は3学期制だ。そしてその日は、俺が退院した次の日でもある。俺は優子と手をつないで歩き続けた。手から伝わる温もりが、何故か今日の方が暖かかった。きっとうれしいのだろう。今日優子は友達が出来たから。
優子は、優しいのだが、どうも引っ込み思案なところがあり、友達を作りづらい傾向があった。だから俺がそんな状況を何とかしてやろうと、行動にでたのだ。簡単だ。優子と同じように、始まりの町に引きこもっていた生徒と話したのだ。
この学校には、何故かまだSAO時代の上下関係が続いている。攻略組がクラスの中心となってしまっているし、逆に引きこもり組は何も言えない立場になってしまっているのだ。俺は攻略組だからいいが、優子は違う。だからよけいに友達が作りにくい状況になってしまっているのだ。だが、こんな状況でも、考えればプラスに転じることも出来る。俺はその子に、強制的に、友達になるように言った。くだらない話だが、攻略組の命令には従わなくてはいけないという暗黙のルールがあるので、そのこは従わなくてはいけなくなり、渋々優子に話しかけた。すると、かなり意気投合し気が合う仲間になったのだ。しかも、この手口を何人もやったので、(といっても3人だけ)4人一気に友達が出来たのだ。優子はこの上ない幸せそうな顔をして、俺にありがとうと5回以上言ったという。
「・・ありがとう」
「え?」
ボソッと優子が言う。
「友達、作ってくれてありがとう」
少し照れ気味に言った。かわいいやつめ。
「いや、困ってたからさ、手助けしたやりたかったんだ」
「もう、そこはどういたしましてでいいの!」
「そうだな・・どういたしまして」
俺は頭をボリボリと掻きながら言った。すると、駅に着いた。駅の電光時刻表にはなんと、後1分でくる電車があった。俺たちは急いで走り、何とか飛び乗る。そして席が空くと、俺たちはすぐに座った。俺はメールを見ていると、何か重いものが右肩に乗っかった。俺は右をみる。すると、気持ちよさそうにねている優子の姿があった。俺は苦笑し、やれやれと声に出さずにつぶやく。
俺は、とりあえず思索にふけようとして、心を落ち着かせた。
あの戦闘から一夜明けて、俺たちは、大宮総合病院の病室で、治療を受けていた。俺の家での激しい格闘戦で受けたたくさんの傷を見てもらってたが、幸い優子は、痣がたくさんあるだけで、大けがはしておらず、軽傷扱いとなった。俺も同様に、軽傷扱いだが、何せ俺はこの病院に入院中だったのでそりゃあ病院長直々の説教を受けてしまった。俺はただ頭をうなだれて聞いていたが、俺が行かなければ少なくとも優子は大けがはしていたと思う。いや、死んでいたかもしれない。
まあとにかく、検査を終えた後、俺と優子は入院患者用の部屋へと移された。そこで、警察関係者の方が待っていた。俺は青い制服を見た瞬間に事情聴取だなと察した。事実その通りで、事件の詳細を聞かれたので、すべてを正直に話した。すると、警察官は、あの時、見事に逃走した、PoHのことについて聞かれた。俺がわかる限りの特徴をすべて伝えたが、おそらく捕まらないだろう。なぜなら、顔もほとんど見えなかったし、何よりもあの逃走能力があるからだろう。常人ではなかなか出来ないフリーランニングという疾走スキルを完璧に拾得しているからだ。おそらくPoHは何かのエージェントか、軍人だろう。だからなかなか捕まえられるものじゃない。もしかしたら海外に逃亡している可能性もある。まあ、もうどうでもいいが。
あの戦闘で俺たちを襲った3人の内、PoHを除いた2人について説明しなくてはいけないだろう。
まず、俺のかつての親友である、トーガこと富田大河と、俺の家のお手伝いさんである安田知子は気絶していたところを傷害の疑いで現行犯逮捕された。2人は容疑を認め、すべてを供述した。SAO時代の因縁が原因だが、何故俺の家のお手伝いである知子までもが、犯罪に加担したかというと、トーガの父親、富田守の愛人だったらしい。しかしトーガはそれを知らなかったらしく、彼女に罪をすべて擦り付けようと画策したが、結局は共犯者扱いになった。トーガは、知子を父親の友人と認識していたらしい。
死闘を繰り広げたのが、12月15日であるが、今日の17日に早速ニュースになった。が、小さく取り上げられた程度ですみ、注目を浴びることすらなかった。また、ゲーム内での因縁が関わっているため、MMOストリームで大きく取り上げられるかと思ったが、この事件よりももっと大きな事件のせいで、あまり扱われなかった。
ザ・シード連結体のVRFPSゲーム《ガンゲイル・オンライン》、略して、《GGO》内で銃撃されたプレイヤーが現実で本当に死ぬというオカルトじみた事件が発生したのだ。実際に本当になくなっていたというので、トップニュースになった。トリックとしては、トーガたちが使っていた方法と全く同じで、昏睡中の人間に劇毒サクシニルコリンを注射すると言うものだ。どうやって住所を特定したかというと、個人情報が管理されているところまで、ハイディングして、盗み取ったと言うらしい。何故そんなデータベースじみたところがあるかというと、GGOには、リアルマネートレーディングというシステムを活用しており、クレジットというものを稼ぎまくって、現実のお金や、アイテムと交換できたりするのだが、自宅の住所とかを入力しないともらえないので、自然と個人情報を回収できるのだ。
その事件は、俺たちの死闘からわずか1日前に終結した。犯人のターゲットとなった女子高校生と男子高校生を襲った疑いで逮捕されたのだ。犯人の名前は、2人あって、新川恭二と、新川昌一である。医者の息子だったらしい。また、昌一の方は、SAOで殺人を積極的に行うギルド《ラフィン・コフィン》の幹部プレイヤーだった。名前は、《ジョニーブラック》というらしい。俺も名前は聞いたことはある。
被害者は3人以上おり、いずれもGGOの有力プレイヤーだった。GGOの場合、リアルマネートレーディングシステムを採用しているため、それで生活費を稼いでいる人もいるので、妬みそねみは激しいが、そこまでくると完全にやばいだろう。
さて、話を戻そう。トーガたちは結局どうなるかというと、まだそこはわかっていない。ただ、罪状は殺人未遂、最低でも傷害なので、裁判にはなりそうだ。ただ、トーガの怒りも理解できる。俺の理不尽な理由でおやじが殺されたのだ。本当なら俺は法の裁きを受けるべきだ。しかし、政府の意向で、見なかったことにするという措置が執られた。なぜなら、自営のために手をかけたプレイヤーは少なくないし、もし一個一個裁判を行っていたら、キリがない。しかもそれを証明してくれるものもいないので、泥沼になってしまうからだ。
また、当然だが、俺を襲ったPoHという、ラフィンコフィンのリーダーであった男は未だに捕まっていない。捕まってほしいが、早々捕まりそうにない。まあ、もはやどうでもいいが。
あと、、俺の両親が駆けつけたことも言わなきゃいけないな。俺の頬を2度ぶったんだ。そして、知子が俺を襲ったという話を聞いたとき、崩れ落ちた。当然だ。まさか召使いが自分の家の子供を襲うと思わなかったからだ。俺も思わなかった。
トーガの両親も俺の両親の近くにいて、俺に土下座をしてきた。だが、俺は怒りも感じないし、むしろやめてほしかった。そんなことされると俺は逆にいらつく性分だ。しかし怒るのを我慢する。結構つらかった。
その後医者がきて、俺の入院期間について話したが、延長は無しになった。俺はほっと息をついた。入院開始が12月8日で、予定通り22日に退院することが出来た。
そして、今日23日、学校に久しぶりに登校することになったのである。
「・・もう乗換駅か」
俺は優子を揺り起こす。しかし、優子は一度寝始めるとなかなか起きない。アインクラッドの時の結婚生活のときもそうだった。夜更かしして2人で遊ぼうと提案したときも、ぐっすり寝てしまったぐらいだ。
まあ、薄々わかっていたので仕方なく、彼女のチャームポイントである、ポニーテールを無造作にホームまで引っ張った。すると、はっと瞬間的に目覚めて、ふくれっ面を作る。
「何で私の髪の毛引っ張るのよ!!?」
大声で俺に叫ぶが、俺はホームの上で手で制す。
「しょうがないだろ?ねてたんだから」
「でもそれはないよ!!」
こうなると止まらないのだが、あらかじめ予期していた俺は同時にぱっと解決策が思いついていた。
「・・じゃあとでファミレスでデザートおごってやるからそれで勘弁してください」
その言葉を聞いた瞬間、怒っていた顔を引っ込めてドキッとするような笑顔になった。
「・・じゃあ今日ね!」
「はい・・」
俺はとっさに財布をみる。あるのは、医学者がプリントされている紙切れ1枚だけだった。これは俺は食べられそうにないな・・。
午後4時に大宮について、最寄りのファミレスに向かい、優子が早速一番高いスイーツを頼んだ。俺は、一番やすいデザートを頼み、千円ですむようにした。俺は水をちょびっと含めていった。
「なあ・・俺今日千円しかないんだぞ・・?」
「誰だっけおごってくれるって言ったのは?」
にやにやしている彼女に何も言えず、ぐっとうめくほかはなかった。
「まあ、足らなかったら出してあげるわよ」
「さんきゅー」
いや、助かった。俺がひどい恥を食らうところだった。
「ところでさ、クリスマスどうする?」
「あ・・忘れてた」
「クリスマス忘れるってどういうことよ!?」
優子がつっこむ。確かにそれは正しいのだが、俺にはクリスマスが特別な日という認識がないのだ。うちの家族はお祝いもしないし、勉強させられる。だからクリスマスといっても、何もこないのだ。
「・・まあ、俺の家じゃあクリスマス自体関係無しに勉強だからな。だから俺予定入れちまったよ・・」
「え・・」
至極哀しそうな顔をしている。ヤバい。
「トーガにあって話をしたいんだ。面会できるからさ」
「・・そうなんだ・・」
納得したように見えたが、やはりどこか顔が曇っている。おそらく楽しみにしてたということか。
「・・わかった。夜、会おうよ」
「え?」
「昼は無理だから、夜さ、大宮駅に集合しよう。クリスマスを過ごすために」
俺は彼女の顔がぱっと明るくなっていくのをみた。俺は手を伸ばして髪をなでる。
「それで・・いいか?」
「うん!」
優子は首を大きく振って頷いた。その直後、デザートがきたのでいただいた。優子が頼んだのは、顔の縦幅くらいありそうなジャンボパフェであり、俺が頼んだのは、今にも消え入りそうな、ショートケーキだ。差が激しすぎる。そう思いながら、一口でぽいっと平らげてしまった。一方、優子はがつがつとほおばって食べているが、なかなか減らない。
「欲張ると太るぞ?」
俺がそうからかうと、優子はむくっと膨れた。
「別腹だもん!」
まあ、本人がそういうならいいが。俺は、水を飲んで、口の中に残る甘みを流し込む。
それから5分後だった。
「もう・・むり・・」
俺の目の前に座っている優子がうーうーとうなっていた。まだ半分しかいっていないが、何せまだメシ時じゃない。だから平らげるのは難しそうだった。
「言わんこっちゃねえよ」
俺はやれやれと両手を掲げる。俺はパフェをたぐり寄せ、残りの分を食べた。間接キッスをしたと思いこんでいる優子は顔を少し赤らめるが、いつも直接キッスをしているのだから赤くならなくても、と思う。
幸いと言うべきかわからないが、俺はろくなデザート食べていないので、大量のパフェを平らげられた。そして俺もそこそこ満腹になっていた。これは二人用だな。優子もそれを悟ったらしく、げんなりしていた。みぎのほおをたぷんとテーブルに乗せている優子のしぐさがかわいく、俺は小さな動物を愛でるようにして髪をなでた。
「じゃあ、いこうぜ」
俺は、少し休んだ後で、店の会計に行った。そして2人分払って、店の外にでた。もう午後5時で、冬の空はすっかり暗くなっていた。駅の方をみると、色とりどりの光がまばゆく輝いていた。街路樹が青いLEDライトに照らされており、ロータリーは、オブジェクトがチカチカと光っていたりした。
「いく?」
俺は隣にたっている少女に聞いた。すると彼女は首を横に振った。
「明日行きたい」
「そっか」
俺は彼女の体をたぐり寄せた。彼女も俺に何かを預けるようにして、寄り添った。そしてシンシンと降る淡い雪の道を2人で歩き続けた。
「また、明日な」
「うん・・明日ね」
お互いの家の分岐道まできた。別れたくはないので、ここはあまりいい場所じゃない。別れたくなくてここで長話をしてしまうこともざらにある。しかし外は寒いので、今日はすぐ帰ることにした。また明日あえることを夢見て、俺たちは別れた。
翌日になった。
昼の午後3時、俺は冷たい空気を切り裂いて、自転車をこいでいた。向かっていった先は優子の家ではなく、警察署である。何故そこに行くかというと、そこで拘束されているトーガに話を聞くためだ。おれは、それをしない限り事件は終わらないと思う。正面から向き合わないといけない。じゃなければ、俺があの世界で殺した3人にもならない。
やがて警察署のゲートに着く。駐輪所に自転車を止めて、警備員に挨拶をしてゲートをくぐった。その後受付に行き、用件を伝える。一応連絡はしてあるので、通してくれた。おれは、係りの人に案内されて、面会部屋へと向かった。面会部屋のドアの横のプレートには、「富田大河」と簡素に書かれている。
「面会時間は10分です」
係りの人がぼそっと言った。俺は無言でうなずいた。そして係りの人が一歩引いたのを確認して、俺はドアをノックした。ドアからは何も聞こえない。俺は、ガチャリと開けた。
俺がドアを開けると、パイプいすに座っているやせこけた少年がいた。生気をすべて失っているような佇まいだった。俺はとりあえず、テーブルを挟んだ反対側のパイプいすに座る。トーガは、首をわずかにあげて、俺の姿を確認するが、すぐにうなだれてしまった。
しばらく沈黙が続くが、面会時間が限られているので、俺から切り出した。
「久しぶりだな、トーガ」
「・・」
何もいわなかった。焦点を失っている虚ろな目でおれをちらりとみた。
「なんで、俺を殺そうと思った?友達だったろ?」
俺は静かに問う。しかし口はきつく結ばれていた。
「なぜだ?何であんな信用できない奴と手を組んだ?あいつはアインクラッドでは、たくさんの人間を殺めた奴なんだぞ?」
それを言った瞬間、がたんと音がした。トーガのパイプいすが倒れる音だった。トーガは、背を丸め、俺を凝視していた。
「・・知らなかったようだな。なんならもっと話してもいいぜ?お前が、話してくれたらな」
すると、トーガはゆっくりといすを立て起こして、静かに座った。
「・・わかったよ。それで、どんな質問だっけ?」
「何で俺を殺そうとしたか、それと、何であんな奴と手を組んだかだ」
すると、深く息を吐いて鼻で笑う。
「決まってるだろう?おまえが俺のおやじを殺したかr・・」
「それが本当かわからないだろ?」
「本当じゃない?どういうことだ?」
トーガは、俺に頭がおかしい人じゃないかという視線を向ける。
「確かに俺は本当に殺してしまった。けれどな、俺に聞かなければ、わからないはずだ。なぜなら政府が把握しているのは、プレイヤー名と本名と最終レベルと住所だけだ。誰々に殺されたとか、誰々を殺したとか、そういったことはわからないんだ」
「そうかもしれない。けどな、PoHが言ってたんだよ!おまえが殺したって!!」
「あいつがうそをつくとは思わなかったのか!?」
「ああ・・思わなかったよ!僕の父さんの友人だったんだ!リアルでもね!!」
「・・そうか。そりゃあ信じたくなるな。けど、わかったろ?あいつは、恐ろしい奴だ。SAOで殺人ギルドを作っていたんだ。被害者はおそらく数百人だ。そしておまえの父さんだって、殺人に手を染めていた可能性もあったんだ」
トーガはわなわなと手をふるわせている。そして息を荒くした。
「何でおまえはそんなことで人生を無駄にしたんだ・・!?バカやろうが・・!!」
俺は、ぐっと拳を握りしめて、無防備な左頬を思い切り殴りつける。ふわっとトーガの体が、素早く吹っ飛んだ。壁に激突して、ずるずると寄りかかるだけで、抵抗する気がないというように、動かなかった。
「だが、おまえの父親を殺したという罪は、永遠に俺からは消えない。どれだけ謝っても拭えない罪だ。・・ごめんなさい」
おれは、両膝と両手をひやりとしている面会室の床について、頭を思い切りこすりつけた。
「・・もういいんだ」
ぼそっと、しかしはっきりと声が俺の鼓膜を揺らす。俺はわずかに顔を上げる。
「俺がバカだったんだ。こんなバカみたいな復讐をした僕がね。PoHの言う通りさ。くだらない妄執や執念は足下をすくうようだ」
「・・・・」
俺はもう何も言えなかった。
「頭、あげろよ」
ぶっきらぼうにそういいながら、トーガはいすへと戻っていった。
「・・わかった」
俺もそれに続いて、いすに座る。
「まあ、もうこのことを僕は忘れる。おまえも忘れてくれ」
吐き捨てるようにトーガは、声を出す。
だが、俺は首を振った。
「それは、できない」
「・・そうか。おっと、そろそろ面会終了だな」
「・・ああ」
俺は立ち上がる。そして、またくるよと口を開こうとした。だが、トーガの言葉で阻まれた。
「もう、来ないでくれ。おまえの顔を見ると、父さんのことを思い出すからさ」
そのとき俺は消失感を味わった。何かが瓦解するような感じだった。俺は時計をみる。後わずか1分だ。だが、それでも伝えられる言葉はある。トーガが、早く行けという視線を送っている。俺はその視線に追いやられるようにドアノブまで向かった。そしてドアノブに手をかけて、がちゃっとドアを開ける。しかし、俺は中途半端にとめていた。
「どうしtーー」
「なあ、もし釈放されたら、またさ・・」
俺は息を吸い込んだ。
「友達に、なろう」
それを言った瞬間、激しい精神的疲労感に襲われた。これだけの言葉を言うのに、どれだけの労力を用いるのか。我ながら呆れている。俺はトーガをちらりと振り返ってみる。するとトーガは一瞬目を見開いて、顔をほころばせた。至高の笑顔を向けて、俺に、叫ぶ。
「ああ・・約束する」
トーガは俺に歩み寄り、手を握ってきた。俺も力一杯握り返した。それだけで十分だった。そう、それだけで。
俺は思う。握手というのは、ただ単に友情を確かめ合うとかそういう作法でないと思う。確かにその一面もあるが、一度受けた傷を修復できる力もあるのではないのか。事実、修復のための握手が意味をなしているのだ。
拳というのはすごいものだ。人を攻撃するためにも使えるし、逆に人と交流したりするのにも使える。俺とトーガの拳は一度は因縁という、不可抗力の力によって、攻撃の手段として変わってしまったが、グーの手を一度開いて、握手という作法へと変化させるだけで、人との交流、すなわち俺とトーガの仲直りが出来たのだ。
"因縁の拳"はいま、役目を終えた。そして、"友情の拳"へと姿を変えた。互いの手を握ったときのあの温度が、きっとその友情の拳の力だ。冷たい鋭利な力でなく、どこか暖かく、優しい力だ。俺はその力を大事にしたい。
俺は、係りの人に案内され、受付へと戻っていった。部屋から出た直後に、隙間から見えたトーガはなぜか、嬉しそうだった。おそらく俺と同じ理由だろう。
ーーまた、あおう。
ーーああ、いつかな。
声が聞こえた気がした。その声に対し、音にならない声で返した。それを最後に、俺は警察署から去っていった。
俺は、大宮駅までゆっくりと自転車をこいでいる。気持ちいいリズム感が俺の胸の鼓動をおそめていく。トーガにあってから優子とデートをするつもりだったので、ちょうどよかった。俺は大宮駅のロータリーの近くにきていた。しかし優子はまだ現れない。まあ、集合30分前だから仕方ないが。現在時刻は、午後3時30分だ。俺はベンチに座って、携帯をいじっていた。まあ、未だにパズル&ドラゴンズという、携帯端末用ゲームをやっている。たしか、10年前以上のゲームだが、未だに人気を博していて、ダウンロード総数が、もう、7000万人越えている。実際俺はこの値は盛っているとは思うが。ちなみに俺は、ランク300だが、中には999とかもいるらしい。最大はいくつか知らんが。
まあ、そんな話はともかく、何ダンジョンかクリアしていると、3時50分に声がかけられた。
「翔悟君っ」
俺はすぐさまパズドラをやめて、優子へと向き直る。
「まった?」
「いや、俺は早くきてたからさ。それより座れよ」
「うん」
優子は、赤いセーターに緑のブーツ、黄色いヘアピンといういかにもクリスマスカラーなのに対して、俺は、黒のジャンパーに、ジーンズという、センスのかけらもない。俺は、敗北感を覚えたが、すぐに立て直す。
「じゃあさ、まだライトアップまで時間あるし、あそこでクレープでも食うか?」
俺は、ロータリーから少し離れた、クレープの屋台を指さす。優子は同意した。俺も優子も糖分が多めな具材を選んで、交換もした。そんな風にして、ライトアップ開始時刻である、5時になった。
「すごい・・」
5時になった瞬間、魔法がかけられたように一斉にライトがついた。青、赤、緑、黄色、色とりどりの光が、真っ暗になった冬の夜空を一気に明るくした。ロータリーにあるサンタのオブジェクトも点灯して、あちこちにクリスマスソングが流れた。このメロディは、「赤鼻のトナカイ」だろう。
「きれいだな・・」
いつの間にか、優子は俺に寄り添っていた。そんな優子を俺は思いきり抱き寄せた。
「あったかいな・・」
「うん・・あったかいな・・」
俺は無意識に手を強く握りしめていた。しかし、優子の顔が苦しそうにゆがんでいた。
「い、痛いよ・・」
「・・あ、わるい。強く握りすぎてたな」
俺はあわてて手を離す。だが、何故俺がそんなことをしたのかが、何となくわかった。
「だ、大丈夫だけどさ。どうしたの?」
優子は訝しげに俺をみる。俺は口ごもったが、話そうと決めた。
「いや、今日さ、トーガにあったんだよ。面会したんだ。そこでいろいろ話をしたんだ。そこで俺は仲直りしようとした。そして事実出来たんだ。握手してな」
話の内容がつかめてないようだが、俺はかまわず続ける。
「それで俺思ったんだ。手を握るってことはさ、相手のことを意識するのと同時にさ、あらゆる傷を治してくれるんだなって」
心からの答えを俺は述べた。優子はようやく理解したようだ。
「だから翔悟君は、手を握ったのか」
「?」
どういうことだと今度は俺が聞いた。
「今回の面会で、たぶん少し傷を受けたんだと思う。翔悟君何かにすがってた感じだった。不安なんでしょ?トーガ君とまたともだちになれるのかって」
「・・!」
図星だった。何でここまで鋭いんだと思った。
「だけどね、翔悟君は大丈夫。きっとトーガ君は根が優しいから、許してくれるよ。というか、友達になってくれるよ。」
俺はいったん顔を伏せ、そしてあげた。何故か気分が優しくなっていた。
「ありがとう」
自分でも驚くような、柔らかい声がでた。その瞬間、優子が抱きついてきた。
「これでもね、傷は癒せると思うよ?」
「ああ・・そうだな・・」
俺は、鼻に流れてくる、優子の柔らかく、心地いい匂いを嗅いでいた。昨日使ったシャンプーのにおいと混ざり合って、俺は、夢中になってかいでいた。
「ねえ。不安、なくなった?」
彼女が控えめな笑顔で言う。俺はもちろん頷いた。
「よかった・・あれ?この音は?」
突然優子が俺の腰に巻き付いた腕を放す。そして上を見上げた。リンリンリン・・という、小さな、しかしよく透き通るベルの音がした。そして一粒の、白い粉が、優子のきれいな髪にゆっくりと舞い落ちた。
「鈴の音に雪か・・まさにクリスマスだな」
「クリスマスだね・・」
再び俺たちは抱き合って密着する。そして視線が交錯した。何かを期待する目が、俺の目に映った。俺は小さくささやく。
「メリー・・クリスマス」
同じように、優子も囁く。
「メリー・・クリスマス」
妙なる音楽のようなその声を聞いて、俺は、最高に気分が良くなった。だが、俺はあくまで冷静になる。俺と優子は、小さく笑いあった。そして、静かに唇をあわせた。
淡く輝く光の中、2人の少年と少女は、抱き合って、聖夜の夜を祝っていた。互いの唇をあわせながら。その場所にいたのは、たくさんの人と、まばゆいイルミネーション、そして、しんしんと降り続ける粉雪だった。いつまでも、その中にいる小さな二人は、唇をあわせて、互いの存在を確かめ合って、互いの傷をいやし続けていた。
一方ここは、警察署の容疑者の部屋だ。今日は聖夜である。しかし、暗く狭い小部屋には、クリスマスを感じさせるものなどない。だが、今日は何故か、感じられた。窓の外に雪がちらちらとふっているからだ。よく、かつての友である、翔悟とクリスマスの日に外にでたものだ。もちろんゲームばかりしていたが。
ふと、思い出して、トーガこと富田大河は苦笑する。そして、誰もいない空間で、大河は呟いた。
「メリークリスマス。・・幸せにな。ロックァ」
大河はそういうと、ギシギシと軋む硬いベッドへと寝ころんだ。明日にはどこかへと行くのだろう。だが、早く大河は、罪を償わなくてはいけない。そして友達にならなくてはいけないのだ。自分が破壊してしまった友情を取り戻すために。
「俺もがんばるよ。おまえも、がんばれよ」
そう、ここにはいるはずのない親友に言って、瞼を閉じた。
因縁の拳を、友情の
(因縁の拳 完)
初めて1万字こえたwすげえなwまあ、量より質だけど(つд`)
さて、ここで因縁の拳が終了しましたが、次回はほんとうに最終回となります。きれいにまとめてみたい・・wご期待ください!
それと、話は変わりますが、活動報告でアンケート4を募集したのですが、(詳細は活動報告を参照)結果がドローになってしまったので、私のもう一つの作品である、「夢と希望を守る剣士~電撃文庫ファイティングクライマックス」の方がかけずにいます。どなたでもいいんで、是非投票してください!お願いします!期限は、無限ですので!私が決めたときでw
では、長くなってしまいましたが、毎度ながら感想、評価、指摘、お気に入り登録、メッセージなどお待ちしております!
なた、もう一つの作品の方も、よろしくお願いします!