トウカイテイオー転生もの   作:ふらんそすきぃ

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日常回です。


冬休み

「ポイント……62万! 

 よし頂点取った……!」

 

 

 冬休みに入った。

 世間は今頃クリスマスで盛り上がっているだろうが、僕はゲーセンで一人盛り上がっていた。

 

 ダンスゲームにハマった。

 色んな人に見られながらプレイするのが恥ずかしくてやっていなかったが、勇気を出してやってみたら思ったよりそのことは気にならなかった。

 僕はやるなら何事でも1番になりたい。

 そんな思いで、ダンスゲームを昨日初めてプレイしたときから、ずっとやり続けて遂に今、このゲームセンターのダンスゲーム内の曲の1つで頂点になった。

 

 実に長い戦いだった。

 昨日始めたとき、あれ? 思ったより出来るから練習したら頂点になれるかも? って思ってしまったのが駄目だった。

 途中までは色々な曲を試しては順調に点数を伸ばしていたのだ。

 しかし、それは初心者が初心者じゃ無くなるまでだった。

 点数が停滞し始めて諦めかけたが、1度目指すと決めたからには諦めきれなかった。

 

 そのまま中々点数が伸びないが着実にコツを掴み始めて昨日は腹が減ったところで終わった。

 部屋に戻ってからも、プレイのしすぎて頭の中で鳴り響く音楽を口ずさみながら脳内でイメトレを繰り返しする。

 マヤノに今度はどんなことにハマったの? って聞かれて答えたり、今度カラオケ行こうよ〜と誘われて了解したりして昨日は寝た。

 そして今日の朝、いつもどおり走り込みをしたあと、朝ご飯と朝はちみーを食べて、秋が終わる頃に買ったパーカーと、動きやすいように少し寒いが短パンとタイツに着替え、開店と同時に入店しダンスゲームと闘っていたわけだ。

 

 時間を確認してみると12時半前だ。

 今から学園に戻って食堂で食べても良いが、せっかくなのでダンスゲーム制覇記念ということで、外で何か食べよう。

 と言っても外で余り食べないので、こういったときにどこに行けば良いか分からない。

 しかも冬休みで人も多い。

 街中の店はお昼時でどこもいっぱいだ。

 

 やっぱり学園に戻って食堂で食べようかな、と思っていると通りに僕の数少ない知り合いがいた。

 

 

「こ、こんにちは。マックイーンさん」

 

 

「わぁっ!? ご、御機嫌ようテイオー」

 

 

 何かを集中した眼差しで見つめていたのは、僕のストーカー兼ギリギリ友達かもしれないマックイーンさんだ。

 ここ最近ではトレーニング終わりに少しずつ話すようになった。

 マックイーンさんが慌てているのでどうかしたのかと思っていると、『クリスマス限定☆90分間スイーツ食べ放題! ウマ娘の方でもOKです!』という看板を見つけた。

 それを見ていたことがバレたのを悟ったのか、僕が次に見たマックイーンさんの顔はとても焦っていた。

 

 

「マックイーンさん……前のはちみーで散々後悔してたのに、これに行こうとしてたんですか……?」

 

 

「いや、これは日頃のわたくしへのご褒美というか、何というか……。

 ってそもそも、あれは貴女がしつこく語ってきたのが悪いのですっ! 

 わたくしのせいでは御座いませんわ! 

 あぁ……この後のダイエットのことを考えると足が進みませんわ……。

 やっぱり、止めておきましょうか……」

 

 

 マックイーンさんの惨めな言い訳を聞きつつ、店中を見てみると混んではいるが席は少し空きがあった。

 ここなら今すぐ入れるし、僕の昼ご飯にちょうど良いかもと思う。

 こういった特別そうな店はダンスゲー制覇記念に相応しそうだし。

 

 

「僕、今からここで昼ごはんにします」

 

 

 そう高らかにマックイーンさんに宣言する。

 どうせこの先輩も付いてくるだろう。

 

 

「あ、貴女……人の心はあるんですの……?」

 

 

「え? マックイーンさんは行かないんですか?」

 

 

 てっきり行くものだと思っていた僕はコミュニケーションって難しいとつくづく感じる。

 

 

「さっきまでの話を聞いていたのですか!? 

 あぁ!! もう、分かりましたわ!! 

 これは日頃頑張るわたくしへのご褒美、これは日頃頑張るわたくしへのご褒美、これは日頃頑張るわたくしへのご褒美! 

 よし、行きますよテイオー」

 

 

「は、はい」

 

 

 何なんだろうこのお嬢様は。

 さっきまであんなに悩んでいたのに、今では顔がもうスイーツのことしか考えられていないような表情になっている。

 入店すると店員さんに席まで案内してもらい、メニューを確認したらスイーツを取りに行く。

 スイーツ以外も食べ放題らしいが、甘党の僕にはスイーツ食べ放題で入ったのにスイーツ以外は食べるつもりは無かった。

 

 取り敢えず大きな皿にケーキを一種類ずつ乗せていく。

 この後に美味しかったケーキをまた食べようという算段だ。

 それにしても種類が沢山あるな。

 直径25cmぐらいある大きな皿にぎっしりに詰め込んで、一旦席に置きに戻る。

 ウマ娘でもOKと書いてあったが赤字にはならないのだろうか? 

 ドリンクバーでオレンジジュースを注いで席に戻り、マックイーンさんが戻って来たら食べようと思っていると、幸せそうな顔をしたマックイーンさんが()()()一皿ずつ僕と同じサイズの皿を持って席に戻って来たのを見て目を疑った。

 

 

「テイオーすみません、素晴らしい空間が広がっていて選ぶのに時間がかかりましたわ」

 

 

「そ、そうですね」

 

 

 これ選ぶとかそういういうレベルの種類と量じゃないと思うんですが……。

 もう目についたスイーツ全て乗せるようなことをしない限りこんなことにはならないだろう。

 それを言わないのはお約束。

 さっきまで食べるかどうか躊躇していたウマ娘と本当に同じウマ娘なのだろうか。

 気にし始めたらきりが無いのでもうスイーツを楽しむことだけに集中しよう。

 

 

「それでは頂きますわ」

「頂きます」

 

 

 

 

 ________________

 _____________

 _________

 

 

 

 

 

 

「あぁ……先程までのわたくしは何をやっていたのでしょう……」

 

 

「美味しかったから良いじゃ無いですか」

 

 

「それとこれとは違いますわ……

 明日からまたダイエット頑張らないといけませんね……」

 

 

 僕らはスイーツ食べ放題を存分に楽しんだ。

 それはもう存分に。

 その結果がこれだ。

 僕には幸福感で満ち溢れ、マックイーンさんは後悔と絶望で打ちひしがれている。

 それにしても、僕もここまで満腹と言える満腹になったのは、いつも走れるようにと一歩手前で止めていたので久しぶりだ。

 晩ご飯はいつもより少なめでも良いな。

 

 あぁ、そうだ。

 これから軽く運動しようかな。

 マックイーンさんも一応誘っておこう。

 

 

「マックイーンさん、えっと、これから軽く、走りませんか?」

 

 

「あら、誘ってくるなんて珍しいですわね。

 もちろんよろしいですわ。

 ダイエットもしなくてはなりませんし、可愛い後輩の誘いですもの。

 快く承諾するのが先輩と言うものでしょう?」

 

 

 良かった。

 一応で誘ったけど、断られたらつらい。

 ふぅ……と安心しながら歩きだしていると、

 

 

「そういえばテイオーはわたくしと会う前までは、何をやっていたのですか?」

 

 

 と、向こうから質問してきた。

 

 

「ゲーセンでダンスゲームしてました」

 

 

「あら、テイオーにも趣味があったのですね。

 てっきり走ることと、はちみーにしか脳が無いと思ってましたわ」

 

 

 流石にそれは言い過ぎでは無いか? ……そうでも無いな。

 確かに僕には走ることと甘い物とゲームしか今のところない。

 

 

「僕はどーせ走ること以外の時間は、はちみーとゲームしかないつまらないウマ娘ですよ」

 

 

「あら、そんなことは無いと思いますわよ。

 貴女の走りは称賛に値するようなものですわ」

 

 

「え? あ、ありがとうございます…」

 

 

 突然褒められて何だか照れくさい。

 両親以外に面と向かって言われるのはこれまで経験してこなかった。

 しかし、あのストーカーだと思っていた先輩とこうやって昼ご飯を食べることになるとは思わなかったな。

 そもそも誰かとご飯を食べるということがあまり無い。

 ちょっとは僕も成長しているのかもしれない。

 こうやって街中で二人で歩くのも隣にいるのはマヤノだけで、しかもその回数も両手で数えられるほどだった。

 

 

「何感慨に耽っていますの?」

 

 

「いや、話し相手が増えたなぁ……って」

 

 

「増えたって……テイオー、友達とかいらっしゃらないのですか? 

 まぁ、普段の様子からどんな感じかは何となく察せますが」

 

 

 煽られた。許せん。

 どうせこのストーカーさんにもいないだろうに。

 

 

「マックイーンさんも少なそうですね。

 喋り方堅いしお嬢様すぎて近寄りがたい雰囲気ありますから。

 それに僕と同じぐらいトレーニングしてたら友達と遊ぶ時間なんて無いことぐらい分かります」

 

 

「わたくしにも友達ぐらいいますわよ? 

 少なくとも貴女よりは多い自信がありますわ」

 

 

 売り言葉に買い言葉。

 お互いの交友関係の少なさを使って言い合うが、それはどんぐりの背比べみたいなものだろう。

 

 

「マックイーンさん、戦う相手は選んだ方が良いですよ。

 こんなコミュ障に勝って喜んでたらもう人生負けてます……」

 

 

 僕の友達なんて、マヤノと会長、マックイーンさんとエアグルーヴさんで終わりだ。

 たったの4人だ。

 マックイーンさんやエアグルーヴさんも僕は友達だと思っているが、向こうが思っていなかったら怖いので「僕たち友達ですよね?」とは聞けない。

 コミュ障でこれを聞ける人はいないと思う。

 何だか虚しくなってきた。

 

 

「こ、これ以上この話をするのはやめにしましょう……! 

 クリスマスなのにこんなに虚しい思いをする必要は無いはずですわ……」

 

 

「そうですね……」

 

 

 その後も他愛もない話をしながら学園まで歩く。

 クリスマスということもあるのか、ウマ娘とトレーナーの二人でカップルみたいに出掛けてるのを多く見かける。

 皆幸せそうな顔をしている。

 僕たちだってスイーツ食べて幸せだから幸福度は負けてない(?)。

 余りにも多く見かけるのでふと、マックイーンさんに恋愛とか興味なさそうですねと言ってみたら、それは貴女も同じでしょう? と返される。

 僕に恋人が出来る未来なんて想像出来ない。

 目の前のことでいっぱいでそんな余裕がないからだ。

 

 僕たちウマ娘は線香花火みたいなものだ。

 今、綺麗に光り輝いていても次の瞬間落ちているなんてよくあることだ。

 だからこそ、今を、少し先の未来を、強く光れるように頑張る。

 誰の記憶にも残らない、弱い光だったとしても。

 特に僕は目標より後が見えていない。

 もし、目標が無くなったら死んでしまうのでは無いか? 

 そう思うこともしばしばある。

 今を生きることに精一杯だ。

 (ボク)には才能があるが、()には才能がやはり無かった。

 その矛盾からこの身体にある才能を最大限活かしきれなくなってきた。

 必死に必死に進もうと毎日もがいているが、じきに壁にぶつかる。

 このままだと僕は強くなれるかもしれないが、最強には、頂点には辿り着けない。

 

 

「マックイーンさん、もっと才能が欲しいって思ったことはありますか?」

 

 

「…えぇ。でもわたくしは満足しておりますわ。」

 

 

「僕はですね、もっと欲しかったです。

 ずっと昔から今までずっと欲しいと思って生きてきました。

 幸い僕にはある程度の才能は有りました。磨けば才能は育つ、そう思って今でも頑張ってます。

 

 でも、いつか来るんです。

 才能が足りなくて行き詰まる時が。

 多分、僕はもうそろそろです。

 今、周りの子たちよりも速く走れているのはただ僕の練習量が人より多いから。

 レベル99まで僕が周りより早く行っているだけで、僕より才能のある人もレベル99になったとき、きっと勝てない。

 絶対に誰にも負けたくないけどいつか負けてしまう。

 才能があれば。

 そう嘆くときが迫って来るんです」

 

 

「そうだとしてもテイオーは走り続けるのでしょう?」

 

 

「当たり前です。

 勝つ可能性がゼロでは無い限りどんなことをしてでも勝ちを狙う。

 それが、僕。

 それにまだ完全に負けた訳じゃない」

 

 もう分かっているんだろう()

 皇帝に届くためには現状のままでは無理だって。

 ねぇ、答えてくれよ。(ボク)

 

 

「ねぇ、マックイーンさん、僕が僕じゃなくなったらどう思いますか?」

 

 

「テイオー? 貴女何を言ってますの?」

 

 

「ごめんなさい、何でもありません。

 今言ってたことは忘れて下さい。

 あ、もうすぐで学園着きますね。

 着いたら寮に寄ってジャージに着替えるで良いですよね?」

 

 

「え、えぇ……」

 

 

 これは、マックイーンさんに言うことでも無かったか。

 勢いでどうにか誤魔化す。

 寮の玄関で一旦別れて部屋に戻る。

 マヤノは出かけるって昨日言っていたので部屋には誰もいない。

 

 もう()だけじゃ駄目なんだ。

 (トウカイテイオー)の走りが必要だ。

 なぁ、トウカイテイオー( ボク )

 

『どうしたの? トウカイテイオー()?』

 

 私は(ボク)のようになれるかな? 

 

『そりゃあもちろん! 

 なんだって(ボク)は無敵のトウカイテイオー様だよ?』

 

 良かった。

 僕はまだまだ強くなれるはずだ。

 良ければ君の走り方を僕に教えてくれないかな? 

 

『……』

 

 返答が無い。

 どうやら教える気は無いようだ。

 どうしてだ、勝つためには君の力が必要なのに。

 

『……ボクの走り方は極力使わない方がいい。

 君は君の走り方で勝つべきだよ』

 

 何でだ。何で。

 この身体に最適化されているのが君の走りだろう? 

 僕の走り方が燃費が悪いのだってそうだ。

 僕の走りでは長距離は天才たちには勝てない。

 

『そうだとしてもボクの走り方は使うべきじゃないよ。

 使うとしても最小限だ。

 最後の直線ぐらいは力を貸すからさ、ね? 

 ほら、そろそろ行かないとマックイーン待ってるよ? 

 中々来ないから心配してるかもね』

 

 話を終わらせられた。

 どうして使うべきじゃないんだろう。

 あぁ、分かってるよ。(ボク)

 何か僕には見えていない欠点がある。

 そうで無ければあそこまで拒否されることは無いだろう。

 

 でも、勝つためには。

 勝つためには使えるものは使わないと。

 今度、力を貸してくれた時に技を全部盗もう。

 僕自身があの走り方を身に付けるんだ。

 才能が無い僕が簡単に勝てるほど皇帝は弱くない。

 皇帝だけじゃない。

 他にも大きな壁は沢山ある。

 

 それはそうと(ボク)が言ってた通り、マックイーンさんを結構待たせてしまった。

 急いでジャージに着替えて寮の玄関に向かう。

 玄関にはマックイーンさんがちょっとムスッとした顔で待っていた。

 

 

「全くもう、遅いですわよ。

 テイオーが中々来ないので先に行ってしまおうかと思いましたわ」

 

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 

「そんなに怒ってませんわよ。

 ほら、良いから行きますわよ」

 

 

 先に玄関から出る先輩をあとから追いかける。

 この日、学園に来てから誰かと初めて一緒に走った。

 現実から逃げるため、強くなるため、本能に衝き動かされて走っていた僕には新鮮なことだった。

 

 

 

『君の努力が報われる時は、いつか来るよ。

 君には()()は似合わない。

 これまで積み上げてきたものが君の背中を押すんだろうね。』




これにて1つ区切りです。
次回、又は次々回から物語が少しずつ進んで行く予定です。
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