サブタイが思いつかないので初投稿です(大嘘〉
前半戦が0-4で終了し、数分のハーフタイムが取られる。
涼しそうな顔で休憩をとるエンシャントダークの面々とは真逆に、アンリミテッドシャイニングは殆どが未だに息が乱れていた。
強力なシュートを受け続けた蛇野。執拗にシュウに甚振られ続けた白竜。数々のパスに翻弄され続けたその他の面々。これらの要因によってこの差が形作られている。
「………」
それによって生み出されたのは、沈黙。
試合で圧倒され、こういった差でもプライドを傷つけられる。一つ一つが小さくても、それが沢山積み重なったのだからこうなるのも必然的なものだった。
「………ほら、まだ折り返しだ!後半頑張れ――ば―――」
この暗い空気に耐えられなくなった白竜が、空気を変える為に口を開く。だがすぐに皆から睨まれ、次第に弱弱しくなっていった。
―――お前が点を決めてくれれば、もっと楽なのに。
―――お前のせいで、こうなってるんだよ。
白竜に向けられた視線からは、こういった負の感情が容易に読み取る事が出来た。勿論純粋に頷いてくれる者も少なからずいるが、殆どの視線が負の感情を含んでいる。究極を目指している者達にとって、こんな大事な時に調子を崩してしまった白竜という存在は邪魔以外の何物でもないのだから。
結局このギスギスとした空気のまま、ハーフタイムが終了。皆自分の持ち場へと戻っていく。
一人、また一人とベンチを離れていき、この場に残ったのは白竜と蛇野のみだった。
「白竜………」
「大丈夫。後半も全力を尽くすよ」
蛇野の言葉を遮るように、そう言葉を漏らす白竜。
どこか悲しみを纏ったような表情を浮かべ、自分のポジションへと戻っていく白竜。その背中を見つめる蛇野。彼の視界には、以前までの白竜が持つ聖獣の化身とは真逆の、悪魔のような化身が一瞬映ったような―――そんな気がした。
エンシャントダーク側からの後半戦開始。カイからボールを渡されると、シュウはそのまま白竜の方へと歩いてくる。
それに疑問を覚えて立ち尽くしてしまった白竜をよそに、化身を発動させた青銅と帆田がボールを奪おうとシュウと対峙。だが、彼の発動させた《ダークエクソダス》が邪魔と言わんばかりに二人を薙ぎ払った。
そしてその歩みは、白竜の目の前で止まる事になる。
「………白竜、何故笑っている―――何で楽しんでるんだよ」
「……?」
その場に立ち尽くす白竜へと紡いだ感情は、“憤怒”だった。
言葉の意図が分からないと言うばかりにこちらを見つめる白竜を見て、シュウの必死に隠していた怒りは爆発した。
足元のボールを浮かせ、怒りのままに化身の力を纏ったシュートを白竜に向かって放つ。
「ぐぁぁぁっ!」
当然白竜がトラップできる程度の威力ではなく、白竜を吹き飛ばすした後に悠木の足元に落ち着いた。
ここは空気を読んでおいた方が良いと判断した悠木は自身の化身を発動し、体勢を立て直した白竜へとシュートを放つ。
「魔宰相………ビジョップ!はぁぁぁっっ!!」
「うあぁぁっ!!」
白竜を再び地に倒したシュートは、化身を発動させた林音の足元へと収まっていく。そしてシュートを放ち、再び立ち上がった白竜を吹き飛ばす。カイへと渡り、彼もまた白竜を吹き飛ばした。
エンシャントダークで化身が使える4人が、白竜を囲んで容赦なくシュートを打ち込んでいく。化身の力が上乗せされたシュートに、この世界に転生してからまだ日が浅い白竜は反応こそできるが、避ける事は適わなかった。
「白竜、サッカーは楽しいと思える遊びなんかじゃない。人の価値を図る、ただの道具でしかないんだよ」
「ぐっ――うがぁッ――!」
「君が一番究極を目指していたよね。なのになんで、サッカーを楽しいと思っているんだ?」
ボールが自身の足元に帰ってくると、シュウは吐き捨てるように言葉を紡ぐ。
一拍置き、心の苛立ちを吐き捨てるように口を開いた。
「君の余計な感情で、僕達を―――皆を混乱させるなよっっ!!」
憤怒を露わにして上空へと飛び、背後に聳え立つ暗黒神が振り下ろす斧に合わせて蹴り落とす。
シュウの心情がそのまま具現化したような。そう思ってしまうほどに、溢れ出す暗黒のオーラからは大量の負の感情が感じられた。まるで、シュウにとっての忌むべき対象が白竜に移り変わったかのように。
「魔王の斧ッッ!!!」
凄まじい威力で放たれたシュートは、それ相応の速さも併せ持っている。
例えシュウがかなりの上空から放ったとしても、ボールが白竜の元にたどり着くまでに2秒もかからない。故に、このシュートに巻き込まれるのは白竜ただ一人。元々制裁のようなものだ。白竜以外を巻き込んでしまっては意味が無い為、その辺りはシュウは考えていた。―――考えていた、筈だった。
白竜がシュウ達に翻弄されてた時、アンリミテッドシャイニングのメンバーは何もしなかった。何も出来なかったと表現した方が良いだろうか。それぞれの瞳に映る、痛ぶられる白竜。これに介入しようとしたら自分も同じ事をされるのではないかと、恐怖心で足が動かなかったのだ。前半戦を共に戦い、今の白竜に対しては嫌悪感しか生まれなかったのも相まって、結論として白竜を助けに行く事は出来なかった。ただそれだけの事。
だが皆がそんな状況に陥っていても、ある一人だけは白竜を助けようと動いていた。
「ぐあぁぁぁぁッッッ!!!」
一つ、ゴットエデンスタジアムに断末魔が轟いた。
死を、覚悟した。
シュウが踵堕としのような感じでシュートを放ってくる。〈魔王の斧〉は確か原作でもかなり威力が高く、アニメでも最強格のように見てて感じていた。そんなシュートが俺の方へと迫ってくるのだから、それはもう死を覚悟しても可笑しくはないと思う。サッカーで死ぬとはこれ如何に。
ああ、折角のイナイレの世界なのにもう死ぬのか。そう、本気で思っていた。
やりたい事もまだやりきれてないし、まず主人公である天馬にも会ってすらいない。もしもイナダンの件があったら、雪村救済とかもやりたかったな。てか雪村ってあの後どうなったんだろ。ちゃんと戻してもらえたのかな?
………現実逃避していても仕方がないな。そう思って、瞼を閉じる。先まで虐められてて最早感覚ないけど、痛いのはいつだって嫌だ。それは全人類共通だと思う。
そう、覚悟を決めたのに。
「ぐあぁぁぁぁッッッ!!!」
―――
それと同時に、ドサッと倒れる音。恐る恐る目を開けてみると、倒れ伏す蛇野の姿があった。
「っぁ―――」
ふと、そう言葉が零れる。
脳がこの状況を受け取らない。受け取れない。受け取れる、訳が無い。
そう無意識に理解できるほどに、俺はショックを受けていたんだろう。
―――俺のせいで、蛇野は大怪我をおってしまった。
そんな起こり得る最悪の未来が、俺の脳を渦巻いていく。
自分のせいで他人が傷ついた。脳は認めたくない筈なのに、倒れ伏す蛇野を捉える視界が逃がすまいと現実を突きつけてくる。
「っぁ」
身体の芯から何かが出て来るような感覚に、そう無意識に呟く。
気づけば俺の背後には黒い龍が聳え立っていて。振り向かなくてもその姿が脳に映し出された。
それは、原作白竜の化身―――《シャイニングドラゴン》と似て非なる姿。聖獣が堕ちたかのようなその容姿は、無意識だとしてもこの化身を発動させている俺自身でも恐怖を感じる程。それ程までに禍々しい姿をしていた。
恐怖や不快といった言葉では言い表せないような、化身に乗っ取られそうなそんな感覚に、徐々に意識が薄れていく。消えかかっていく。
化身に乗っ取られたら二次被害が広がってしまい、更に皆を不快にさせてしまうだけなのに。それなのに俺の身体はもう“楽”を求めてしまっていた。
「―――暗黒龍………ダークバハムート………」
知らない筈のその名前を、無意識にはっきりと口に出していた。
(なんだ………この化身………)
白竜の背後に現れた禍々しい化身を一目見るなり、シュウの頬には冷や汗が零れる。
この禍々しい化身―――ダークバハムートから漂うオーラは《シャイニングドラゴン》の比ではなく、《ダークエクソダス》にも勝るとも劣らない程。思わずシュウが後退りしてしまっても何も可笑しくはない。
「見た事ない化身だが関係ねぇ!ギャロップ………バスタァァッ!!」
ボールをキープしていた林音が、《ナイト》と共に化身シュートを白竜へと放つ。対して白竜は何も動じずに、さも当たり前のようにトラップしてみせた。
「なっ!?」
「…………」
林音の口から驚愕の言葉が零れるも、白竜の表情は変わらない。化身に意識を乗っ取られている彼の脳には、もはや理性は残ってなどいなかった。
トラップしたボールが足元に落ちた瞬間、白竜はそのボールを軽く蹴り放つ。軽く蹴ったとは思えない程に威力が高く、どんどんと加速していくシュート。それがゴール前に待ち構える芦矢の元へと放たれた。
「キル………ブリッジィィィィッッ!!!」
先程の〈ホワイトハリケーン〉を相手にした時とは真逆の、己の有り余る力の殆どを込めた必殺技。だがそれは数秒の拮抗の末、無情にも破られた。
「まだだっ!」
芦矢が全身全霊で止めようとしたのが幸いしたのか、人間には有り得ない位の速度でゴール前へと戻ってきたシュウがその足でシュートを受け止める。またも数秒の拮抗の末にボールを蹴り返す事に成功し、そのボールは枝木の元へ。
「悠木!」
「ああ!」
化身ドリブル技を持っている悠木に渡した方が良いと判断した枝木は、そのままダイレクトで悠木へとパス。だが悠木がトラップした頃にはすぐそばにまで白竜が迫っていた。
「ッ……!ダークスペ―――なにっ!?」
問答無用とばかりに悠木からボールを奪う白竜。それを見越してか、カイが《ルーク》と共に立ちはだかる。
「ストロング………タワァァァッ!」
カイが全身全霊の力を注ぎこんだ何重にも重なる番人の塔は、ただ我武者羅に走る白竜を止めるには容易い。容易い筈だった。白竜がただ前へと進むだけなら。
「なっ!?」
―――永遠に塔が高くなっていくなら、それを上回る速さで飛び越えれば良い。
〈スカイウォーク〉の要領で上空へと飛ぶ白竜。化身の力も有っての事か、すぐに塔の頂上へと追いついて余裕で飛び越える。そしてそのまま、ボールへと化身の力を注ぎこんでいく。
曰く、聖獣と暗黒龍は一心同体らしい。
曰く、表と裏に分かれていて同一個体との事。
曰く、暗黒龍の力は聖獣の比にもならない程。
―――邪龍の咆哮。
力を注ぎ終わると共に、白竜はそのボールを蹴り落とす。その姿はさながら、今までの―――原作の白竜の〈ホワイトブレス〉の色違いのようだった。
「させるかぁぁっ!」
白竜が蹴り落としたシュートに被せるように、化身の力を全て込めたシュウのブロックが入る。チーム内でも飛びぬけて化身の練度が高いシュウでも、徐々に押し込まれていく。暗黒龍と暗黒神の戦いなら、それは勿論暗黒龍の方が勝つだろう。だが―――
「俺達の力をシュウに注ぎ込め!」
「こうなったら意地でも止めるぞ!」
―――化身ドローイング。
化身とは人間の気が実体化したもの。それならば、自身の化身の力を一人に集める化身ドローイングは人間全員が出来る筈だ。
シュウの元へとエンシャントダーク全員の気が集まっていく。背後の魔王が斧を振り下ろすと共に、シュウはいつもとは真逆に―――下から上へと蹴り返すように、自身の化身技を放った。
「魔王の斧ォォォッッ!!!」
だが、それでも尚互角。暗黒龍はその程度では止まらない。11人分の気が合わさった暗黒神の力も、暗黒龍と互角に押し上げるだけに過ぎなかった。
「うおぉぉぉぉぉッッ!」
劣勢な事に変わりがないとしても、シュウは諦めなかった。諦められなかったといった方が正しいだろうか。こんな劇的な変化をした白竜が許せなかった。サッカーを―――間接的に妹を殺した魔の球技を。それを楽しいと感じているであろうその顔が、とてつもなく憎かったから。
そう、全ては妹の為。そう言い聞かせて今まで頑張って、耐えてきたのに。
(もうやめて!お兄ちゃん!)
声が、聞こえた。
シュウの意識が逸れたその一瞬。暗黒龍が暗黒神を打ち倒し、並の化身シュートとは比べ物にならないぐらいのシュートがゴールへと放たれた。
「キル―――ぐぁぁぁぁぁッ!!!」
芦矢が必殺技を出す暇もなく、暗黒龍の力が注ぎ込まれたシュートがゴールネットへと突き刺さる。
痛みを上げる身体に鞭を打ちながらなんとか立ち上がった芦矢の視界に入ったのは、地面へと倒れ伏している白竜とシュウの姿だった。
かくして、試合続行の為の人数が足りない事もあって、この練習試合は1-4でエンシャントダークの勝利という形で終わりを告げたのだった。
Q.アンリミの人達少ししか描写されてなくね?
A.エンシャントダークが主人公なんでしょ(適当)
・白竜
なんか変な方向に鬱った。そしたら何か真っ黒なシャイニングドラゴンが出てきた。なにこれ(本音)
・シュウ
妹の事とか滅茶苦茶溜め込んでるからサッカーを楽しんでる白竜に怒りをぶつける。
白竜が転生者って事は知らないからね。仕方ないね。
・蛇野
※蛇野はこの小説のヒロインではありません※
・エンシャントダークの方々
なんかシュウが怒ってるからシュウに合わせた。真相を知ってるのは多分カイだけ
・シュウが聞いた声
一体何処の妹なんだ………
・暗黒龍ダークバハムート
作者「せや!折角白竜に転生させたんだから化身も原作の面影残すか!」
こんな感じで生まれたシャイニングドラゴンの色違いです。