シャニマスレ◯プ!プロデューサーと化した野獣先輩   作:ここあらいおん

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先日新型コロナウイルスに感染してしまいましたが、淫夢動画を見てたら無事回復したので初投稿です。


シーズン3 : ガラスの嘘

 

 体調もすこぶる良くなり、無事に感染症の疑いが晴れたため自宅へと戻ってきた小糸。

 病院の一室で過ごした昨晩は殆ど眠ることができなかったのもあり、自室に戻った小糸はそのままベッドに直行して泥のように眠った。深い眠りの中で、小糸は昨日からずっと頭に居座り続けている“あの”アイドルに出会った。

 夢の内容を小糸は殆ど覚えていない。“あの”アイドルが夢に出てきたという微かな記憶だけを残して、目が覚めると同時に夢の内容はすっぽりと記憶の中から消えてしまったからだ。

 深い深い眠りから目覚めると、いつの間にか部屋は闇に染まっており、窓の外から差し込む街灯の心許ない灯りだけが部屋に差し込んでいた。

 今は何時だろうか、時計を確認しようとポケットに入れたままになっていたスマートフォンを取り出すも、小糸の操作に画面は一向に反応を示さない。この時になってようやく昨晩からスマートフォンの充電が切れていたことを思い出し、小糸は近くに佇んでいた充電コードを手繰り寄せ、真っ暗なスマートフォンに繋ぐ。暫くしてスマートフォンを再起動させると、すぐさま複数のチェインの通知が小糸を出迎えてくれた。そのLINEの殆どは小糸の安否を気に掛ける田所からのもので、その時になってまだ検査結果を伝えていなかったことにも気が付いた。

 心配をかけているだけに早く検査結果を伝えなければ、その一心で田所から届いた直近のチェインに返事をしようとした時だった。最後のチェインの文面が目に止まり、返信をしようとしていた指を思わず止めた。

 

『あ、そうだ(唐突)。お前さ、なかなか親に挨拶させようとしなかったよな?』 

「––––んっ、んにゃぴっ?」

 

 田所から最後に届いたチェインは、それまでの体調を心配するLINEとは全く脈絡がない内容だった。

 だがその一見意味不明に思えるチェインに隠された本質を理解するよりも先に咄嗟に口から溢れた可愛さの欠片もない悲鳴。現役JKが使っちゃいけないような淫夢語録が口から無意識に飛び出てきて初めて、小糸はその文面の意味を理解し、絶句した。

 

「こここここ、これってまさか……」

 

 世界は呆然とする小糸だけを取り残し、時の流れが止まったかのような静寂が訪れる。そしてすぐさま、暴れ馬のように激しく脈打つ鼓動が、時が止まっていた世界を強引に動かし始めた。

 ずっと頭の片隅に隠していた最悪な事態が、脳裏にほとばしる。

 絶望に打ちひしがれる小糸に追い討ちをかけるように、震える手のひらの上のスマートフォンが揺れ始めた。

 

「ふぁっ!? た、ターミナルさん!?」

 

 まるで小糸がチェインをチェックしたのを見計らっていたかのようにかかってきた田所からの電話。

 頭が真っ白になるような衝撃が引き金となり、背中から「ぶっちっぱ」といった排出音が聞こえてきそうなほどの勢いで、冷や汗が湧き出てくる。この時点で小糸は確信がついた。 田所が何かしらの経緯を経て、小糸のついた嘘に勘付いているのだと。 

 いつかこの時が訪れることは頭で理解していたものの、こうも不意打ちのようなタイミングでこられてしまうと、一瞬で平常心を保てないほどの動揺に飲み込まれてしまう。

 後ろめたさ、後悔、恐怖––––、様々な感情がぐしゃぐしゃに入り混じるなかで、小糸はもう言い逃れできないことを覚悟し、震える指で通話ボタンをタップした。

 

「……もっ、もしもし」

『––––お、大丈夫か大丈夫か〜?』

 

 小糸の心配とは裏腹に、スマートフォンのスピーカーから聴こえてくる田所の声は、まるで今から日焼けをしないかと誘ってきそうなほどカジュアルで、いつものようにネットリとした喋り方だった。

 それは特別怒っているわけでも、軽蔑しているわけでもない、ただただ何処にでもいるホモの口調だ。

  

「だ、大丈夫ですっ! 検査結果も陰性で体調も良くなりました!」

『そう(無関心)』

「えっ……(困惑)」

 

 心配をしているはずなのに素っ気なかったりと、相変わらず要領を得ない田所の会話。だが普段通りのはずなのに、小糸はこの時ばかりは田所のセリフが心なしかぶっきらぼうにも聴こえた。

 その口調が、激しく揺れていた小糸の鼓動のスピードは更に加速度を上げていく。そしてそんな小糸の動揺を電話越しとはいえ安易に見逃すほど、田所は鈍感な漢ではなかった。

 

『あっ、お前さ小糸さ、さっきヌッ……送った俺のチェイン、なかなか返事しなかったよな?』

「い、いや、そんなこと……」

『嘘つけ、絶対無視してたゾ』

 

 ホモ特有の脈絡のない唐突な切り口で、ズカズカと小糸の胸を田所の言葉が抉っていく。

 隠していた嘘を面と向かって問い詰められているからなのか、はたまたあまりに理不尽な言い掛かりをつけられているからなのか、何が何だか分からないまま小糸は汚らしい淫夢語録の集中砲火を浴びせられることとなった。

 

『おい、肝心なこと言い忘れてるゾ』

『何とボケてんだ、ここあらいおん(意味不明)』

『お前さ、親に黙ってアイドル活動して恥ずかしくないの?』

『ほらほら、認めとけよ、認めとけよ〜』

「やめてくれよ……(絶望)」

 

 淫夢語録とはもともとホモビで使われたセリフ集である。

 今でこそ淫夢語録は世間でも幅広く認知され、世界でも有数のコミュニケーションツールの一つとして広まっているものの、もともとはホモビを見てゲラゲラ笑う悪趣味を持ったクソガキたちが面白おかしく世に広めただけであって、表社会で安易に使われていいはずの言葉ではない。

 故に小糸のような思春期真っ只中の女子高生が、清廉潔白とはまるで正反対の淫夢語録の集中砲火に耐えられるはずがなかった。

 

「––––すみません、私……。親にはアイドルやってること内緒にしてました」

 

 とうとう小糸は親に黙ってアイドル活動を行っていたことを自白してしまった。そしてこれ以上汚い淫夢語録の集中砲火を浴びたくない一心で、これまでの経緯を説明した。

 

 親の勧めで中学校は私立に進学し、幼馴染たちから離れて孤独感を感じていたこと。

 本当は私立の中学には行きたくなくて、だけど自分の意思をはっきりと伝えることができなかったこと。

 透や雛菜がアイドル活動を始めたことで、また自分だけが取り残されてしまうのではないかといった不安から自らもアイドルになったこと。

 アイドル活動を高校の部活動だと言い張って、これまで誤魔化してきたこと。

 

 これまで誰にも打ち明けてこなかった小糸の秘密。田所はその秘密を告白されても、時折「はえ〜」、「ンンー、オホッ!」などと丁寧な相槌を打つだけで、小糸の話を遮ることなく聞き手に徹し続けていた。

 小糸は283プロに入社する際、両親の許可を取らずに自らの意思だけで勝手に事を進めてしまった。両親に相談したところで引き止められる事は分かりきっており、それでもなおアイドル活動を幼馴染たちとしたかったが故である。

 だが小糸は未成年であり、当然アイドル活動をするには保護者の承認が必須だった。283プロの契約書にもこれは記載されており、保護者の同意なしでは活動ができないことも明記されている。そして小糸は保護者の承諾を取らないどころか、自らの手で保護者のサインを偽装し、提出してしまっていた。この行為は小糸が考えている以上に深刻な問題であり、現実問題として刑法第159条の私文書偽造罪にあたるれっきとした犯罪行為だった。

 腹が減ったから配達中のいなりを無断で食すのと同等レベルの犯罪なだけに、事務所の立場としては小糸の行為を当然見逃すわけにはいかない。

 

「わ、私が黙ってアイドル活動をしていたことは反省してます! だ、だから親にだけは内緒にしててもらえないでしょうか……」

 

 だがこの期に及んで、小糸は頑なに親にアイドル活動をしていたことを打ち明けようとせず、田所がどれだけ説得しても、この時ばかりは小糸らしからぬ頑固な姿勢を崩そうとしなかった。

 必死に抵抗を続けるのは、親に黙ってアイドル活動をしていたことがバレたら最後、間違いなくアイドル活動を辞めさせられることになると分かっていたからだ。小糸がアイドルを辞めるとなると間違いなく幼馴染とは中学時代同様に疎遠になってしまう。あの頃の孤独感を味わっている小糸にとってそれは死活問題であり、是が非でも避けなければならない事態だった。

 

『俺も後からちゃんと説得するからさぁ、頼むよぉ〜』

「だっ、ダメです! 本当に困りますっ!」

『こんなんじゃ(まともなアイドルとして)商品になんないよ〜(棒読み)』

「そ、それはもっと私が頑張るので!」

 

 小糸自身も自らが犯した過ちの重さを理解している。そして事務所側が、それを迂闊に見逃すことができないことも。だけど自分の居場所を守るためにも、どうにかして親に摘発されることだけは避けたかった。

 田所も何度も小糸に対してアイドルを辞めさせたいわけではなく、今後アイドルを続けていくためにも親の許可をちゃんと取りたいのだと説明をした。だが小糸からすればただでさえ自分の立場が不利な上に、こんな汚物完全体が話し合いに参加すると事態が余計に悪化するようにしか思えなかった。百歩譲って天井社長やはづきさんならまだしも、ネットどころか世界中でイキ顔を見られた男を親に会わせたくないと思うのは、至極当然の考えである。

 だからこそ、子供のような駄々をこねてでも、小糸は必死に抵抗を続ける他なかった。

 

『だからこんなんじゃ商品になんねぇんだよ(棒読み)』

「すいません許してください! 何でもしますから!」

『ぬっ?』

 

 互いに一歩も譲らないまま、まさに「ああ言ったらこう言う」の応酬で暫く埒のあかない言い争いが続いた時だった。咄嗟に小糸が発した「なんでもしますから」の言葉を受けて、田所の口が不自然に閉ざす。

 その瞬間、小糸はしまったと自分の発言をひどく後悔し、血の気が引いていく感覚を覚えた。必死になるあまり思わず口にしたこの言葉が、自分を圧倒的に不利な立場にする言葉だと、今更ながら気付いたからだ。

 

『ん? 今なんでもするって言ったよね?』

「ん、んにゃぴ……」

 

 無駄に勘だけは鋭い田所が、小糸の失言を見逃すはずがなかった。

 そして、水を得た魚の如く、イキイキとした田所が小糸を畳み掛ける。

 

『よっしゃ、動物裁判や!」

「ぴ、ぴぇっ! 裁判はやめましょうよ!」

『は?(威圧) 大丈夫だって安心しろよ』

「ぬわあああああん!!」

『お楽しみはこれからだゾ〜』

 

 小糸の発狂虚しく、こうして緊急事態宣言解除後に田所と小糸、小糸の保護者を交えた動物裁判を開廷する事が決定してしまった。

 緊急事態宣言の解除予定日はあと2週間後、それまで小糸は不安で夜も眠れない日々を過ごすことになったのだった。

 

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