シャニマスレ◯プ!プロデューサーと化した野獣先輩   作:ここあらいおん

6 / 14
うぃーす、どうもここあらいおんです。
仕事が忙しくてですね〜、ほれでま執筆しなきゃいけなんですけどもいまいちね~やる気がないんですよね
仕事忙しいし~ちょっとめんどくさいしで、この作品はここで終わらせていただきます(語録無視)


シーズン4 : 敗退コミュ

 田所の迫真の演技とイキ顔を見たあの日から、円香は一変。

 日々のレッスンはもちろん、課外でのアイドル活動も今まで以上に精力的に取り組むようになった。アイドル活動に夢中になる円香の姿からは、それこそかつて路上でのイベントで愛想よく振るまうアイドルの笑顔を「安っぽい」と一蹴した頃の面影は見事なまでに消え去り、 次第に女子高生の年相応であると同時に“新人アイドル”でもある、等身大な笑顔が見受けられる時間も長くなり始めていた。

 依然として円香の口数は少なく、まだまだ掴み所が分からない部分は多い。だが未だかつてないほどの生き生きとした表情でアイドル活動に向き合う円香の姿は、あの日の田所の演技指導が彼女に多大な影響を与えたことをしっかりと証明しているようだった。

 

 自分の限界を知る怖さより、その限界を超えた先にある世界に興味を持たせる。 

 

 一見、そんな田所の狙いがものの見事に的中した––––……、ようにも思われた。

 だがそれも束の間、田所が良かれと思ってやった行動が後に思わぬ事態を引き起こす事になる。

 

「あの、イキすぎコージーさん」

 

 日頃から円香のレッスンを担当しているトレーナーから声をかけられたのは、W.I.N.G.本戦出場を賭けた最後の予備予選を、いよいよ数日後に控えた日のことだった。

 ちなみに田所がこんな汚らしいあだ名で呼ばれるようになったキッカケは、連日のように一人で自主練に励む円香が鏡に向かって「イキすぎぃ!」と叫んでいた姿を見たトレーナーが、円香自身にその意味不明な言葉の経緯を問いただしたことがキッカケである。

 当事者だけではなく周囲の人間もひどく不愉快にさせる呼び名な気もするが、今までに星の数ほどの蔑称を付けられた田所にとってこれくらいのあだ名はノーダメージでなんのその、何も言わずにその呼び名を受け入れたため、こうして一部の人間の間では“イキすぎコージー”の蔑称が定着してしまっていたのだ。

 

「円香ちゃんのことでご相談なんですが、どうも最近様子が変なようで」

「ふぁっ!?」

「いえ、その、何かが悪いって訳ではないんです。悪いわけではないんですけど……」

 

 予想以上に食い気味の田所に驚きながらも、トレーナーはあくまで悪い報せではないと強調する。

 だけどその割には歯切れは悪く、口から溢れ出る言葉は丁寧に選び抜かれているような気がして、田所はその強調があまり良くない報せの予防線なのではないかと察していた。

 ここ数日、決して付きっきりで円香の様子を見れていたわけではない。 

 だが事務所内やレッスン中の円香の様子を見た限りでは、そこまで危惧するような異変があるようには思えなかった。むしろ取り繕った笑顔の仮面を被っていた当初に比べ、何事も前向きに取り組むようになった今の円香の振る舞いには感心していたほどだ。

 だとすると、トレーナーは何を懸念しているのか。

 最後のW.I.N.G.予備予選が間近に迫った今、例え些細なことでも当然トラブルは避けたい。

 田所の屈強な胸筋の奥に潜む心臓が、嫌な予感を感知する。

 トレーナーが虚空に視線を泳がせ、言葉を詰まらせる時間が長くなるにつれてその不吉な予感は胸の中に滲み始めていた。

 

「本当に最近の円香ちゃん、すごいやる気はあるんです。そのことは私も評価してますし、吸収力も段違いでなんですけど」

 

 褒められているはずなのに、その言葉に含まれた得体の知れない違和感。

 トレーナーがようやく開いた口を再度閉した時、二人だけのいない事務所内に時計の針が大きく動く音が響いた。その音を合図に、トレーナーが自信なさげながらも、おもむろに話を続ける。

 

「あくまで私の印象なんですけど、円香ちゃんはちょっと遠くを見過ぎてるのかなって気がして––––」

「あっ……(察し)」

 

 ひどく抽象的な言葉にも聴こえたが、田所はトレーナーが伝えようとしていたことが分かってしまった。それからトレーナーは、時折田所の持ち前の察しの良さに助けられつつ、自身がここ最近の円香に対して抱いていた懸念材料を断片的に話し始めた。

 トレーナー曰く、最近の円香はどうも何においても必要以上に先走り過ぎている感が否めないらしい。レッスンにしても未だ完璧とは言えない基礎の練習を差し置いて何故か次に段階に進むとしたり、仕事でも今までより数段背伸びをした受け答えをする様子がここ数日でグッと増えたように感じていたそうだ。

 確かにここ最近の円香は別人のように見間違えるほどの変貌ぶりで、今まで以上に真摯にアイドル活動に向き合ってくれている。田所はもちろん、トレーナーとしても当然それは大いに嬉しい変化なのだが、そんな最近の円香は向上心が強すぎるあまり、今まで積み重ねてきた大事な基礎が疎かになり始めているのではないかと心配していたのだ。

 目標を高く設定し、それを目指して努力をする事自体は何も間違っていない。むしろ日々のモチベーションをアップさせる上で、非常に効率のいい方法だということも分かっている。

 それはそうなのだが、実際の円香はまだ事務所に入って数ヶ月の新人アイドルである。今は遠くの目標を追い求めることより、アイドルとしての基盤を作る基礎を固めなければならない大切な時期だった。

 現時点での目標であるW.I.N.G.本戦もあくまで新人アイドルの祭典であって、求められるのはアイドルとして完成されたクオリティではなく、例え未完成で荒削りだったとしても今後の未来を感じさせる可能性だ。そのためにも今の時期はアイドルとしての最低限の基礎を叩き込んだ上で、プラスアルファとして円香自身の個性やキャラクターを強調してW.I.N.G.に臨もうと、トレーナーや田所はそう考えてプランニングしていたはずだった。

 

「何があったのか分かりませんけど、最近の円香ちゃんは今自分がやるべきことが見えていない気がするんですよね」

「それは……、キツイですよ」

「ですよねぇ。何度か私からも声を掛けてはみたんですけど、いかんせんあの性格なので何処まで伝わっているのか……」

 

 きっと円香は田所の演技指導の際に、“ホンモノ”の一流の世界に初めて直に触れ、その世界を、強く追い求めるようになってしまったのだろう。

 あの日の一件は円香の渇き切った心を満たし、これまで抱えていた恐怖を振り払うほどの果てなき向上心を植え付けた一方で、円香の視線を今はまだ遥か遠くにある世界に釘付けにしてしまったのだ。

 遠くばかりを見つめていると、どうしても近くにある大切なモノたちを見落としがちになってしまう。遠くを見つめ過ぎて足元を救われるなんて典型的な本末転倒の話ではあるが、人間は一度でも自分の心を奪い去り、強く惹き込んだ世界をそう簡単に忘れることなんてできない。案の定円香も初めて経験した一流の世界に心を強く惹かれて渇望してしまったあまり、今の新人アイドルとしての自分がやるべきことに集中し切れなくなってしまっていた。

 何事においても基礎は大切な要素だ。言わば基礎は自身の根底から支える基盤そのもので、しっかりとした基盤がなければいくらその上に技術を積み重ねてもハリボテにしかならない。そしてアイドルの世界は、そんなハリボテが勝者になりえるほど甘い世界ではなかった。

 

「……大丈夫でしょ。ま、多少はね?」

 

 一通りの報告を受け、田所はそう安易に返事をした。というより、そう言うしかなかった。トレーナーもまた、示し合わせたように相槌を打つしかなかった。

 だが何かしらの問題に直面した際に具体的な改善策も対策も講じずに述べる「大丈夫」は魔法の言葉でもなんでもない、ただただ無責任極まりないだけの言葉である。この場合の「大丈夫」はあくまで当事者たちの希望的観測を含んだ現実逃避に過ぎず、根本的な問題解決になっていないのは二人とも分かりきっていた話で、当然問題解決から目を背けて「大丈夫」の一言で片付けようとしたその報いはきっちりと払わされる事になるのが世の定めということも理解していた。

 まぁだからと言って一度遠くの世界を知ってしまった円香に「やっぱり忘れて、どうぞ」なんて言ってどうにかなるわけもないのだが。

 田所が良かれと思ってやった行動が結果として裏目に出てしまった以上、もうどうすることもできなくなってしまっていたのである。

 

 そしてというか案の定というか、最後のW.I.N.G.予備予選に参加した数日後、しっかりと事務所には円香の落選通知が届けられてしまった。

 

 

 

「FOO〜↓ 辞めたくなりますよぉ、この仕事」

 

 薄い封筒に入った一枚の落選通知をテーブルの上に広げ、ビール片手に溜息を吐く田所。その様子をテーブルを挟んだ向こう側には事務員のはづきと社長の天井が冷淡な表情で冷ややかな視線をぶつけている。

 田所と円香の力量を図る上で天井は二人に『W.I.N.G.優勝』というミッションを与えた。正直なところ、これはやや高めに設定されていた目標であって、天井の中での最低合格基準は本戦出場だった。いくら二人の実力が未知数とは言え、さすがに本戦にまでは辿り着くだろうと。そう考えていただけに、まさか予備予選で落選通知を持ち帰る醜態を晒すことになるとは天井も全く想定していなかったのだ。

 

「私にはどうして彼女が参加できないのか、ちっとも分かりません……!」

 

 芝居がかった口調のはづきの言葉。円香を気遣うようにも聞こえる言葉だが、その真意は「円香には本戦に出場する実力があったのだから、今回の落選は田所の責任だろうが」というプロデューサーとしての責を問う皮肉しか込められていない。

 田所が入社して数ヶ月、何度注意しても事務所でビールを飲むわアイドル専用のシャワーを使うわ、おまけに黄ばんだクソみたいな色のブリーフ一枚で屋上で日焼けしてるわで、クソステハゲ汚物の数々の奇行と愚行にはづきは心底並々ならぬ怒りを抱えていた。

 どうにかしてこの無能なくせに謎の王者の風格を醸し出す田所のことを事務所から追い出したいと考えていたはづきにとって、今回の予想外の失態は願ってもないチャンスだ。こんな絶好機を前に、畳み掛けないはずがない。

 

「あ、でもプロデューサーさん。さっきこの仕事辞めたいってぼやいてましたよね?」

「んにゃぴ……。そ、それはすみません許してください! なんでもしますから!」

「ん? 社長、今こいつなんでもするって言いましたよ」

 

 どうにかして辞めさせたい事務員と、辞めたいのか辞めたくないのか分からないプロデューサーの鎬の削り合い。そんな仲睦まじい二人のやり取りを蚊帳の外から眺めていた天井は唐突に話を振られ、慌てて考え込んだがこんな捨てるところのないゴミ男にしてほしいことなんて何一つ思い浮かばなくて、結局その有難い(?)申し出を無視する事にした。

 

「お前、担当アイドルのことをどう思っている?」

 

 仕切り直して天井が「クゥーン」と仔犬のような鳴き声で落ち込む田所に問いかける。田所はビールを片手に握ったまま、一度だけ瞼を閉じて質問に答えた。

 

「確かに負けてしまいましたけど……、円香こそが王道を行くアイドルだって、はっきりわかんだね」

「あのさぁ、社長にタメ語で話して恥ずかしくないの? とりあえず土下座しろこの野郎、おう。早くしろよ」

「センセンシャル(土下座)」

「いや、そんなことしなくてしなくていいから(ドン引き)」

 

 相変わらず汚らしい言葉遣いと喋り方ではあるが、田所の眼は初めて出会った際に天井に衝撃を与えたあの日と同じ眼光だった。

 とりあえず聞きたかった言葉も田所の口から聞けて、あの日の眼光がまだ残っていることが確認できた天井は、田所が汚い土下座を事務所で披露する前にとっとと追い出すことを決めた。

 

「そういうことなら私から言うことはない。さぁ、早くその最高のアイドルに会いに行ってこい」

「ありがとナス!」

 

 屋上にいるから、と天井が円香の居場所を告げる前に、田所は感謝の言葉だけを残して屋上に向かって走り出していた。




嘘です。
ちょっとペース落ちるかもですけど、ひっそり頑張っていきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。