シャニマスレ◯プ!プロデューサーと化した野獣先輩   作:ここあらいおん

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更新遅くなってしまい、大変申し訳ございません。
実は理由あって仕事を辞めました。
理由は本気でホモビを極めようと思ったからです。
親と社長にめちゃくちゃ止められたけど絶対俺ならトップになれるって言ってなんとか説得しました。
今日から毎日13時間淫夢視聴します。
これからよろしくお願いします。


シーズン1 : Idol IS GOD

 年明け間もない一月上旬、海外で爆発的な感染拡大を巻き起こした未知の感染症。

 報道当時はメディア越しに広がる外国の異様な光景を対岸の火事だと捉えていた日本も、国内で初の感染者が確認されると状況は一変。日に日に感染者の数は増え始め、その魔の手が日本全体を覆い尽くすのにはそう時間は要さなかった。

 

『本日より、東京を含む7都府県に緊急事態宣言が発令されました』

『全国で新たに確認された新規陽性者は––––』

 

 次から次に増えていく日本国内感染者の数、そして一向に収束の気配を見せない海外諸国の惨状。

 世界各地で世紀末の様相が暫く続いた後、専門家の研究結果によって感染拡大の原因が人同士の接触によるものだと判明すると、特に感染状況が酷い国々は国民に厳しい外出制限を課すことで人流を減らすという原始的かつ単純明快な策を講じることとなる。

 世界各地の都市から人の姿が消えること数週間、感染拡大に歯止めが効かない日本でも、政府はとうとう事実上のロックダウンとなる緊急事態宣言を発令。発令に伴い街から活気は消え、人々は『ステイホーム』の呼び掛けのもと、前代未聞の自宅での引き篭りが推奨される時代が訪れた。

 当然こんな非常事態なだけに、アイドル関係のイベントなんか行えるはずがない。

 283プロに勤務する従業員やアイドルたちも世間の例に漏れず、他人との接触を控えるべく不要不急の外出が禁じられ、長い長い自宅での、終わりの見えない自粛生活を強いられていた。

 

(あたまに来ますよ……)

 

 数年ぶりに日本へと帰国してきたのに––––と、田所はそのタイミングの悪さに文句を言いたくなる気持ちも山々だが、状況が状況なだけに国の要請に従わないわけにもいかない。死ぬほどホモビに出て、死ぬほど男にケ◯の穴を掘られ、自身もまた掘り返し、そんな過酷な下積み時代の結晶とも言える下北沢の自慢のマイホームで独り、田所も自粛生活を送っていた。

 孤独な自粛期間中は当然事務所に立ち入ることが禁じられていたが、一応リモートワークといった形で田所は自宅で仕事をこなしていた。しかし仕事と言えども、その内容は毎朝毎晩自分が手掛けているアイドルたちの体調に変化がないかを確認したり、時たま届く仕事のメールに返事をしたりする程度で、とてもじゃないが丸一日潰せるほどの仕事量ではない。

 莫大に余る時間の中で気分転換にとテレビをつけても毎日同じような感染症に関する番組が永遠と流れ続けるばかりで、誰に会うことも、何処かに行くことも許されない日々。それは日本中に自分のイキ顔を晒された時とはまた違った精神的苦痛をもたらす、気が狂いそうな地獄の日々であった。

 

 そして、自粛生活が始まって約一週間が経過したある日の昼下がり。

 いつものように後輩遠野のケ◯の穴より更に深く自身の正体について掘り下げた「野獣先輩新説シリーズ」や、ごく稀に目を見張るような巧みに練り込まれたストーリー物もある「BB先輩劇場」を視聴しながら、原作にもこれくらいしっかりとした脚本があれば違う脚光の浴び方をしたかもしれないのにと、そんなたらればを考えながら世界一無駄かつ退廃的な時間を過ごしていた時だった。一通のチェインの通知が田所の柔らかスマホを静かに揺らした。

 

「……ヌっ?」

 

 差出人は担当アイドルの一人である福丸小糸。

 どうやら普段から業務連絡やこの自粛期間中の体調確認などで利用しているノクチル四人と田所が加入したグループチェインではなく個人のチェインだったようで、妙なこともあるものだなと、少しだけ驚きながら柔らかスマホを手に取った。こうして小糸から個人のチェインが来るなんてことは、今までに一度足りともなかったからだ。

 

『プロデューサーさん、お疲れ様です。今お時間大丈夫ですか?』

『当たり前だよなぁ? バッチェ暇してますよ〜』

 

 謙虚で丁寧な彼女の人柄が滲み出る文面に相応しいようにと、田所も極力丁寧な文面を心掛けて返信をする。小糸はトーク画面を開いたままにしていたのか、田所が送った返信にはすぐ既読のマークが付いた。その様子を確認してすぐに返事がくるだろうと、田所もトーク画面を開いたまま小糸の返事を待ったが、なかなか次のチェインは返ってこない。

 小糸のことだから何度も文面を考え直しているのか、はたまた丁寧に長文を打っているが故に時間がかかっているのか、画面越しに一生懸命チェインの文面を考えている小糸の姿を想像しながら待っていた田所だったが、暫くして新たに届いたチェインは長文とは言えない、数行かつ端的な文章だった。

 そして小糸のチェインを見た田所の胸には槍を刺されたような衝撃が走り、思わずその目を見開く。その瞬間に脳裏に浮かんだのは、ここ最近永遠とテレビで報道されている感染症の特徴だった。

 

『実は昼過ぎから体調が優れなくて、今熱を測ったら38度を超えてて、倦怠感も凄くて……』

 

 

 

☆★☆★

 

 

 

(な、なななななんでこんなに体温が––––)

 

 たまげるなんてレベルじゃないほどの衝撃に身体を貫通された小糸は咄嗟に床に落とした。

 震える手で体温計を拾い上げて、電源を入れ直す。もしかしたら壊れていてデタラメな体温が表示されているのかもしれない、もしくは無意識のうちに脇を締めすぎて熱を帯びてしまっていたのではないかと、そんな藁にもすがるような淡い期待を抱きながら。

 

「だ、大丈夫だから! へーきへーき!」

 

 加速する鼓動を落ち着かせようと、そう自分に言い聞かせる小糸。だが何度計測し直しても結果は小糸の望むようなものではなく、表示されるのは普段の体温とはかけ離れた異常な数字ばかり。期待とは裏腹に、体温計が示すのは小糸の身体に明確な異変が起きているといった、紛れもない事実だった。

 

「や、やべぇですよ、やべぇですよ……」

 

 まさかとは思っていた最悪な事態が、じわじわと現実味を増してくる。

 意識が遠のくほどの高熱、身体全体の倦怠感、唾を飲み込むのも一苦労するほどの喉の痛み––––。それらの症状は、ここ連日様々な媒体で報じられてきた世間を混乱の渦に陥れた感染症の特徴と、ピッタリ当てはまっていたのだ。

 

 ––––もしかしたら自分は感染症に罹ってしまったのではないか。

 

 感染症の感染拡大に伴い、東京都に緊急事態宣言が発令されてから今日まで、学校も休校しアイドル活動も停止となった小糸は一度たりとも自宅を出たことがなかった。両親の仕事もリモートワークとなり、同居している家族の中でも外出するのはせいぜい母親が食料の買い出しに近所のスーパーマーケットに行くぐらい。真面目な福丸一家は、家族一丸となって各メディアで報じられている感染症対策を徹底していたはずだった。

 だがこの感染症の特徴として発症までの潜伏期間が最長二週間ともいわれており、二週間前といえば緊急事態宣言の発令前で小糸は通常通り、高校に通いながら283プロでもアイドル活動に精を出していた頃だ。その頃に不特定多数の人間と接触していたの確かで、既に小糸の体内にはウイルスが潜伏していた可能性はある。

 

「も、もし陽性反応だったら––––。やめてくれよぉ(絶望)」

 

 最長二週間にも及ぶ潜伏期間の他に、陽性者が発信源になって周囲に二次感染を起こす異常なまでの感染力も特徴の一つとして報じられていた。そのため保健所では陽性となった患者の直近二週間の行動を洗いざらしにし、二次感染が疑われる濃厚接触者の特定を徹底している。万が一小糸が陽性者になってしまった場合、間違いなく二週間以内の行動を調べられることになるはずだ。

 もし自分が検査を受けて陽性反応が出てしまったら、自分のせいで周囲の人を感染させてしまっていたら、過去の行動全てが公に晒されてしまったら––––。

 次々に浮かんでくる、最悪な事態が繋がっていって、負の連鎖を産んでいく。

 ごクリと飲み込んだ唾が、激痛の喉の上を走った。

 自分が感染症に罹るのは当然怖い。だけどそれ以上に小糸が遅れていたのは、自分が原因で周囲に迷惑をかけること、そしてその結果隠し通してきた、ある“嘘”が発覚することだった。

 

「すみません許してください。なんでもしますから」

 

 高熱で朦朧とする意識の中で、一人では抱えきれない恐怖と不安。現代に舞い降りたGODとも称されるGOへと唐突に祈りを捧げ始めた小糸は、検査を受けて結果が陰性ならば全てが解決するという簡単なことにさえも気付かないほどにパニックを起こしていた。

 親に相談して一度検査を受けにいくか、自分の免疫力を信じてこのまま自室で回復するのを待つか––––。今の自分にとって最善の選択肢がどちらなのかを考えることに疲れ、現実逃避をするかのようにスマートフォンを弄っていた小糸は、ふとサッカー部の三人が黒塗り高級車に突っ込む底辺YouTuberがやりそうなくだらない動画の次に出てきた動画を見て、その指を止めた。

 電脳世界の先で彼女を待っていたのは、透がアイドルになるまで全く興味もなかった小糸ですら認知していた一人のアイドル。おでこの両端に付けられたリボンが特徴的なそのアイドルは、自身の自宅と思われる背景を背にして一人、小糸に向かって優しい口調で語りかけている。

 

『まずは手洗いうがいなどの感染予防を徹底し、今は不要不急の外出を控えてください。そして、万が一疑わしい症状が発症した場合は、怖がらずにすぐに保健所に連絡をしてくださいね』

 

 歳は確か小糸の一つ上か、もしくは二つ上。名前もうろ覚えですぐには出てこない。好きか嫌いかとかのレベルじゃなくて、ただ存在を知っている程度。

 そんな曖昧な知識しか持たないはずなのに、この時小さなスマートフォンの画面越しに見たアイドルの姿はとても心強くて、そしてまるで母親の腕の中で守られていた幼少期を思い出すかのような安心感を小糸は覚えていた。

 アイドルといえども、中身は小糸と同じただの人間だ。アニメや漫画に出てくるような都合のいい救世主でもなければ魔法使いでも何でもないこのアイドルが、世界中から感染症を消し去ることなんてできないことくらい分かっている。こんな呼びかけの動画を配信したくらいで、何も解決しないことだって。

 だけど、それでも「この人がそう言うのなら大丈夫」といった、根拠のない安堵感が小糸の胸の奥底から湧き上がってくるのは確かだった。その理由は分からないが、いつしか小糸はGOに祈りを捧げるのをやめ、食い入るようにこのアイドルの姿を目に焼き付けていた。

 

『周囲の大切な人たちを守るために、今は皆で協力してこの感染症に打ち勝ちましょう』

「大切な人たちを守る……ために」

 

 パニックになっていた数分前から一転、落ち着きを取り戻した小糸は考える。今自分は何をするべきなのか、そして自分がもし陽性者だった場合、少しでも周囲への被害を抑えるためにどうすればいいのか––––。

 動画が終わったのを合図に、小糸は動画配信サイトのアプリを閉じてチェインを開く。そして脳裏に焼きついたあのアイドルとGOの姿を思い出しながら一度だけ深呼吸を挟み、田所へとチェインを送信した。

 


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