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side:ベル
ヴェルフさんと直接契約した翌日。経ったのだが、昨日は大変だった。バベルからの帰り道、数多の神達に追いかけられたのだ。追いかけられた理由は一つ。勧誘だった。本当に怖かった。男女神問わず、甲乙とした表情でハァハァとなりながら追いかけられたからだ。
女神はまだいい。だけど、男趣味のない僕にとって、男神達には鳥肌が凄かった。何故か足も速くて、絵面的には進撃の巨人を彷彿されるものだった。ん?進撃の巨人?なんですかそれ?知らない漫画ですね。...とまぁ、恐怖体験をしたという話だ。
話を戻して、今はダンジョンに来ている。いつもと違うのは、ヴェルフさんがいることだ。
「すまねぇな、昨日の今日でこんな無茶聞いてもらって」
「いえ、ヴェルフさんが鍛冶のアビリティを手に入れるためだっていうなら、契約した僕も無関係じゃないですから」
ヴェルフさんがパーティに入れさせて欲しいと言った理由は、Lv.2になって獲得出来る鍛冶のアビリティを手に入れたいためらしい。そのアビリティの有無で、仕上がりが全然変わってくるのだとか。
「ありがとな。これからよろしく頼む」
「....」
黙ってヴェルフさんを観察しているリリ。この人が、どういう人か見極めようとしているのだろう。
僕が何を言っても納得はしないだろうから、リリの目で、りり自身で納得してもらおう。
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「ベル様は人が良すぎです...」
「そ、そうかな?」
ずっと黙っているなと思っていたら、褒めているのか皮肉を言っているのか、突然声をかけてきた。
「はい、そうです。ランクアップをしたいならファミリア内ですればいいものを。新しい防具で買収されてしまわれて!」
う、うーん、別に買収された訳じゃないんだけど、リリからはそう見えてしまったのだろうか。
それと、やっぱり褒められてるわけじゃなかったですね。
「お、なんだチビスケ。そんなに俺が邪魔か?」
「チビではありません!」
うん、ごめんだけど、リリ。小さくはあるよ。ほんとに失礼だけど。てか、スケはなんとも言わないの?
「リリにはリリルカ・アーデ という名前があります!」
「おぉ、そうか。じゃあリリスケだな。よろしく!」
「もういいです!」
さらに機嫌が悪くなるリリ。二人を見ていると、なかなかいい感じだと思う。よくある展開だよね。犬猿の仲に見えるけど、心のうちでは信じてるっていう仲間の絆的なもの。まぁ、そうなっていくかは分からないけど、少しずつでも仲良くなっていってほしいかな。と内心未来に思いを馳せらせるのだった。
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「よっしゃ!やってきたぜぇ11階層!」
11階層に入り、ヴェルフが声を上げる。初めてなのだろう。とても嬉しそうだ。
そしてリリを見ると、まだ不機嫌そうだ。
「不機嫌そうだね、リリ」
「別に、そういうわけじゃないですが...」
「急にこんなことしてごめんね。でもさ、僕気に入ってるんだ。ヴェルフ・クロッゾさんが作る防具が」
「クロッゾ!?」
少しでもとヴェルフさんをフォローしたら、クロッゾという名前が引っかかったようだ。
「クロッゾって、呪われた魔剣鍛冶師の?没落した鍛冶貴族の!?」
「うん、そう言われているクロッゾさんだよ」
「うん。じゃありません!いいんですか!?」
ん?なんのことだろう?
「何がかな?」
「何って、あのクロッゾですよ!?」
なるほど、心配してるのか。クロッゾには、きな臭い噂が存在する。それで不安がっているのだろう。でもまぁ、噂に過ぎないので特に問題はないし、ヴェルフさんはそういう人ではないと断言できる。
「そうだね。あのクロッゾだけど、何も問題はないと思うけど?」
僕らがクロッゾについて話していると、ヴェルフも話に加わった。
「たしかに俺は落ちぶれ貴族の名だ。だが、今はそんなことどうでもいいだろう?それより...」
ヴェルフさんが言葉をとめ、そしてあたりを見渡す僕達。周りにはモンスターが集まっている。
「よし、オークは任せろ。こいつなら俺でもいける」
「では、微力ながら援護します」
うん、何だかんだ言っていい感じだ。クロッゾによりさらに納得はしてないだろうけど。
「よし、それじゃあいこう!」
「おう!」
「はい!」
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「やっぱいいな、パーティってやつは」
「そうですね。以前より動きやすくなりました」
モンスターを全て倒し、今は小休憩をしている。ヴェルフさんが言っているように、パーティというのはやはりいいものだ。役割分担が出来、一人の負担が減る。余裕が出来るので、モンスターの対処が変わる。
場合によっては強敵とも渡り合うことが可能となる。
「リリスケが、魔石を集め終えたら昼飯にしよう。モンスターは他の連中に任せてな」
「そうですね。」
「ん...?おいベル。なんだそれは?」
「え?」
指をさされ、そのところをみると、右手が純白に光っていた。なんだろう?と僕自身疑問に思う。
「なに、これ...?」
おかしな現象に普通に戸惑う。
「っ...!」
この現象がなんなのか考えていたら、突然、モンスターの気配がした。
「うわぁああああああ!!」
他の冒険者達の悲鳴が鳴り響いた。そして、息を切らしながら逃げていく冒険者達。
「やべぇぞ!インファント・ドラゴンだ!」
インファント・ドラゴン。上層の階層主におけるモンスターだ。
それにしてもまずい。インファント・ドラゴンがいる場所は、リリの近くだ。クソっ、気づくのに遅れた!突然発現でもしたのか!?
「リリスケ逃げろ!!」
「リリッ!!」
ヴェルフさんの声が響く。僕は、リリの元へ駆ける。駆けながら、牽制として魔法を放つ。
「フレイムボルトーーー!!」
魔法を放った瞬間、今までとは比べものにならないほどの魔法が放たれた。その大きい灼熱の赤黒い獄炎は、インファント・ドラゴンを飲み込み消滅した。
「....え?」
いつも通り魔法を放ったつもりなのだが、威力の強すぎるそれに困惑する。魔力もごっそりなくなっていた。マインドダウンになっていても不思議ではないほどの。
ここで、僕はこれが何なのか検討がついた。それは...
「ベル!」
「ベル様!」
この現象について考えていたら、二人が駆け寄ってきた。リリを見ると、何もなく無事だったことに安心する。もしかしたら、巻き込んでいたかもしれないと思ったから。
「おいおいベル。さっきのはなんだ?」
「そうです。今までの魔法とは比べものならないくらい強力なものでした」
二人も先程の魔法に驚いているようだ。
「うーん、多分だけど、スキルだと思う」
「スキル、ですか?」
「うん、多分ね」
「ほぉ、それはすげぇスキルだな」
「魔力消費が凄いから、何度も撃てるわけじゃないけどね」
これがどんなものか実験する必要がある。なかなか興味深いスキルで、楽しくなるのだった。
今日のところはここでダンジョン探索を終え、地上に戻った。
ダンジョンに行く前のステータス
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ベル
Lv.2
力 : I 0
耐久: I 0
器用: I 0
俊敏: I 0
魔力: I 0
幸運: I
《魔法》
【ヘル・フレイム】
【フレイムボルト】
・速攻魔法
《スキル》
【
・仲間を想うほどステータス大補正。
・仲間と冒険すれば耐久大補正。
・仲間と冒険すれば獲得経験値大。
【憧憬一途】
・早熟する。
・懸想が続く限り効果持続。
・懸想の丈により効果向上。
【
・能動的行動に対するチャージ実行権。
・精神疲弊をしない。
・魔力が枯渇した場合、寿命を魔力へと変換する。
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新たなスキルの概要がだいたい分かった翌日。いつもの集合場所に来ている。
「今日、リリスケは休みか?」
「下宿先の親父さんの看病をしてあげたいっていうことで休みですね。なので今日は...」
「そうか、分かった。それなら、ベル。今日一日、俺にくれないか?」
「へ?」
「約束しただろ。パーティに入れてくれたら礼をするって。お前の装備、全部新調してやる」
「ほんとうですか!?」
これは嬉しい提案だ。
「ああ。じゃあ行こうぜ」
「はい!」
流行る気持ちのなか、ヴェルフさんの工房に行くのだった。
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「ここがヴェルフさんの工房...」
ヴェルフさんの工房に着き周りを見渡す。様々な道具が並べられており、所々黒くなっていた。飛び散った火花の跡だろう。久々に鍛冶師の工房を見た。
「悪いな、汚い場所で。少し我慢してくれ」
「いえ、そんな...」
「で、なんか希望はあるか?」
先程新調してくれると言われ嬉しかったが、よくよく考えると、いろいろ貰っているので今更ながら遠慮の気持ちがわいた。
「やっぱり、いろいろ貰っているので充分ですよ...」
「遠慮すんなって。それに、もっと欲深くなった方がいいぞ、ベル」
「まぁ確かに、そうですけど...」
好意で何かをくれるのに、それを断るのは相手にとって失礼になるよね。
「ふっ...」
急に笑ったヴェルフさん。どうしたんだろうか?
「お前は魔剣を欲しがらないんだな」
「.....」
「俺は魔剣が打てる。あの恐れられたクロッゾの魔剣をな。俺がここに来て最初の頃は、クロッゾの魔剣が打てるってことで客なら腐るほどいたんだ。魔剣を作ってくれっていうやつらばっかりがな。本当に嫌だったよ。誰も俺の武器に目を向けない。ヤツらは言いやがるんだ。強くなるための、名声をあげるための''道具''が欲しいってな。違うだろ。武器ってのはな、相棒なんだ。使い手の半身なんだ。ただの道具でも、成り上がるための手段でもない。...武器っていうのは、何があっても裏切っちゃいけないんだ。だから俺は、魔剣が嫌いだ。魔剣は、使い手を残して、絶対に''砕けていく''。アレは腐らせる。矜恃も誇りも何もかも。だから俺は、魔剣を打たない」
心の内を吐露するヴェルフさん。クロッゾ一族の魔剣は本当に強力なものだ。強力なものほど、人を魅了する。冒険者が魔剣を欲しがるのも不思議でない。みんなが憧れているアルゴノゥトでさえ、魔剣に興奮していたのだから。
ヴェルフさんは僕が想像することなど失礼なほど、魔剣に悩まされていたのだろう。僕ができることは何もない。でも一つしないといけないことがある。それは、
「ヴェルフさん。僕はあなたの魔剣が欲しいわけじゃないです。ヴェルフさんの、造った武器や防具が欲しいんです」
ヴェルフさんの造る魔剣ではなく、ヴェルフさんが造る武器や防具が欲しいと心の底から伝えることだ。
「...そうか。ありがとうな、ベル。その言葉、信じるぜ」
そう言ったヴェルフさんは、万遍の笑みだった。
「はい!」
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カンッ!カンッ!カンッ!
短刀を打つ音が鳴り響く。あまりの熱さに汗が出てくる。
短刀を打つヴェルフさんはとてもかっこよかった。ヴェルフさんの先祖のクロッゾは、鈍臭い所が多々あったが鍛冶をしてるときは輝いていた。
物思いに耽っていると、ヴェルフは真っ赤な短刀を水につけていた。
「うわぁ....」
水から出たそれに感嘆する。
「素材が良かったんだろうな。今までで最高の出来だ。...よし、それじゃあ名前をつけるか。...『牛若丸』....いや、『ミノたん』か?」
ミノたん!?
「いやいやいや、最初のやつでいいよ!」
「そうか?じゃあ『牛若丸』にするか。ほれ」
「あ、ありがとうございます」
ふぅ、危なかった。クロッゾもそうだったけど、ネーミングセンスがちょっと変わってるんだよね。これからは、一緒に考えようかなぁ。と思うのだった。
「なぁ、ベル」
「なんですか?」
「まだ会って数日で、信頼してくれとは言わない。でも、...リリスケみたく、俺のことも仲間っぽく呼んでくれると嬉しい」
真剣な表情で言ってくるヴェルフさん。僕も思う。仲間なんだから、恭しくする必要はないと。
「そうだね。改めてよろしく、ヴェルフ」
「おう!よろしくな、ベル!」
僕達は堅く握手するのだった。
ありがとうございました。
次回は、18階層です。
では、さようなら。