いつも通り駄文です。
約7500字です。
side:ベル
「申し訳ありませんでした!」
謝罪とともに土下座をしているのは《タケミカヅチ・ファミリア》のLv.2冒険者である命さんという名の女性。地面に額を擦り付ける綺麗な土下座による謝罪。
だが、そんなことをしたところでリリの怒りはおさまらない。
「いくら謝られても、簡単には許せません。リリ達は死んでいたかもしれないのですから」
「まぁ、確かにそう割り切れるもんじゃないな」
ヴェルフは、怒りこそないが納得はしていない様子だ。
再び沈黙が訪れる。
「....あれは俺が出した指示だ。そして俺は、あの指示が間違っていたとは思わない」
《タケミカヅチ・ファミリア》の団長である桜花さんが突然発言した。
後半の言葉。それは、僕も間違いではないと思う。僕を含むほとんどは、善良な人間じゃない。だから、仲間か他人かを選べ、と言われたら仲間を選ぶ。
今回、桜花さんは大切な仲間を選んだだけのこと。非はあろうと、その行動を否定することはできない。
「...それをよく俺らの前で口にできるな、大男?」
一触即発の雰囲気が流れる。そんな雰囲気を少しでもおさえるため、僕は口を開く。
「二人とも、もうやめよう。桜花さんの指示は僕自身間違ってないと思う。僕だってそうすることがあるだろうから。納得出来ないだろうけど、抑えてね。それと、《タケミカヅチ・ファミリア》の人達は、これからあのようなことが起こらないようにしてください。間違っていないとは言ったものの、被害にあった人達にもまだ人生がありますからね」
「...ベル様が言うのなら...分かりました」
「...そうだな...。割り切ってはやる。が、俺は納得はしないからな」
「ああ...感謝する」
「ありがとうございます、ベル殿」
どうやら上手くいったようだ。
そのとき、神様と同様、ダンジョンに降りてきたもう一柱の男神、ヘルメス様が帰ってきた。
「おっ、どうやら話し合いは終わったようだね」
飄々とした口調つきで。
それからは、アスフィという女性が今後の予定を話した。《ロキ・ファミリア》の後に帰還すること。早くても2日後に移動するため、明日一日は時間があること。
そこで、ヘルメス様がある提案をする。
「せっかくだし、明日は18階層を観光でもしようじゃないか!」
ヘルメス様の提案は受け入れられた。
僕も、アイズといろいろ話したいし回りたいと思っていたので大賛成だ。
「あ、そうだった。ヴェルフ君」
「なんですか、ヘスティア様?」
「ヘファイストスからの預かり物さ。伝言もあるよ。えっと...『意地と仲間を秤にかけるのはやめなさい』だったかな」
僕は、この言葉に自然と笑みがこぼれる。昔、クロッゾが言っていた。『鍛冶師は、意地を秤にかけちゃあいけねぇ。しょうもない意地をはるやつは、鍛冶師じゃない。ソイツはただの程度の低い物作り屋だ』と。懐かしいなぁ、そう感慨に耽ったのだった。
_______________
夜。
昼間に寝ていたため、寝付けずにいた。なので、みんなを起こさないようにテントを出た。
「はぁ...、ちょっと散歩でもしようかな」
一度伸びをし、全身を解しながらそう呟く。
「それにしても、本当にダンジョンとは思えないなぁ」
何故、ダンジョンにこのような場所があるか分からない。
ここからは、地獄が待っているため、今のうちは楽園を見せてやろう。というダンジョンの心遣いか、あるいは、悪魔的所業なのか。
そんなことを思っていると、ある人が近づいてくる。
「ベル」
「やぁ、アイズ」
「こんな時間に、どうしたの?」
「昼間に寝てたからね、寝られないんだ。アイズこそ、どうしたの?」
「ベルが、歩いてく姿が見えたから」
「そっか。僕、ちょっと散歩しようと思ってるんだけど、アイズもどう?」
「...うん、行く」
二人並んで夜のダンジョンを歩く。昼間とは、また違う18階層。
となりを歩くアイズを横目に見る。相変わらず綺麗な顔をしている。夜の灯りに照らされ、儚さが凄まじい。
「ベルは...」
「ん?」
「黒竜と、戦ったことがあったんだよね?」
そう問いてくるアイズ。突然、どうしたんだろうか。
「うん、そうだね。戦ったことあるけど、どうかしたの?」
「...ベルが、どれくらい戦えたか気になって」
「なるほどね。うーん、そうだね...、まぁ、逃げてなかったら死んでたかな」
90年前のあのとき、村を襲っていた黒竜を食い止めた。だが、あまりの強さに、死ぬまえに逃げたのだ。当たり前だけど、村の人達が避難し終えたあとに。
もし、逃げていなかったら、僕は死んでいただろう。
「次、戦ったら勝てる?」
顎に手をあて、一瞬の熟考。
「...勝てる、と思うよ。恩恵のなかったときはあまりダメージを負わせられたけど、恩恵があるし黒竜を倒すと意気込んでる人がここには沢山いるから、協力し合えば勝てると思う」
【天旅願望】のチャージ実行権。これを工夫して使い、それと仲間が居れば勝てると僕は思っている。
「...頑張ろうね」
「...そうだね」
ふと思う。アイズは黒竜を倒したあと、何をするのか。復讐に燃え成し遂げるまでは、どこまでも力強く進むだろう。しかし、終えてしまったら?何を目標にして進むのか。そう疑問に思った。
「アイズは...、黒竜をたおした後、どうするつもり?」
「....分からない...」
少し考えたのち、戸惑う表情で、分からないと一言だけ呟くアイズ。
「そっか...。今はまだ考えなくてもいいけど、いずれ考えてた方がいいよ。まだまだ人生は長いんだから」
「...わかった」
「うん...」
アイズにこんなことを言ってるけど、僕は何するんだろうなぁ。まあ、アイズに告白するよね。で、もし失敗したら、また世界中を旅でもしようかな。とそう考える。
その後、もう少し雑談した。
やがて、アイズは眠くなってきたようで僕達はテントに戻った。
別れる際に、一緒に街をまわる約束をし、そして、出たときと同様みんなを起こさないように寝るのだった。
_______________
「むー...」
「どうしたんですか、神様?」
隣で不機嫌に唸る神様に問い掛ける。
「せっかくのベル君と二人でデートのはずだったのに...どうしてこんな大所帯に...」
「....」
すみません、神様。僕も一つよろしいですか?
僕はアイズと回るつもりだったんですけど、何でこんなにいるんですかね?と今の状況に神様同様不満を覚える。
しかし、僕は大人な対応をとる。
「まぁいいじゃないですか、神様。みんなで回った方が楽しいですよ」
「...そんな、僕大人なんで的なこと言ってるけど、ベル君だって不満が溢れ出てるよ」
...ふっ、どうやら僕はまだまだ子供だったようだ。
まぁ、気を取り直して。一つ気になることがある。それは、リューさんが居ないこと。何処に居るんだろうか?とリューさんのことを考えていると、リリが声をかけてきた。
「ベル様、見てください!」
リリに促され見ると、そこに広がっていたのは昨日とはまた違う美しい風景だった。
僕とみんなは、綺麗だ。とウットリ眺めていた。
だがら、後ろの方でとある神がニヤリと笑っていたのを、僕は気づかなかった。
_______________
「た、たっかっ!この砥石が13000ヴァリス!?ありえねぇ!」
「このボロいバックが2万なんて、法外もいいところです!」
今、僕達は地上に帰還するため必需品を買おうと店に寄っているのだが、ボロい上に高すぎるそれらにヴェルフとリリが文句を吐いている。
しかし、値段が高いのは仕方のないこと。地上から物が届けられるわけがなく、余り物や遺品などのより集め物なのだから。
ただ、一つ言いたい。
「
手を空に掲げ仰ぐように叫ぶ僕。
そんな僕に
「...あいつ何してんだ?」
「...疲れすぎておかしくなったんじゃないですか?」
『.....』
と訝しい目つきで見てくる二人。他の人も同様、視線が突き刺さる。辺りに変な空気が流れる。
そんな僕は、あー...虚無ろ。と虚無るのだった。
ドンッ
「あ、す、すみません...」
虚無っていたら、誰かとぶつかった。咄嗟に謝りその人を見ると、先日酒場で絡んできた人だった。
「てめぇは...酒場のガキルーキーじゃねぇか!」
「え、いや...」
「何でてめぇがここにいやがる!」
言葉を荒らげながら、僕の胸ぐらを掴みかかろうとする冒険者。だが、その横にいた冒険者が戸惑った声で掴みかかろうとする冒険者に声をかけた。
「お、おい。モルド...」
その冒険者の視線を追う。やがて、モルドと呼ばれる人が僕の後ろにいたアイズに気づく。
「うっ、剣姫と知り合いかよ...。ちっ、行くぞ」
目を付けられたくないのか、早歩きで逃げていった。
もし、アイズ達がいなかったら面倒だっただろう。感謝だ。
そしてまた、とある神が逃げていった冒険者達をじっと見つめていたのだった。
_______________
一段落した僕は今、集団から離れ広場に足を運んでいた。
「世界で一番深い場所にある街、ねぇ...」
冒険者が経営する街。
元々はギルドが迷宮内に仮ギルドの設置を計画していたのだが、問題が多くあったためその計画はなくなった。野放しとなったここは、なら俺らでやろうぜ、と冒険者達によって勝手に経営されているのだ。
冒険者達によって経営されているので、世界一治安の悪い街、とも評されている。
「何をみていたの...?」
遠くを眺めていた僕に、アイズが近づいてきて問い掛けてきた。
「...19階層にはどうやっていくのかなって?」
特に何も考えていなかったが、問いかけられ、ふと思ったことを口にする。
「それは...、あの中央樹の根元に樹洞があって、そこから19階層に行ける」
「へぇ、そうなんだ。なんか面白いね」
「...うん、そうだね」
特にそう思ったことがないのか、曖昧な返事が返ってきた。気を使わせてしまったようだ。
会話が続かないので話題を変えよう。
「それで、アイズはどうしてここに?」
「ベルが、一人だけいなくなってたから...」
なるほど。でもそこは、冗談でも『君と話したかったから』って言ってくれても良かったんだよ?と起こることの無い理想を内心呟く。
「邪魔だった?」
不安そうな顔を見せるアイズ。
「いや、そんなことないよ。むしろ、居てくれた方が全然嬉しい」
僅かに目を見開くアイズ。やがて、少し頬を染めて
「...ありがとう」
と微笑んだ。
いや、可愛いすぎるだろぉおおおおおおお!!とアイズの反応に内心雄叫びを上げる。
だが、そんな甘い雰囲気を漂わす僕達に邪魔が入る。
「あ~っ、いい眺めだなぁ!!」
視界の下からにょきっ!と顔を出し、僕とアイズの間に収まる神様。
その神様の表情は微妙な笑みを浮かべていた。
「もぉ、水臭いなぁベル君っ、景色を見に行くのなら誘ってくれよ!''ボクとベル君の仲じゃないか''!」
''僕達の仲'''を何故か強調して言ってきた神様は、めちゃくちゃ鬼気迫っていた。
突然の事に僕とアイズは驚いていた。神様は、そんな僕達を他所に更に続ける。
「というわけでヴァレン何某君はどこかへ行ってしまうんだっ!今からボクとベル君は''夫婦''水入らず二人ってきりの時間を堪能するんだから!」
これはまずい!アイズに変な誤解を与えてしまう!
僕は即座に、否定するため口を開いた。
「あはは〜、神様何言ってるんですか?僕達は''家族''ではありますけど、''夫婦''ではありませんよ、ええ!変なこと言わないでくださいね!」
目が笑っていないバージョンの満面の笑みを浮かべて言う僕。
「あはは〜、ベル君こそ何を言ってるんだい?ボク達は''家族''であり''夫婦''なんだ!ささっ、あっちに行こうぜ、ベル君!」
グイッグイッ、と胸当てを何度も押して遠ざけようとする神様。僕は抵抗するが、どこから出ているのか力強い押しに負けていく。
そのとき、何やらいい香りが広がった。
「ん...?神様、何かつけてます?いい香りがするんですけど」
「お、気がついてくれたかいベル君!」
ぱっと嬉しそうな表情になる神様。ごそごそと小鞄をあさり、差し出してきたのは、香水の小瓶だった。
「...これ、買ったんですか?」
「ああそうさ、乙女の嗜みだよ!剣を振り回して汗臭い娘なんてベル君だって嫌だろ!?」
僕に体を寄せながら、悪意の言葉を放つ神様。明らかに、アイズを意識して言っている。
アイズはアイズで、気にしたのか腕を嗅ぐ。大丈夫だよ、アイズ。君からは聖水の香りしかしないから。...おっと、やめよう。神様が変な目で見てくる。
「別に全然嫌いでは無いですよ。むしろ、かっこいいですね。惚れ惚れします」
僕の返答に、ぐぬぬっ...と唸る。
しかし、神様は無駄使いしていいのかなぁ。借金があんなにもあるのに。まぁ、香水くらいはいいか。神様だって女の子だ。ダンジョンに一日以上もいるのだから、自分の香りが気になるのも仕方ないね。
「ふんっ...、ヴァレン何某君っ、ボクの許可なく抜け駆けするんじゃないよ!分かった?!」
「わ、わかりました...」
いや、分からないで!むしろ、どんどん抜け駆けして貰って構わないから!それとも逆に迎えに行っちゃおうかな!そう内心懇願するも届くことはなかった。
______________________________
「とうとうこの時が来たようだね」
顔を上げ立ち上がったヘルメス様が、そう呟いた。
現在、女性陣は水浴びに行っており、僕はすることがないのでダラダラしていた。
「どうしたんですか、ヘルメス様」
「ベル君、オレに付き合ってくれないか?」
「ごめんなさい」
「え...ああ、オレの聞き間違いかな。もう一度言うよ。ベル君、オレに付き合ってくr」
「ごめんなさい」
「何で!?まだ何も言ってないよね!?」
だって、絶対面倒臭いことだって容易に予想できるから。
まぁ、なんのことか一応聞いておこう。
「わかりました、付き合います。それで、何に付き合うんですか?」
「付いてきてくれ」
そう一言だけ発し、歩き出したヘルメス様の後ろをついて行く。
そして、野営地を出て静かな森の奥へと入っていった。
「あの、ヘルメス様、何処に行くんですか?」
僕の言葉を無視し、ヘルメス様は黙々と更に歩を進める。
やがて、とある木の前で止まった。
「思ったとおりだ。コレなら十分に枝を伝って進める」
ニヤリと、気味の悪い笑みを浮かべるヘルメス様。
「ヘルメス様、何か話でもあるんですか?」
「話?やだなぁベル君、オレはそんなこと一言も言ってないぜ。まぁ、話したいことはあるにはあるが、今はそんなことどうだっていい」
なんなんだろうか?何がしたいんだろうか?全然把握できない。
「じゃあ、何でここに来たんですか?変な事だったら、帰りますよ?」
「つれないなぁベル君は。ここまで来たのなら、分かるだろ?....覗きだよ」
「続けてください」
電光石火の返答。さっきまでの態度はどこに行ったのか、態度が逆転する。
「お、流石はベル君だ。話が分かる。よし、ベル君が乗り気になったところで、改めて話を進めよう」
ヘルメス様による覗きの計画はこうだ。
この木を登り、枝伝えで移動する。というもの。
そして、ヘルメス様と僕は枝を伝って移動していく。
「しかしベル君、よくのってくれたね」
「まぁ、覗きは''男の浪漫''ですからね」
僕がこういう思考になってしまったのは、ゼウス様のせいだ。あの
「ふっ...君とは''しんゆう''になれそうだ」
「ありがとうございます」
ガシッと、握手する二人。
やがて、女性陣の声が聞こえるところまでやってきた。
「もう少しだね」
「はい」
顔を見合わせ、頷き合う。両者目が血走っており、必死さが最大限にあらわれている。第三者が見たら、通報ものだ。
やがて、見える位置に辿り着く。そして、少し身を乗り出す。
「どうだいベル君、見えるかい?」
「いえ、葉っぱがちょっと邪魔ですね」
もっと身を乗り出す僕。
あともう少しで見れるかもしれない。という興奮で周りが見えなくなる。また、油断している。
そして、
ボキッ
「え...?」
僕達の不可に耐えきれなくなった枝が折れた。
ヘルメス様は何とか持ち堪えたのだが、油断しており周りが見えていなかった僕は
「のわぁああああああああっ!?」
落ちた。
ドボンッ、と水飛沫を上げ着水した。
「げほっ、ごほっ、ごふっ!!」
肺に水が入り噎せ散らかす。
少し朦朧としながら浅瀬へと避難し、荒い息を繰り返す。
僕は、このとき忘れていた。僕が落ちたのが、女性陣が水浴びをしているところだということを。
「.....アルゴノゥト君?」
「っ!?」
あ、終わった。そう死を悟る。
だが、ベルはこのとき思った。ここまで来たのだから、もう人生
そして、視線を上げる。
「なになにっ、君も水浴びしに来たの?」
「大人しそうな顔して....やるわねぇ、あんたも」
目の前にいたのは、フリュテ姉妹。アマゾネスであるため、恥ずかしげもなく身体を晒したまま話しかけてきた。
ありがとうございます!と内心お礼を呟く。
神様とリリ達は、混乱により言葉にならない悲鳴を上げている。
「ベル君、君ってやつは....!」
「な、何をなさっているのですかベル君ぁ!?」
と混乱が治まってきたのか神様とリリの責める声が響くが、僕には何ひとつ聞こえていなかった。理由は一つ。視界の中央に女神がいたからである。
流れ落ちる滝を背に、体を抱くように胸を隠し、頬染め、濡れた金髪と
あぁ〜、なるほど。これが
水晶と、大自然に満ち、''男の浪漫''がつまっている地下世界。
別名、『
この日、僕はまたひとつ、ダンジョンというものを知った。
_________って違うそうじゃない!!
アイズの体を鮮明に焼き付けてしまった僕は、
「す、すみませんでしたぁああああああああああっ!!」
謝りながら逃げ出した僕は、多分人生で一番の速さだったと思う。
追記
へんなとこで終わってすみません。長くなるのでここで切りました。
ありがとうございました。
次回も、18階層関連です。
いつ18階層関連が終わるのやら...。
では、さようなら