5500字ほどです。
駄文です。
side:ベル
「はぁ、はぁ、はぁ....」
ベルはずっと走っていた。アイズの裸を見てしまったという喜びと、やってしまったという罪悪感に挟まれながら。何度も何度も先程の光景を思い出してしまう煩悩をとり払おうと。
これを言うのはなんだが、ベルはこれまで多くの女性の裸を見ている。女神の裸を見たこともあった。なので、少なからず耐性があるはずなのだが、アイズの裸は耐えきれるものではなかった。多少の好きな人補正が入っているが、それ程までに神々しかったのだ。
「はぁ、はぁ...はぁ〜...」
ようやく全身の火照りが収まり、冷静さを取り戻していく。
深呼吸をし、辺りを見渡すと周囲にはどこなのか分からない景色が広がっていた。
「ここ、どこ...?」
困惑した声が漏れる。現在、地図を持っているわけでないので検討もつかない。
「まぁ、今はいっか。木を登れば野営地がどこか分かると思うし、少し散歩しよっと」
旅をしていれば、こういうことは多々あったため慣れていた。楽観的なことを言いながら、ベルは歩を進めた。
歩いていると水の音が聞こた。それは自然に鳴るような音ではなかった。
モンスターかな?と音源へと近づいていく。近づいていくなか、それはモンスターではなく人だと分かった。こんな所に誰だろうか?と疑問が浮かぶ。
やがて、森を抜け泉が現れた。僕は茂みから覗き見るように泉を見る。
そこには、
''妖精''がいた。
その者の雪のように白い肌に儚げな姿、自然によるスポットライトによって御伽噺に出てくるような幻想的な光景に言葉を失う。
「―何者だ!」
鋭い声とともに刃物が投擲され、僕の顔の真横にある木にその刃物、小太刀がドグシャ!と突き刺さる。
先程までその光景に見蕩れていたため反応が遅れ、ひゃうっ!と驚く。
「...ベルさん?」
覗いたのが僕だと分かると、先程までの威圧がなくなり怪訝そうに眉をひそめたリューさん。
やばいっ!どうしよう!エルフの裸を見ちゃった!殺される!!とエルフに対する禁忌を犯してしまったため恐怖を抱く。
ま、まず謝らないとっ!
「す、すいませんでしたぁああああああああ!!」
渾身の土下座。地面に頭がめり込んだんじゃないかってくらい、額を地面へ叩きつける。
死を覚悟して、時を待つ。その時僕はガタガタと全身が震えに震えていた。
「――顔を上げてください」
どれくらい土下座していただろうか。何か言われた気もするし、衣擦れの音も聞こえた気がするが、頭が真っ白だった僕にはよく分からなかった。
恐る恐る顔を上げると、リューさんは昨日見た戦闘衣に身を包んでいた。
「まず、弁明を聞きましょう」
「は、はい!畏まりました!」
ここまでの経緯を話す。その最中、リューさんの視線はとても冷たく、もう少しで新たな扉を開いてしまうところだった。すみません!冗談です!だから、ゴミを見るかのような目で見ないでっ!本当に開いちゃうかr(殴
誠に申し訳ありませんでした。
「....ベルさんの事情はわかりました。この後、《ロキ・ファミリア》の野営地までお送りしましょう」
ん...?
「えっと...怒ってないんですか?」
「怒るも何も、貴方に非はありません。私が責めるのはお門違いです」
なん...だと...。
女性の、それもエルフであるのに裸を見られて怒らないだと...!心が広すぎる!!あー...リューさんは妖精であるとともに女神様でもあったのですね。これからは、リュー様とお呼び致します。そうリュー様の心の広さに崇拝するのだった。
てか、めちゃくちゃ非はあると思うんだけど...。
「ありがとうございます!リュー様!」
「...よく分かりませんが、様呼びはやめてください。私は敬称で呼ばれる程の身分ではありませんので」
「あ、す、すみません...」
では、心の内ではリュー様と呼ばさせて頂きます。と断固として様を呼びを辞めないベルであった。
_______________
「少し寄るところがあるのですが、お時間を頂いてもよろしいですか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
泉から歩き出して少ししてから、そう言ったリュー様。特に用事がある訳では無いので承諾する。
「リューさm...リューさんは、ずっとこの森に居たんですか?」
「はい」
「何故ずっとここに?」
「少々野暮用があったのと、あまり顔を見られたくなかったので」
顔を見られたくない?どういうことなんだろう?と疑問が浮かぶ。リュー様のことは酒場の店員ということしか知らないため、その理由が分からかった。
「神ヘルメスから、私の話は聞かれましたか?」
「いえ、何も」
「...そうですか」
それから、黙々と確固たる足取りで森を進んでいき、数十分程かけてリュー様の目的地に着いた。
そこには、幾つかの十字の墓が並んであった。
「リューさん、これは...」
「私が所属していた《ファミリア》の仲間達の墓です」
静かにそう告げたリュー様。
「私は、ギルドの
「.....」
「冒険者の地位も既に剥奪されてます...一時期は賞金も懸けられていました」
突然の暴露話。それを、僕は静かに聞いていた。
「私は《アストレア・ファミリア》という派閥に所属していました。正義と秩序を司る女神アストレア様のもとで、当時の私達は少なからず名を馳せていました」
リュー様の話しによると、五年ほど前までは、『悪』が蔓延っていた言う。《アストレア・ファミリア》は、正義と秩序を司るファミリアとして安寧に尽力を尽くしていたらしい。
だが、そんなある日。罠に嵌められ、リューさm...リューさん以外の仲間達は全滅してしまった。
これは、その仲間達の遺品を埋めた墓だそうだ。
「彼女達は、この階層が好きだった」
自分達が死んだらここに埋めてくれと、いつも冗談を交わしていた、と。
このことを話していたリューさんは、唇を縫い、目を伏せ少しばかり震えていた。
「先程も言いましたが、私は
「.....」
「あれはもう、正義ですらなかった。復讐に燃え突き動かされた私は、組織に与する者、関係を持った者...疑わしき者まで全て襲いかかりました。...その中には、無関係の人もいたと思います」
その後は、仲間を失った悲しみと虚無感、復讐を終えて燃え尽きてしまった気力によって、暗い路地裏で力尽きたらしい。
仲間も失い主神もおらず、復讐も終えてしまった彼女に生を繋ぎ止めるものは、もう無かった。
しかし、その真っ暗な世界に一つの光が現れた。その光とは、シルさん。シルさんが、路地裏で倒れていたリューさんを助けたのだ。
それからというもの、シルさんによるしつこいお節介や『豊穣の女主人』の店員の一員として迎え入れられ、リューさんは生を繋ぎ止めることができた、と。
「...すいません、耳を汚す話を聞かせてしまって」
「い、いえ、そんなことは...」
「...では、行きましょうか」
そう言って歩き出したリューさんの背中は、あまりにも悲しげだった。
「あの、リューさん?」
僕は、そんなリューさんを呼び止めた。
「何でしょうか?」
「一つだけ、僕の話を聞いてくれますか?」
「え、ええ。それは構いませんが」
「ありがとうございます」
僕にとって、リューさんの辛さはよく分かるものだった。今まで、寿命や病死、戦死などにより沢山の友人が亡くなるのを見てきたからだ。
そんななかで、僕はあまりの非道さと悲しみにより暴走したことがあった。
「僕も、復讐をしたことがあるんです」
そう前置きをする。これを聞いたリューさんは少し驚いていた。
「事の発端は、大切な友人を人質にされたことです。友人を人質にするように言ったのは王家でした。王は、『友人を殺されたくなければ、戦争に参加し勝利をもたらせ。だが、少しでも抵抗を見せればコイツを殺す』と脅してきました。そこからは、地獄の始まりでした。命令が出されれば戦争に参加し、殺したくもないのに殺めていきました。その地獄な日々に僕は心身ともにズタボロになりながらも、友人の為にと頑張っていました。でもある日、友人が『もういいよ、ベル。もう俺のためにベルが壊れていくのを見たくないんだ。これからは、こんなことに囚われずに自由に生きてくれ。ベルと居て楽しかった!ベルと過ごした時間は最高の宝物だ!今まで本当にありがとう!それと...すまなかった。こんな辛い目に合わせてしまって』と言って、僕の目の前で自害したんです。僕と友人の監視人は、止めるのが間に合いませんでした...。その時です。理性が切れ、世界から色が消えたのは。だけど、色の失った世界に一つだけ色がありました。それは...血の色でした。王家の者やこれに関わった者達の血の色だけが...。そう、僕は友人を失った悲しみと友人を利用した恨みから復讐に走ったのです。本能のままに...」
「.....」
これは、約700年前のこと。王家の人達も関わった人達も、そして神も。人生で一番モンスター以外を殺めた、人生で一番最悪だった時。もう絶対にこんなことが起こらないようにと誓った出来事であった。
「すみません、長くなってしまいました...」
「いえ...。ベルさんにもそのような過去があったのですね...。しかし、おかしいな所が多々あります。最近、国が滅んだ話はありません。それに、貴方はまだ10代のはずです...」
「あ、あー、それでてすね。僕が言いたいのは、辛くなったときいつでも僕を頼ってください。何が出来るというわけではありませんけど、誰かに話すだけでも心が少し軽くなると思うので」
別に詮索されても困らないけど、今までそうしてきたため癖で濁してしまった。
「...はい、ありがとうございます。しかし、私だけは悪いのでベルさんも頼ってください」
「はい、その時はよろしくお願いしますね!」
先程の悲しげな雰囲気とは違い、優しい笑みを浮かべるリューさん。僕も、少しでも元気が出たリューさんの姿に笑みを浮かべるのだった。
_______________
リューさんの案内によって、《ロキ・ファミリア》の野営地に戻ってこれた。
野営地には水浴びから戻った女性陣もいるため必然的に会うのだが、顔が紅くなる者と飄々としている者に分かれた。
神様もリリも紅くなりながらも黒い笑みを浮かべていたが、そんなことはどうでもいい。肝心なのは、アイズだ。そのアイズはというと、頬を紅くさせ少しモジモジしながらチラチラと僕を見ていた。その姿があまりにも可愛すぎたため、抱きしめたくなったのは秘密である。
そして、覗きという行為に加えて完全に見てしまったことをしっかりと謝った。リューさんにした土下座を。
こんなことをしたのだからボコボコを覚悟していたのだが、何故かお咎めがなった。その理由は、ヘルメス様だと言う。ご愁傷様です、ヘルメス様。と内心ヘルメス様の境遇を哀れんだのだった。
_______________
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ベル
Lv.2
力 : F 369
耐久 : H 137
器用 : F 343
敏捷 : E 483
魔力 : F 300
幸運 : I
《魔法》
【ヘル・フレイム】
【フレイムボルト】
・速攻魔法。
《スキル》
【
・仲間を想うほどステータス大補正。
・仲間と冒険するば耐久大補正。
・仲間と冒険するば獲得経験値大。
【憧憬一途】
・早熟する。
・懸想が続く限り効果持続。
・懸想の丈により効果向上。
【
・能動的行動に対するチャージ実行権。
・精神疲弊をしない。
・魔力が枯渇した場合、寿命を魔力へと変換する。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
翌日
神様から更新を提案された。
「ん〜、相変わらずものすごい伸びだねぇ」
「まぁそうですね。何せ二つも早熟系スキルがありますから...」
「ベル君のステータスは、絶対に誰にも見せられないよ」
遠い目をする神様。それについては全くもってその通りですね。と呟いた。
「そろそろテントを空けようか。ロキの子供達ももう出発の準備をしているしね」
「はい」
神様が言ったように、今日《ロキ・ファミリア》は18階層を発つ。地上からの解毒剤が昨夜に届き、部隊の進行が可能になったからだ。
『おい!兎野郎がいるってどういうことだ!?聞いてねぇぞ!!』
外に出ると、荒らげた声が響き渡った。内容と口調、声質からベートだと分かった。
ベートのことは放っておくとして、アイズを見かけたので声をかける。一応言っておくと、昨日の気まずさはある程度無くなってます。ええ。
「もうそろそろだね、アイズ」
「あ、ベル。...うん。先に出るパーティに組み込まれたから」
《ロキ・ファミリア》は非常に多いため全員で進むのは無理だ。よって、前半後半に別れるのだが、よりにもよってアイズは前半に組み込まれてしまったようだ。
これを聞いたときは、もうちょっと居たかったのに。と嘆いた。
「そっか...。気をつけてね」
「...うん、ありがとう。ベルも、気をつけてね」
またね。と呟いて、アイズは仲間とともに17階層へ続く洞窟に向かっていった。
僕はアイズ達が洞窟に消えるまで、その背中をずっと見つめ続けていた。
「ベル様ー、リリ達も帰る支度をしましょー!」
「あ、うん!」
投げかけられたリリの呼び声に返事をし、僕も帰る支度をするのだった。
追記
リリとヴェルフに、ベルの過去を言うのは派閥戦争のコンバートのときです。
そして、リューに関しては深層に落ちたときです。
ありがとうございました。
次回で18階層終わります。
やっと...
次回は、ダンジョンの怒り。
これがまた難しい!
では、さようなら。