道化の元仲間は天寿に囚われる   作:時雨シグ

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駄文です。

10000文字超えました。

一つだけ、

なんでこんな面倒くさい設定にしたんですか?


※守護者''クラネル''から守護者''アレグサンダー''に変更しました。

アレクサンダーには、人類の擁護者、人類の守護者、という意味があるそうです。(本当かは分かりませんが)


第20話 ダンジョンの怒り

side: ベル

 

 

 

「神様〜?神様~?」

 

 

 

帰還の準備が終わり、現在神様を探しているのだが、全然見当たらない。

 

 

 

「ん〜、どこ行っちゃったんだろう?」

 

 

 

どっか行ったのかなぁ?でも、そういうときは僕達に一言言うと思うけど。

 

 

 

「ん...?」

 

 

 

野営地から少し離れた草地。そこに、不自然な物を見つけた。

近寄って見ると、乱雑に転がる試験管の数々と羊皮紙の巻物だった。

この試験管は二属性回復薬(デュアル・ポーション)であり、神様がナァーザさんから受けっとったものだったはず。

嫌な予感がする。

そして僕は、置かれていた巻物を解き読む。

 

 

 

『【リトル・ルーキー』。女神は預かった。無事に返して欲しかったら一人で中央樹の真東、一本水晶まで来い...』

 

 

 

グシャ!!

 

 

 

おっと...あまりにもおかしなことを書いているから、握り潰してしまった。

えっと、なになに...神様を預かった。返して欲しければ来い、と。なるほどなるほど.....どうやら犯人は自分の死が怖くないようだ。

僕は怒りが沸々と湧き上がる。だけど、直ぐに深呼吸をした。怒りに呑まれては、冷静な判断が出来ないからだ。

 

 

今すぐにでも行きたいけど、一旦落ち着こう。呼ばれた所にいるとは限らないから、他の所を探してくれる協力者が必要だ。

 

 

こういうのは本来、早く助けないと行けないけれど、連れ去られたのは''神''であるため下手なことは出来ないと思う。なので、協力を仰ぐ時間ぐらいはあるはずだ。そう考え、ベルは全速力で駆けた。

 

 

 

「リリ、ヴェルフ!!」

 

 

 

野営地に向かい協力を仰いだのは、リリとヴェルフ。

 

 

 

「どうなされたのですか、ベル様?そんなにも焦っておられて」

 

 

 

今まで見たことがないベルに、疑問を浮かべる二人。

 

 

 

「こういうことだから!神様を探しといてほしい!」

 

 

 

と押し付けるように巻物を渡し、そう言って走り去った。

説明不足は否めないけど、二人なら意図を汲んでくれるだろう。

 

 

 

二人は、何かを押し付けるよう渡し走り去っていったベルにまた疑問が浮かぶが、先程のベルの言葉と巻物に書いてある文を読み、すぐさま行動にうつしたのだった。

 

 

______________________________

 

 

 

「...あそこか」

 

 

 

木々の割れ間の奥に、空に伸びる長い青水晶を視認する。

視認してからは、一気に駆けた。でこぼこの地面や盛り上がる太い根を難なくと。

やがて、木々の密度が薄れ、陽だまりの出来た空間へと飛び出した。

 

 

 

「...早かったなぁ【リトル・ルーキー】!」

 

 

 

僕が来たことの報告を受け、水晶の裏から出てきたのは、酒場で絡んできたモルドだった。

この人が主犯か、と少し驚いたが、それよりも神様だ。ダンジョン内では神威を出せないため、どこにいるか分からないのが悔やまれる。

 

 

 

「....神様は?」

 

 

「てめぇの女神様はてめぇを誘き寄せる餌だ。あぁ、安心しろ。何にもしちゃいねぇよ!神を傷付けるなんて禁忌、怖くて出来ねぇからな!」

 

 

 

ここには居ないということか。なら、別のとこを探そう。

再び神様探しをするため、踵をかえす。すると、モルドは嘲笑うように言ってきた。

 

 

 

「先に言っとくが、ここから離れるようなら、女神様の服を間違えて切っちまうかもしれねぇな!」

 

 

 

 

 

 

「あ''?」

 

 

 

ブワッ!

 

 

 

『―ッ!?』

 

 

 

殺気。

それは階層主と対峙した時のような、いやそれ以上の恐怖が押し寄せる。

ここにいる''全て''の冒険者が過呼吸になり腰が砕ける。

冒険者''達''は、その殺気を放ったであろう者に瞠目する。

 

 

 

一方、ベルはベルで、心を落ち着かせていた。あれは脅し文句だと。

でもそれは確定では無いため、大人しく従わないといけない。嘘だと決めつけ、本当に神様がそんな目にでもあったら、自分が許せない。

 

 

 

「...僕に、何か用があるんですか?」

 

 

「はぁ、はぁ...くっ」

 

 

 

モルドはまだ呼吸が整っていなかった。

怒りのあまり無意識に出た殺気は、自分が思っていたよりでていたようだ。そこまでなっていると、逆になんか申し訳なく思ってしまう。

 

 

 

「はぁ...ちっ...」

 

 

 

恐怖が収まってきたのか、舌打ちをし忌々しそうに見てきたモルド。いや、そんな目で見られても...

というより、もう大丈夫かな?

 

 

 

「もう一度言います。何か用があるんですか?」

 

 

「...はっ。薄々気付いてんだろ?なぁ、レコードホルダー」

 

 

 

含みのある言い方。その目には妬みが映っていた。

 

 

 

「ちゃんと一人で来たか?」

 

 

「ええ」

 

 

「そうか。まぁ、例え仲間を連れてこようと返り討ちにしていたがな!出てこい!」

 

 

 

モルドがそう言うと、茂みから続々と出てきた''20人余りの冒険者達''。

 

 

 

「安心しろ!そいつらは手を出したりしねぇよ!....付いてこい!」

 

 

 

僕は大人しくその後ろを着いていく。冒険者達も一緒に。

 

 

 

そして、連れていかれた先は、低く小さな大地とでも言うべき場所だった。

上がれ、とモルドに言われステージへ昇る。他の冒険者は周りに散らばり、モルドとベルを隙間なく取り巻く。

 

 

 

「これからやるのは俺とてめぇの一騎打ち、決闘だ」

 

 

 

決闘?

 

 

 

「決闘ですか」

 

 

「ああ、単純だろう!勝った野郎には、負け犬に一つ好きな命令が下せる!」

 

 

 

ニヤリと笑うモルド。

 

 

 

「俺が勝ったら、てめぇの高そうな装備を全部売って金にしてやるよ!」

 

 

 

それは...、得なのか?せっかくこんなことまでしたのに、それだけっていうのはなんかもったいない気がするけど。それとも、別のもっといい事があるのか。まぁその程度で満足してくれるのなら、こちらとしては全然嬉しいんだけどね。

 

 

 

「なら僕が勝った場合、神様を返してください」

 

 

「...ああ、いいぜ。だが、勝てたらの話だけどなぁ!」

 

 

 

勝利を確信しているかのような煽り。

モルドは背に装備している大剣を勿体ぶるように、ゆっくりと引き抜く。

僕は、腰に差している刀の鞘に手を添え構える。

 

 

 

「ただ、勘違いするんじゃねぇぞ、クソガキ」

 

 

 

大剣を肩に担ぎ、凶笑を浮かべながら

 

 

 

「これは....てめぇを嬲り殺しにする見世物だ!」

 

 

 

そう言ったモルドは、勢いよく大剣を振り下ろした。

それは粉砕音を上げ、地面を割る。膨大な土煙が辺りを舞い、視界が奪われる。

ベルは直ぐに煙から距離を置き、構えた。

 

 

 

「ん...?」

 

 

 

煙が晴れた頃、目の前の光景に疑問を浮かべた。モルドが居ないことに。いや、居るには居るのだが、姿が見えないのだ。まるで、僕が''外套を被っているとき''かのように。

 

 

 

「ーおっと」

 

 

 

真横からきた拳の攻撃を屈んで避ける。

 

 

 

「―っ!」

 

 

 

モルドは避けられたことに動揺した。見えてないはずの攻撃が避けられたから。だが直ぐに立て直す。さっきのはまぐれだと言い聞かせて。

 

 

 

二度目の攻撃は腹部。僕はその突き出してきた腕を掴み、背負い投げをした。

 

 

 

ドォン!!

 

 

 

「ガハッ!」

 

 

 

打撃音が鳴り、再び砂埃が舞う。

モルドはやり返されるとは思ってもおらず、油断から受け身を取れていなかった。そのため、かなりの衝撃が体内を駆け巡ってしまった。

 

 

 

「て、てめぇっ、見えてんのかぁあああああ!?」

 

 

 

思い通りにいかず、さらにはやり返され、激昂するモルド。

当然だけど、見えていない。

 

 

 

「いえ、全く見えてないです」

 

 

「なら何でくらわれねぇんだ!?」

 

 

「気配で分かるんですよ」

 

 

「気配...だと?」

 

 

「ええ。だから、貴方がどんな攻撃をしようと対処出来るんです」

 

 

 

ここで、ベルについて少し語ろう。

ベルの気配察知能力は、自然に身についたものではなく、とある師匠に教えてもらった(強制的に教えられた。ボコボコにされたのはいい思い出。泣)ものなのだ。

ベルの気配察知能力はあまりにも秀でていた。いや、気配察知能力だけじゃなく、全体的に。

その理由は、ベルの身体に精霊の血が混ざっているからである。精霊の血によって、身体が変化したのだ。

だから恩恵が無くともそれなりに強かったのは、このように精霊の血のおかげであった。

 

 

 

「クソがぁああっ!」

 

 

 

モルドは剣を抜いた。その剣も、モルド同様見えない。

 

 

 

「うおおおおおおおっ!」

 

 

 

守りも駆け引きも何一つ考えていない、力まかせの振り下ろされた剣。

 

 

 

キンッ!!

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

ベルは瞬時に『次元収納袋』から小刀を取り出し、【反射】をもって、モルドの一振りを弾き返した。

またすぐに小刀を動かし、仰け反るモルドの首に剣先を突きつける。

 

 

 

「これで僕の勝ちですね。それでは、神様の場所を教えてください」

 

 

「...く、クソがぁああああああっ!!」

 

 

 

首に突きつけられていた剣先を少し引いてから屈んで避け、僕の懐に剣を一閃するモルド。

だが、またその攻撃は当たることがなかった。

 

 

 

「...っ!?」

 

 

 

モルドは一閃するとき、笑みを浮かべていた。とった!と。だけど、斬った感覚が無く、ベル自体もいなくなっていた。

何処だ!と首を動かそうとしたときに気づいた。逆刃が首に当たっているのを。

 

 

 

「もういいですね?」

 

 

 

そう言うと、しばらくしてモルドは力なく崩れ落ちた。

 

 

 

「では、僕が勝ったので神様の場所を教えてください」

 

 

 

あれだけイキがっておいて、あっさりと負けてしまったことに、モルドは戦意喪失する。今のモルドは、哀愁漂うただのおっさんになっていた。

 

 

 

「....東の森だ」

 

 

 

力のない声でそう言った。

それは、ざっくりした情報。もうちょっと細かな情報が欲しいけど、場所が絞れただけでも充分だ。

 

 

 

その時

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

神威!?...これは、神様の神威だ!何でっ!?

ベルは突然の神威に驚く。

 

 

 

「クソっ!」

 

 

 

神様に何かあったのではないか、そう不安がよぎる。

 

 

ベルは駆けた。

だが、直ぐに足を止めてしまった。

 

 

 

何だ...?何かがおかしい...

 

 

 

神様の神威は、既におさまっていた。にもかかわらず、異様な雰囲気が流れている。

 

 

 

その時、足場が揺れた。

 

 

 

「...何がどうなってるの?...っ」

 

 

 

ベルは、誰よりも早く上を見た。

''それ''は、太陽の役割を果たす、中央部の白水晶の中で蠢いていた。

 

 

 

そしてまた、先程よりも大きな震動が起こる。

 

 

 

バキリッ!!

 

 

 

白水晶に、深く歪に線が走った。やがて、亀裂は更に広がり青水晶まで及んだ。欠けた水晶がパラパラと落ちてゆく。

 

 

止まらない亀裂。降りしきる水晶の雨。

そして''それ''は、クリスタルから音を立てて顔を出す。

 

 

 

「黒い、ゴライアス...?」

 

 

 

見た目はゴライアスなのだが、色が白ではなく黒だった。

 

 

 

その黒いゴライアスは、上半身を出すと

 

 

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

 

 

凄まじい産声を上げた。

やがて、黒いゴライアスは落下した。それはまるで黒い隕石かのように。そして、直下にあった中央樹を踏み潰した。

ゴライアスによって壊れた水晶は、明かりを無くし、18階層は一転して薄暗い夜が広がった。

 

 

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side:裏で行われていた神ヘルメスの暗躍。

 

 

モルドとベルが闘っていたとき。

 

 

 

「やっぱりそうなったか...。アスフィ、例の件頼んだよ」

 

 

「...はぁ、分かりました」

 

 

 

アスフィに向かわせたのは、ヘスティアがいるところ。

ヘスティアとヘスティアを助けた子を襲い、襲うアスフィと二人を助けるベルを交戦させようと作戦だてていた。

 

 

Lv.2はLv.4には絶対勝てない。もし斥けられるようなら、オレの予想通りだと言うことになる。

だが、ベル君が来る前にヘスティアが神威を使うとは予想外だった。

 

 

 

ゴライアスが産まれ堕ちた直前。

 

 

 

「ヘルメス様、これはどういうことですか!?」

 

 

「おっ、お疲れ様、アスフィ」

 

 

 

ヘスティアの神威が収まったあと、直ぐに帰ってきたアスフィ。

 

 

 

「ああ、ウラノス...祈祷はどうした。こんな話は聞いてないぞ」

 

 

 

帰ってきたアスフィを気にも止めず、そう悪態をつくように呟いた。

それからは、アスフィに応援を呼んでくるように指示した。

避難するのではっ?と言われたが、出口の洞窟は塞がっている。

 

 

 

「もうっ!生きて帰れなかったら恨みますからね、ヘルメス様!!」

 

 

 

そう言い、ヤケになって飛び出して行ったアスフィ。

 

 

 

「大丈夫さ、アスフィ。オレの予想通りなら、ベル君が何かやってくれるさ。例え違ったとしても、どうにかするだろう」

 

 

 

ニヤリと笑みを浮かべ

 

 

 

「さぁどうする、ベル君。それとも、''『守護者』アレグサンダー''と呼んだ方がいいかな」

 

 

 

そう言った。

 

 

 

ヘルメスは、英雄譚の『原典』を発見し読んだことがある。(ダンメモのストーリーにて。作者の記憶違いでなかったら)

ある日、オラリオにベルという名の冒険者がいること、その冒険者が史上最速でランクアップしたという情報が耳に入った。

 

 

英雄譚には様々な話がある。一番有名なのは、『アルゴノゥト』だ。

そして、その英雄譚の一人にベルも入っている。話の数では、一番多いまである。

しかし、皆が読んでいる英雄譚には別名で綴られている。これは、ただ単に気恥しいというのと、いつまで自分が生きているか分からないということから、偽の名前を語っていたからだ。だから民が読んでいる英雄譚には、『守護者』''アレグサンダー''と綴られている。

 

 

オルナが綴った『原典』には、ベルのことはそのまま書かれていた。その一つは、呪いによって寿命が伸びていることも。

 

 

ヘルメスは、面白い遊びを見つけたと歓喜した。

神は暇であり、いつも面白いことを求めている。その気がもの凄く強いヘルメスにとって、これ程ワクワクさせる事を見つけて、喜々としないわけがなかった。

 

 

ベルは災難だ。トップクラスに面倒くさい神達に見つかってしまったのだから。

 

 

 

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(ここからは超ガバガバでいきます。ご了承ください。...え?もともと?)

 

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side:ベル

 

 

突然18階層に産まれ堕ちた、黒いゴライアス。

モンスターが湧かないはずの階層にモンスターが、それも階層主が現れたことで冒険者達は混乱に陥っていた。

僕は、そんな逃げ遅れた冒険者達を避難誘導していた。外套を被って。

 

 

 

「おい、さっさと逃げろ」

 

 

「...お、お前は...!」

 

 

「''俺''のことはいいから、早く行け」

 

 

 

見た感じ、さっきの人で最後だろう。一つ仕事をやり終え、息を吐く。

それにしても、外套を被った僕のこと知ってる人ってなかなかにいるんだなぁ...。まぁ、二つ名が付いたくらいだし、そういうもんか。

そんなことを考えていたら

 

 

 

『オオオオオオオオオオオオオッ!』

 

 

 

突然、ゴライアスの雄叫びが響き渡った。階層の隅々にまで届いたその叫び声。呼んだのは、モンスター達だった。

森から、草地から、湿地帯から。18階層に棲息しているモンスターが、ゴライアスのもとに召喚された。

18階層はモンスターが産まれない。これらは全て、他の階層から来たモンスターなのだろう。

だが、それにしても

 

 

 

「多い過ぎじゃない?」

 

 

 

結構な数がいたのだ。

周りを見渡すと、冒険者達がそれらのモンスターらに阿鼻叫喚していた。

再びベルは、冒険者達を助けるために動いたのだった。

 

 

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side:ヘスティア

 

 

黒いゴライアスが産まれ堕ちてから、ヘスティアとリリ、ヴェルフやリューに《タケミカヅチ・ファミリア》が集まっていた。

だが、一人いなかった。

 

 

 

「ベル様は何処に行かれたのですか!?」

 

 

 

リリは、ベルが居ないことに焦っていた。ヴェルフも他の人たちも。

ヘスティア達は今、先程までベルとモルドが決闘していたところにいる。

そこにはベルもいると思っていたのだが、いなかった。そこにいた冒険者に聞いたら、いつの間にかいなくなっていたらしい。

ベルの安否が分からず、それに加え、黒いゴライアスが産まれるという異常事態に混乱する。

 

 

 

そこで、ヘスティアが声を上げた。

 

 

 

「ベル君なら大丈夫さ。今頃、人助けでもしてるんじゃないかな。ベル君のことだしね」

 

 

 

ヘスティアは、ベルが外套を纏って冒険者達を助けていたのを見つけていた。

 

 

 

「どうしてそう言いきれるのですか?」

 

 

「そりゃあ、僕たちが相思相愛だからかなっ!」

 

 

 

ベル君がやってくれる。という安心から心の余裕があるヘスティアは、おちゃらけにそう言った。

 

 

 

「は、はぁ...そうですか」

 

 

 

いつものベル愛だと、呆れて流すみんな。

おっと、へんな空気が...

 

 

 

「ん、ん''ん''。...それで、あのモンスターをどうするんだい?出口は塞がれているから、応援は望めないけど?」

 

 

 

ベル君がやってくれるとはいえ、訪れた恐怖を自身で跳ね除け.乗り越えるのが冒険者というもの。

ヘスティアは周りにいる冒険者達にそう問いかけた。

 

 

 

「...何もせずに死ぬくらいなら、抵抗して死ぬほうがいいですね」

 

 

 

リューの返答は決まっていた。どうせ死ぬかもしれないのなら、足掻いて死のうと。

そして、リューをかわきりに他の皆も覚悟を決めた。

 

 

 

ヘスティア達は頷き合った。

そして、ヘスティアは声を上げた。

 

 

 

「絶対に生きて帰ろう!」

 

 

 

六つの影が森を抜け、草原を駆けていった。

残されたヘスティアは

 

 

 

「頑張れ、みんな!」

 

 

 

その駆けて行った背中と、どこかで戦っているベルにそう言った。

 

 

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side:ベル

 

 

「ふぅ...、かなり減ったんじゃないか?」

 

 

 

ベルの周りには大量の魔石が落ちていた。これはベルだけが倒した訳じゃない。ここにいる冒険者達もやったものだ。ベルが戦っている姿を見れば、阿鼻叫喚していた人達も奮起する。『俺達も冒険者なのに、弱気になっていてどうする!?』と。

関係ないが、ベルの戦闘は効率的で綺麗でかっこよく、その姿に魅入られる人もいた。

 

 

 

「そろそろ僕も、ゴライアス戦にまざるか」

 

 

 

最初はモルド達が戦っていた。そして、少し前からリューさん達が相手をしている。

ベルはそう呟くと、ゴライアスのもとへと駆けた。

 

 

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最前線に着いた僕は、リューさんとアスフィさんに話しかけた。

 

 

 

「どうだ、このゴライアスは?勝てそうか?」

 

 

「!...貴方は、酒場の...」

 

 

正体不明(アンノウン)!?」

 

 

 

二人は僕の姿を見ると驚いた。

 

 

 

「何で俺の姿を見て、皆驚くんだよ...。まぁ、その事はいい。どうだ?」

 

 

「...リヴィラに応援をかけ、集まった冒険者は約百人程。これから魔道士達による総攻撃を仕掛ける予定です」

 

 

 

アスフィさんはゴライアスを警戒しながら、冷静に報告した。

 

 

 

「そうか。なら、注意を逸らす必要があるな」

 

 

「ええ。当然してくれますよね?」

 

 

 

その目は、絶対にするよな?という圧がかかっていた。

いや、怖い怖い。

 

 

 

「まぁ、乗りかかった船だしな」

 

 

「分かりました。それでは私たち三人で、敵の意識を分散させましょう」

 

 

「え、いや、待っ―」

 

 

 

自分はするつもりがなかったのだろう。リューさんの言葉に一瞬呆けてしまうアスフィさん。否定しようとするも

 

 

 

『よおおしっ、てめー等!アンドロメダが囮になるから心置きなく詠唱を始めろぉ!』

 

 

 

とある冒険者によって、先が言えなかった。

 

 

 

「―ボォールスゥ!?後で覚えてらっしゃい!!というか正体不明(アンノウン)!貴方ならアレをどうにか出来ませんか!?」

 

 

 

一瞬前までボールスだったのに、何故かこちらに矛先が向けられた。

 

 

 

「まぁ倒そうと思えば、倒せるが」

 

 

「なら倒してくださいよ!」

 

 

「こんなに団結してるんだ。俺が倒しちまったら味気ないだろ。経験だ、経験」

 

 

「こんな経験いりません!全く、もう...」

 

 

 

泣く泣く一番危険な囮役を課せられてしまったアスフィさんは、リューさんとは逆方向に向かいゴライアスの周囲を動き回る。

左右は二人が担っているため、僕は正面から囮になった。

 

 

ボールス達はというと、ゴライアスから距離を置いた小高い丘にて、即席の拠点を設けていた。そこには、数多の武器や盾が並んであった。それを冒険者達は遠慮なく持ち去り、戦場へと向かった。

 

 

 

《ファミリア》、種族の垣根を超えて、総勢百人に達する冒険者達が、ゴライアスを包囲しつつあった。

 

 

______________________________

 

 

 

魔道士達による魔法の詠唱が終わるまで、囮役の二人と他の前衛攻役の人達は奮起していた。

僕はみんなの様子を見つつ、ゴライアスに対して嫌がらせをしていた。

一つ言うと、武器は簡易拠点にあった剣を使っている。刀はいつもの姿で使っているため、この姿では使えないからだ。

そこでボールスの声が響き渡った。

 

 

 

「前衛、引けえぇっ!でかいのぶち込むぞ!」

 

 

 

ようやっと詠唱が完了した。僕達、前衛陣は直ぐさまゴライアスのもとから離れる。

 

 

魔道士達はそれぞれの杖を振り上げた。

魔法円の輝きが弾け、次の瞬間、怒涛の一斉射撃がゴライアスへと見舞われた。

 

 

 

「――――――――――――――ッッ!?」

 

 

 

多属性の攻撃魔法。それは、花火の爆発事故のように轟轟とゴライアスの巨躯が塗りつぶしていく。

 

 

 

やがて一斉射撃は止み、全ての冒険者達が固唾を呑んで砲撃中心地を見守る。

煙がはれるとともに、片膝をついたゴライアス。それは傷付き、抉れ、赤い血肉をさらしていた。

 

 

 

「ケリをつけろてめぇ等!たたみかけろおおおっ!」

 

 

 

チャンスだと言わんばかりに、ボールスは発破をかける。

 

 

僕も参加しようと思ったけど、何か違和感を感じた。よくよく見ると...

ん...?なんか傷治ってきてない?....もしかして、再生能力持ってる....?なら、近づくのはまずいんじゃ?...あ、皆結構近づいてる!止めないと!

 

 

 

「待て、お前らっ!まだ近づくな!」

 

 

 

僕はそう叫んだ。

冒険者達は一瞬驚いた後、僕の声と内容に足を止める。

 

 

 

「おい、どうした正体不明(アンノウン)!?」

 

 

「あれを見ろ!」

 

 

 

ゴライアスの傷がついていた箇所を見るように促す。

 

 

 

「あれ?傷が...」

 

 

 

冒険者達は気づき始めた。

そのとき、傷付いて沈黙していたはずのゴライアスが、顔を上げた。

その顔面に負った傷は、やはりどこにもなかった。顔面だけじゃない、身体からも。

 

 

 

「自己再生だと!?」

 

 

 

凄まじい速度で再生させたゴライアス。再生能力を持っていること、その速度に速さに、驚き呆然としてしまう冒険者達。

ゴライアスは、その巨大な両腕を頭上高く振り上げた。それは、迂闊に接近した前衛陣や立ち尽くす魔道士達による包囲を壊滅せんと。

 

 

そして握り締められた二つの拳は、足元へと振り下ろされた。

 

 

 

ドォッオオオオオンッ!!!

 

 

 

大草原が、割れた。比喩ではなく、そのままに。

凄まじい爆発と、爆音が響き渡る。莫大な衝撃波が発生し、衝撃波の津波が押し寄せる。前衛陣はそれに呑みこれ、蹴散らされる。更に魔道士達のもとにまで及び、盾役まで吹き飛ばした。

 

 

 

たった一振りの攻撃で、包囲網が壊滅した。

前衛陣も後衛陣も多くが地に倒れ込んでいた。

 

 

 

そして、ゴライアスは魔力を用いて治癒能力を増幅させていた。

 

 

 

あれだけの準備をして、やっとあれ程の攻撃が出来たというのに、ゴライアスの自己再生が上回るという絶望が広がる。

 

 

 

治癒を終えたゴライアスは、攻撃を再開する。

『咆哮』を放ち、冒険者達に追い打ちをかけていく。

 

 

 

「ボールス、部隊を再編成して、体勢を立て直しなさい!」

 

 

「無茶言うんじゃねぇ!?」

 

 

 

ボールスの言う通り、それは無茶だ。

それに、再編成するとしても邪魔をされるだけ。

 

 

 

もし、ゴライアスに自己再生能力がなければ、倒せただろう。本当に惜しかった。

だけど、もう流石にこれ以上は無理はさせられない。

 

 

 

「アンドロメダ、エルフ、下がっていろ。ここからは俺がやる」

 

 

「やっとですか...。最初から貴方がしておけば良かったものを...」

 

 

 

そう不満をぶつけてくる、アスフィさん。

うん、いや、まぁその通りなんですけどね。

 

 

 

「見たかったんだよ。お前達の偉業を」

 

 

 

【ファミリア】を、種族を超えて助け合うのは、この世界において神秘的で素晴らしきものだ。

だから、こうやって協力し合う皆を邪魔したくなかった。自分勝手だけど。

 

 

 

「とまぁ、そういうわけで倒してくる。あ...、アンドロメダ、エルフ。これを持っていけ。全部で100本以上はあるはずだ。これを負傷した冒険者達に与えてくれ」

 

 

 

そう言って、『次元収納袋』から出したのは《ハイ・ポーション》。

何があるか分からないので、箱で大量に常備していたものだ。

どうでもいいが、『袋』の中は時間の流れが遅いため、劣化しにくい。まぁ、定期的に変えているけど。

 

 

 

「分かりました。では、ご武運を」

 

 

 

リューさんは、箱を持って下がって行った。

だけど、アスフィさんはとどまったままだった。

 

 

 

「なんだ?アンドロメダ」

 

 

 

僕のことを見つめるアスフィさん。正確には、袋を見ている。

少しの間、沈黙が流れる。

 

 

 

「...そのふくr...「さっさと下がれ」...はい」

 

 

 

《神秘》持ちのアスフィさんにとって、これは大変興味深いものだったんだろう。職業病かな?

まぁ、そんなことはいいとして、さっさと終わらそう。あまり長引かせても、冒険者達の負担が大きくなるだけだし。

 

 

 

僕は『袋』から、大剣を取り出す。刀は使えないから。

その大剣は、全長2mほどで、刀身は黒い。(オッタルの大剣に似ている)

 

 

 

ベルは駆けた。

ゴライアスは、あまりにも速すぎるベルに反応が遅れる。

ゴライアス自身、ベルのことは残像でしか見えていない。

 

 

 

「再生能力があるし、一撃で仕留めよう」

 

 

 

手足を斬って、行動不能にしてから倒そうと考えていたが、再生能力があるのならそれは意味が無い。よって、一撃で仕留める必要がある。

 

 

 

ベルはゴライアスの背後へと回ると、跳躍した。

 

 

 

『時雨流 大剣術』

 

 

 

大剣を振りかざす。

ゴライアスは、今更僕の存在を感知する。

だが、もう手遅れだった。

 

 

 

『断罪』

 

 

シィン....

 

 

 

ザァッアアアアアアアアアンッ!!

 

 

 

振り下ろされた大剣は、ゴライアスを真っ二つに斬り裂いた。

また、振り下ろされた際に風圧が生まれ、左右に爆発し、砂埃を舞いあがる。

地面も斬り裂かれていた。

 

 

 

やがて、ゴライアスは一瞬で灰になった。

そして、ドロップアイテム『ゴライアスの硬皮』が落ちる。

 

 

 

『――うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 

 

次の瞬間、大歓声が巻き起こった。

 

 

 

周囲の冒険者達が万歳し、あるいは肩を組み、涙を浮かべるものまでいた。

また、僕が放った技に対して『なんださっきの攻撃!すげぇ!!』などなど、興奮もしていた。

 

 

 

でも、少し落ち着いてくると、チラホラと『あれ?最初からアイツがやってれば、俺らこんな負傷してなくね?』と呟きが出てくる。

 

 

皆がこちらを見てくる。

 

 

 

うーん...よし、逃げよう。

 

 

 

「....さらばっ!!」

 

 

 

全速力で追求から逃げた。

 

 

 

『逃げるなっ!!』

 

 

 

後ろの方でで、響いた皆の叫び。

あー、聞こえない、聞こえなーい。とシラを切るのだった。

 

 

______________________________

 

 

side:ヘルメス

 

 

 

「ハハっ、実に愉快だったよ、ベル君!」

 

 

 

彼は酔いしれるように笑う。

 

 

 

「それは正しく''道化''のようだった!それにまさか、予想が当たるとは思わなかった!」

 

 

 

興奮冷めやらないと言うように、ヘルメスは歓喜の声を続ける。

 

 

 

「なんとも暇だと思っていたが、こんな心はやることに出会えるとは!これほどのことを楽しまないでいられるか!?いや、いられない!!」

 

 

 

ヘルメスは、最高の娯楽を見つけた。

そして、先程まて歓喜で充ちていた笑顔が、ニヤリと笑う。

 

 

 

「ああ、やはりこう言わずにはいられない!」

 

 

 

 

 

 

『さぁ―――喜劇を始めよう!』

 

 

 

 

人知れないとある場所。

一柱の神が、この地に降りてきていたことを、大いに喜んでいた。

 

 

______________________________

 

side:ベル

 

 

ゴライアス討伐後、僕は直ぐに仲間の元へと戻った。

何処に行っていたのか問われ、モンスターを倒し回っていた、と答えた。幾分か怪しまれたが、神様のフォローで難を逃れた。リリとヴェルフだけだったら言ってたけど、他の人もいるから言えなかったのだ。

それで、かなり心配させてしまっていたようで、謝りまくった。

 

 

 

後日、僕達は無事に地上へと帰還した。

18階層での出来事は、余計な混乱を防ぐため、箝口令が敷かれた。

 

 

 

そして、数日ぶりにホームへと帰ってきた僕達。

ホームの中に入ると、神様がこちらに振り向いてきた。

 

 

「ベル君、お疲れ様!それと、おかえり!」

 

 

 

その顔は、満面の笑みだった。

 

 

 

「はい、ただいまです!神様も、おかえりなさい!」

 

 

 

僕も満面の笑みをうかべ

 

 

 

「うん、ただいま!」

 

 

 

この瞬間を、かみしめるのだった。

 

 

 

 

 

追記

何ですか、この話?崩壊しすぎじゃないですかね。ま、いつもですけど。

それと、魔剣『火月』のことも書こうとしたのに、いずこへ?

 

 

 

 

 




ありがとうございました。

これにて5巻は終わりましたね。

次回からは6巻に入ります。

次回、アポロン・ファミリア

では、さようなら
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