本当は春姫と会ってホームへ帰る、所まで書きたかったんです。
変なとこで終わってます。
約7000字です。
side:ベル
最近、命さんの様子がおかしい。どこかよそよそしいのだ。
夕食後、まだ夜の八時前なのに「早めに就寝させてもらいまーす」と大根役者かのような棒読みで言い、部屋に戻るのかと思えばこっそりと窓から飛び降り、こそこそと裏門から外へと出ていく。そんなことが最近ある。
そこで、何故そんなことをしているか調べるため、ヴェルフが尾行を提案した。
「尾行は
ひさびさという言葉に含みを感じたのは多分僕の勘違いだろう、うん。
小さい声で談笑しながらも、付かず離れずの距離で追う僕達。命さんは注意が散漫になっているのか 尾行に気付いていない。
やがて、南のメインストリート――繁華街に到着する。
大劇場に博打場、高級酒場。巨大かつ派手な建物が並ぶ大通りは、商人や冒険者、神々でごった返している。
そんなところを他所に、命さんはとある路地裏へと入り、少女――千草さんと合流した。
その二人は薄暗い小径の先へ先へと進んでいく。
「...なぁ、この先って、まさか」
「...歓楽街、だね」
唐突に顔を上げたヴェルフは、そう硬い声を出した。
現在地は都市の第4区画、その南東のメインストーリー寄り。
隣接する繁華街とは打って変わって、場は淫妖な雰囲気が漂っている。
アマゾネスを中心に、ヒューマン、獣人、
どこからか漂う甘い香水は、男性の脳をクラクラさせる。
「オラリオの歓楽街は初めてだなぁ。こんなふうになってるんだね」
オラリオに来てから直ぐにアイズという女性に一目惚れしたので、オラリオの歓楽街に寄ったことがないベルはそう呟いた。―――リリの前で。
「ベルさまぁ〜、その話、詳しく聞かせてもらってもいいですかぁ〜」
気持ちいいほどにこやかに言うリリ。
え...?なんで僕、圧かけられてるの?なんか変なこと言った?と突然の圧に困惑する。手を見ると、恐怖を抱いたのか...震えていた。
『夜の街』の話が出たので、ここで少し閑話を挟もう。
side:第三者視点
昔、ベルには歓楽街に行くのが好きな友人がいた。その友人はよくベルを誘い、ベルも断る理由がないので一緒に行っていた。少し女性にだらしないところがあるが、人情に厚くとても頼りになるやつだった。
で、その友人曰く『ベルを知った女性は、他の男では満足できない』。
どういうことか。娼館に行くと、ベルの相手をした事がある女性達は血眼になって自分の事を推すのだ。その女性達に理由を聞けば口々に、死にそうになるくらい気持ちよかった、する前も最中もした後も気遣いがとても心地よかったと。
店を変えても変えても、全員がベルに夢中になる。酷い人はストーカーになるほどだった。
女性の怖さを知りベルに同情するも、少し羨ましく思う友人。
また、ベルは彼女らに紳士的に接していた。というか、分かっていなかった。『なんで皆、あんなに必至なの?』と。友人は戦慄した。
これはとある昔の友人が見聞きした、ベルの話。
閑話休題。
特に言うこともないので、話題を変えよう。
「命さん達は、なんでこんなところ来たんだろう?」
「...まさか、お金のために体を?」
リリがそう言うが、多分違うと思う。
何故なら、両手を胸の高さで握り合い、ビクビクとしている二人の姿があったから。顔を真っ赤にして、寄り添い会いながら周囲をキョロキョロし、ときには肩を大きく跳ね上げているのを見たら、到底そうは思えないのだ。大方、人探しだと推測する。
「不味い、行くぞ!」
今までいた第4区画から大通りを横断して、対岸の第3区画入口に彼女は姿を消していく。
見失うまいと、ヴェルフは慌てたように先頭を駆け出した。
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命さんを追いかけている途中、人が多すぎたので人の流れに身を任せた結果、案の定はぐれてしまったベル。
命さん達のことは、ヴェルフとリリがどうにかしてくれるだろうと思い、どんな風なのか見て回ることにした。来たこと無かったので、ちょうどいい機会だと。
ときどき声をかけてくる娘の誘いを丁重にお断りし、散歩を続ける。
すると、他の館とは違う異色を放つ大きな建物が目に映った。「遊郭」。極東の娼館だ。
張見世には多くの麗しい女性が過ごしていた。そのとき、張見世の奥にいる一人の少女と目が合う。
普通の娘なら大して気にとめないが、ここでは珍しい種族だったからだ。
『
極東を始めとした、限られた地域にしかいない少数種族。
気にとめたのは、ただ珍しいということだけではない。どことなく見覚えのある顔立ちをしていたからだ。
「あれ、ベル君?ベル君じゃないか!」
どこで見たんだろうかと記憶を思い返していたら、突然名前を呼ばれ、ぽんっと肩を叩かれる。
後ろを振り向くと、目の前に立っていたのはヘルメス様だった。
「ヘルメス様...?」
「はは、まさかこんなところで会えるとはね」
「え、ええ。そうですね...」
目を弓なりして優男の笑みを浮かべ、嬉しそうにそう言うヘルメス様。いつも同伴しているアスフィさんはおらず、一人のようだ。つまり、そういうことをしに来たんだろう。
「アスフィさんにバレても知りませんよ...」
アスフィさんは、ヘルメス様のことが好きだと僕は思っている。
好きな人が歓楽街に行っているなんてことを知ったら、気を害する。なので、怒ったアスフィさんに折檻されないか少しだけ心配する。
「オレがここにいたことは、くれぐれも内密に頼むよ?それで、ベル君こそどうしてここにいるんだい?【剣姫】という想い人がいるのに」
「僕は、仲間の事情で来ただけです。ただ、はぐれちゃいましたけど。それと、アイズには言わないでくださいね。誤解を受けたくないので」
もし誤解を受けることになったら、僕は百年は引きこもる自信がある。どういう自信なのか分からないけど。
「ああ、分かっているとも。さて、ベル君。ここで会ったのも何かの縁だ。―――ほら、これは
ごそごそ小鞄をあさるヘルメス様。
そして手渡されたのは、小瓶だった。
「なんですか、これ?」
「精力剤さ」
.....ん?
「それじゃあベル君!またどこかで会おうぜ!」
「え...あ、ちょ、ヘルメス様!これ、いらないんですけどー!!」
僕の言葉に耳を貸すことなく、颯爽と人混みに消えていったヘルメス様。
置いてけぼりをくらった僕は、手に精力剤を持ったまま久しぶりに虚無ったのだった。
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気を取り直し、もらった精力剤は後ほど処分するとしてポケットにいれる。
もうそろそろいい時間なので、ヴェルフ達を探そうと歩を進めた。
「そこのあんた」
人通りのないちょっとした路地を歩いていたら、背後から声をかけられた。
僕の他には誰もいないので、振り向き僕のことかと返事をする。
「僕、ですか?」
そこに居たのは、アマゾネスの娼婦だった。
「ああ、そうだ。見ない顔だと思ってね、呼び止めさせてもらったのさ」
彼女はそう言いながら、僕へと近づてくる。
そして彼女は僕をぐいっと引き寄せ、腰に両手を回し、抱き寄せる。
お互いの下半身が密着した格好で、至近距離で観察される。
『夜の街』特有の匂いと彼女の匂いにより劣情を抱いてしまいそうで、それをグッと抑える。
「へぇ....そそる顔をしてるじゃないか」
ペロリと、彼女は自身の唇を舐める。それはあまりにも妖艶であった。
「私はアイシャ。あんた、名前は?」
「え、えっと、ベルと言います...」
「そうか。ベル、今から私の一晩を買わないかい?」
艶めかしく誘ってきたアイシャさん。
温かい吐息に頬と首筋を犯され、ぶるりと身を震わせてしまう。
「え、遠慮しておきます。僕には心に決めた人がいるので」
そう断りをいれ、抱擁を解こうとする。
...あれ?ほどけない....。予想以上に力強く抱きしめられていたのか、解けないことに少し狼狽する。
無理にでも離れたいけど、女性であるため乱暴に振りほどくことが出来ない。
そんなアイシャさんは、僕が振りほどこうとしているのを感じ取ったのか、「おっと、逃がさないよ」と笑ってより強く抱き寄せた。
....無心になるんだベル!僕にはアイズという想い人がいる!
「何だかイイ男の匂いがするー」
「アイシャ、誰それー?」
心の乱れに追い討ちをかけるように、更に周囲からわらわらと姿を現すアマゾネス達。
僕はあっという間に包囲される形となった。
「今ここで見つけたんだ。ベルと言うらしい」
「ベル...?それって...」
「【リトル・ルーキー】....」
その二つ名が言われた瞬間、全ての目が集中した。
見られすぎて、穴が開きそう。
「...白い髪に、赤い瞳」
「遊戯戦争で、ヒュアキントスを倒した...」
「立て続けに更新記録を塗り替えている
アマゾネス達の双眼が一様にギラギラし出す。
この目は知っている。野生の獣が獲物を狙う時の目だ。つまり僕は、襲われる寸前ということ。
そして、彼女達は飛びかかってきた。
アマゾネス。僕にとって馴染みの深い種族だ。
閑話
side:第三者視点
これは先程話した閑話にて、ストーカーになる人もいたと書いてただろう。
そのストーカーというのは、種族でいうと、アマゾネスである。
いつも通り友人に誘われたベルは、その日熱い逆指名によりアマゾネスの娘とすることになった。
アマゾネスとは、自分よりも強い男に惚れる。
例を出せば、フィンとティオネの出会いのように。
まだ余力があったベル。動くこともままならないくらい骨抜きにされたその娘は、アマゾネスの土俵である''性''で負かされたベルに惚れないわけがなかった。
そこからだろう。猛烈なアプローチが行われるようになり、やがてはストーカーへとグレードアップしていったのは。
その娘のストーカー力はすさまじかった。どこに行っても見つけられるのだ。何故分かるのか聞くと『好きな
それと、濃いオスの匂いって何?と未だに疑問に思ってる。
その娘は普通にいい子であった。
というと、別に変なことされても大丈夫な時間 (そんな時間はないけど) は抱きついたりキスをしようとしてきたり襲ってきたりとするのだが、絶対に変なことをしないで欲しいという時間は大人しくしているという、思慮分別が出来ていた。なので言うに言えなかった。
ただ、その娘とはすることはなかった。中途半端にするのが一番よくないことだからだ。
これはとあるむかしの話。今となればいい思い出の一つ。
閑話休題
一瞬で呑み込まれてしまった僕は、彼女達にあらゆる体部分をあらゆる方向へと引き寄せられる。
痛い.....
もはや逃げることはできない。なので、されるがままに身を任せることにした。彼女達は僕をずっと拘束することはないと思うので、その時にでも脱出出来るだろう。
と、考えていた。このときは。
あと、、アイシャさんに精力剤を持っているのがバレたとき、ヘルメス様のことをアスフィさんに報告してやると決心したことを追記しておく。
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もはや宮殿に見える、大娼館へと連れ去られる。
中はお城ではないかと思える程に煌びやかであり、また娼館であることを忘れさせない淫靡な香りが漂っていた。
「なんだ、お前達。揃いも揃って」
どこかへと向かっているとき、吹き抜けとなった上階から声が投じられる。
その場にいた全員が一斉に顔を振り上げた。
そこには、''美''というものを体現したかのような美貌。行き過ぎた魅力。フレイヤ様とはまた違う美しさを醸し出す、『美の神』イシュタル様がいた。
「そのヒューマンは.....」
その瞳が、僕へと向けられる。
そこにはなんの感情もない。そう、これが普通なのだ。フレイヤ様の瞳には、手に入れたいという感情が強くでていた。
フレイヤ様はその者の魂の輝きで眷族に招くらしい。僕の魂がどういうふうに見えるているか分からないけど、やめて欲しい。
「見ちゃ駄目ー!!」
『魅力』されるのを危うんでか、彼女達は僕を庇うように殺到する。
護る行為自体は全然いい。だけど一つ言わせてもらうと、後ろから両目をあまりにも強く塞ぐもんだから、痛いんですけど...
「ふむ...一瞬まだ青い子供だと思ったが、かなり濃いオスの匂いだな。味見してみたいが、残念なことにこれから客が来る。お前達はじっくりと楽しむといい」
そう自身の眷族へ微笑み、そして従者と共に姿を消した。
僕としては、楽しむつもりは毛頭ないんですけどね〜。と内心つぶやいた。
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上階へと移動し、とある部屋に押しやられる。
中央まで追いやられ、最後にはどんっと長椅子に突き飛ばされた。
周囲は薄暗く、椅子や丸卓がいくつかと燭台の火のみの質素な部屋だった。
ただその充満している香りは、高価な香水と...なんだろうか?
「
僕の表情を読んだのか、アイシャがそう口にした。
興奮作用を促す香料だと昔に聞いたことがある。
アイシャさん含め彼女達は僕を取囲むように座った。
「空いてる部屋がないみたいだから、しばらくここで待ってもらうよ」
もうすることは確定事項だと言わんばかりに自然とそう言うアイシャさん。
ここでおっぱじめていいんだけどね、というは発言には流石に顔面が引きつる。
「それにしても、無理やり連れ去られたっていうのに落ち着いてるね」
「... どんな不測な事態が起きようと冷静を欠くな、と教えられたので」
師匠と尊敬していた人に教えてもらったことだ。
生きることにおいて時として不測な事が起こる。そのとき、冷静を欠けてはいけない。常に考え慌てず行動しろ、と。
まぁ、オラリオに来てすぐに滅茶苦茶取り乱したけど...。
「へぇ...いい師匠を持ったことだ」
「ええ、本当に...」
僕は師匠を師匠と呼んだことはあまり無い。師匠と言えば『お前を弟子にした憶えはない』というお決まりのお言葉を頂戴し、その日の特訓がきびしくなるからだ。ホントに地獄だったよね。
そんなある日、『師匠ってツンデレですよね』とダブルコンボをキメてしまい、その日若くして初めての走馬灯を見ることとなったのはいい思い出だ。
そう思い出に浸っているときだった。
「やばい、アイシャ!?フリュネだ!!」
扉を勢いよく開けて飛び込んできたアマゾネスの娘。その顔には焦燥が滲んでいる。
その瞬間、アイシャさん達は目の色を変えた。
そして、みんなは焦ったように僕を隠そうとするが.....遅かった。
ドォーンッ!!と轟音を鳴らし、扉が宙を飛ぶ。
「イイ男の匂いがするよぉ〜〜」
大きな鼻をヒクヒクと動かしながら、ソレは現れた。
『フリュネ』という名前は聞いた事がある。《イシュタル・ファミリア』の団長でLv.5の
僕は彼女のことを勝手に想像していた。団長であり娼婦でもある彼女は、きっと美女と呼ばれるに相応しいと。
でも、違った。正直言ってなんの魅力も感じない。それどころか嫌悪や恐怖を抱いてしまうほどだった。
(も、モンスター...!?」
内心で思ったことが口に出てしまうほどに衝撃を受けた。
このとき僕は逃げる手立てを必死に考えた。タイミング、逃げる場所等々。
先程、師匠の『冷静を忘れるな』という教えを想起したというのに、早速忘れてしまうベル。
彼女たちは何やら喚いているが、そんなことは気にとめず必死に考えた。
そこでふと気づいた。彼女達の意識が僕から薄れていることに。
好機だと悟った僕は、姿勢を低くし音を出さないようにゆっくりと移動していく。
【隠密】をしたいけど、今してしまえば気配が消えたことに違和感を持たれ逆に気づかれてしまう。
外套さえあれば...っ、と『次元収納袋』を持ってきていないことを後悔する。
「どこ行こうってんだい【リトル・ルーキー】ィ〜」
カエルモンスター、、じゃなくてフリュネさんが気味の悪い笑顔浮かべそう言った。よってフリュネさんへと向いていた意識が僕へと振り向く。
瞬間、僕は駆けた。
「っ!追え!【リトル・ルーキー】を逃がすな!」
アイシャさんの発言をかわきりに、アマゾネスの娘達は一斉にベルを追いかけた。
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なんやかんや逃げ回ったあげく、一際目立つ遊郭へと逃げ込んだベル。
アマゾネス達は自分達の方がステータスは上なのに、なかなか追いつけず。それどころかドンドン距離が離れて行くことに困惑した。
廊下にはたくさんの扉が並んでおり、飛び込むようにその扉の一つに入った。
フリュネさんという人を見、オラリオに来てから二度目のパニックを起こしたベルは、呼吸を整える。
そのとき、ひとの気配を感じとる。
振り向くと、そこには
「お待ちしておりました、旦那様」
張見世で見かけた『
ありがとうございました。
ベルは経験豊富でした。(は?)
次回 春姫
では、さようなら。