道化の元仲間は天寿に囚われる   作:時雨シグ

3 / 28
今回はフィンとの話です。

特に何もない日常です。


正体不明(アンノウン)の過ごし方 ② ご報告

side 正体不明(アンノウン)

 

 

 

オラリオの中心から北西には、通称冒険者通りと呼ばれる大道があり、終点にギルドが存在する。

必然的に冒険者が多く見られるため、周辺は冒険者を客と絞る店が多い。

 

 

 

特に店に用があると言う訳では無いが、ダンジョンに行けば必然的に冒険者が多くなるということは、顔見知りに会うことがあるというわけだ。例えばこんな風に―――

 

 

 

「やぁ、正体不明(アンノウン)

 

 

 

そう呼ばれたので、声のした方を向くと―――誰もいなかった。

 

 

 

「あれ?おかしいなぁ...呼ばれた気がしたんだが」

 

 

「...下だよ」

 

 

「ん...?」

 

 

 

下という言葉が聞こえたので、下を向くと小人族(パルゥム)の男がいた。

 

 

 

「別に下を向かなくても見えてたよね?」

 

 

「ちょっとからかっただけだ。悪かった」

 

 

 

僕に声をかけてきたのは、《ロキ・ファミリア》の団長で【勇者(ブレイバー)】の二つ名を持つ、フィン・ディムナさんだ。

 

 

 

「君って誰かをからかったりする人なんだね」

 

 

「普段はしないが、勇者(ブレイバー)に恋情を抱いている奴にからかわれたからな。その意趣返しを勇者(ブレイバー)にしただけだ」

 

 

「ああ、その話なら聞いたよ。なにやら正体不明(アンノウン)はMだってね」

 

 

「やめろ。本当に違うからな」

 

 

 

あのとき何故もっと深い階層、或いは端っこでやっとかなかったんだと後悔した。

そのときのアイズはからかいなしで引いており、レフィーヤさんにいたってはゴミ屑を見ている目だった。

その日、涙で枕を濡らしたのは言うまでもない。

 

 

「ハハっ、冗談だよ。僕もさっかからかわれたからね。お返しさ」

 

 

 

...フィンさんって人がいいように見えるけど、悪いよね...いやいい人なのは違いないんだろうけどさ.....多分ね。

 

 

 

「で、なんの用だ」

 

 

「別に用はないよ。ただ見かけたから声をかけただけさ」

 

 

「そうか。なら俺はもう行くぞ」

 

 

「ダンジョンに行くのかい?」

 

 

「ああ」

 

 

「僕もダンジョンに行く予定だったんだ。一緒にどうかな?」

 

 

「...は?」

 

 

 

その言葉に、ダンジョンへと向いていた体が振り向かされた。

えっと...なんて?今、一緒に行こうって言われた?なんで僕一緒に行こうって誘われたの?なんか怖いんだけど。

 

 

 

「丁重にお断りしよう。なんか企んでそうで怖いからな」

 

 

「大丈夫だよ。ただ君を近くで観察するくらいだから」

 

 

「...いや、少しくらい目的を隠すとしかしろよ......はぁ、まぁいい。行くぞ」

 

 

「お、こんなにも早くに乗ってくれるとはね。もう少し抵抗してくるとおもってたんだけど」

 

 

「どうせ一緒に行くことになるんだからな。抵抗しても無駄だろ」

 

 

「ははっ、そうかもね」

 

 

 

こうして僕はフィンさんとダンジョンに行くことが決まった。

あんなことは言ったけど、これからは決してない経験だろうから、かなりテンションが上がる。

 

 

 

「ちなみに、抵抗し続けていたらどうしてたんだ?」

 

 

「うーん、そうだね... 正体不明(アンノウン)はMだって事を広めるよって脅してたかな」

 

 

 

....フィンさんは多分いい人だと思ってた自分が馬鹿でした...

 

 

 

「冗談だけどね」

 

 

 

もう余計なことは話さないと決め、無言でダンジョンへと向かった。

 

______________________________

 

 

 

「そういえば、君は何の武器を使ってるんだい?」

 

 

 

ダンジョンに入ってから少しした頃、フィンさんが問いかけてきた。

関係ないけど、他の冒険者達に滅茶苦茶見られてた...。まぁ二大派閥である《ロキ・ファミリア》それもその団長と行動していたのだから、仕方ないことだけど。

 

 

 

「そのときの気分次第だな」

 

 

 

基本的にどの武器をも使いこなすベル。そのなかで、一番熟練度が高いのは刀だ。

 

 

 

「今日は勇者(ブレイバー)と一緒だからな。槍を使うことにする」

 

 

「へぇ...どれくらいのレベルなのか興味深いね」

 

 

 

目を細め、僕が取り出した槍をじっくりと見る。

 

 

 

「それはどこのかな?」

 

 

「《ヘファイストス・ファミリア》のやつだ。いいのがあったからな、買った」

 

 

 

そうこう話していると、モンスターが現れた。

まだまだ浅い階層だ。弱いモンスターなので、直ぐに終わってしまう。

 

 

 

フィンさんはステータスを上げる目的の場合、数人で何日もかけて潜る。今日は、最近執務続きだったので息抜きに来たらしい。

 

 

 

談笑をしながら、襲いかかってくるモンスターを倒し続けていたら、いつの間にか着いた10階層。

 

そろそろいい時間だと言うことで、帰還することになった。

 

 

 

「ちょっと待ってくれないかな」

 

 

 

来た道を戻ろうとしたとき、フィンさんに呼び止められる。

 

 

 

「どうした?」

 

 

「僕と軽く手合わせ願えないかなと思ってね」

 

 

「突然何を言いだすんだ?」

 

 

「ここまでずっと君の槍捌きを見ていて、かなりのものだったから戦ってみたくなったんだ」

 

 

 

ここまでの戦闘中、ずっと見られてたのはそういうことだったんだ。あまりにも見てくるから、ちょっと恥ずかしかったんだよね。

 

 

 

「まぁ、手合わせくらいならいいが」

 

 

「ありがとう。ここでは何だから、もう少し広い場所にいこうか」

 

 

 

そう言って移動を始めるフィンさん。僕はその後ろをついて行く。

人通り少ない端の方へと向かっているのが分かる。

邪魔になるのとあまり見られたくないといった考慮だろう。

 

 

やがて、空間の開けた場所に着く。

 

 

 

「それじゃあ、よろしく頼む」

 

 

 

構えるフィンさん。その構えにはスキがない。

 

 

 

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

 

 

 

僕も構える。

 

 

そして、どちらからともなく踏み出した。

 

______________________________

 

 

戦闘シーンはなしです。すみません。

 

______________________________

 

 

 

槍どうしがぶつかり合う――甲高い音や鈍い音が響き渡る。

約五分繰り広げられたそれは、まるで演武をみているかのように思えるほどだった。

 

 

 

満足したのか、フィンさんは槍を収めた。

 

 

「ふぅ...ありがとう。いい経験になったよ」

 

 

「そうか。俺もいい経験になった」

 

 

「軽くだけど戦って見た感じ、君には勝てそうにないね」

 

 

「まぁ、扱ってきた年数が違うからな。数十年しか生きてないやつに簡単に追いつかれでもすれば、泣くな」

 

 

「数十年しかねぇ...僕はこう見えても四十を超えている。そうなことを言うってことは、君はエルフだったりするのかな?それも、エルフの中でも長命だと言われている王族とか」

 

 

「さぁ、どうだろうな。そんなことよりも早く帰るぞ。もう夕刻だ」

 

 

「...そうだね」

 

 

 

納得していない顔をしながらも、大人しく引き下がるフィンさん。

こうして僕達は今度こそ外へと帰るのだった。

 

 

______________________________

 

 

 

ダンジョンから出て、魔石を換金し終えた僕達。換金したヴァリスはフィンさんに強引に押し付けた。

 

 

 

「今日は僕の我儘に付き合ってくれてありがとう」

 

 

「俺も貴重な体験をさせてもらった」

 

 

「じゃあ、僕は執務があるから帰るよ。またいつか会うことがあったら、そのときもよろしくしてくれると嬉しいかな」

 

 

「ああ、もちろんだ」

 

 

「それじゃあ、またね」

 

 

 

そう言って僕に背を向けて、自分のホームへと帰っていくフィンさん。

 

 

 

「あー、ちょっと待ってくれ。一つ言いたいことがあるんだが」

 

 

 

呼び止めると、不思議そうに此方へと顔を向けた。

 

 

 

「何かな?」

 

 

「お前達《ロキ・ファミリア》は、近々団員を失うことになるだろう。だがそれは、三首脳と幹部共が慢心していなかったから防げるはずだ。慢心については、前に酒場の件があるから大丈夫だろうがな」

 

 

 

僕はフィンさんの双眼を見据える。

 

 

 

「戦場は常に予測外であり、死と隣り合わせだということを忘れるな。警戒しても、過ぎることなどないのだから」

 

 

 

最近オラリオには不穏な空気が流れている。表向きは何もないように見えるのだが。

ダンジョンで見つけた新たなモンスター。これを巡って何かが起こるのは明白。

 

 

フィンさんにこう言ったのは《ロキ・ファミリア》に無事でいて欲しいからだ。つまりはオラリオという環境になれた人達の意識改革。

これから起こるか知らないけど、もしそうなった時のためだ。

ちなみに、団員を失うというのは意識を高めてもらうためのブラフである。

 

 

 

「それはどういう.....」

 

 

 

何かしら心当たりがあるのだろうか。少し顔を曇らせながら、そう問いてきたフィンさん。

 

 

 

「自分たちで考えるんだ。後悔のないようにな」

 

 

 

言いたいことは言い終わったので、ホームへと帰るために背を向け歩き出す。

チラッとフィンさんを見ると、顎に手を当て思考の海に潜っていた。

 

 

 

 

ご報告

 

 

私事ではありますが、少々お時間を頂けると幸いです。

 

 

作者はこれから大変多忙になります。なので、一ヶ月に1、2話程投稿していましたが、この先いつ投稿できるか分かりません。

 

本編は難しいですが、もしかしたら、過去編などは少しずつ出していくかもしれません。多分分かりませんけど。

 

 

ちょうど良き機会なので、ここで感謝を述べたいと思います。

 

 

お気に入りしてくださっている約300人弱の方々、こんな駄作をお気に入りしてくださりありがとうございます!

そして、約1000人の読者様方、こんな駄作を読んでくださりありがとうございます!

 

これからもちょくちょく出していきたいと思っておりますので、読んでくださりますと嬉しく思う所存です。

 

 

改めて、ありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。