特に何もない日常です。
side
オラリオの中心から北西には、通称冒険者通りと呼ばれる大道があり、終点にギルドが存在する。
必然的に冒険者が多く見られるため、周辺は冒険者を客と絞る店が多い。
特に店に用があると言う訳では無いが、ダンジョンに行けば必然的に冒険者が多くなるということは、顔見知りに会うことがあるというわけだ。例えばこんな風に―――
「やぁ、
そう呼ばれたので、声のした方を向くと―――誰もいなかった。
「あれ?おかしいなぁ...呼ばれた気がしたんだが」
「...下だよ」
「ん...?」
下という言葉が聞こえたので、下を向くと
「別に下を向かなくても見えてたよね?」
「ちょっとからかっただけだ。悪かった」
僕に声をかけてきたのは、《ロキ・ファミリア》の団長で【
「君って誰かをからかったりする人なんだね」
「普段はしないが、
「ああ、その話なら聞いたよ。なにやら
「やめろ。本当に違うからな」
あのとき何故もっと深い階層、或いは端っこでやっとかなかったんだと後悔した。
そのときのアイズはからかいなしで引いており、レフィーヤさんにいたってはゴミ屑を見ている目だった。
その日、涙で枕を濡らしたのは言うまでもない。
「ハハっ、冗談だよ。僕もさっかからかわれたからね。お返しさ」
...フィンさんって人がいいように見えるけど、悪いよね...いやいい人なのは違いないんだろうけどさ.....多分ね。
「で、なんの用だ」
「別に用はないよ。ただ見かけたから声をかけただけさ」
「そうか。なら俺はもう行くぞ」
「ダンジョンに行くのかい?」
「ああ」
「僕もダンジョンに行く予定だったんだ。一緒にどうかな?」
「...は?」
その言葉に、ダンジョンへと向いていた体が振り向かされた。
えっと...なんて?今、一緒に行こうって言われた?なんで僕一緒に行こうって誘われたの?なんか怖いんだけど。
「丁重にお断りしよう。なんか企んでそうで怖いからな」
「大丈夫だよ。ただ君を近くで観察するくらいだから」
「...いや、少しくらい目的を隠すとしかしろよ......はぁ、まぁいい。行くぞ」
「お、こんなにも早くに乗ってくれるとはね。もう少し抵抗してくるとおもってたんだけど」
「どうせ一緒に行くことになるんだからな。抵抗しても無駄だろ」
「ははっ、そうかもね」
こうして僕はフィンさんとダンジョンに行くことが決まった。
あんなことは言ったけど、これからは決してない経験だろうから、かなりテンションが上がる。
「ちなみに、抵抗し続けていたらどうしてたんだ?」
「うーん、そうだね...
....フィンさんは多分いい人だと思ってた自分が馬鹿でした...
「冗談だけどね」
もう余計なことは話さないと決め、無言でダンジョンへと向かった。
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「そういえば、君は何の武器を使ってるんだい?」
ダンジョンに入ってから少しした頃、フィンさんが問いかけてきた。
関係ないけど、他の冒険者達に滅茶苦茶見られてた...。まぁ二大派閥である《ロキ・ファミリア》それもその団長と行動していたのだから、仕方ないことだけど。
「そのときの気分次第だな」
基本的にどの武器をも使いこなすベル。そのなかで、一番熟練度が高いのは刀だ。
「今日は
「へぇ...どれくらいのレベルなのか興味深いね」
目を細め、僕が取り出した槍をじっくりと見る。
「それはどこのかな?」
「《ヘファイストス・ファミリア》のやつだ。いいのがあったからな、買った」
そうこう話していると、モンスターが現れた。
まだまだ浅い階層だ。弱いモンスターなので、直ぐに終わってしまう。
フィンさんはステータスを上げる目的の場合、数人で何日もかけて潜る。今日は、最近執務続きだったので息抜きに来たらしい。
談笑をしながら、襲いかかってくるモンスターを倒し続けていたら、いつの間にか着いた10階層。
そろそろいい時間だと言うことで、帰還することになった。
「ちょっと待ってくれないかな」
来た道を戻ろうとしたとき、フィンさんに呼び止められる。
「どうした?」
「僕と軽く手合わせ願えないかなと思ってね」
「突然何を言いだすんだ?」
「ここまでずっと君の槍捌きを見ていて、かなりのものだったから戦ってみたくなったんだ」
ここまでの戦闘中、ずっと見られてたのはそういうことだったんだ。あまりにも見てくるから、ちょっと恥ずかしかったんだよね。
「まぁ、手合わせくらいならいいが」
「ありがとう。ここでは何だから、もう少し広い場所にいこうか」
そう言って移動を始めるフィンさん。僕はその後ろをついて行く。
人通り少ない端の方へと向かっているのが分かる。
邪魔になるのとあまり見られたくないといった考慮だろう。
やがて、空間の開けた場所に着く。
「それじゃあ、よろしく頼む」
構えるフィンさん。その構えにはスキがない。
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
僕も構える。
そして、どちらからともなく踏み出した。
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戦闘シーンはなしです。すみません。
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槍どうしがぶつかり合う――甲高い音や鈍い音が響き渡る。
約五分繰り広げられたそれは、まるで演武をみているかのように思えるほどだった。
満足したのか、フィンさんは槍を収めた。
「ふぅ...ありがとう。いい経験になったよ」
「そうか。俺もいい経験になった」
「軽くだけど戦って見た感じ、君には勝てそうにないね」
「まぁ、扱ってきた年数が違うからな。数十年しか生きてないやつに簡単に追いつかれでもすれば、泣くな」
「数十年しかねぇ...僕はこう見えても四十を超えている。そうなことを言うってことは、君はエルフだったりするのかな?それも、エルフの中でも長命だと言われている王族とか」
「さぁ、どうだろうな。そんなことよりも早く帰るぞ。もう夕刻だ」
「...そうだね」
納得していない顔をしながらも、大人しく引き下がるフィンさん。
こうして僕達は今度こそ外へと帰るのだった。
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ダンジョンから出て、魔石を換金し終えた僕達。換金したヴァリスはフィンさんに強引に押し付けた。
「今日は僕の我儘に付き合ってくれてありがとう」
「俺も貴重な体験をさせてもらった」
「じゃあ、僕は執務があるから帰るよ。またいつか会うことがあったら、そのときもよろしくしてくれると嬉しいかな」
「ああ、もちろんだ」
「それじゃあ、またね」
そう言って僕に背を向けて、自分のホームへと帰っていくフィンさん。
「あー、ちょっと待ってくれ。一つ言いたいことがあるんだが」
呼び止めると、不思議そうに此方へと顔を向けた。
「何かな?」
「お前達《ロキ・ファミリア》は、近々団員を失うことになるだろう。だがそれは、三首脳と幹部共が慢心していなかったから防げるはずだ。慢心については、前に酒場の件があるから大丈夫だろうがな」
僕はフィンさんの双眼を見据える。
「戦場は常に予測外であり、死と隣り合わせだということを忘れるな。警戒しても、過ぎることなどないのだから」
最近オラリオには不穏な空気が流れている。表向きは何もないように見えるのだが。
ダンジョンで見つけた新たなモンスター。これを巡って何かが起こるのは明白。
フィンさんにこう言ったのは《ロキ・ファミリア》に無事でいて欲しいからだ。つまりはオラリオという環境になれた人達の意識改革。
これから起こるか知らないけど、もしそうなった時のためだ。
ちなみに、団員を失うというのは意識を高めてもらうためのブラフである。
「それはどういう.....」
何かしら心当たりがあるのだろうか。少し顔を曇らせながら、そう問いてきたフィンさん。
「自分たちで考えるんだ。後悔のないようにな」
言いたいことは言い終わったので、ホームへと帰るために背を向け歩き出す。
チラッとフィンさんを見ると、顎に手を当て思考の海に潜っていた。
ご報告
私事ではありますが、少々お時間を頂けると幸いです。
作者はこれから大変多忙になります。なので、一ヶ月に1、2話程投稿していましたが、この先いつ投稿できるか分かりません。
本編は難しいですが、もしかしたら、過去編などは少しずつ出していくかもしれません。多分分かりませんけど。
ちょうど良き機会なので、ここで感謝を述べたいと思います。
お気に入りしてくださっている約300人弱の方々、こんな駄作をお気に入りしてくださりありがとうございます!
そして、約1000人の読者様方、こんな駄作を読んでくださりありがとうございます!
これからもちょくちょく出していきたいと思っておりますので、読んでくださりますと嬉しく思う所存です。
改めて、ありがとうございました!
ありがとうございました。