セイバーアート・オンライン   作:ニントという人

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どうも、作者です。
8月も終わりますけど、そんなときに投稿します。
今回から、アインクラッド第三層に突入です。
前書きで書くこともあんまりないので、とりあえず天どうぞ。


アインクラッド第三層攻略編
森林の妖精、白黒につき。


アインクラッドは、今まで俺達がクリアしてきた1層、2層のような鉄の板に乗ったフィールドが計100枚重なった構造になっている。

それは上に行けば行くほど板は小さくなり、板は全て円状なので総合的な形は最終的に円錐状となる。

第一層は森は池、古城など様々な風景が入り乱れる、いわば《RPGでよくある地形詰め合わせ》みたいな感じだったが、二層に入るとテーマが絞られ、そこらを牛が闊歩し、辺りには枯れ草が生え茂る牧場エリアとでも言う風景が広がっていた。………まあ、プレイヤーの大半は二層を《牛フロア》と呼んだのだが。理由は言うまでもあるまい。

そんな1、2層に共通する点として、登場するモンスターが挙げられる。

一層のメインmobであるコボルド、二層のメインmobであるトーラス(ミノタウロス)はともに亜人族(デミヒューマン)であり、背格好は人間のそれだが、容姿に関してはモンスターのそれである。

さて、そんな亜人だらけの1,2層を超えた俺達を待ち受ける第三層はどうなのかと言うと…

「……ある意味、ここからがSAOの本番だ…」

同じようなことを考えていたのか、キリトが不意に口から言葉をもらした。

「本番って……どういうことですか?」

それを聞いたリントがキリトに尋ねると、キリトはこちらを向いて

「それは…この第三層から、本格的に人型mobが出てくるんだよ。今までのコボルドとかミノとかも人っぽかったしソードスキルも使ったけど、見た目は完全なモンスターだったろ?でも、この三層から出てくる敵は外見がほぼプレイヤーと変わらない。上のカラー・カーソルがなかったら見分けがつかないぐらいに、な。それに、ソードスキルも下手するとプレイヤー以上に高度な使い方をする。つまり…」

キリトはそこで一度言葉を着ると、その視線を空…いや、第三層の底面に向け、

「ここからが、本当のソードアート・オンライン(剣技の世界)なんだ。開発者インタビューで、茅場晶彦も言ってたよ。『ソードアートとは、ソードスキルとソードスキルが織りなす音と光、生と死の協奏曲(コンチェルト)だ』って…」

「生と死の…コンチェルト、か…」

俺も一度読んだことのある、あのインタビューの文面を脳裏に浮かべながらつぶやくと、アスナは

「ふぅん…」

とあまり興味なさそうな声を上げ、規則正しいペースで階段を登りながら、更に言葉を続けた。

「……その言葉を言った時点で、茅場はこの事件を計画してたのよね?」

「ああ、まあ、当然そうなる…か。」

キリトがアスナの質問に歯切れ悪く答えると、アスナはどこか独り言のように声を発した。

「生と死の…協奏曲(コンチェルト)。それって本当に、モンスター対プレイヤーのソードスキル戦だけを想像したものなのかしら。」

「…え?それってどういうことだ…?」

俺がアスナにその言葉の真意を聞けば、

「私の考えすぎかもしれないけど…コンチェルトって、楽器と楽器が対を成して演奏する形式じゃないのよ。そういう意味でなら、二重奏のほうが適当だわ」

「確かにそうですね…協奏曲の本当の意味って確か…」

「…協奏曲の意味は、管弦楽器をバックにして、単独または少数の独奏楽器が演奏する形式…かしらね。時代によって意味は少しずつ変わっているけど、基本的にはそういうもののはず。つまり、一対多…もしくは少数対多数のの音楽なのよ。」

「一対…多…」

キリトは小声で言うと、そのまま何かを言いかけ、そのまま口を閉じた。

そして…俺も。

一対多という状況は、実際のところRPGでは珍しいこととは言えない。いわゆるドラ○エやファイ○ルファンタ○ーなどでも、一回のエンカウントで複数体のモンスターと出会うこともある。それは、他のMMORPGでもおなじ。

だが、それがこのSAOの価値観に置き換わると、その事象は限りなく起こり得ない事象へと変わる。

なぜなら、他のRPGと違い、この世界では複数の相手に有効な広範囲高火力攻撃……つまり魔法が存在しないからだ。この世界での遠距離攻撃は、今ではほぼ趣味スキルとなっている投剣だけであり、通常の武器でソードスキルを使用しても尚、間合い+αしか届かない。

つまり、この世界で複数の敵に囲まれるということは、処理しきれずに敗北……つまりゲームオーバー(死亡)になることを意味する……というより、その状況になりそうなら、誰しもがその前に全力で逃げ出すだろう。

というわけで、このSAOでは本来の意味での協奏曲に当てはまる戦闘は起きないことになるわけだ。

「それじゃあそもそも、この世界じゃあ協奏曲に例えられる戦闘なんか起きないってことじゃないか。強いて言うならボス戦がそれっぽいけど、それだとボスが主役で攻略レイドが伴奏みたいだなぁ」

「そうね、まあ、私の考えすぎだわ。……………それより、キリト君。」

「ん?どうした?」

「いえ…もう遅いみたい。」

アスナがそういった瞬間、俺とリントはこの次何が起きるかを察知した。同時に、脳内でこう思った。

───キリト、どんまい。

キリトは先程まで後ろを向いて階段を登っていた。つまり登る先が見えずに登っていたわけで…

「んごっ…」

キリトは頭を三層へ繋がる扉に盛大にぶつけ、そのまま螺旋階段の方に転がりかけたが、なんとか持ちこたえ重心を扉の方に向け、扉に体重を預けよう……としたところで、その扉はもうすでに開いており。

「うわあぁぁぁ!?」

………キリトはそのまま、開いたドアにケツから倒れ込んだ。

それがどうやら、この世界で第三層に初めて付いた、プレイヤーの痕跡だったらしい。

 

◆◆◆◆

 

どこか不名誉な形で到達した、アインクラッド第三層のテーマは『森』だ。一口に森と言っても、一層や二層にあったような小規模な森とはわけが違う。三層に生えている木々は小さなものでも幹の直径一メートル、高さは三十メートルにも及ぶ巨木であり、そのレベルの木が数え切れないほども生え、木々の葉が上方で重なり合い、その隙間から光が漏れ、地上へと届く光景は正しく『ファンタジー』の世界というものだ。

「わあ…!」

ケツから盛大に落ちたキリトを華麗にスルーしながら扉を通り抜けたアスナは、三層の大地を軽やかに駆け、陽光を浴びながらくるくると回る。

「すごい…この光景を見ただけでも、ここまで登ってきた甲斐があったわね…!」

「……ほんと、甲斐があったな」

アスナの声にキリトが反応しながら立ち上がると、レザーコートについた土……があるのかはわからないが、ともかくコートを払い、大きく伸びをした。

俺も釣られて空気をたっぷりと吸い込み、一層、二層とは少し違った感じの空気を味わう。……たぶん、感じだけだろうが。

後ろを向くと、大きめの樹の根元に石造りの四阿が立っており、その床は俺達が出てきた階段に繋がる穴がポッカリと空いている。

「さてと…」

三人が景色を見ている間に、俺はウィンドウを開いてメッセージタブに移動、送信先にアルゴを指定し、2層ボス攻略の旨を伝える文面を送る。一応アルゴもあの場にいたものの、ボスを倒した頃にはすでにどこかに行っていたので念の為、というわけだ。

これで、ディアベルから依頼された依頼は全て片付けた。

………と、いうわけで。

「えー、御三方とも。景色を楽しんでいるところ悪いのだけど…」

「?どうしたの?」

「どうしたんですか?」

アスナとリントの視線がこちらに向き、キリトもこちらを向くと、俺は話を続けた。

「今見えてるY字路を右に行くと、この層の主街区。本当は先にそっちに行って転移門を起動するべきなんだろうけど、できたらそれは後の攻略組本隊に任せたい。」

「はい…。」

「理由としては、俺達だけで転移門を起動しちゃうと、大勢がいると思って押し寄せる下層のプレイヤーが動揺するってのと、後単純に俺があんまり人前に出たくないってのもある。」

「ラルト君、ある意味ディアベルさん以上に有名人だもんね。」

「ああ。…で、もう一つ理由があるんだけど…」

俺はそう言うと、伸ばした手を最初に言った道とは違う方向に向け、

「あっちに行くと、この層のメインフィールドの森に入る。俺としては、あっちで先に済ませときたい事があるんだけど、三人は別に行きたくなければ行かなくていいし、来たければ来ても良いけど…」

「……ちなみに、その済ませたいことって何なんですか?」

「あー、早い話がクエストの受注。受けるまでに、結構時間がかかって…」

「別にいいわよ。私も街に用はないし。」

「僕も大丈夫です。丁度レベリングもしたかったですし。キリトさんは…?」

「俺も行くよ。俺もラルトと同じクエスト受けるつもりだったしな。」

「よし…じゃあ行くか。三層のメインを堪能しに。」

 

◆◆◆◆

 

これからの意向を決定した俺達は、先程示したY字路の左側を進んだ。

「アスナ、それにリント。この辺に湧くmobは、強さ的には二層迷宮区の奴らとあまり変わらない。殆どが動物か植物型だから、ソードスキルも使わないしな。」

キリトはそこまで説明すると、一度言葉を切ってから、更に続けた。

「でも、この三層に湧くmobの共通した特徴として、戦闘中にこちらを森に誘い込もうとする習性があるんだ。相手が隙を見せたからって突進系攻撃ばかりしてると、気がついたら道から遠く離れてて現在地がわからなくなることがある。」

「でも、一回通った道ならマップに色づきで表示サれるんじゃないの?」

「それが…」

そう言ってキリトが開いたウィンドウに示されたマップを、四人全員で覗き込む。すると…

「あ…薄いですね。」

リントの言葉通り、本来通ったところは3Dビジュアル表示されるはずのマップは、今は通ったところも薄くモヤが掛かったようになっており、どれだけ目を凝らそうと詳細な地形を知ることはできない。

「この辺のエリアは、正式名『迷い霧の森』(フォレスト・オブ・ウェイバリング・ミスト)っていうんだけどさ。マップもこんなだし、本当に霧は出るしでマジで迷うんだ。だから、たとえ戦闘中だったとしても道とパーティーメンバーからは絶対に離れない。これは原則として覚えててくれ。」

「了解。…じゃあ、早速実演してもらおうかな。」

「へ?」

「ナニカに見られてますよ。後ろから。」

リントの言葉通り、キリトの背後に生えている一本の木は、容姿こそただの枯れ木であり、サイズも他の木々より遥かに小さいが、その木の上部に2つ並んで存在するうろは、青くおぼろげな燐光を放っている。

この迷い霧の森に湧くモンスターの特徴として、地面にしっかりと生えている時はプレイヤーの索敵スキルに反応しないということだ。

そのモンスターの一種である《トレント・サプリング》は、土から抜けると根を脚のように使い、俺達の方へと全速力で突っ走ってきた。

俺達はキリトに少々呆れながらも、一番素早く抜剣したキリトに続いて、各々の愛剣を鞘から抜いた。

 

◆◆◆◆

 

戦闘が終わると、俺達は道からそこそこ離れた位置まで移動させられていた。

現在のような5メートル程度の距離ならまだ戻れるが、10メートルほど離れて更に霧まで出ていると戻ることは困難を極める。

道へ戻る最中、アスナがポツリと言った。

「なんだか………ちょっと罪悪感があるわね」

「え?なぜ?」

俺が聞き返せば、アスナは再び口を開いて

「だって、さっきのmob、苗木(サプリング)ってことはこれから育つってことでしょ?そう考えたらエコじゃないわ」

「あー…それはそうなんだけどな…でも、あいつが成長した《エルダー・トレント》あたりを見たら、苗木のうちに切り落としてやらないと…!…ってなるぜ。」

「それはそれで…ちょっと見てみたいですね…」

「その好奇心は押し留めたほうがいいぜ…」

キリト、まさしくその通り。

「と、そろそろか…」

「何が?……って、さっき言ってた、先に済ませときたいクエストね。」

「ああ。この辺でクエストくれるNPCにいるんだけど…そいつの位置がランダムなんだよな。……まあ、受けたことはないんだけど。」

「…え、無いんですか?」

「ああ……スタート地点のことぐらいしか知らない。」

「なんで?」

「……丁度ベータで三層が攻略されてた頃、俺用事でログインできなかったんだよな。だから情報だけなんだよ。」

「…じゃあ、キリト君は?」

「俺はあるぞ。クリアまで行ったしな。」

「そっか。……じゃあ、ネタバレはなしでよろしく。」

「了解。で……御三方、耳に自信ある?」

キリトの声に、俺とリントはそんなに反応しなかったのだが、アスナは俺達男性陣より小振りな耳を両手で隠し、

「…キリト君て、そういう趣味だったの?耳フェチ?」

「ち、ちがわい!この状況で自信つったら形じゃなくて聴力に決まって…」

「冗談よ。大体聴力関係ないでしょ。私達、音を耳じゃなくて脳で聞いてるんだから。」

「「「…確かに」」」

俺達は手を耳に当て───これに意味があるかは知らないが───、周囲にざわめく環境音(サウンドエフェクト)に感覚を集中させた。

「……そういえば、何の音を聞けばいいの?」

「まさか、葉が一枚落ちる音…なんて言いませんよね…?」

「流石に違う…よな、キリト?」

「確証を持ってから答えろよ……ああ、そんな無茶じゃないよ。探すのは金属音……正確には剣と剣がぶつかる音だから」

その返答に、アスナとラルトは少し眉根を寄せたものの、それ以上何を言うでもなく、音を聞くのに集中した。

……そして。

……キン。

「「「「……!」」」」

俺達は一斉に反応すると、同時に同じ方向を向き、その方向へと走っていった。

 

俺達が走ったのは五分にも満たなかっただろうが、その間にも金属音は大きさを増し、音源が俺達に近づいてくる……否、俺達が近づいていることをありありと示す。

そして、後少し走れば音源にたどり着くというところで、俺達は急制動し、近くの岩から音源を覗いた。

そこには、やや広めの空き地が広がり、その上で二人の人物が対峙していた。…………もちろん、剣と剣をぶつけ合う、という意味の。

片方は、白い肌に金色、緑色の軽装甲を纏った男。髪は輝かしいまでの銀髪で、手にはロングソード(片手用直剣)とバックラーを持ち、表情は張り詰めている。彼について特筆すべきはその容姿で、どこのハリウッド俳優だよと思わずには居られないほどの美貌を誇る、北欧系のハンサムなのだ。

対するもう片方は、浅黒い肌を黒と紫の装備で覆っている。手に持つのは先程の男とは対象的なサーベル、そしてカイトシールドで、髪はスモークパープル。そして、少し赤い唇と、胸部装甲が少し盛り上がっているのはその人物が先程の男とは正反対………つまり女性であることを示す。

「…こ…これ、本当にNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)なんですか?」

俺の横で、リントが信じられないというように呟いた。……俺も思ってる。ただ、俺の持つ情報と照らし合わせるなら…

「NPCというより、正確にはモンスター扱いらしいけどな。二人の耳、見てみな。」

「あっ、尖ってる……ってことは…!」

「そ、男のほうが《(フォレスト)エルフ》、女のほうが《(ダーク)エルフ》。」

アスナの問いに俺が答えると、キリトが指を指しながら

「ほら、二人の頭の上も見てみろよ。」

「あっ…クエストフラグ…?」

その言葉の通り、彼らの頭上には黄金に輝くクエストフラグ(!マーク)が存在する。

「ふたりともクエマーク付きで…しかも戦ってるって、どういう事?」

「簡単な話だよ。どっちかしか受けられないってことさ。」

「ど…どういうことですか?」

困惑している二人に対し、俺は言葉をかけた。

「俺達が今から受けようとしてるのは、単発クエでも、その層限りの続きモノでもない。………アインクラッド初、層を超えたキャンペーン・クエストなんだ。」




アインクラッド三層の目玉といえばあのヒトですけど、今回ほぼ出てきませんでしたね…
ですが、次回からはじゃんじゃん活躍して貰う予定ですので、彼女のファンの方は待っていただけると。
というわけで、次回の予告、どうぞ。

次回、セイバーアート・オンライン。
「お姉さんだからじゃないよ、黒いからだよ」
「私達、死んだら…」
「礼を言わねばなるまいな」

第14節 美貌の騎士、秘鍵を携え。

オリジナルのブック組み合わせを出そうと思ってます。基本は赤いブックとの組み合わせです。

  • ヘンゼルナッツとグレーテル
  • 猿飛忍者伝
  • 昆虫大百科
  • 天空のペガサス
  • トライケルベロス
  • 玄武神話
  • 昆虫大百科
  • オーシャンヒストリー
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