セイバーアート・オンライン   作:ニントという人

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お久しぶりです。気がつけば10月も終わりが近づくというのに、この小説は二ヶ月ぶり…
まあ理由は特にないんですけど、まあ早い話がコロナかかりました。
今は無事回復したので、14話投稿します。あと、今回かなり短いです。


美貌の騎士、秘鍵を携え。

「そ…層を超えたって、一体何層まで…」

続くの?と言おうとしたアスナに、俺は答えた。

「そうだな……確か、終わるのは9層だったはずだ。」

「きゅ……!?」

───9層!?と叫びそうになった口をとっさに塞いだアスナは、目をはち切れんばかりに見開く。それはリントも同様だ。

そんな状態の彼らに、

キリトは追加で情報を投下。

「しかも、途中でミスってもやり直し不可。当然、対立ルートへの変更も不可。ここで選んだ道を、9層まで走り抜けるしか無いってわけだ。」

「ちょっとアナタ、そういうことはもっと早く…」

表情を怒りに変更させようとしたアスナだったが、その表情は途中で迷い顔に変更された。

「……って、対立ルート?…それってつまり、あのエルフのどっちかの…」

「味方になる、ってわけだな。要は、もう片方と戦うわけだけど…」

「ああ。黒と白、どっちも選べるけど、どっちが良い?」

俺とキリトの説明を聞いたアスナとリントは、一瞬迷った素振りを見せたものの、何故かジト目へと表情を再変更すると、

「それ、選択の余地無いんじゃないですか?」

「そうよ、普通のRPGならともかく、この状況(デスゲーム)だと、ベータの時にあなたが選んだ道に行くしか無いじゃない。というか、あなたがどっちを選んだか完璧に確信できるんだけど」

そこで言葉を切ったアスナは、ウッ…と言葉に詰まっているキリトを冷ややかな目で見つめると、

「ダークエルフのお姉さんでしょ? Did'nt you?」

「い…イエスアイディッド……でも、お姉さんだからじゃないよ、黒いからだよ。」

………嘘おっしゃい…どうせあのお姉さんのあれとかそれとかに惹かれたんでしょ?

と、そんな思考はアインクラッドの下に放り投げておいて、だ。

一応返答を受け取ったアスナは立ち上がるとふんっ!と顔を反らせ、

「まあいいわよ。私も、男の味方して女の人を斬るなんてゴメンだしね。じゃあ、黒エルフに加勢して森エルフを倒すってことでいいのね。じゃ、行きましょ。」

そう言って歩き出そうとしたアスナを、キリトが引き止めた。

「ま、待った待った!あと一つ、大事なこと!」

「何よ?」

「あのな……黒に加勢するのはそうなんだけど、俺たちは森エルフには絶対に勝てない。」

「「「え……えぇ!?」」」

驚愕の声を上げるリントとアスナ……と、俺を落ち着かせるため、キリトは意識したであろう落ち着いた声で言った。

「強げな装備を見てもわかるだろうけど……あの白い方《フォレストエルブン・ハロウドナイト》と、黒い方《ダークエルブン・ロイヤルガード》は、本来七層に行かないと現れない、しかもエリートクラスのmobなんだ。いくら安全マージンを取ってるとはいえ、三層に来たばかりの俺たちが敵う相手じゃない。」

エリートクラス……早い話が、同レベル帯のプレイヤーやモンスターより、数段上のステータスを持つ、というわけだ。単なるレベル差とは違う、地力の差。

「か、勝てないって……私達、死んだら…」

…現実でも死ぬ。そう言いかけたアスナを落ち着かせるように、キリトは言った。

「大丈夫、負けると言ってもそこまで行くわけじゃない。こっちのHPが半分まで削れると、黒エルフが奥の手を使ってくれて、それで勝てるから。だから俺たちがすべきなのは、慌てず防御に徹することだ。それでもHPは削れるけど、黒エルフのお姉さんが助けてくれるまで、ひたすら耐えるんだ。下手にパニックになって、他のmobを呼び寄せないとも限らないしな。」

「……解った。」

「……解りました。」

二人に続いて俺も頷くと、キリトはよし、と言うと、その腰を上げた。

「じゃあ、3つ数えてから飛び出すぞ。近づくと自動でクエが始まるから、俺の近くにいるだけでいい。」

キリトは最後にそう言うと、再度口を開き

「3,2,1………ゼロ!」

カウントがゼロになると同時に、俺たちは茂みから飛び出した。

それと同時に、二人のエルフの視線が一気にこちらへと集まり、警戒するかのように距離を取る。ついでに、二人の頭上の!マーク(クエスト受付中)?マーク(クエスト進行中)へと変わる。

森エルフのハンサムが

「人族がここで何をしている!」

といえば、まるで事前に打ち合わせしていたかの様に、黒エルフのお姉さんが、

「邪魔立て無用!今すぐに立ち去れ!」

と言う。……実際、この言動はプログラムで定められているのだから、打ち合わせも何も無いのだが。

ここで立ち去ることもできるのだろうが、それでは無意味だ。感動的ですら無い。

俺たちはちらりとアイコンタクトをすると、一斉に各々の愛剣を抜刀した。

……その切っ先を、森エルフのイケメンに向けることも忘れずに。

その瞬間から、森エルフの顔には険しさが増し、イベントmob判定の黄色いカラー・カーソルは、敵性mobを示す赤色…それもドス黒いダーククリムゾンへと変わっていく。

「愚かな…ダークエルフごときに加勢して、我が剣の露と消えるか。」

「そ…「そうよ!でも消えるのはそっちよこのDV男!」……」

可哀想にキリトさん……てかDVってこの場合使えるの?用法あってる?俺が無知なだけ?

そんな俺の思考を置いていって、戦況はどんどん緊迫感を増していく。

「良かろう、ならば貴様らから始末してやろう、人間よ」

いい音を立てて向けられるロングソードから放たれる剣圧を感じる俺の横で、キリトが言った。

「いいな、ガード専念だぞ!」

……その発言が、本当のものになるかは、少々疑わしかった。

なぜなら、キリトの隣…この中で唯一のレイピア使いのアスナの表情が………歴代誌上稀に見る、本気中本気の顔だったからだ。

「あの……ガード…専念…」

「解ってるわよ!」

「……まあ、キリト、最悪変身してカバーするから…」

「…頼んだ…。」

 

そして……二十分後。

「ば…馬鹿な……」

地面の直ぐ側で、そう呟くものが一人。

そして……

「ば…馬鹿な……」

……俺の直ぐ側で、そう呟くものが一人。

前者の頭上に浮かぶHPバーは、完全に色を失っている。……そして、こちら側には4人…いや、5人が立っている。

「なんだ、やればできるじゃない。」

そんな、なんとでもないような顔で呟くアスナ女史のHPは、半分を少し超えたところでとどまっている。

────これは後から聞いた話なのだが、黒エルフのお姉さんが使う奥の手は、強力な代わりにHPを消費…つまり、文字通り命を削って放つ技だったらしい。森エルフとの戦闘で、HPがすり減った黒エルフはその技で森エルフと相打ちに持ち込み、後をプレイヤーに託す……というのが、本来の筋書きだったらしいが…

…………その黒エルフのお姉さんは、しっかりとここに存在している。HPもゼロになっておらず、完全に生きている。

森エルフの体は地につき、ポリゴンのかけらと代わり爆散。一つの袋を残して、その痕跡を完全に消した。

…………黒エルフのお姉さんの顔に、あの、私どうすれば…という表情が浮かんでいるのは……

気のせいだろう、きっと。

 

◆◆◆◆

 

またまた後から聞いた話なのだが、決着がついた後のこのクエスト……その名も《翡翠の秘鍵》は、このような流れになるはずだったらしい。

黒エルフのお姉さんから後を託されたプレイヤーは、エルフたちが落とした大振りな一本の鍵を、黒エルフか森エルフの基地に運ぶ事となる。

その鍵は普通のアイテム判定で、街で普通に売れたりするし、結構いい値段もつくのだが、それではクエストは詰む。

基地に運ぶことで、ようやくこのクエストが本格始動する………訳だったのだが。

「えーと……な、なんだろー、これ…」

動揺を隠しきれていないキリトが、途轍もなくわざとらしい声を上げ、それに反応したアスナが、森エルフが残していった袋をすっと拾おうとするのを、キリトが止める。

何よ、と言いたげなアスナの目線をキリトが受け止める寸前、黒エルフのお姉さんが口を開いた。

「これでひとまず聖堂は守られる……」

そう呟いた黒エルフのお姉さんは、地面に落ちている袋を拾うと、腰のポーチにしまい、俺達の方を見た。その一連の動きはあまりにも自然で、コレがプログラムで動くNPCとは思えないほどだ。

「……………礼を言わねばなるまいな」

鎧をガシャガシャ言わせながら一礼したお姉さん………カラーカーソルの《Kizmel:Dark Elven Royal Guard》という表記に従えば、おそらくキズメルさんと読むであろう彼女は、言葉を続けた。

「そなたらのおかげで第一の秘鍵は守られた。助力に感謝する。我らが司令からも褒賞があろう、野営地まで私に同行するがよい。」

ここで、キズメルの頭上に黄金の?マークが点灯する。どうやら、この状況でもクエストは進行するようだ。

アスナはキズメルに近づくと言った。

「じゃあ、お言葉に甘えて。」

「…………」

黙っているのは俺たちだけじゃない、キズメルさん本人も黙り込んでいる。NPCへの受け答えは、YES/NOがはっきりしている返答でないと反応が帰らないことが多い。

キリトが、おそらくNPCに通じる言い方で言い直そうと、口を開き………かけたのだが。

「よかろう。野営地は森を南に抜けた先だ。」

キズメルは少し黙っただけで、普通に会話を続けた。

………きっと、ベータから本サービスまでの調整で、NPCのAIだかなんだかのレベルが上がったんだろう。それだけのことだ。

俺は、そう考え、納得しようとした。………だが、この世界に存在する例外が、俺の思考を掠める。

「(キズメルはメギド?………考えすぎか…)」

俺は今度こそそう納得し、左上に増えた五本目のHPバーの名前をながめた。

…キズメル:ダークエルブン・ロイヤルガード。

………俺は…俺達は、今後この騎士と深く関わることになるとは、誰も考えていなかった。




切りいいとこで切るとこんなとこで終わってしまった…
まあとりあえず、予告どうぞ。

次回、セイバーアート・オンライン。
「我らのまじないは、とても魔法とは呼べぬものだ」
「いんす…たんす?」
「ありがたく使わせていただき…うん?5人?」

第14節 黒き野営地、唯一の拠点。

オリジナルのブック組み合わせを出そうと思ってます。基本は赤いブックとの組み合わせです。

  • ヘンゼルナッツとグレーテル
  • 猿飛忍者伝
  • 昆虫大百科
  • 天空のペガサス
  • トライケルベロス
  • 玄武神話
  • 昆虫大百科
  • オーシャンヒストリー
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